SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第23話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:52:43

第23話「動き出したクライマックス・後編」

 

「いいか、ニワトリ野郎!ずいぶん好き勝手やってくれやがったが、もうやらせねえ!ここからは徹底的にクライマックスだ!!いくぜいくぜいくぜぇぇぇぇ!!!!」

 

新西暦の世界に参上した、オリジナルとはまた異なるペルゼイン・リヒカイトという魔人は、オリジナルのペルゼインが細身の日本刀を使うのとは異なり、巨大な剣ペルゼインスォードを手に構えると、
ペルゼインの登場に驚き少し距離を取っていたインフィニットジャスティスへと向かって斬りかかって行く。
振り下ろされた刃をインフィニットジャスティスは連結させたビームサーベルで受け止めるが、機体の地力の違いからであろうか、ビームサーベルは徐々にインフィニットジャスティスへと押し込まれていく。
剣を押し込む力を利用してバックステップをしてインフィニットジャスティスはペルゼインと距離を取ろうとしたが、それを逃がすまいと迫るペルゼインの刃が下から上へ振り抜かれてファトゥムに遮られる。

 

「めんどくせえバリアだな、この野郎!」

 

それに対して斬撃を遮られたペルゼインは、第2、第3の斬撃を繰り出してファトゥムの防御壁を斬り進めていく。
だが、インフィニットジャスティスもファトゥムの脇から飛び出してきてサーベルで斬りかかってきた。
勢いで押し込まれるものの、サーベルを剣の鍔の部分でペルゼインは受け止めると、おもむろに片手でインフィニットジャスティスの頭部、ちょうと鶏冠になっている部分を鷲掴みにした。

 

「何!?お前まさか!」
「しゃらくせえことしてんじゃねえ!!」
「ぐっ!?」

 

そのままペルゼインは自らの頭部をインフィニットジャスティスの顔面に向けて思いっきり叩きつけると、その衝撃に一瞬怯んだアスランの隙をついて連続して頭突きを見舞う。
さらに鶏冠から手を離してインフィニットジャスティスの顔面を殴りつけると、続いてそのボディを思いっきり蹴り上げた。アスランも負けじと態勢を整えなおして反撃にでようとするが、
その前にインフィニットジャスティスの首にペルゼインの腕が巻きついていた。

 

「悪いがここで暴れるわけにはいかねえからな、ちょっと付き合ってもらうぜ!」

 

インフィニットジャスティスの首をロックしたペルゼインはそのまま空中へと飛び上がり、インフィニットジャスティスを連れたまま、戦場となっている市街地から遠ざかっていった。
他方、突如として現れた謎の機体に助けられた形となっていたシンは、その様子を呆気に取られながら眺めていた。この世界に来て金色の大怪獣や、美少女型ロボットと色々な機体を見てきたが、
また新たな変り種の機体が出現したことで、再びシンのキャパシティがオーバーしようとしていたのである。

 

「シン、無事か!?」
「あ、ああ。大丈夫だ、ブリット。でも何だよ、あの赤い奴は…」
「あの姿に化ける前に一瞬見せた姿は俺達がこの前交戦した生物みたいなのを引き連れてた奴に似ていたが…あんな姿の機体を見たのは俺も初めてだ」
「そうか…まあいい、俺はアスランを追う」
「いや、待て。まだ敵は残ってる。指揮官機がいなくなっても撤退しない以上、ほっとけないだろ」
「……そうだな。それにあいつの狙いが俺やマサキなら戻ってくるだろうしな」

 

ブリットに諌められてインフィニットジャスティスの追撃を断念したシンの心には決着をつけられなかったこと、そしてまたしてもインフィニットジャスティスとアスラン・ザラの前に敗れそうになったことへのフラストレーションが少なからず蓄積していたが、現在の戦場を放って置くこともできず、残ったゲシュペンストやエルアインスの迎撃へとビルガーを向かわせた。

 

「よし…ここなら大丈夫だな」

 

レイは、周囲を見回して、市街地からかなり離れたところまでインフィニットジャスティスを連れてきたことを確認すると、ペルゼインはインフィニットジャスティスを地面に向けて思いっきり叩き落した。
ファトゥムを下敷きにして地面に激突するのを防いだインフィニットジャスティスは、接近戦は分がよくないと考えたのであろうか、今度はサーベルを納めて距離をとり、ビームライフルを手にしていた。

