SEED-クレしん_15-513

Last-modified: 2009-04-30 (木) 00:20:09
 

 春日部某所にある、『愛萬ミゲル』ことミゲル・アイマンの執筆室。
 今日もここで大ヒット作を生み出すために編集者との打ち合わせがおこなわれるのだ……

 

鈴木  「先生。うちの社の漫画雑誌のひとつである古代麻雀のテコ入れとして読みきりを描いてくれませんか?」
ミゲル 「な、なに? だが俺は麻雀など全然知らないぜ!?」
鈴木  「いえ大丈夫です」
ミゲル 「なにが大丈夫だよ? 麻雀を知らずに麻雀漫画が描けるわけないだろ!」
鈴木  「いや……」
ミゲル 「………」

 
 

鈴木  「麻雀など知らなくても麻雀まんがは描けーるッ!」

 
 

ミゲル 「竹熊!?」
鈴木  「まあぶっちゃけ麻雀ぽい雰囲気だしてくれればそれでおkですから。とにかく面白いのお願いしますよ」
ミゲル 「……知らねぇぞ。どんなことになっても……」

 

 

特別読みきり・『ムダヅモなきデスティニープランだゾ』の巻'

 
 

 プラント領・アーモリーワン。
 ここでオーブ・プラントの首脳会談が開かれた。
 環境問題、軍事技術者の祖国帰還事業、貿易協定など多くの成果を結び大成功を収めた……

 

シン (そう、大成功を収めた……少なくとも俺はそう聞いている。だけど……)
ギル 「……(ゴゴゴゴゴ……)」
カガリ「……(ゴゴゴゴゴ……)」
シン (議長もアスハ代表も、なんであんなに敵意剥き出しの顔で握手してるんだろう……)

 

カガリ「シン……? お前がシン・アスカだな?」
シン 「え? あ、はい」
カガリ「お前に話がある。あとで私の部屋に来てくれ」
シン 「え、俺に…?」
カガリ「じゃあ後ほど、な」

 

シン 「………すげー、オーブの代表に名指しされちまったよレイ。やはりザフトの赤服となると違うな~~」
レイ 「……」

 

   ※   ※   ※

 

 そして一時間後。
 シンはカガリとアスランが借りてるミネルバの客室にやってきた……

 

シン 「で、お話とは……?」
カガリ「これを見てくれ」
シン 「これは………麻雀卓……?」  
カガリ「ここの軍の放出市で見つけたんだが、聞けばこれは昔からあるテーブルゲームだというじゃないか。
    私はこの手のゲームが好きでな……シン、お前が私にやり方を教えてくれないか?」
シン 「お、俺が代表に!?」
カガリ「お前はこのゲームが上手いと聞いているぞ」
シン 「そ、そりゃザフトのアカデミーに入る前に生活費稼ぎにやりまくってたけど……」

 

カガリ 「よし。ならば実戦形式で教えてくれ。少々賭けて、な」
シン  「え? でも……」
キラ  「……」
アスラン「……」
シン  (うわ……しかもなんか、面子は見たようなことがある人たちばかりだぞ)
カガリ 「オーブの女は金を賭けない勝負はやらないのさ。そうだな……(人差し指立てて)これでどうだ?」
シン  「(千点1円か……)わ、わかりました!」

 

 その頃、首都アプリリウスへ帰ろうとするデュランダル議長であったが………

 

レイ  「議長!」
議長  「どうしたんだねレイ?」
レイ  「実は……(耳元でごにょごにょ)」
議長  「……なんだと? オーブの姫とシンが?!」

 

カガリ 「ロン。本ロー。七対ドラドラ」
シン  「(茫然自失)………あ、あれ…? ホンローなんて役教えたっけ……?」
アスラン「代表、シンがまたトビました」
カガリ 「なんだまたか……ええと負け分は、と………端数はまけて1千万でいい。出せよ」
シン  「はあ!? マイナス1000で1千万円……てことは千点1万円っスか!?」
カガリ 「なんだ? ないのか?」
シン  「あるわけないでしょ! だいたいそんなの聞いて……」

 

げしッ!(キラがシンに蹴りかました)

 

キラ  「君、いい度胸してるね……? オーブの代表サマ相手に鉄砲で打つとは……
     フリーダムでフルバーストの的にしてあげようか!?」
アスラン「立てコラァ!」
シン  「ひいい!(こ、こ、殺される……!)」

 

バンッ!

