Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第16話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:43:06

雲を貫く管理局の塔をバックに、何度もぶつかり合う五色の光。
三対ニでシンとヴィータは不利な位置に立たされているが、何とか互角の戦いを繰り広げていた。
その一つの理由には、ゼストとアギトの融合相性があまり良くないことが関係している。
シャイニングエッジをかわし、ゼストによる一閃をアロンダイトで受けるシン。。
「どうしてこんなことするんだ!!」
無論、そんなことをゼストははなっから話す気はない。
視界の端に灰色の魔力光を捕える。
「シン!お前は騙されている。管理局にいいように利用されているだけだ。」
「レイッ!?何を!!」
シンはゼストの力を利用し、自ら距離を取る。
数瞬までシンがいた場所を数多の奔流が流れていった。
ヴィータと背中合わせになり、自分たちを囲んでいるゼスト、ラウ、アレックスの出方を窺うシン。
「シン、気を抜くんじゃねーぞ!」
「そんなこと!分かってる!!」
再び五色の光が入り乱れた。

時空管理局地上本部内部。
「なのはさん!」
なのはとフェイトがシャッハと丁度合流したときに、フォワードメンバー四人も合流した。
「スバル、皆…いいタイミング。」
デバイスを受取りながら、頼もしくなった四人を見て微笑むなのはだったが、
「ギン姉ッ!!ギン姉は?」
建物の壁に反響し響くスバルの声と
「ロングアーチ?こちら、ライトニング1。
ロングアーチ!」
フェイトの声。
そして、フェイトの通信から漏れるノイズの混じったグリフィスの声が響く。
「ライトニングは六課に戻って!
スターズはギンガを探しに行くよ!」
なのはの指示により、各隊は動き出した。

機動六課は炎に包まれていた。
多量のガジェットに包囲、襲撃を受け、ロングアーチはほぼ壊滅に近い。
待機部隊の過半数もやられてしまった。
避難経路も絶たれ、今は残存隊とヴァイスにより、警護されながら、非戦闘員を安全な場所への誘導を行っていた。
しかし、予想以上のスピードで火の手が回ったため、それも叶わない。
ヴィヴィオはキラの胸に顔を埋め、震えていた。
「……、ヴァイスさん…。」
そんなヴィヴィオを軽く抱き締めながら、キラが口を開く。
「何だ?キラ…。」
デバイスを巧みに操り、迫り来るガジェットを射撃魔法で破壊していくヴァイス。
「援護してください、フリーダムを…取りにいきます。」
ヴァイスが手をとめ、キラを見た。
「建物が崩れかけてるんだぞ?それに、このガジェットの数、無理だ…。
それぐらい、見ればわかるだろ。」
「分かってます…。でも、このままじゃ…皆が…。」
身を縮め、震える非戦闘局員たちを眺めてからキラが言った。
したうちをするヴァイス。
「ったく、わぁーったよ。
そうと決まれば行くぞ。準備しろ!」
「ヴィヴィオ、いい子にして待ってるんだよ。…僕が必ず、助けてあげるからね!」
むずがるヴィヴィオの頭を軽く撫で、局員の一人に預けるとキラはヴァイスとともに駆け出した。
崩れた瓦礫を、火を飛び越え、ひた走る。
途中に出てくるガジェットⅠ型をヴァイスが撃ち落とし、それを二、三回繰り返したころ
「ここからは、お前一人で行け!俺はここでガジェットを迎撃する。」
破壊された建物の壁陰に隠れ、杖を構えるヴァイス。
「さすがに待機部隊が非戦闘局員を守ってくれてるとはいえ、離れすぎるわけにもいかねぇからな…。」
「わかりました。」
キラは瓦礫の隙間をみつけると、六課建物の中へと姿を消した。
「…死ぬんじゃねぇぞ…。」
カチャリっ
と音をたて、ヴァイスはデバイスを構えた。

「君達はたった二人でよくここまで踏ん張ったよ…。でも…僕のISレイストームの前では…」
ナンバーズ、八番目。ショートカットの少女の容姿をしたオットーは片腕をシャマル、ザフィーラに向かってかざす。
青い光が手に収束し、五本の光線が放たれた。
「クラールヴィント!防いで!!」
緑色の盾が五つ発生。レイストームを防いだ。

機動六課、本館。
口と鼻を六課の制服である茶系のジャケットで塞ぎ走る。
「熱ッ!!」
廊下の天井に亀裂が走っていき、キラは慌ててその場から飛び退いた。
崩れ、廊下を防ぐ瓦礫。
自分が通ってきた通路だ。キラは構わず、火の中を進む。
「ここだ…。」
扉のロックを解除し、中へ入った。
まだ火の手は回ってきていなかった。台に置かれ、配線に繋がたフリーダムは無事だ。
「よかった…。」
パネルを叩き、配線を外して行く。
「フリーダム、力をかして!」
『Yes, my master.
シングルモード。
バリアジャケット・フェイズシフト。』
灰色のフリーダムが一丁キラの右手に収まった。