 

「あの機体…なんてパワーなんだ!ジャスティスが押されるとは思わなかったぞ!だがあの声…この動き…」

 

ペルゼインの近接戦闘能力を警戒したアスランは、聞き覚えのあるような声と見覚えのある動きから、相手の機体のパイロットが誰なのかを推測しつつ、向かってくるペルゼインに距離を詰められないように機敏に動きながらビームライフルのトリガーを引いた。
アスランにとってレイ・ザ・バレルという存在は、肝心なところで形式的な正論を振りかざして自らに歯向かい、人類の未来を殺そうとするデュランダルの手先である、という程度の認識しかなく、少なくともシンほど「助けてやらなくてはならない」とは思っていない。
そのため、特にパイロットに執着することなく、戦闘を継続することを判断した。
ライフルの先端から飛び出す緑色のエネルギーがペルゼインの足元に突き刺さり、距離を詰めようとしてくる赤鬼の足を止めながら、距離を取っていく。
他方のペルゼインは、ビームの牽制により一気に斬りつけることができないばかりか、機体に向かってくるビームを刀身で防御し、回避することに専念することを余儀無くされていた。
レイは機体を動かしながらインフィニットジャスティスの頭部を見て、その頭部が数発の頭突きとペルゼインの鉄拳で少なからぬ損傷を追っていたはずにもかかわらず、今見ると元あった頭部の形に完全に回復していることに気付いた。
自らが乗る機体も掠ったビームのダメージがゆっくりではあるが徐々に回復していることに気付いていたが、原理はわからないが、自分の機体同様、相手の機体の損傷も時間を置くことで修復されていくらしい。
インフィニットジャスティスとペルゼイン・リヒカイト、それぞれの機体修復原理は全く別物であるのだが、それをレイが知る由もない。
むしろ、今のレイにとって重要なのは、一方的に遠距離攻撃にさらされて、反撃の機会を見出せずにある状態であった。

 

「クソ、飛び道具ばっかり使いやがって!俺は剣しかねえんだぞ!」
「そんなことはありませんのよ?」
「え、そうなの?……ん、そうみたいだな」

 

レイは、自分の中に聞こえてくる声と会話しつつ、頭の中には新しい武装の情報が入ってくることを感じていた。
どうやら、自分が乗っているこのロボットのような生き物のような巨人は、見かけによらず色々な武装を持っているらしい。
冷静に考えると、今の自分がかなりアブナイ人にも思えるが、こんな機体に乗ってドンパチをしている自分にそんなことを気にしている余裕はない。
ペルゼインが両手で構えた剣を正面に向けて構えると、レイは意識を正面のインフィニットジャスティスに向けて集中させる。
そしてイメージした。自らの一部が次々とインフィニットジャスティスに向かって襲い掛かっていく様子を。相手を取り囲み追い詰めていく場面を。
これが、かつてレイがレジェンドに乗っていたときに行っていたことを今の彼は知らない。
だが、記憶はなくても体が、戦う本能が分身の使い方を覚えていたのである。
レイの思考に追随して、ペルゼインの両肩に2つずつある黒く鋭い突起が肩から分離すると、それらはそれぞれが意思を持っているかのように浮遊し、そしてインフィニットジャスティスへと向かっていった。

 

「ドラグーン!?やっぱりアレに乗っているのは…」

 

