SEED-IF_4-5氏_10

Last-modified: 2008-05-24 (土) 06:45:18

「ジュール隊のボルテールとルソーがメテオブレーカーを持って既に先行しています」
タリアがデュランダルに報告する。
メテオブレイカー――その名の通り、小惑星などを破砕する装置である。
「ああ、こちらも急ごう」
「地球軍側には何か動きはないのですか?」
アーサーが尋ねる。
「何をしているのか、まだ何も連絡は受けていないが……。だが月からでは艦を出しても間に合わないな。後は地表からミサイルで撃破を狙うしかないだろうな。だがそれでは表面を焼くばかりでさしたる成果は上げられまい。ともあれ、地球は我等にとっても母なる大地だ。その未曾有の危機に我々も出来るだけの事をせねばならん。この艦の装備ではできることもそう多くはないかもしれないが、全力で事態に当たってくれ」
「「はっ!」」
デュランダルの訓示にミネルバブリッジ一同は答える。

 
 

ナスカ級『ボルテール』――前大戦で活躍したイザーク・ジュール率いるジュール隊の旗艦である。
「こうして改めて見ると、デカいな」
実質ジュール隊副官のディアッカ・エルスマンがつぶやく。彼も前大戦で活躍したエースだ。
「当たり前だ。住んでるんだぞ俺達は、同じような場所に」
イザークが答える。口調が親しげである。そう。彼らは士官学校の同期で前大戦時は同じクルーゼ隊に所属していた仲なのである。
「それを砕けって今回の仕事が、どんだけ大事か改めて解ったって話しだよ」
そう言うとディアッカは格納庫へと向かう。
「いいか、たっぷり時間があるわけじゃない。ミネルバも来る。手際よく動けよ」
「了解!」
ディアッカはドア越しにイザークに色気のある敬礼をしてみせた。

 
 

アレックスはやるせない気持ちを抱えていた。
何かをしたかった。
カガリが、ユウナに付いているのも気に入らない。しかし。
自分では、あんな風にカガリのために反論してやれなかっただろう。自分は元ザフトだしそれに――
「あ」
栗色の髪をした少女と、すれ違った。
「ああ、確か、マユ、だったな」
「覚えてもらって光栄です! あー、大丈夫ですか? 補佐官さん」
「ああ。大丈夫だろう」
「えへへ。まいっちゃいましたよ。自分じゃ、いいとこ突いた嫌味だって思ったんですけどね。立て板に水で怒涛のように反論されちゃうんですから」
「ははは。彼は、それが仕事だからね。あの調子で政治家や官僚連中と遣りあうんだ」
「アスランさんは、どちらに?」
「ああ、ブリッジに、ちょっとね。じゃ、また!」

 

レイがパイロット待機室に入ると先客がいた。ルナマリアだ。
ルナマリアは何かを考えるかのように、眼下のモビルスーツ格納庫を見下ろしていた。
レイが入ってきた事に気づくと、何かを気にしているかのようにちらちらと見る。
「なんだ?」
レイはルナマリアに尋ねた。
「……ううん、別に」
「気にするな、俺は気にしてない」
「え?」
「お前の言った事も正しい」
その言葉を聞くと、ルナマリアは微かに微笑んだ。

 
 

「ユニウス7まで1200」
「光学映像出ます」
「ボルテールとの回線開ける?」
タリアがシンに尋ねる。
「いえ、通常回線はまだ」
その時、アレックスがブリッジに入ってきた。
「どうしたのかねアスラン、いや、アレックス君か」
デュランダルが尋ねる。
「無理を承知でお願い致します。私にもモビルスーツをお貸し下さい」
「確かに無理な話ね」
タリアは即座に断った。
「今は他国の民間人である貴方に、そんな許可が出せると思って? カナーバ前議長のせっかくの計らいを無駄にでもしたいの?」
「解っています。でも、この状況をただ見ている事など出来ません。使える機体があるならどうか」
アレックスは頭を下げる。
「気持ちは解るけど……」
「いいだろう。私が許可しよう。議長権限の特例として」
「議長! ですが議長……」
「戦闘ではないんだ、艦長。出せる機体は一機でも多い方がいい。腕が確かなのは君だって知っているだろう?」

 

その頃メテオブレイカーを持って出撃したディアッカ達は、ユニウス7に到着。次々にメテオブレイカーを設置していく。
――!
突然、メテオブレイカーを持ったザクが爆発する!
ユニウス7の岩陰から、ビームが次々に撃たれ、被害が続出する!
「なにッ!? なんだ! これは!?」
ディアッカはビームライフルで応戦を始める。

 

「ジンだと!? どういうことだ! どこの機体だ!?」
イザークの驚きの声が上がる。
メテオブレイカーの設置作業はボルテールでも観察されていた。
「アンノウンです! IFF応答なし」
「なぁに……?」
イザークの胸を不吉な予感が過ぎる。

 
 

「ジョン、なんとも情けないな。ここまで来て何もできんとは」
ナイトハルト・ミラー少尉はジョン・デイカー少尉に言った。
「しょうがないさ、ナイトハルト。月から来るとしても、間に合わん。何もできん」
「そうは言っても、ユニウス7が落ちるのを見ているだけと言うのは辛い……」

 

