SEED-IF_4-5氏_23

Last-modified: 2008-09-30 (火) 22:22:51

「あ」
アスランが、モビルスーツから降りて来る。
「ふぅ」
アスランはヘルメットを脱いだ。
「認識番号285002、特務隊フェイス所属アスラン・ザラ。乗艦許可を」
「フェイス……」
その言葉に周囲がざわつく。そして。ルナマリア達はアスランに敬礼をする。
アスランも答礼する。
「ふ。艦長は艦橋ですか?」
「ああ、はい。だと思います」
「私が御案……」
マユが声をかける。
「アスランさーん! お待ちしてましたー♪ ご案内しまーす♪」
弾んだ声がアスランにかけられる。
向こうからやって来たシンだ。。
「ぁ……」
マユは悔しそうにシンをちょっと睨む。
「ぁ…ありがとう」
「ザフトに戻ったんですか?」
ルナマリアはつっけんどんに尋ねる。
「そう言う事に、なるね」
「何でです?」
「ふ……」
アスランは微笑んで、立ち去った。

 

「よくやったな、ルナマリア」
レイがルナマリアに話しかける。
「ううん。アスランが来てくれなきゃ、あのモビルスーツの数だったもん。倒せなかったかもしれない」
「なんにせよお前が艦を守った。生きていると言う事はそれだけで価値がある。明日があると言う事だからだ」
そう言うとレイは去って行った。
「ふふ」
ルナマリアは暖かい物が胸に満ちるのを感じた。

 

「でもでも、なんで急に復隊されたんですか?」
シンはアスランに聞いた。
「え?」
「な~んて、とっても聞いてみたいんですけど、いいですか?」
わくわくした顔でシンはアスランを見上げる。
「……復隊したというか、まあうん…ちょっとプラントに行って議長にお会いして……そんな感じだ。そうだ。ミネルバはなんでオーブをこんなに早く出航したんだ?」
「んー。カーペンタリアとは連絡がつかなかったんですけどね、艦長情報だと、オーブから、地球軍が来るから早く逃げろってこっそり言われたそうです。実際、オーブを出たらすぐ戦闘になったし」
「そうか……」
「でも嬉しいなー!」
「え?」
「アスランさんの話題、結構出てたんですよ? お姉ちゃんなんか、大喜びですよ、きっと!」
「ああ?」
「マユ・アスカ。覚えて、ないですか?」
「ぇ……と」
「オーブの代表に嫌味言ってたって」
「ああ!」
「お姉ちゃん心配してたんですよー?」
シンは上目遣いにアスランを見る。
「ん? 何がだ?」
「アスランさんに嫌われちゃったんじゃないかって」
「ははは。嫌わないよ」
「よかった! ねぇ。お姉ちゃんの事どう思います? 弟の僕から見てもかわいいなって思うんだけど」
「あ……ああ、かわいいな」
「ほんと? よかったらお姉ちゃんと結婚しません? アスランさんがお兄ちゃんになったら、僕、嬉しいな」
「ぇ? ……えぇ?」
アスランがうろたえている間に艦長室に着いた。
「はーい、艦長室、到着でーす。じゃあ、またね、アスランさん!」
「あ、ああ。ふぅ……」
アスランは溜息をついた。

 