これに驚いたのはアスランであった。目の前の正体不明の機体がどんなものなのかは知らないが、彼のもといた世界に存在していた同じような兵器があったが、それを使える者は多くない。
アスラン・ザラが知るところは彼にとっての至上の存在キラ・ヤマト、元上官の変態仮面…ではなくてラウ・ル・クルーゼ、そしてレイ・ザ・バレルのみである。
そして機体を接触したときに聞こえてきた声からすれば、目の前の機体に乗っているパイロットの正体はやはり、ほとんど会話らしい会話もしたことはなかったが、自分も知っている元部下なのであろう。
だがそれを気にしている余裕は今のアスランにはない。
インフィニットジャスティスを取り囲んだ黒い突起状の物体は、やがてその形を小さな鬼の面へと姿を変え、自らへと向かってきた。
鬼の目、口からそれぞれ放たれるエネルギーの矢をインフィニットジャスティスはその機動力を生かして回避し続けるが、放たれる矢の数が多いため、ファトゥムが幾つかの矢を防ぎ始めた。
さらに4つの鬼の面のうち、2つが今度は直接ファトゥムの防御壁に喰らいつき、徐々にその装甲を抉り始める。
さすがにファトゥムの再生速度もそれには追いつけず、インフィニットジャスティスはサーベルを手にすると、ファトゥムの影から飛び出して鬼の面に斬りかかる。
そこへ待ってましたとばかりにペルゼインがインフィニットジャスティスに向けて剣を振り下ろした。
ペルゼインが両腕で握った剣を、インフィニットジャスティスが2本のサーベルを重ねて受け止め、その隙をつこうとした鬼の面はファトゥムの壁に遮られ、さらに弾き飛ばされる。
続けてペルゼインは左右から連続してインフィニットジャスティスに向けて斬撃を繰り出し、それをインフィニットジャスティスのサーベルが防ぐ。
だが、アインストの指揮官機に匹敵する機体のありったけの馬力を込めて叩きつけられる斬撃に対して、著しいパワーアップを遂げたとはいえ、ファトゥム以外の武器自体は既存の機体のものと対して変わらないものしか持たぬインフィニットジャスティスのサーベルはペルゼインの斬撃に押し込まれ始める。そして、幾度も切り結んだ後、やがてサーベルにかかった負荷が限界へと達し、ビームの刃が消え去った。

 

「クソっ!サーベルが…!」

 

さらに勢いに乗ったペルゼインは、インフィニットジャスティスにその大剣を振り下ろすが、今度は前面に大きくファトゥムが展開してペルゼインの斬撃を防ぎ始めた。
血の色よりも赤い柄から伸びる、光を反射して美しく輝きながらも、無骨で荒々しい銀色の刃はファトゥムの表面を削り取りつつも、一撃一撃を弾かれ続ける。それに対してレイは弾かれても弾かれても上下左右から高速の斬撃を繰り出すことを決してやめない。
刃が触れるたびにファトゥム表面に起こる小さな爆発が起きるが、それもペルゼインの刃を止められず、大剣がじわじわとファトゥムの中へと侵食していく。
それを察したアスランは振り下ろされた剣を、機体を左に反らせて回避し、空を切った剣を握る腕を押さえつけた。

 

「それに乗っているのはやっぱりレイか!?」
「あぁん?てめえも俺のことを知ってやがるのか?」
「お前、何を言ってるんだ!?」
「悪ぃな、昔の記憶がねえんだよ!」
「なら俺の邪魔をするのはやめろ!俺はキラを傷つけたサイバスターを討たなきゃならないんだ!!」
「いきなりロボット引き連れて街を襲う奴が何言ってやがる!!」
「俺は街を襲ったりなんかしていない!」

 

さらに続けてインフィニットジャスティスはペルゼインの両腕を掻い潜り懐に飛び込むと、ペルゼインがやったのと同じように、思いっきりインフィニットジャスティスの拳でペルゼインの顔面を殴りつけた。

 

「ぐお!痛えじゃねえかこの野郎!」
「お前がいなければシンが議長に騙されることなんてなかったんだ!」
「俺があの鼻垂れ小僧を騙していただと!?」

 

鈍い音とともに後ずさりするペルゼインであったが、続けてインフィニットジャスティスが右足を振り上げると、脚部ビームブレードがペルゼインを襲い、胸部の増加装甲のような部分をブレードが削り取り、一筋の傷跡がペルゼインに刻まれた。
反撃とばかりにペルゼインは自由になった大剣を力任せに振りぬくのだが、それはあっさりとバックステップして距離を取ったインフィニットジャスティスにかわされてしまう。

 

「そうだ!お前さえいなければシンは…!!!」

 