 

 その時! デュランダル議長がレイとともにカガリの部屋に踏み込んだ!

 

シン  「ぎ、議長ッ!」
議長  「カガリ・ユラ・アスハ……貴様……」
カガリ 「ザフトレッドにどういう教育しているんだ、デュランダルどの?
     こいつ一円ももたずに鉄火場に来やがったぞ♪」
議長  「……シンをどうする気かね」
カガリ 「どうしようが私の勝手だろう?」

 

ギル  「……わかった。私が麻雀を打とうじゃないか、姫」
カガリ 「ふふふ……そうこなくっちゃなァ。レートは千点につきムラサメ一機だ」
ギル  「点ムラサメか。いいだろう」

 

ジャラジャラジャラ………

 

 こうして、デュランダル議長とアスハ代表の麻雀対決が始まった。他の面子はキラ・ヤマトとアスラン・ザラである……

 

レイ  「お前は嵌められたんだ、シン。議長とアスハは会談と称してこの3日間ずっと麻雀を打っていたんだ」
シン  「ま、麻雀を!? で、でも俺には初心者だって……」
レイ  「……アスハの手を見てみろ」
シン  「手って………うっ!スゲ―麻雀タコだ! さっきは全然気がつかなかった」
レイ  「アスハ代表はアフリカでゲリラしてた頃ギャンブルで生活していたらしい。麻雀は達人級という話だ。
     だがこの3日間で議長に負け続けて面子丸潰れにされた。20億は負けたとか……
     腹が収まらなかった代表は再戦を申し込んだが議長は断ったんだ。
     セカンドシリーズが強奪されてる最中だしな」
シン  「そ、そうだったのか……それで俺が議長を呼び出すダシに使われたんだな……」

 

議長  「……」
シン  (配牌で3つ抱えたドラの中が暗刻……なんて強運だ! し、しかし……)
アスラン「(ちらっ)……」
カガリ 「ポン」
キラ  「……(カガリの方をちらっと見てから捨て牌)」
カガリ 「ポン」
議長  「………」
カガリ 「ポン! M1アストレイツモッ!」

 

ギル  「ぬ……う……」
カガリ 「4000オール……おっと、割れ目のお前は8000だ議長」
レイ  「完全な一対三……シン、お前これにやられたのか?」
シン  「うう……て、手も足も出なかったんだあ………」
レイ  「拙いな……」

 

 それからは完全にカガリの独壇場だった……
 なにせ味方であるキラ、アスランに即座に差し込ませデュランダルには満足にツモらせもせずに最速で和了るのだ……

 

カガリ 「ツモ! 3000、6000!(そうだ……真のターゲットは貴様だデュランダル!)」
カガリ 「ロン! 満貫!(勝ち逃げなどさせるものかよ! たとえ麻雀でもオーブの代表は……)」
カガリ 「ツモ!(絶対不敗の存在でなくてはならないのだ!)」

 

   ※   ※   ※

 

【オーラス南四局』

 西家 デュランダル:300点
 北家 キラ:19200点
 南家 アスラン:18100点
 東家 カガリ:62400点
 

シン  「オーラスでこの点差……も、もうダメだあ」
レイ  「……ムラサメ何機分負けているんだろうな」
シン  「ぎ、議長おれ………うっ!?」

 

 デュランダルに詫びようと近づいたシンに議長の偶然配牌が見えた

 