「はぁ……」
アスランがデュランダルからの預かった物を渡されて、タリアは溜息をついた。
「貴方をフェイスに戻し、最新鋭の機体を与えてこの艦に寄こし……」
「ぁ……」
「私までフェイスに? 一体何を考えてるのかしらねえ。議長は。それに貴方も」
「申し訳ありません」
アスランは頭を下げる。
「別に謝る事じゃないけど。それで? この命令内容は、貴方知ってる?」
「いえ、自分は聞かされておりません」
「そう。なかなか面白い内容よ」
タリアがパソコンをいじるとスクリーンに地図が映る。
「ん?」
「ミネルバは出撃可能になり次第、ジブラルタルへ向かえ。現在スエズ攻略を行っている駐留軍を支援せよ」
「スエズの駐留軍支援ですか!? 我々が!」
アーサーは驚いた。
「ユーラシア西側の紛争もあって今一番ゴタゴタしてる所よ。確かに、スエズの地球軍拠点はジブラルタルにとっては問題だけど。何も私達がここから行かされるようなものでもないと思うわね」
「ですよね。ミネルバは地上艦じゃないですし。一体また何で?」
「ユーラシア西側の紛争というのは? 済みません。まだいろいろと解っておりません」
アスランが尋ねる。
「え……ああ」
「常に大西洋連邦に同調し、と言うか、言いなりにされている感のあるユーラシアから、一部の地域が分離独立を叫んで揉めだしたのよ。つい最近の事よ。知らなくても無理ないわ」
「……」
アスランは考え込んだ。
「開戦の頃からですよね?」
「ええ」
「確かにずっと火種はありましたが」
「開戦で一気に火がついたのね。徴兵されたり制限されたり。そんな事はもうごめんだと言うのが、抵抗してる地域の住民の言い分よ。それを地球軍側は力で制圧しようとし、かなり酷い事になってるみたいね。そこへ行けと言う事でしょ? つまりは」
「あっ……」
「……」
「我々の戦いは、あくまでも積極的自衛権の行使である。プラントに領土的野心はない。そう言ってる以上、下手に介入は出来ないでしょうけど。行かなくてはならないのはそう言う場所よ。しかも、フェイスである私達二人が。覚えておいてね」
「はっ!」
「はい」
アスランとアーサー、二人が出て行った後、封筒を開いた。今回タリアに言付けられていた物で、個人的な物だ。
『やぁ、タリア。相変わらず苦労をかけてすまない。前世の私ならきっと父親代わりなど迷惑に感じたろうが、最近は面白い。ジェイクはやっと平気で私に小遣いをねだるようになってきた……』
そこには、何枚かのレターと、デュランダルに預けられているタリアの息子――ジェイクが写っていた。タリアは微笑みながらそれを見ていく。そして、一枚を選び出すと、デスクに飾られている古い写真と換えた。

 

「ええ!マジで!?」
ヴィーノが驚く。
「うん」
シンは頷く。
「ほんとのほんとに艦長もフェイスになったの?」
「うん。いずれ正式に通達するけど、そうだって副長が。なんか凄い嬉しそうだったよ」
「えぇぇ!」
「副長関係ないじゃん」
ヨウランが突っ込む。
「え?そうなの? 副長は違うの? え? じゃあ俺達は?」
「関係ねえよ。あのな、フェイスってのはな、個人が任命されるもんなの」
「え?」
「何で知らないんだよヴィーノ。お前はもう……」
「はぁ……」
「個人的に戦績著しく、かつ、人格的に資格有りって評議会や議長に認められた奴だけが成れんの。その権限は、その辺の指揮官クラスより上で、現場レベルでなら、作戦の立案、実行まで命令できんだぜ?」
「へぇ~」
「評議会直属のザフトのトップエリートだぜ? 何でお前が関係あんの?」
「ヨウランだってそうじゃん」
「そうだよ」
「トップエリート……お義兄さん。ふふふ」
シンは含み笑いをした。

 
 

アキダリア――
「しかし、地球連合が便宜を図ってくれたおかげでパナマ運河が使えてよかったですね?」
ナーエがアグニスに話しかける
「ああ」
この時代、パナマ運河は20個もの核爆弾を使うと言うまったくの力技で全幅100mの艦船すら通過できるほどに拡張されていた。
「しかし、後ろの二人、黙ってばっかりですけど、どうしたんです?」
「別に……特に話す事もないし」
マホはぶっきらぼうに言う。
「わ、私もです」
アイザックも言う。
「はぁ……とりあえず一緒に旅する事になったんだからもうちょっと打ち解けてもらわないと……イサワ少尉」
「マホでいいですよ?」
「ではマホさん。あなたはエイプリルフール・クライシスで家族を失ったそうですが、もしかして復讐のために地球軍に?」
「いえ、学資稼ぎです。両親いなくなっちゃったから。私、将来医者になりたいんですよね」
「前向きですね?」
「そうでもないです。でも、いつまでも過去見たってしょうがないでしょう?」
「プラントの人達を憎んでる?」
「憎んでるって言うか……嫌いなんですよね。何かと言えば血のバレンタイン、血のバレンタイン、謝罪しろ賠償しろ償(まど)うてください償うてください、まるでツェねずみみたい」
「ツェねずみ?」
「ちょ……」
アイザックが口を挟んだ。
「謝罪しろとか賠償しろなんて言ってませんよ!」
「そうね。でも、なにかあれば血のバレンタイン持ち出すのは間違ってないわよね」
「でも、ナチュラルが先に核を撃ってきたのは違いないでしょう?」
「宣戦布告はとっくにされてたけど? それに、ナチュラル? 地球軍じゃなくて、ナチュラル? そうやって勝手に話を広げて無関係の人達まで巻き込むのが嫌いなのよ! その調子で対戦国も中立国もお構い無しに無差別にニュートロンジャマーばら撒いたんでしょう? 敵が増えるのも当たり前じゃない。迫害? 自分で敵を作ってるんでしょうが。地球軍にもコーディネーターの人達がいるけど怒ってたわよ? プラントは地上のコーディネーターの事を考えてなんかないくせに都合のいい時だけ同胞扱いするって」
「うう……」
「血のバレンタイン、血のバレンタイン言われれば、こっちもエイプリルフール・クライシス持ち出して反撃したくもなりますよ。とにかくあんた達って加害者でもあるのに被害者意識ばっかりでそのくせ権利意識だけ強いのよね。そんな所が嫌い。弾圧されてた? ――今月のプラントではジョンゴル鍋が大人気――はっ! プラントのような贅沢な暮らしができるアースノイドの人口比ってどれくらいだかご存知?」
「……まぁまぁ」
ナーエが間に入る。
「同じ船なんだから仲良くしましょうよ、ね?」
ナーエは頼むから早くオーブに着いてくれ、と思った。