メサイアとレクイエムを巡るラクシズとザフトの最後の戦いの前、レイは自らの素性をシンに明かして、デュランダルの唱えた、弊害も大きい人類の救済計画デスティニープランに迷いを抱くシンに、デュランダル側に付くことを求めた。
これには、レイが自分の同情の余地が小さくない素性を明かしてシンを惑わせ利用したという者もいるし、先の長くないレイが自分では見ることも作ることも出来ない未来を友であるシンに託したのだという者もいる。
レイ自身にとっても、シンを利用したもしくは自分の素性を巧みに利用しようとした部分があることは自覚していたが、かといってそれがすべてというわけではない。
アカデミー時代からの親友であり、幾多の戦いとともに切り抜けてきた戦友であり、エクステンデットであるステラ・ルーシェを助けようとし、無関係な者をも巻き込む戦いやそれらを引き起こす者を強く憎むシン・アスカであったからこそ、レイが望む、自らのような存在を生み出さないような世界をデュランダルの元で作り、守っていくことを
自分に代わって実現していくことを託すことができたのである。
友であり仲間であるシンを騙すわけではないが、精神的に不安定な状況に乗じたことに良心が痛まなかったわけではない。
だが、普通の人間以上の苦しみを味わってきたレイは、これ以上自分と同じような苦しみを押し付けられる者を作り出す世界をどうしても変えたかった。
世界を新たに生まれ変わらせたかったのである。
そうだとすれば、先に挙げた2つの評価はどちらも極端なものであり、どちらかに分類するなどはできないであろう。

 

大剣をかわしたアスランはペルゼインとの距離を取りながら、ファトゥムの攻撃モードを起動させた。
さきほどまでと異なり最大出力を発揮するファトゥムは一直線にペルゼインに向けて突っこんでいく。
ミネルバの機関部をぶち抜いた時とは比べ物にならないほどの力とスピードでペルゼインに突き刺さろうとするファトゥムの先端をペルゼインはその大剣で受け止めるが、その勢いを殺しきれずに、徐々にファトゥムの先端の刃が大剣を押しのけてペルゼインに向けて迫ってくる。

 

「………いいてえことはそれだけか、ニワトリ野郎!」
「どういうことだ!?」
「グダグダグダグダ被害者ヅラしやがって、てめえがさっき引き連れてきた連中のせいでどれだけの人間が傷付いたと思ってやがる!」
「議長に尻尾を振って世界中の人間を傷つけようとした貴様に言えた台詞か!!」
「確かに昔のことを覚えちゃいねえ!だから何をしたかなんてわかんねえ!だがなぁ…あの小僧は俺を見た時涙を流してやがった!ってこたぁ大の男が涙してくれるほど大切な仲間だってことだ!」
「シンが泣いたから何だって言うんだ!」
「だから俺はあの小僧を信じるぜ!それに今、目の前で被害者ヅラして暴れまわるてめえは信用ならねえし、気に喰わねえしなあ!!」

 

ファトゥムにドラグーンのように動き回る4つの鬼面が突き刺さり、再びファトゥム表面に加えてスラスター周辺をも抉り始める。
これによりファトゥムの勢いはやや弱まったのか、
ペルゼインは体をずらし、刃をファトゥムに向けて立てるとそのままファトゥムの勢いも利用して大剣を振り抜いてその一部を綺麗に切り裂いた。

 

「何だと!?」

 

これにはアスランも驚くが、とっさにファトゥムに合流すべく機体を上昇させ、ペルゼインの横に回り込もうとする。

 

「ニワトリが飛ぶなぁっ!!」

 

だが、ペルゼインはその足元に転がっていた、サイバスターに破壊されたのであろうランドグリーズの残骸を飛び上がったインフィニットジャスティスに向けて蹴り上げた。
その残骸はそのまま綺麗な放物線を描いてペルゼインの脇に回り込もうとしたインフィニットジャスティスに激突すると、その衝撃をまともに喰らったインフィニットジャスティスはバランスを崩して地表に落下を始める。
それをチャンスと見たレイは鬼面をいったん肩に戻すと、再びその大剣ペルゼインスォードを正面に構えて意識を集中し始めた。
目の前にいる敵をぶっ倒す、そう強く念じたレイの意思を受け、ペルゼイン・リヒカイトの両目、口だけでなく全身から稲妻のように迸るエネルギーが放たれ始める。
そのエネルギーは間もなくペルゼインの腹部の桃型のバックルと頭部の2本の角に集まり、さらにその正面のペルゼインスォードの刀身に収束していく。

