SEED-IF_4-5氏_11

Last-modified: 2008-05-24 (土) 17:28:13

「こいつを守ればいいのね!」
ミューディーは眼下にメテオブレーカーを捉える。
ちょうど作業をしてるモビルスーツに刀を構えて突進していくジンが見える。
「あいつ……! もしかして守ってる方だったらごめんねぇ。あはは!」

 

「うわー!」
メテオブレイカーの作業をしていたザクに、ジンが斬りかかる。
死の覚悟をしたザクのパイロットは目を瞑った。
……。何も、起こらない?
目を開けると、襲ってきたジンが見知らぬモビルスーツに切り裂かれていた。
「た、助かった? どこの機体だ? ザフトじゃないぞ?」
「無駄口叩くな! 守ってくれるなら味方だろう! 作業を進めろ!」

 

「ルナ! あいつら! 昨日の!」
スウェン達を確認したマユは叫ぶ。
「あいつら、今日こそ!」
「落ち着け! 目的は戦闘じゃないぞ!」
アスランが冷静に指摘する。
「でも……! ……!? ……メテオブレーカーを……守ってる? あいつら?」
「昨日戦ったとしても、今はとりあえず味方らしい! いいな! 攻撃されるまで攻撃するなよ!」
「わかってます!」

 

「ユニウス7、更に降下角プラス1.5、加速4%」
「ボギーワンに搭載されていたモビルスーツらしき物を3機確認しました!」
「ええ?」
「これでは破砕作業など出来ません! 艦長! 本艦もボギーワンを!」
「落ち着きなさい、アーサー。そのモビルスーツの行動はどうか?」
「……メテオブレイカーを守っている模様。ルナマリア達とは交戦状態に入りません」
「そう……。議長、現時点でボギーワンをどう判断されますか?」
「ん?」
「海賊と? それとも地球軍と?」
「んー……。難しいな。私は地球軍とはしたくなかったのだが」
「どんな火種になるか解りませんものね」
「この場は、このままあやふやな存在にしておくのがいいかも知れんな。ボギーワンとコンタクトは取れるか?」
「国際救難チャンネルを使えば」
「ならばそれで呼びかけてくれ。我々はユニウス7落下阻止のための破砕作業を行っているのだと。無駄な戦闘が起こるのは、避けたい」

 
 

『私はこれから皆様に重大な事実をお伝えせねばなりません』
その頃、世界中で各国政府が国民に向けてユニウス7の落下してくる事を伝えていた。
そしてオーブでも……。
『既に噂されているとおり、ユニウス7がその軌道を外れ現在地球へ向けて接近中です。我がオーブ政府も直ちに各国政府と連携を取りあい対策を協議して参りましたが、時間も乏しく誠に遺憾ながら未だ有効な対応策を見出せないままでおります……』

 

「キラ……」
オーブのアカツキ島の建物で、薄赤い髪の女性が、椅子に座っている男性に声をかけた。
建物の中からはユニウス7落下を伝える緊急会見の模様が流されている。
「そろそろ中に入りませんと身体に毒ですわ」
キラと呼ばれた男性は、身じろぎもしなかった。
「……夕日が……」
「え?」
「夕日が綺麗なんだ……フレイにも、見せたいなぁ……今どこにいるのかな?」
「ええ。ええ、そうね。でも、今は中に入りましょう」
悲しそうに女性が手を握り、引っ張ると、男性は抵抗無く立ち上がり、そのまま素直に中へと連れられていった。
彼らはプラントの歌姫と呼ばれたラクス・クラインと前大戦を終結させた英雄と言われたキラ・ヤマト。

 
 

2機のジンがミラーのダガーLに斬りかかる。
「くっ」
ミラーは防御に徹し避け続ける。手強いと見てかゲイツが一機やってくる。
ゲイツから放たれるビームライフルをも、ミラーはシールドを使い防ぎ、決定的なダメージは受けない。だが……もう一機ジンが来た時、さすがにミラーは叫ぶ。
「もう限界だー! 救援を!」
「――よく保った! 鉄壁ミラーの名は伊達じゃないわね」
ミューディーが飛んできて。スティレット投擲噴進対装甲貫入弾を3基一度に引き抜き投げつける!
スウェンも来援し、ゲイツに当たる。両手に持ったビームライフルショーティーを連射し、ゲイツを防戦一方に追い込んでいく。
「お待たせ!」
ジョンが黒い実体剣を抜きジンと戦い始める。
また一つ、メテオブレイカーが地中へと掘り進み始める。

 

「強いな、あいつら」
「ああ、何もんだ?」
「急げ! モタモタしてると割れても間に合わんぞ!」
「固定よし!」
「よし!」
メテオブレイカーが、ドリルを使って地中奥深くまで貫入し、爆発する。
いくつもの爆発が地中で起こり、ユニウス7が、大きく二つに割れる。
「グゥレイト!! やったぜ!」
その様子を見たディアッカは歓声を上げた。

 

「だがまだまだだ! もっと細かく砕かないと!」
アスランは叫ぶ。
隕石の直径が直径100m以下にならないと、地球上では何らかの被害が出る、と何かで読んだ気がする。
「アスラン!?」
ディアッカが驚きの声を上げる。
「貴様ぁ! こんなところで何をやっている!」
イザークも叫ぶ。
「そんな事はどうでもいい! 今は作業を急ぐんだ!」
「あ、ああ!」
「わかっている!」
「相変わらずだなイザーク」
懐かしそうにアスランはイザークに声をかける。実は、アスランはイザーク、ディアッカと士官学校の同期であった。前大戦時、イルーゼ隊にも同時に配属されている。
「貴様もだ!」
「……やれやれ」
ディアッカも懐かしそうにぼやいた。

