ある愛の物語(シン編)・第3話
病院に運ばれたステラはタンカーですぐさま応急処置室へと移された…
シン 「ステラ!!、ステラ!!」
看護婦「ここから先はダメよ!!あなたは出て!!」
シン 「でも!!」
看護婦「下がりなさい!!」
シン 「…はい」
シンは小さく頷くと、その部屋の前に立ち尽くしていた
~数十分後~
キラ「担当のキラ・ヤマトです。君かい?彼女の恋人は」
シン「ヘっ?恋…人?ま、まぁ」
キラ「ちょっとこっちに来てくれないかな?」
シン「?」
シンは不思議に思いながら、その先生について行った…
~診察室~
シン「どうなんですか? ステラは大丈夫なんですか?」
キラ「…大変言いにくいんだけど…彼女はもう…そんなに長くない…」
シン「!?…そ、それどう言う事ですか!?」
キラ「まだ検査段階なんだけど…おそらく彼女は…癌だ。しかも末期まで進んでる」
シン「だ、だってステラはまだ16ですよ!!いきなりそんなこと言われたって!!」
キラ「気の毒だけど…」
シン「先生!彼女は…ステラは助からないんですか!?お、オレ、何でもやりますから…
お金だっていくらでも出すから!!なぁ…先生!!」
シンはキラの白衣にしがみ付き、激しく迫った…
キラ「さっきも言ったじゃないか!! 彼女は!!」
シン「先生!!」
キラ「君もしっかりしろ!!僕だって出来るならとっくに君に言ってる!!
けどどうしようもないんだよ!!」
シン「そ、そんな…」
シンは掴んでいたキラの白衣から腕を離した
シン「余命は…ステラの命は、後どのくらいなんですか?」
キラ「長くて…1ヶ月。若いから進行も早いんだ…」
シン「1ヶ月って…だって、オレら会ってまだ数ヶ月も…」
キラ「……」
キラもかける言葉が見つからない
シンはそのまま茫然と診察室を出た後、そのドアによりかかり、力無くその床に座った…
シン「…な、なんでこんな…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
シンの悲痛な泣き声が病院中に反響し、彼の目からは大粒の涙がとめどなく流れた…
しん「シン兄ちゃん…」
気が付くと、そこには野原家がつらそうにシンを見つめ、そっとしんのすけが彼の側にそっと寄り添っていた
シン「しんちゃん…オレ…オレ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
シンはしんのすけの両肩に手をかけ、また涙の粒を廊下に落とし始めた…
しん「よしよし」
しんのすけはそれ以上何も言わず、ただシンの頭を撫でた…
………
……
…
~数日後~
ステラ「シン!…おはよう!」
久しぶりにあったシンの顔を見て、ステラは満面の笑みを浮かべた
シン 「あ…うん、おはよう…どう?調子は」
ステラ「うん…大丈夫…」
~回想~
キラ「いいかい、彼女に悟られないように気をつけるんだよ」
シン「は、はい…」
シンは暗い顔でこくりと頷いた…
キラ「君がしっかりしないでどうする?、君が彼女を『助けるんだ』」
シン「…」
~回想終了~
ステラ「…ン?…シン?…元気ない?」
シン 「!!い、いや、そんなこと無いって!元気だよ」
シンはキラに言われたことが頭がよぎって、ステラの声は上の空だった…
気が付くと、あわててステラに挨拶を返した
ステラ「そ、そう?」
シン 「ステラこそ先生が『過労』って言っていたから、しっかり休まないとダメだぞ!
家の人には連絡してあるから、ゆっくり休みなよ」
ステラ「けど…つまんない…シンと…遊びたい」
シン 「我慢しろって…またいつでも遊べるから…ね?」
ステラ「…うん…」
シン 「じゃ、じゃあ、オレちょっと用事あるから…」
ステラのしぶしぶ頷く様子を見て、シンは思わず嘘をついて病室を退出した…
シンは病室のドアを閉めると、トン、とそこに力なくよりかかった
「…こんなの無理だって…」
今にも流れでそうな位、彼の瞳は潤んでいた…
~野原家~
みさえ「最近…私、シン君を見てるだけで悲しくなっちゃうわよ」
ひろし「ああ…まさかこんな事になるとはな…今はシン君をそっとしといてやろう。
変に気を使うとつらいだろうから…」
みさえ「けど…!」
ひろし「みさえ!シン君の気持ち…くんでやれよ…」
野原家でもステラの状況を知り…気持ちが沈んでいた…
そんな中、しんのすけは不意に立ち上がり、沈んでいる野原家に「風」を吹き込んだ!
しん 「…オラ、ちょっと行って来る!!」
ひろし・みさえ「お、おい?しんのすけ(しんちゃん)!」
そう言うと、しんのすけは突然家を飛び出し、ある場所へと向かった。
~夕方の病院で~
シンは肩をガックリと落として、病院をあとにしようとしていた…
シン(オレは彼女にこれからどんな感じであえばいい?どんな顔で彼女をみればいいんだ?
いくら明るい顔しろって言われたって…オレには無理だよ…)
シンはそんな心の葛藤をしながら、沈み込んでいた…その時だ
しん 「はぁ、はぁ、はぁ、シン兄ちゃん!!」
そこにはしんのすけが息を切らしながら、病院の前に仁王立ちしていた
シン「し、しんちゃん。どうしてここへ?」
しん「これを届けに来たんだソ」
そういうとしんのすけは右手に持つ200羽位の鶴の束を差し出した。
少し引きずってしまったのか・・・下の鶴は砂埃を被っていた
シン「こ、これは?」
しん「幼稚園のみんなに一羽づつ折るように頼だんだゾ!
これでステラお姉さんの病気も治るから、だから暗い顔しちゃダメだぞ!!」
シン「しんちゃん…ぅぅぅ…(涙」
シンはその鶴の束を受け取ると、また大粒の涙を流した…
彼は大切なモノを気づかされたようだった…
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