 
 

「調子はどうだ?」
ネオはスウェン達に聞いた。
「ほとんど違和感ありません」
スウェンが答えた。乗機はストライクノワールだ。もっともトランスフェイズ装甲になり、外側装甲にラミネート装甲を張り巡らすと言う贅沢な改修がされている。
「こちらもです」
ハラダが答える。彼の乗機はやはり同様の改修を施された105スローターダガーだ。
「よくやってくれたな」
ネオが技術官に礼を言う。
「これだけの贅沢な改修は、さすがに全機に、と言う訳には行きません。この間ジブリール氏が来られまして」
「ん?」
「戦時であるから、量産性、整備のし易さを優先せよと言われまして。この様な改修はエース機に限定されるでしょう。現状のダガーL、105ダガーはラミネート対ビームシールドをとりあえず配る位になるでしょうか。後は、おいおい……」
「それでもいいさ。実験ではカラミティのスキュラを防げるんだろう?」
「はい! レールガンの速射性を維持する冷却装置の技術を取り入れまして。オーブからデータが届いていたフリーダムの物よりも良い物が出来ました」
「ならいいさ。とりあえずの対策としては充分だ」
「大佐には感謝していますよ」
「ん?」
「この間、ジブリール様は、今は戦時であるから、信頼性を重視しろとも言われまして。おかげで今はダガーシリーズと後期GAT-X制式機シリーズが大増産中です。正直、ウィンダムはまだまだ満足のいく機体ではありませんでしたからね。生産中止になってほっとしてます。若い連中の中には新技術を試したくてがっかりしている者もおりますが。はは」
「はは。確かに俺はあれこれ言ったが、ご本人も考えてはいたんだろう。聡いお人だからな」
「ただ、グラスパー系はダガーの数に準じた数に抑えられるそうです。その代わりに新型のモビルアーマーが良いのが出来たので、生産力はそちらに……」
「ほう、楽しみだなぁ。さっそく見せてもらおうか?」
「はっ、こちらに……」

 
 

「はぁー。やっとカーペンタリアに着いたわ」
「オーブのあれから襲撃無くてよかったね」
「カーペンタリア封鎖してた地球軍はザフトの降下作戦で追い散らされたってさ」
「あ、そうだ、アスランさん、ひまだったら一緒に上陸しません?」
マユはアスランに誘いをかける。
「あ……ぁぁ……いや、ちょっと用事があるから」
そう言うとアスランは休憩室から出て行った。
「あーあ、振られちゃったね」
「ふん。あきらめないわよ」
「あたしと一緒に上陸する?」
ルナマリアはマユを誘う。
「んー。中にいてチャンス狙うわ」
「じゃ、レイ」
「なんだ? ルナマリア」
「あたしと一緒に上陸ね」
「いや、俺は……」
「だーめ! 上陸! あんたオーブでも降りなかったでしょ?」
「わかった」
「よし!」

 
 
 

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