夏まっさかりのある日。
シンとしんのすけ達は、涼むことも兼ねてファミレスに来ていた。
むさえ 「さ~て、なに食べようかしら~」
みさえ 「あんまり高いのは頼まないでよね。あとドリンクはコーヒー限定」
シン 「……なんでですか?」
みさえ 「コーヒーだけが、おかわり自由だから」
しん 「あいからわず母ちゃんはセコいゾ」
ひまわり「たあ~」
???1「お客様、ご注文は……げっ!」
しん 「おお~師匠!」
???1「だれがお前の師匠だ!」
???2「どうしやした姐さん!」
???3「あッ! こいつ……なんでここに!」
ルナ 「ねえ誰? この人たち」
シン 「ああ、この3人な」
???1「ふかづめ竜子!」
???2「魚の目お銀!」
???3「ふきでものマリー!」
「「「3人揃って! 埼玉紅さそり隊!」」」
シン 「と、いう方々なんだ」
しん 「こう見えても正義の漫才トリオなんだゾ」
お銀 「誰が漫才トリオだ!ったく……今日はツイてないっスねえ」
竜子 「ああ。生活費、および夏休みをエンジョイするための資金稼ぎにアルバイト始めたら、
店にジャガイモ小僧が来るわ、新入りにバカにされるわ……」
むさえ 「新入り?」
マリー 「……あの3人のことっス」
???4「いくよお前達!」
???5「ジェットストリーム!」
???6「アタック!」
みさえ 「へえ……あの人達、見事なコンビネーションねえ。
注文とり、料理運び、片付け、さらにレジ打ちまで……流れるような手さばきだわ」
シン 「ラクスさんとこのドムトリオじゃないか……
あれ? でもあの人達は『砂漠の虎』の店員じゃなかったっけかな?」
しん 「やっほー。眼帯のおねいさん、久しぶりぃ♪」
ヒルダ 「ん? あ、お前は!私達を破った、あの子供!」
シン 「こんにちは。砂漠の虎はクビになったんですか?」
ヘルベルト「いやいや、そういう訳ではないのだが……
まあ修行みたいなものさ。俺達は接客業にまだまだ不慣れだからな」
ヒルダ 「これもラクス様の御為! 私達は日々精進せねばならないのだ!」
ルナ (給仕修行のどこがラクスさんの為なのかしら……?)
マリー 「と、まあこんな感じで……私達の仕事、ほとんど取られちまったっス」
むさえ 「別にいいじゃない。仕事が少なくなってさ、楽でいいじゃん」
お銀 「じょーだんじゃないですよ! このままじゃ私ら、職務怠慢でクビになっちまうっス!」
竜子 「ぬ~~~やいやいてめえら! こうなったら勝負だ!」
ヒルダ 「勝負……? 面白いね。それで私達がその勝負に勝ったら、どうなるんだい?」
竜子 「あたし等3人、今すぐこの店を辞めてやらあ!」
マリー 「あ、姐さん?」
ヒルダ 「じゃあ逆に私達が負けたら、あたし等がこの店を去る、と……よし!受けた!」
しん 「おお~! なんか面白いことになってきたゾ♪」
シン 「じゃあ勝負の方法はどっちがより多く、接客をこなせるかってことでいい?」
竜子 「私達はウェイトレスだからな……」
ヒルダ 「異議はない!」
しん 「じゃあ今、この瞬間から勝負はじめ~~~!」
ルナ 「よーい……どん!」
ムウ 「ふう、ファミレスは涼しくていいなあ。」
マリュー 「禁煙席は空いているかしら?」
マリー 「さっそく客が来たっス!」
竜子 「よし! ここは私が……」
マーズ 「ジェットストリームアタックー! (しゅた!)お客様、お席にご案内いたします」
マリュー 「あら♪仕事が早いわねえ。この店のウェイターさんは」
お銀 「さ、さっそく客を取られたっス……」
竜子 「ぬ、ぬう~~~! こ、こうなったら!」
ステラ 「ねえねえ♪れすとらんでご飯食べさせてくれるってほんと?」
アウル 「ああ。ネオ達が先に来ているハズだが……」
スティング「どこの席にいるんだ?」
ヒルダ 「ヘルベルト! 次のお客だよ!」
ヘルベルト「よっしゃあ! ジェットストリーム」
竜子 「おおッとォすまねえ! 足元に気をつけな!」
マーズ 「え……う、うわッ!」
どんがらがッしゃーーーーーん!(竜子が足元に投げた雑巾を踏んで、盛大にコケた)
ヒルダ 「う、ぐう……あ、あいつ!」
アウル 「お、おい。あの店員大丈夫かよ?」
マリー 「いえいえお気にせずに。ここは私達がお席にご案内申し上げるっスよ♪」
ヒルダ 「や、やるじゃないかあんた達……ここまでコケにされたのは初めてだよ!」
竜子 「そりゃあこッちのセリフさ!
あんた等が何処の何様だか知らないけどね、この春日部じゃあデカいツラはさせないぜッ!」
マーズ 「ならばここからは」
お銀 「相手の妨害、邪魔は当たり前!」
マリー 「どっちが先に潰れるかの!」
ヘルベルト「デスマッチだあーーー!」
※ ※ ※
その夜。野原家にて……
ひろし 「それで……その後どうなったんだ?」
シン 「お互いの凄まじい妨害合戦の末、店が滅茶苦茶になった挙句に6人ともその場でクビになりました」
みさえ 「でも当人たちは妙にさばさばしていたわねえ?」
ルナ 「戦いを通じて、お互いを理解しあえた番長同士って感じ?」
しん 「まあみんな仲良くなって、めでたしめでたしですな♪ それに……」
数日後……
竜子 「いくよお前達!」
お銀 「ヒルダの姐御直伝の!」
マリー 「埼玉紅さそり版、ジェットストリームアタックっす!」
しん 「師匠たちに新たな芸風も加わったみたいだし」
シン 「こりゃ正義の不良というよりほんと、お笑い芸人街道一直線って感じだよなあ……」