シン  (配牌でタンピン3色のイーシャンテン……あれだけ場を荒らされてもまったく牌勢が衰えないなんて!)
議長  「……無駄だよ、シン」
シン  「え?」

 

 そう言うなりデュランダルはウーピンを切った。カガリの当たり牌ドまん中である。

 

議長  「点差を考えるんだ。
     リーチできない今この手ではせいぜいタンピン3色で8千止まりだ。直撃しても逆転できん……
     遺憾ながらこの手は放棄する」
シン  「ほ、放棄って……もうこの局で終わりなんスよ!?」
カガリ 「勝負を捨てたか議長? だが……私は攻撃の手を緩めたりはしない! 三艦同盟リーチッ」
シン  「き、きたァ! もうダメだあ~~~~!」

 

議長  (シン、誰が勝負を捨てると言ったかね? そっちがそう来るのなら……こちらも手段を選ばないだけだ!)

 

カシャァッ!

 

シン  (……え?あ、あれ……!? さっきまでタンピン手で一九字牌なんて一枚もなかったよな……?
     な、なんで一気に4枚も増えて……あッ!)

 

 シンは見た。
 議長が自分の番にヤマから牌を1枚ツモると見せかけて電光石火の早業で4枚ぶっこぬき、
 その4枚を手牌に加え、代わりに手の中に隠し持った元々の自分の牌3枚をヤマに戻すというイカサマをッ!

 

カガリ 「くッ! なぜだ? 急に和了(アガ)れなくなった!」
シン  (しかも他の面子に気付かれることなく、逆に敵に入る牌すら支配している……な、なんて高等テクだ!?)
議長  (シン。人口が少なく資源もない我がプラントが大国と渡り合うにはこれしかない。
     力に対する唯一の手段。それが……技術立国プラントなのだ!!)

 

議長  「ツモ!」
キラ  「な……」
アスラン「なにィ!?」
カガリ 「ラ……国士無双十三面(ライジング・サン)……?」
議長  「ダブル役満と割れ目で32000、64000!! 全員トビだ……まだ続けるかね? 姫」
カガリ 「う、うう………ま、まいった……」
シン  (す…すげえ……勝っちまった……!)

 

   ※   ※   ※

 

議長  「それでは私はプラントに戻る。あとは頼むぞ」
シン  「ぎ、議長ひとつお聞きしても宜しいですか……? あんな技いったいどこで……」
議長  「フッ……シン……議会という毒蛇の巣で生きていくにはね、ああいう技のひとつも必要なのだよ……
     まったく……議長も楽じゃない」

 

 

 読み切りが掲載されてから1ヵ月後……

 

鈴木 「先生! この間の読みきり、反響が凄いですよ~。麻雀のルール云々を超越した迫力に圧倒されたって。
    ほら、読者のファンレターもこんなに!」
ミゲル「ファンレター、ねえ……」
鈴木 「たとえばこれなんかどうです?
    埼玉県春日部市在住のS・Aさん『俺の扱いがあんまりすぎっス』だそうです」
ミゲル「すまねえ……」
鈴木 「同じく春日部市在住のK・YさんやA・Zさんからは
    『ちょっと先生とお話したいので住所を教えてください』と……」 
ミゲル「まさか教えたりしてないよな?」
鈴木 「え、いけませんでしたか?」
ミゲル「……」
鈴木 「……?」

 

ミゲル「す、すぐにこの仕事部屋を引き払うぞ! 報復攻撃が来る!」
鈴木 「あ、それから反響次第では続編もお願いしたいんですが」
ミゲル「そんなこと言ってる場合かよ!」
鈴木 「お願いしますよ~。もう次号予告うっちゃったんですから……
    『オーブ代表の仇を打つためにあの女帝L登場!』って」
ミゲル「うお~い! ただでさえヤバい連中怒らせたかもしれないってのに、
    さらにアレにもケンカ売ったのかよお~~~!」

 
 

 ……ミゲル・アイマンの明日はどっちだ?

 
 

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