 
 

「シャムス、ミューディー、ミラー、デイカー。撤退信号だ」
戦場に、撤退信号が上がった。
「ええ? もう? たった二つに割れただけだよ? もっと砕かなきゃ!」
「ミューディー。限界高度だ。これ以上は、俺達も一緒に落ちてしまう」
「そっか……」
……
スウェン達はガーティー・ルーへと帰還の道を辿る。
「……なぁ、スウェン」
「なんだ?」
「俺達、出来るだけの事はやったんだよな?」
シャムスがどこか沈みがちな声で言った。
「やっぱり貴様は友達だよ」
スウェンは珍しい事に喉をひくつかせ始めた。マイクの奥でくぐもった笑い声が響く。
それは、シャムス、ミューディー、ミラー、ジョンにも伝染した。
5人はガーティー・ルーに戻るまで笑い続けた。
オペレーターが何事かと尋ねてきたが、彼らはまだ笑っていた。
彼らの笑いを理解できる者はひどく限られているのだった。それが証拠に、自分でもエグザスを飛ばすネオ・ロアノークは何も言って来ない。
格納庫に収容された時もまだ、彼らは笑い続けていた……。

 
 

「ボーギーワンの不明モビルスーツ撤退しました」
「とりあえずこの場はボギーワンと事を起こさずに終わったか……。撤退か、どう言う事かな、これは」
デュランダルがタリアに尋ねる。
「もしかしたら、高度の問題かもしれません」
「高度?」
「そうです。ユニウス7共にこのまま降下していけば、やがて艦も地球の引力から逃れられなくなります。我々も命を選ばねばなりません。助けられる者と、助けられない者」
「そうか……」
「こんな状況下に申し訳ありませんが、議長方はボルテールにお移りいただけますか?」
「え?」
「ミネルバはこれより大気圏に突入し、限界までの艦主砲による対象の破砕を行いたいと思います」
「ええッ! か、艦長……それは……」
アーサーが驚く。
「どこまで出来るかは分かりませんが。でも出来るだけの力を持っているのに、やらずに見ているだけなど後味悪いですわ」
「タリアしかし……」
「私はこれでも運の強い女です。お任せ下さい」
「わかった。すまないタリア。ありがとう」
「いえ。議長もお急ぎ下さい。ボルテールにデュランダル議長の移乗を通達。モビルスーツに帰還信号」
「では代表達も」
デュランダルは立ち上がるとカガリに手を差し伸べる。
「私はここに残る」
カガリは拒絶した。
「「え?」」
「アスランはまだ戻らない!」
カガリは悲鳴のような声を上げた。
「それに、ミネルバがそこまでしてくれるというのなら、私も一緒に!」
「しかし、為政者の方にはまだ他にお仕事が……」
タリアが困ったような声で言う。
「代表がそうお望みでしたらお止めはしませんよ」
「はぁ……」
「ユウナ、お前だけでも移れ」
カガリはユウナに言った。
「馬鹿にするな。一緒に死ぬ位の事はできる」
ユウナは言下に拒否した。そして冗談めかして言った。
「安心して下さい、艦長。僕達がいなくなった所でオーブは潰れる様な国じゃありません」

 

「ちっ! 限界高度か!」
「ミネルバが艦主砲を撃ちながら、共に降下する!?」
モニターに入ってきた情報にイザークが驚きの声を上げる。

 

『総員に告ぐ。本艦はモビルスーツ収容後、大気圏に突入しつつ艦主砲による破片破砕作業を行う』
「え?」
思わぬ事に帰還してきたマユは驚く。
『各員マニュアルを参照。迅速なる行動を期待する』

 

「ん?」
ルナマリアが帰還しようとした時、支えを失ったメテオブレイカーの骨組みの代わりにそれを支えるアスランのザクの姿が目に入った。
「く……」
「何をやってるんです! 帰還命令が出たでしょう。通信も入ったはずよ!」
「ああ、わかってる。君は早く戻れ」
「一緒に吹っ飛ばされますよ? いいんですか?」
「ミネルバの艦主砲と言っても外からの攻撃では確実とは言えない。これだけでも……」
「……」
「お前は早く戻れ」
「……貴方みたいな人がなんでオーブになんか……」
「ん?」
その時、ジンがアスランに襲い掛かって来た!
『うおぉぉ!』
『これ以上はやらせん! やらせはせんぞぉ!』
「こいつらまだ!」
「えぇぃ! ああ!」
『我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!』
「娘……?」
思わぬ言葉にアスラン達は驚く。
「なにを!」
『此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか! 貴様等は!』
「……!」
『軟弱なクラインの後継者どもに騙されて、ザフトは変わってしまった! 何故気付かぬかっ!』
「く……」
『我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと!』
「はぁ?」
思わぬ所で父の名前を聞き、アスランは一瞬呆ける。
「く……は……」
その隙を突かれ、アスランのザクは右腕を斬られる。
「アスラン!」
ルナマリアは救援に向かう。だが、一機の片手のジンが立ちふさがる。
「邪魔よ!」
ルナマリアはジンの残った腕も斬りおとす。だが、ジンのパイロットはルナマリアが思ってもいなかった行動に出た。
『たあぁー!』
ジンのパイロットは残った両足で、セイバーに組み付くと自爆した――!
「きゃあぁぁ!」
衝撃で、ルナマリアの頭が揺さぶられる。

 

「降下シークエンス、フェイズ2」
「セイバーと彼のザクは?」
「駄目です! 位置特定できません!」
「アスラン!」

 

ユニウス7は、大気の圧縮熱で表面が赤熱し始める――!

 
 
 

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