「ここにザフトのモビルスーツが戦闘中とはどういう事ですかね」
リーはネオに話しかける。
ガーティー・ルーである。ジブリールの命を受け、ユニウス7を観察できる位置まで急行して来たのだ。
「さぁて。もしかしたらこの騒動は、気紛れな神の手に因るものではないのかもしれないな」
「……んむ」
「スウェン達を出せ。状況を見たい。記録も録れるだけ録っておけよ」

 
 

『モビルスーツ発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す、発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ』
「粉砕作業の支援て言ったって何をすればいいのよ?」
シンのアナウンスを聞きながら、マユはメカニックのヨウランに尋ねる。
「それは……」
「ん?」
その時、マユの視界をアレックスが横切る。
「あいつも出るんだってさ。作業支援なら一機でも多い方がいいって」
「へぇ~、あの人と! そりゃ、楽しみね!」

 

「モビルスーツ発進1分前」
「到着後はジュール隊長の指示に従うよう言ってちょうだい」
タリアは指示を出す。その時、オペレーターノバートが緊張した声を上げる。
「ユニウス7で戦闘と思しき熱分布を検知。モビルスーツです!」
「発進停止。状況変化。ユニウス7にてジュール隊がアンノウンと交戦中」
「「……!」」
出撃準備中だったパイロット達は一斉にアナウンスに耳を澄ます。
「各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい」
「更にボギーワン確認。グリーン25デルタ!」
「ぇ……」
思いもよらない事にタリアは一瞬呆ける。
「あれが!?」
パイロット一同 …!
「どういう事だ!」
アレックスがシンに尋ねる。
「分かりません。しかし本艦の任務はジュール隊の支援であることに変わりなし。換装終了次第各機発進願います」
シンも困った様子で答える。
「状況が変わりましたね。戦闘ですよ?」
マユはアレックスに通信を繋ぐ。
「……」
「お止めになりますか?」
「馬鹿を言うな。なおさら出なきゃならんだろう!」
「心強いです! じゃ、よろしくお願いします!」
「ルナマリア・ホーク、セイバー、出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
「マユ・アスカ、ザク、行きます!」
ミネルバ隊のモビルスーツが次々に発進していく。そして。
「針路クリアー、発進どうぞ」
「アスラン・ザラ、出る!」
アスランは発進した。再び戦いに向かって!

 

ユニウス7――そこでは謎の集団との戦いが続いていた。
「あ、あっー!」
「隊長ぉーっ!」
メテオブレイカーを操作するモビルスーツに、被弾が相次ぐ。
「ええい! 下がれ! ひとまず下がるんだ!」
ディアッカは部下達に指示する。

 

「ゲイツのライフルを射出する! ディアッカ、メテオブレーカーを守れ! 俺も直ぐに出る!」
ボルテールで指揮を取っていたイザークは、そう伝えると格納庫へと向かった。

 

「ジンを使っているのかその一群は?」
デュランダルは軽く驚いて見せた。
「ええ。ハイマニューバ2型のようです。付近に母艦は?」
タリアが尋ねる。
「見当たりません」
「けど何故こんな……ユニウス7の軌道をずらしたのはこいつらって事ですか?」
その時ブリッジに入ってきたカガリとユウナは、その言葉にぎょっとする。
「一体どこの馬鹿が?」
「でもそういうことなら、尚更これを地球へ落とさせるわけにはいかないわ。レイ達にもそう伝えてちょうだい」
「はい」
「ああ、姫」
デュランダルが、初めて気づいたように、言った。
「ああ、どうも。アレックスの姿が見えないもので、もしやここかと思いまして」
ユウナが答える。
「おや? ご存知なかったのですか?」
「え?」
「彼は自分も作業を手伝いたいと言ってきて、今はあそこですよ」
デュランダルは、スクリーンのユニウス7を指し示す。
「ぇぇ……?」
「……よろしかったのですか? その、色々と」
絶句したカガリに代わってユウナが答える。
「ええ。議長権限で許可しました」
「そうですか。いや、彼ならきっとお役に立つでしょう」

 

「くっ……」
イザークは呻く。
「うわぁぁ!」
「また一機!……どういうやつらだよ一体! ジンでこうまで……」
ディアッカはぼやいた。
旧式機のはずのジン。それで、こうまでやられている。
「工作隊は破砕作業を進めろ! これでは奴等の思う壺だぞ!」
イザークが指示を飛ばす。
警告音が鳴る。
「またか!」
モニターは新たなアンノウンの接近を告げていた。

 
 

「冗談じゃないぞ! こんな所で戦闘なんて!」
シャムスが目の前で繰り広げられている戦闘に驚く。
「ああ、ユニウス7が動き出したのはこいつらのせいだってのかい!?」
「俺達の任務は、状況の確認と記録だ。遠くから観察すればいい」
スウェンが冷静に指示する。
「そう言ったって! 地球にあれを落とされようとしてるのにほっとけないよ!
ミューディーは、スラスターを増速させる。
「私も行くぞ!」
ミラーも後を追う。
「ちっ」
スウェンも舌打ちすると後を追う。
「いいか、戦闘が行われてるって事は、ユニウス7を落とそうとしてる奴、防ごうとしてる奴がいるって事だ! 迂闊に攻撃するな!」
「どう区別したらいいのよ!?」
「ドリルの様な物が入っている機材が確認できるな? おそらくメテオブレイカーだ。 それを操作してる奴を、守れ! 但し攻撃されたら撃ってもいい!」

 
 
 

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