Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第13話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:41:44

AM6:37、訓練用空間シュミレーター内部、天候、雨。

「シン!危ない!!」
ティアナの声にハッと我に返り、慌てて体を沈めるシン。
そのすぐ直後にヴィータのグラーフアイゼンによる打撃が空を斬る。
「オラァァアア!!よそ見してっと打っ叩くぞ!!」
「戦闘中に、考え事に夢中になるのは危険だよ、シン。」
声に振り向けば、バルディッシュサイズフォームを構えているフェイトの姿。
「何やってんのよ!シン!!(スバル!シンのフォローできる?)」
「(こっちは私とエリオとキャロでなのはさんを抑えるので精一杯!)」

二人の攻撃を一本のエクスカリバーで捌くシン。しかし、ヴィータはそのパワーで、フェイトはそのスピードでシンを追い詰めていく。
「クロスファイヤーシュート!!」
ティアナの声と同時に跳躍するシン。
「(この二人に、フォースフォームじゃ無理か…。)なら!」
『Sword Form』
姿を現すもう一刀のエクスカリバー。
『フラッシュエッジ・エクスカリバーシフト』
実体と魔力刃の二重の攻撃。
フェイトはバルディッシュの柄でフラッシュエッジを受けるも、衝撃を受け流すことは出来ず、後退。
「シン!私が援護するから!!」
クロスミラージュの引金をひくティアナ。ヴィータは放たれる四発をシュワルベフリーゲンで撃墜する。
「もらった!!」
右手に持ったエクスカリバーに渾身の力を込めて横薙一閃を見舞う。
「あめぇ!!!フォルムツヴァイ!!」
瞬時に形状を変え、バックファイアの力を利用しシンのエクスカリバーと打ち合う。
凄まじい衝撃により風が訓練場を吹き荒れた。
ティアナは建物の陰に身を隠し、隙間から除き見て援護の頃合いをみはかり、クロスミラージュを構える。
「後ろががら空きだよ!」
戦線に復帰したフェイトがシンの背後に現れ、バルディッシュを振り上げる。
「デスティニー!」
『デスティニーフォーム』
シンの呼び声に反応し、エクスカリバーはその刃を延長、間合いを伸ばす。
そして背中に現れる翼と、赤のバリアジャケットが青へと変化する。
『パルマフィオキーナ』
弾き飛ばされる二発の薬莢。
左の手を覆う緋色の閃光。振り下ろされるバルディッシュの魔力刃に向け手をかざし、左手で金色の魔力刃を掴んだ。

「っ!?」
驚愕に目を見開くフェイト。シンの左の掌から、勢いよく溢れ出す緋色の魔力光。
『バースト』
バルディッシュの魔力刃を砕く。一時的に刃はなくなり、そしてそれを取り戻すのに数瞬、時間を用した。
「これで!!」
グラーフアイゼンを強引に弾き、フェイトに一撃入れることを最優先に考える。
開かれる翼、鮮やかな紫の噴射炎、切っ先を目標へと向け、一直線に向かっていく。
『High Speed thrust』
「うぉぉおお!!」
迎え撃つフェイト。
二人は激突し、爆煙をあげた。

煙から吹き飛ばされるシン。感触はあった。一撃入れられたはずだ。
シンは警戒を解かず、煙の中佇む影を警戒する。
動いた。
突き破り出てくる影。
「うおぉぉおお!!」
出てきたのは、青い髪、ワインレッドのバリアジャケット。
アスラン・ザラだった。
「アス…ラン…、そんな…何で…?」
向かってくるアスランの斬撃を取り合えずかわすシン。
突然の事態に呆然としていると、背後から声が聞こえた。
「終りだ。」
聞き覚えがあった。友であり戦友であるレイ・ザ・バレルの声。
シンの背後でディファイアントを構えている。
「レ…レイ…何で…。」
突然の状況、混乱するシン。
『クスィフィアス』
ズドォンッ!!!
蒼い閃光とともにレイが吹き飛んだ。
「何をやっている!的になりたいのか!!」
「あんた…何で…。怪我してるはずじゃ…。」
「キィラァアア!!」
キラの背後に現れる複数の発射体。シンが警告しようとした瞬間だった。
アスランの魔力刃に片方のフリーダムを破壊されるキラ。そして背後からのドラグーンの嵐。
それはキラに当たる。何度も、何度も…。
そして当たるたびにビクビクと痙攣する体。
やがて苦痛に歪むキラの姿がティアナに、スバルに、エリオ、キャロ、はやて、なのは、フェイトへと変わる。
「シン…逃げ…。」
フェイトが弱々しく、手を伸ばし、囁くように言った。

