Seed-Crayon_5-044_4

Last-modified: 2008-06-30 (月) 19:04:46

きょうだい【その4】
 
アウル 「うっわ…なに今の。スティングの声?
     あいつの泣き声なんて初めて聞いたよ…下で何が起こってるんだろ」
ひまわり「ふ、ふえぇ…」
 
 赤ん坊は周囲の空気に敏感だ。誰かが泣いているのを感じ取ったひまわりは、貰い泣きしていた。
 
アウル 「おっと。ほらひまちゃん、べろべろば~…だめか。
     よいしょ…泣き止んでくれよぉ…こういうの苦手なんだってば」
ひまわり「ひっく」
 
 対赤ん坊用の定番ワザには全く無関心だったひまわりだが、美形のアウルに抱きかかえられると即泣き止んだ。
 
アウル 「お、早いな。よしよーし…」
 
そのまま、無言の十数分が経過する。
 
アウル 「…どうしようかな…そろそろいいかな。
     でも僕の方から出てったら負けを認めるみたいで嫌だな。
     …って、僕は何を考えてるんだ。さっきシンが言ってたことを思い出せよ」
ひまわり「たい?」
アウル 「うん、頭ではわかってるんだよ。でもさ…」
ひまわり「たー!」
アウル 「そうかなぁ」
ひまわり「たーい。たーよ」
アウル 「ひまちゃん…わかった。僕素直になるよ。ちゃんと気持ちを伝えるから」
 
 ひまわりが言っているのは実際には何の意味も持たない、ただの音だ。言葉ではない。
 だがその音には、意味がなくとも心があった。アウルはそれを受け取ったのだ。
 
          *          *          *
 
 コンコン…アウルとひまわりのいる部屋のドアがノックされた。
 
スティング「…アウル?」
アウル 「……今開けるよ」
スティ 「あー…いや、やっぱりちょっと待て!そのままで!」
アウル 「?」
スティ 「(顔見たらタイミング逃しそうなんでな…)…アウル」
アウル 「どうしたんだよ?」
スティ 「ごめん!オレ、アウルばっかり怒って…」
アウル 「ちょ、ちょっと!どうしちゃったんだよ?」
スティ 「…本当はステラが悪い時もあったのに、お前のことだけ責めてた。
     ステラは一番年下だから、優しくしなきゃって…お前だって辛いのに」
 
 実際、これは三人兄弟で良く起こりうることである。
 長子は下の二人の面倒を見るため、自然と物を知り、大人からは重宝される。
 末子は最も弱いため一番に可愛がられ、多少のいたずらは見逃される。
 では真ん中の二人目は…?本来なら、三人とも平等に愛を与えられてしかるべきなのだ。
 
ステラ 「アウル…ごめんなさい。あのおもちゃ、ぴかぴかしてキレイだったから…
     勝手に借りて、こわしちゃって…ステラのこと、キライにならないで…」
 
 ドアの外からステラの泣き声も聞こえる。
 アウルはすぐ飛び出して慰めに行きたかったが、話はまだ終わってなかった。
 
スティ 「そ、そうだ!ネオがな、『オレもアウルに冷たくしすぎたな…』って言って、
     あのプラモ買ってきてくれたんだ!かなり時間かかったけどよ」
アウル 「え……あれって、今も売ってたの?」
スティ 「散々探し回ったんだぜ!ストライクフリーダムライトニングエディション!」
 
シン  「ぶっ…!おまwww何かと思えばピカフリかよ!wwwww」
ルナ  「シンってば!真面目な場面よ、静かにしてなさい!(ぷぷっ、ピカフリ…)」
 
 階段の段差に隠れていた二人が余計な口を挟むが、幸い、三人には届いてなかった。
 
          *          *          *
 
スティ 「(よし、言い切ったぜ)…アウル。オレ達を許してくれるか?」
アウル 「……」
ステラ 「アウル…出てきて…ステラ、もう暴れたりしないから…」
アウル 「……」
スティング、ステラ「「アウル!」」
アウル 「…あーもう、だから鍵開けるって言ってるだろ。
     そっちから入ってくればいいじゃん」
 
 ガチャッ…
 そう言いながらも、アウルから扉を開けて二人の前に出てくる。
 
アウル 「…僕の方こそ、ごめん」
スティ 「いや。オレの方こそ…」
ステラ 「ステラも…」
アウル 「今回のことは、僕が悪いのは確かだしさ」
スティ 「けど、今までオレは…」
アウル 「もういーって」
ステラ 「ステラのことも…許してくれる?」
アウル 「最初から怒っちゃいないよ。今日は…ちょっと機嫌が悪かっただけ」
スティ 「そ、そうか…」
アウル 「でもさ。今日は良かったよ。こうして一度色々考え直せたのは」
スティ 「あぁ。オレもそう思う。たくさんのことに気付けたからな」
ステラ 「うぇーい?」
スティ 「ステラにはわからないか?」
 
 二人を不思議そうに見つめるステラに、アウルは少し照れ気味の笑顔で言う。
 
 
アウル 「結局、僕達は三人揃ってないとダメなんだよね…ってことさ!」
スティ 「ま、そういうことだな」
 
 
スティングは耳まで赤くしながら、それでも微苦笑で決める。
 
ステラ 「うん…!ステラとアウルとスティングは…ずっと、いっしょ…!」
 
 そしてステラも笑顔で。三人とも笑顔で、抱き合った。
 
          *          *          *
 
みさえ 「うっ、うっ…えぇ話やわぁ…」
ひろし 「泣けるぜ、チクショー!」
みさえ 「…あなた。何時帰ってきたの?」
ひろし 「今。なんか良くわからんが、感動の場面っぽいから泣いておくぜ」
みさえ 「あなたって…」
ひろし 「そういえば帰ってくる途中、ムウさんに会ったな。
     すんげぇ筋肉痛だって言ってたから、良く効く湿布教えといた」
 
シン  「まさかピカフリとはな…」
ルナ  「ねぇ…」
シン  「あれだな、多分腹ビームがアビスと同じだからだ」
ルナ  「アビスはお腹じゃなくて胸だと思うけど」
シン  「形式が同一なんだよ。MGX-2235カリドゥス複相ビーム砲。
     理由としちゃ弱いけど。それ以外にあんな馬鹿げたプラモ、気に入る理由がない」
ルナ  「へぇー」
しん  「難しいお話、よくわかんないゾ…」
ひまわり「だー…」
 
 
 ―終―
 
 
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