 

「行くぜ!俺の必殺技…パートⅡ!」

 

レイが叫ぶと、ペルゼインは大剣を振り回して右上に振り上げ、そのまま左下へと振り下ろす。
すると振り下ろされようとする刃から赤く輝く斬撃が放たれ、インフィニットジャスティスに向かっていく。
これは、アルフィミィの乗るオリジナルのペルゼイン・リヒカイトが、単純に斬撃を飛ばす攻撃として用いるマブイタチと呼ばれる斬撃波に加えて、形態が変わってしまったレイのペルゼインでは、そのままでは使えなくなったライゴウエのエネルギーをさらに上乗せして同時に放っているものであり、とっさにイメージしてしまった彼の演じている特撮主人公の必殺技とよく似ているものに、結果としてなったものである。
インフィニットジャスティスはその斬撃から逃れようと回避行動を取ろうとするが、迫る巨大な斬撃を避けきれず、代わりに自己修復を終えて戻ってきたファトゥムがその前に立ちはだかった。
爆発を起しながらもファトゥムはその飛んできた斬撃を防ぎきり弾くが、ペルゼインが今度は大剣を左上に振り上げるとその動きに呼応して、弾かれた斬撃も同様に動く。
そしてペルゼインが今度は左上から大剣を振り下ろし、真紅の斬撃が再びファトゥムに突き刺さった。
さきほどよりもさらに深くへと斬撃は切り進んでいくが、それでもなおファトゥムは自己修復を続けて攻撃を耐え切り、斬撃を弾き飛ばす。

 

「ファトゥムの絶対防御を破れると思うなよ!!!」
「うるせえ!防御ってのは…破るためにあるんだよ!」

 

レイとペルゼインは、三度振り上げた大剣に力を込めると今度はそのまま真っ直ぐ真下に刃を振り下ろす。
同時に真紅の斬撃が、ファトゥムへと突き刺さり、一枚、また一枚とファトゥムの分厚い装甲を斬り進んでいく。

 

「だりゃああああ!!!」

 

そしてついにレイの雄叫びとともに、さらに輝きを増した真紅の斬撃はファトゥムの絶対防御を貫き、大きな爆発が起きた。

 

「ファトゥムがやられただと!?」

 

だがアスランの驚きの声とは関係なく、遮るもののなくなったインフィニットジャスティスへと襲い掛かる。
しかし、アスラン・ザラもラクシズトップの実力を持つパイロットである。
ファトゥムが盾となって稼いだ時間は、アスランにわずかにインフィニットジャスティスの機体を横に反らす動作を可能ならしめ、パイロットともども必殺の角度で繰り出された斬撃は頭部端からコックピット付近を斬り進み、ジャスティスから右腕・右足を奪うにとどまってしまった。

 

「クソ!レイのやつ…!マシンセルの修復が間に合わないか…撤退する!」

 

アスランはそう言うと、ファトゥムの残骸のスラスターを起動させ、インフィニットジャスティスの残ったスラスターを全開にしてペルゼインの元から離れていった。

 

「待ちやがれこのニワトリ野郎!!」

 

そういいながらレイはインフィニットジャスティスを追おうとするが、その時、レイは自身の機体の異変に気が付いた。
機体を動かそうとしても、先ほどまでと異なり鈍重な動きしかできず、追跡をしようにもできないのである。そして、目に映るインフィニットジャスティスの姿はみるみる小さくなっていく。

 

「どうしちまったんだよ、こりゃ!?」
「…時間切れのようですの…」
「何ぃ!?まだあの野郎を倒しちゃ…」

 

レイの言葉の途中で、再びレイの体は黄色い光に包まれ、ペルゼインは姿を消した。

 

「あなたのペルゼインはまだ生まれたて…すべてはこれからのあなた次第ですの…」
「どういうことだよ!っていうかお前は一体誰なんだよ!?」
「ふふ…いずれわかるときが来るですの…あなたがどうなるのか、見せてくださいですの…」
「オイ!何わけのわからねえこと言ってやがる!俺にこれからどうしろってんだよ!?オイ!」