どうする?どうすればいい?
撃つか?
レイを、アスランを見る。
いや、撃てるのか?
撃たなければ、フェイトたちが…。
けど…レイは?アスランは?
呼吸が荒くなる。苦しい…何なんだ、何でいきなりこんなことに…。
「レェイィ!アァスラァン!!やめろぉぉおおぉお!!!!!」
ただ叫ぶことしかできない。
灰色と朱色の閃光が爆発し、シンはその光に飲み込まれた。

「…ン……シン…。シン!!!」
「うわぁぁあぁ!!」
ガバッと布団を払い除け、上体を起こすシン。
肩で息をする。
周囲を見回し、それからゆっくり視線をフェイトに向ける。
「大丈夫?だいぶうなされてたみたいだけど…。
ごめんね…、ちょっとムキになっちゃった。」
「あっ、いや……、あれは自滅したようなもんだから…。
心配かけてごめん…。」
シンの突進攻撃をさけたのち、カウンターで見舞ったフェイトの攻撃が直撃、そのまま意識を失ったらしい。
「はい、タオルとお水…。」
「あ、ありがとうございます。」
手渡されたタオルで汗ばんだ額、顔、首を拭き、ボトルに入った水を飲みながら、夢に出てきたレイとアスランの事を考える。
キラの見舞いをしたとき、直接二人に事情を聞くなんて事を思ったが、実際に刃を交えるとなると、アスランはともかく、レイを撃つことができるか?
と問われると、疑問なところだ。
「…ン…シン?」
「…あっ、はい、なんですか?」
シンの反応に疑問おぼえるフェイト。
「模擬戦中もそうだったけど…、何か悩み事?」
「…いや…。まぁ、そんなところです…。」
うつ向き答える。
「話してもらえれば、きっと力になるよ…。」
フェイトが心配そうにシンの顔を覗き込む。
「大丈夫です…。」
「そっか…、それじゃあ、話したくなったらいつでも話してね…。」
微笑むフェイト。
「そう言えば、シンはお昼御飯まだだよね?」
頷くシン。
「久しぶりに一緒に食べようか。」

食堂。
「あ、なのは、こっちだよ。」
フェイトが手招きしてなのはを呼び寄せる。
なのはとフェイトは隣り合って座り、シンはその二人に向かい合って座っている。
「シンは、もう大丈夫なの?」
パンを千切り、口へ運びながらなのは。
「えぇ、もう何ともありませんよ…。心配かけてすみませんでした。」
「まぁ、無事でよかったよ。でも、こうやってフェイトちゃんと食事するのは、久しぶりなんじゃない?」
「そうだね…。」
といいながらパスタを口へと運ぶフェイト。
「二人とも忙しいみたいだったし、年上年下が入れ替わってたから…話しかけづらくて…。」
サラダを摘むシン。
「そっか…。」
それから暫くはなのはとフェイトの仕事の話が続いた。十年という時間が流れたのを改めて思い知らされた。
しばらくすると、なのはとフェイト、二人がヴィヴィオの話で盛り上がり始め、シンはそんな二人を見つつ口へ運ぼうとしていたフォークをとめ、悪夢のことを考えていた。
実際、なのはやフェイトたちはともかく、ティアナやスバルがああいうことにならないとは断言できなかった。
それに、レイとアスラン相手に勝てるかも、それ以前に刃を向けることが、自分にできるかも分からなかった。
「シン…、シン?」
「えっ?」
「どうしたのシン…。」
気が付けば、フェイトもなのはもこちらを見て、浮かない顔をしている。
「何でもないって言うのはなしだよ?
訓練中も、医務室でもそんな調子だったんだから…。」
「うまく答えられるかどうかは分からないけど…、私達も一緒に考えてあげるから…ね?」
フェイトとなのはが心配そうに聞いてくる。
シンは空間にモニターを開いていくとある戦闘の記録を開いた。

技術室。
「どうですか?シャーリーさん…。」
目の前にはデバイス形態のフリーダム二機が沢山の配線に繋がれ台の上に置かれていた。
「クスィフィアス二機とフリーダム一機はただ使用する分には問題ないです。
クスィフィアスには複雑な機能はついてないですし、物理ダメージに特化しているだけですから。
問題は…。」
キーを叩き、フリーダムの詳細データを表示する。
「ドラグーンの左右各五発、計十発のコントロールを行っていたのにフリーダムが干渉してるみたいだから…。
暫くはドラグーンの使用が極端に難しくなると思います。
それから、フルバースト、特にミーティア時の排熱の問題もあるし…。
近いうちに本局技術部、精密技術官のマリエル・アテンザさんがいらっしゃるみたいですので、その時に見てもらっときますね。」
「お願いします。」
シャーリーに頭を下げ、キラは技術室から退室。
ヴィヴィオが待つ部屋へと向かった。

