GUNDAM SEED -褐色の破壊者- 第4話 -白輝の光芒-
バスターのコクピットはそれ程広いわけではない。
もちろん、バスターとあとストライクのコクピットしか知らないので、
完全に個人的な感想になるわけだが。
『進路クリア。バスターどうぞ』
スピーカーから流れてくるミリィの声。
始めはともかく、最近はある程度慣れて来た。
「了解。ディアッカ・エルスマン。バスター行くぜ」
リニア滑空式のカタパルトで加速された機体が宇宙空間に飛び出す。
先に出たキラのストライクと合流。さらに後からフラガのおっさんのメビウス・ゼロが来て合流する。
今回の仕事は戦闘じゃない。
アークエンジェルが多数の避難民を収容しちまったせいで物資不足の不安が出てきたんで、
この辺の廃コロニーに埋蔵されていると思われる資源を使わせてもらおうってわけだ。
『おい、聞こえてるか。坊主』
「なんだよ。おっさん」
『オッサンじゃねぇ!それよりも一度でいいからよ。お前この機体に乗ってみろって』
「だから、俺はこのバスターが気に入ってるんですって。
それにホントは自分がこれに乗りたいだけなんじゃないんですか?」
『別に俺はそういう意味で言ってんじゃねぇんだけどな。絶対、お前にゃガンバレルの適性があると……』
「はいはい」
おっさんの相手も大変だぜ。
『今、おっさんて言っただろ』
「い、いい言ってないですよ!?」
心の中で思っただけなのに、なんてカンの良さだ。
『ディアッカ!救難信号だ』
先行しているキラから通信が入った。
だが、俺のレーダーには別のものが映っていた。
「キラ。ザフトのMSがいるぞ」
2…3……とりあえず、あの奪われた3機じゃないようだ。
ヘリオポリスを出て以降、何度か交戦したが今映ってる光点の動きはあいつらのそれじゃない。
『……うん。こっちでも確認したよ』
『さて、厄介なモン引いちまったな』
「とりあえず、今まで回収した物資で当面は大丈夫だと思う。それをオッサンにアークエンジェルまで運んでもらって……」
『オッサンっていうな!』
『じゃあ、ボクがジンを……』
「いや。キラは救難信号の先を追ってくれ。たぶん向こうもあの信号はキャッチしてるはずだ」
自分でも、何となく感じる。
こういった極限状況に追い込まれれば追い込まれるほど、
そして、その場に自分が助けられるかもしれない弱者がいるときほど、
緊張感が増し、逆に頭の中が静かになっていく。
「……だから、長距離砲撃の出来る俺が狙う」
『ディアッカ……もしかしてストライクを囮に使うつもり?』
「言葉を選ばなけりゃそうなるな」
そういいながら、両腰の砲身を接続。超高インパルス長射程狙撃ライフルを構える。
「大丈夫だって。コイツの扱いもそこそこ慣れた」
『そこそこって……』
「言葉のあやだ。友達の命が懸かってんだ。外すかよ」
『……そうだね。わかった』
コンテナを曳いたメビウス・ゼロが離れていく。
それに一機のジンが気付き、追いかけていく。
救難信号を出している脱出ポッドにストライクが近づいていく。
それに気付き、ライフルを構える二機のジン。
漆黒に近い暗い宇宙空間を立て続けに二条、やや遅れて一条の光が走る。
『こちらストライク。無事ポッドを回収』
『こっちも問題ねぇ』
ふぅ、と一息つく。
「おうよ。さ、俺らも引き上げるぞ。キラ」
アークエンジェルの整備ドッグ。
脱出ポッドはそれ程大きくない。良くて一人、頑張って二人が精一杯だろう。
注意深くハッチが開けられる。
つんのめるように、そして転がるように飛び出してきたピンク色。
「うわわわっ!!わ、私はもう戻りませんからっ!」
突然の出来事に、その場にいる全ての人たちが凍りつく。
「あーと……ここは一応連合の船って事になるんだけど……お嬢ちゃんはザフトの人って事でいいのか?」
何となく沈黙が続き、結局俺が声をかけた。
なんか、口をパクパクさせながら、キョロキョロして何度か深呼吸した後、
「あ……ああっ! え、えっと…わ、私の名前はミーア・キャンベりゅぢぇしゅ」
思いっきり噛んだ。