SEED-IF_94 ◆4x1/ER9Heo氏_第05話

Last-modified: 2008-01-22 (火) 14:05:12

GUNDAM SEED -褐色の破壊者- 第5話 -貫く意志-

 

あれからしばらくして(例の少女を拾ってからって事だ)
一通りの問答や、騒動があって、彼女はこのアークエンジェルで預かる事になった。
まぁ、この艦もいずれ連合の基地に赴く事になるわけで、それまで預かるって事だ。
その間この艦の中である程度の行動が認められた。
これは彼女が信用を得た……というよりは、無害と判断されたといったほうが正しいか。

 

ラウンジで休んでいると、キラとサイ、それにフレイが話し掛けて来た。
「ディアッカのその軍服も結構見慣れてきたね」
「それって、素直に喜んでいい事じゃねぇよな」

 

「そう言うなよ。自分で言ってたじゃないか、出来る事をするってさ」
「お前はブリッジに座ってるだけだろが」
サイを捕まえてヘッドロックをかける。
「い、痛い。痛いって。ギブギブ」
そうやってじゃれていると、フレイが口を開いた。
「ところでさ、みんなはあの脱走娘のことどう思ってるの?」
ああ、あの子か。




というか、他の奴らからは死角になってるみたいだが、影からあの子(ミーアと言ったっけか)が、
物凄い緊張した顔で聞き耳立ててるんだが。
面白いので黙っていよう。

 

キラが少し考えて口を開く。
「ボクはああいう子、結構好きだよ」
「お!キラはああいうのが好みなのか?」
向こうに視線を移す。天国に上っていきそうな至福の笑顔だった。
「うん。ああいうアホかわいい子って何だか放っておけないんだよね」
物陰で、アホと言う時に潰されて、真っ白に燃え尽きている少女の事は黙っておこう。
「でも、それって私がそのアホな子に負けてるって事よね。ちょっとショックだわ」
「何だよ。フレイはサイじゃ不満なのか?」
アホアホ繰り返されるたびにいちいち物陰でリアクションする辺り、律儀な子だ。
「それはサイと付き合ってるとかとは別の問題なのよ。わかる?」
ああ、それは何となく分かる気がするな。

 

ミーアが、キラ達に背後から近づいている。
どうやら脅かそうというハラらしいが、俺のほうからはミーアの背後から
さらにミリィが近づいて来ているのが丸見えだ。

 

「……わ
「あら、ミーアじゃない。どうしたの?」
    …あひゃぁい!?」

 

アホかわいいというより、アホかわいそうな子に見えてきた。

 

その時、艦内に警報が響く。
緊急ではないが、戦闘体制だ。
キラと俺はドッグへ。他のみんなはブリッジへ。そしてミーアは与えられた個室に向かう。
さっきまでの日常は一瞬にして戦場となった。

 

結局、先の警報はサフト側からの交渉だった。
要はあのミーアを引き渡せばそれで良し。引き渡さない場合は手段を問わないというもの。
まぁ、良くある口実ってのはこういうやつだね。
で、案の定交渉は決裂。
例の奪われたガンダム3機プラス隊長の4機が現れたってワケだ。こっちは1機少ないんだがな。
隊長機はオッサンが引き受けてくれたんで、俺とキラで残り3機を相手にしてる状態が今。

 

戦闘開始から少したった時だった。
オレの注意がちょっと逸れた瞬間、青と白の機体が急接近してきたかと思うと、
俺のバスターに取り付き、接触回線を開いてきた。
『おい!これに乗っているんだろう!ディアッカ!』
接触回線のせいで多少くぐもっているが、間違いなくイザークの声だ。
「おいおい。オレ達は敵同士なんだぜ?」
『ええい!そんな事は些事だ。お前は何故そちらの味方をする!お前は本来こちら側の人間だろう!』
まぁ、その辺を突かれると痛いんだけどな。
「なんだろうな。運命のいたずらってヤツかね」
『そんな一言で片付けるな。昔はいつも……あんなに一緒だっただろうが!』
「ああ。でも夕暮れを過ぎたからもう違う色だな」
今のうちに謝っておく。もちろんイザークにではない。
『今ならまだ、オレやアスラン。それにクルーゼ隊長の力で誤魔化せる』
「でもなぁ……オレにもオレでこっちでやるべき事とか事情とかがあってな」
ふと……ミリィの顔が頭に浮かんだ。
『事情だと!そんな事……』
「なぁ、イザーク」
『なんだ?』
「やっぱり、友情よりも愛情だよな」
『な……なんだ……と?』
その時、バスターを押さえつけていた機体がわずかに後ろに退いた。
その隙を見逃さず、蹴り上げて距離を取ると
「じゃーな。出来れば、あまり戦場では会いたくないもんだな」
オープン回線で叫ぶとミサイルをばら撒き、対装甲散弾で誘爆させて煙幕を張り、一気に戦闘空域を離脱した。

 
 

(その後ヴェサリウスにて)

 

帰還ハッチに鮮やかな赤の機体に支えられた青と白の機体が飛び込んできた。
双方とも機体自体にそれほど大きな損傷はない。

 

すぐに二つの機体からそれぞれパイロットが降りてくる。
「うぐ……い、イタイ。イタイぞ……胸が……心が……」
左胸の辺りを押さえて呻く銀髪の少年。
「どうしたんだ、イザーク。本当に大丈夫なのか?」
そう言って赤い機体から降りてきた少年が駆け寄る。

 

だが、イザークと呼ばれた少年は、駆け寄ってきたもう一人の少年を突き放した。
「ち、近寄るな!いいか、アスラン!プラントの歌姫を婚約者に持つ貴様には、この痛みは理解出来まいっ!」
その言葉の内容というよりは、言葉の勢いに押された形でアスランはたじろぐ。

 

「こ、この胸の痛み……そして、俺の知らぬ間に拔け駆けした恨み……忘れんぞ」

 

イザークは胸の辺りを押さえたまま、搾り出すように呻いた。

 
 
 

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