食堂。
「話から察するに、このレイって子は友達で、アスランって人はもと上官。
それからアスランはキラの友達…か…。」
フェイトが呟いた。
モニター上ではレイと戦うキラと、アスランと戦うシグナムが写っていた。
「はい…、それできっと二人は、何かされてると思う。
記録では二人は互いをラウとアレックスって呼んでるみたいだし…、キラさんが言うには、記憶もおかしいって言ってました。」
ブラックコーヒーの入ったティーカップを受け皿に置くシン。
「そっか…、それで戦うことになったらどうしようかで悩んでたんだね…。」
「それもあるんですけど…、やっぱ一番は、正気に戻してやりたいと思ってます。」
なのはの言葉に付け加えるシン。
「そっか…。」
「…でも…もし、それが無理ならやっぱり……。」
「無理なんてことはないと思うよ。」
フェイトがシンの言葉を遮って言う。隣に座っているなのはも力強く頷いていた。

「えっ、でも…どうやって?」
「戦うときは何も魔法や、デバイスばかりを使うわけじゃないでしょ?」
フェイトが微笑んで言う。
「そう、特にシンは接近戦が多いわけだし…」
そう言って紅茶をすするなのは。
「何度も名前を呼んであげなよ。何度も、戦いながら、ぶつかり合いながら…。」
「そうすればきっと…、思い出してくれるよ。一回で駄目なら二回、二回で駄目なら三回、諦めずに…ね?」
なのはが笑って言った。
「そう…だよな…。ありがとう、なのはさん、フェイトさん、何となくだけど、戦う覚悟が出来た気がする。」
フェイトもなのはもシンを見て頷き、立ちさるシンの背中を見送った。

「待たせてごめんね。ちょっと落ち着かせるのに時間かかっちゃって…。」
「いえ、仕方ないです。ヴィヴィオはまだ幼いから…。」
なのはとフェイトの部屋から出てきたキラ。
ヴィヴィオはエリオとキャロに任せて、キラは抜け出てきたのだ。
「それで、シンは、僕に何の用かな?」
「アスランと、レイの事でちょっと…。」

場所を移し、外に出て歩きながら会話をする二人。
「アスランとレイと戦う覚悟は出来ましたか?」
シンが低い声音で言った。キラはその質問に少し間を置いてから答える。
「……実際、僕は戦ったわけだし、こんなこと言うのも変だけど…、今は出来てるよ。
何の目的で管理局を攻撃してきたのかは知らないけど…、ここには守ってあげたい人達もいるしね…。」
「アスランもレイも、殺すんですか?」
少しだけ、眉をつり上げ言うシン。
「…そういうことにだけはならないように戦うつもりだけど…。」
「俺は、絶対殺しませんよ。レイもアスランもきっと何か理由があってあんなことになってるんだ。
記憶を操作されてるなら必ず、俺が思い出させて見せますよ。
俺は絶対に諦めませんよ。」
驚いたようにシンを見て、それから少しだけ表情を緩めるキラ。
「そうだね…、諦めちゃ…駄目だよね…。」
「じゃあ、俺、午後の訓練がありますんで…。」
走っていくシンの姿を見送りながら、キラは密かに胸の内で決意を固めた。
「ありがとう…シン…。」

「さぁ、午後の訓練のしめ、張り切って行こうか!」はいっと気合いの篭った返事をするスバル、ティアナ、シン、エリオ、キャロ。
「隊長がいないからな、代わりに私が相手をする。」
フェイトが仕事の関係上、模擬戦に出られないため、代わりにシグナムが相手になってくれると言う。
それとヴィータ、なのはの二名だ。
「お前らが一撃でも私たちに攻撃をあてない限り続くからな!」
笑みを浮かべるヴィータ。
構える五人。そして、隊長陣三人。
「さぁ!行くよぉ!始め!!」
日も沈みかけオレンジ色に染まる海の中、八人が一斉に動き出した。なのはをティアナとスバルが、ヴィータをエリオとキャロ、フリードが、そしてシグナムをシンが迎え撃つ。
激しくぶつかり合うアロンダイトとレヴァンティン。
「「おおぉぉおお!!」」
咆哮が響く。
ぶつかり、魔力を散らし、そして方向をたがえ、再びぶつかり合う。

きっと、俺が…、レイを、アスランを助けてみせる!!
八色の光が入り乱れ、交錯した。