 

静かに地面に降り立ったレイはどこかに向けて怒鳴って問いかけるが、既に声の主からの返答も気配もない。
さきほどまで戦っていた相手がいっていたこともあり、レイは自分の素性も、声の主の正体も目的も、さっきまで乗っていた機体のこともわからないことが多すぎるという状態であった。
そこでそのような状態だからこそ、レイは深く考えるのをやめ、わかっていることだけ冷静に考えることにした。
このような冷静な思考を行うところはレイ・ザ・バレルという人間の元々有していた性向が著しくは変化していないことを示しているわけなのだが、それは彼の知るところではない。
自分に戦う力があること、シンという連邦軍のパイロットとニワトリの鶏冠をもったロボットのパイロットが自分を知っているようであること、そこから自分について、そしてこれかどうするかについてレイは考え始めた。

 

「…ん、待てよ?俺がこんなところにいたら軍にとっ捕まっちまうかもしれねえじゃねえか!…つか撮影所の連中は無事か!?」

 

考え始めて自分と周りの置かれた状況を思い出したレイは、そのまま全力で元いた場所へ走っていった。

 

 

「俺と一緒には来てくれないんだよな…?」
「ああ、悪いがまだ第4クールの撮影が終わってねえ。それにお前の言うことを疑ってるわけじゃねえが、今の俺にとっちゃスタッフの連中も仲間みたいなものだからな」

 

必死こいて撮影所まで戻ったレイが、戦闘を終えヒリュウ改へと帰還する前のシンに対して答えた。
シンとしては、アカデミーの頃からの仲間であるレイに一緒に来てほしいという思いもあったが、他方で記憶を失いながらも、命が散っていく戦場から離れ、新しい環境で新しい仲間とともにいるレイを戦場などに連れ戻すことはできなかった。
またペルゼインに乗っているのがレイである、などとこの時点では夢にも思っていないので、自分といても危険なだけだとも思えていた。
そのため、レイに対して無理強いをすることはできなかったのである。

 

「また会いに来るよ、今度は色紙とカメラ持ってさ」
「炒飯とコーヒーの差し入れも忘れんなよ」
「わかったよ。撮影、頑張ってな」
「おお。お前もドジ踏んでくたばるんじゃねえぞ、この鼻垂れ小僧」
「こう見えたって元エースだからそう簡単にはくたばらないさ。じゃ…」
「………………………気を付けろよ」

 

空へ飛び上がり、夕焼けの光を纏いながら赤き龍へと帰っていくビルトビルガーの姿を見ながら、静かにレイは呟いた。
彼としても今、自身が戦場に戻る意味を見出すことは、自らや仲間を守るため、というのを除けば見つけることができなかったし、新たな仲間たちを置いていくこともできなかった。
当然、自分の素性をもう少し聞いてみたいという気持ちもあったが、今現在のレイ・ザ・バレルという人間が持つ記憶と繋がりを守ることも今のレイにとってはそれに劣らぬほど重要だったからである。
また、彼がこれから否応なく巻き込まれていく戦いがあることを知らなかったからでもある。
だが、動き出したレイの時はここから一気に加速を始めることとなる。

 

  

 

次回予告
新たな力を得て戦う力を取り戻したレイであったが、彼はまだシンと共に行くことを選ばなかった。
他方、アスランと深い傷を負ったインフィニットジャスティスはアースクレイドルへと帰還するが、そこで見たのは、至上の存在キラ・ヤマトが手に入れた新たなる機体であった。
だが、その裏で何があったのかはアスランは知らない。
そしてヒリュウ改にはシャドウミラーの新たなる、そして強大な脅威が迫らんとしていることを、シンはまだ知らなかった。

 

次回スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズデスティニー
第24話「女の戦い」を期待せずにおまちください

 

ところで2号ロボへの乗り換えや機体のパワーアップは燃えるところですが、
モモゼインはアップさせます?まだまだ先の話だし、ネタがネタだけにできなくはないんですが、皆様のご意見をお聞かせ下さい
→A.さらに強くなっていく敵と戦うためにはこっちもパワーアップだぜ!
→B.そんなことよりも弾幕とシンの影、薄いよ!何やってんの!?