時空管理局地上本部周辺上空。
「アスラァン!!!」
「アスランじゃない、アレックスだ!!」
シンは渾身の力を込め、アロンダイトを振るい、対するアレックスも連結ラケルタを振るう。
飛び散り、空を駆ける二色の魔力光。
「さぁ、言え!!キラは…キラはどこにいる!!!」
「誰が答えるもんか!!!!デスティニィー!!!」
『Destiny Form Fainal Plus』
シンの両手にアロンダイトが握られた。
「ならば!力づくで聞くまでだ!!」
ジャスティスを構え、突っ込んで来るアレックス。
「シンッ!!」
ヴィータが叫ぶ。
「よそ見していていいんですか?」
一斉射されるドラグーン。それを障壁で防御し、爆煙から逃れたところでゼストの刺突が襲う。
「何っ!?」
ヴィータの表情が引きつった。

「ヴィータ副隊長!!」
アレックスの目の光が失われる。
シンが気をとられた一瞬をつき、アロンダイト二本を力で強引に押し飛ばした。
サーベルの連結を解除。
アレックスが幾度か見せた攻撃パターンだ。
シンはしっかりとアレックスを見据え、両アロンダイトから一発ずつ薬莢を消費。
振り上げられるアレックスがもつ二刀のサーベルを前にしてシンは、二刀のアロンダイトを空中に放り投げた。

「ッ!?」
シンの奇怪な行動に戸惑いながらも、サーベルを振り下ろそうとするアレックス。
「いっつもそんなんで…やれると思うなぁぁああ!!」
『Type Power SEED Burst』
失われる目の光。
そして、両の掌に溢れ出す緋色の閃光。
その両手で、二刀の魔力刃を掴む。
『パルマフィオキーナ』
不快なほど眩しい光が飛び散る。
「何っ!?」
「おおぉぉぉ!!!」
パルマフィオキーナが強く発光し、同時にラケルタの魔力刃が砕かれる。
刹那
『『グリフォン』』
アレックス、シンの両脛部を繋ぐ魔力刃。そのまま、互いの脛どうしで相手を狙う。
互いの脛部魔力刃が激突。
歯を悔い縛り、持てる力、全てで競り合った。
『シュペールラケルタ&ブレフィスラケルタ』
アレックスの頭上に発生する三対の魔力槍。
「これでぇッ!?」
勝利を確信したアレックスの目に止まるのは、両手にアロンダイトを持ったシンの姿。
宙に放り投げたアロンダイトをキャッチしたのだろう。
しかも、左にもつアロンダイトを振り被っている。
魔力槍は発射体形成中、まだ発射できない。
アロンダイトからカートリッジが消費された。
不気味な、鈍い音がアレックスの耳に入る。
『フラッシュエッジ・アロンダイトシフト』
バキャッ!!
互いの脛部魔力刃が弾かれた瞬間、シンはアロンダイトを投剣した。
大型の魔力刃がジャスティスに喰らい付き、離れない。
アレックスはジャスティスで防ぎつつも、弾き飛ばされていった。
シンはそれを確認すると、ヴィータの援護へと向かう。
迷わずラウへと狙いを定め、翼を広げ、飛びたった。

機動六課。
「ぐあっ!!」
「ザフィーラッ!!」
ザフィーラが弾き飛ばされ、受け止めようとしたシャマルごと地に伏した。
「IS、ツインブレイズ。」
ナンバーズ12番目、ディード。双剣をもつ赤い髪の少女が、上空から、シャマルとザフィーラを冷ややかな視線で見下ろす。
その隣にはオットーの姿。
再び手をかざすと、収束していく青い光。
「少し、眠っていていてもらおうか…。」
ズンッ!!
六課本館の屋根から吹き出す蒼き閃光が空へと伸び、光が消えると同時に現れたのは白と紺、そして計四枚の翼を持つ少年だった。

『デバイス・フェイズシフト』
白を貴重とし、青と赤のラインが入ったフレーム部分以外。
本体部分が灰色から黒へと色を変え、蒸気を吹き出す。
『ハイマットモード・プラス』
片翼五枚、左右十枚の翼を勢いよく広げる。
「何だ?」
ディード、オットーが見上げる。
キラは倒れているシャマルとザフィーラを見つけると降下し、二人の元へと向かった。
「シャマルさん、ザフィーラさん!」
地に降り立ち、二人に駆け寄ってしゃがむキラ。
「大丈夫ですか?」
大丈夫じゃないのは見て分かった。ザフィーラは気を失い、ぐったりしている。
所々から出血していた。
キラの声に気付いたのはシャマルだった。
ぼろぼろになった騎士甲冑、煙や煤、傷で汚れた白い肌。
シャマルは力なく目を開け、力なく微笑んだ。
それから、細い声で、消え入りそうな声で、途切れ途切れ言葉を口にした。
「私…たちは……大丈…夫です…から……、キラ…さん…たちは、早く…ひな…んを…。」
目が今にも閉じそうだった。開けているだけで辛いのだろう。
そんなシャマルにキラは微笑みかけ、言う。
「…待ってて、すぐに戻るから…、それから一緒にみんなのところへ戻ろう…ね?」
薄れ行く意識の中でシャマルが最後に見たのは、光を失った鋭いキラの眼だった。

火に包まれる機動六課、所々建物が崩れ、瓦礫が地にぶつかる音がその場に響く。
二人に障壁を張ってから立ち上がり、ナンバーズのほうへとキラは振り向いた。
面倒臭そうに溜め息をつくオットー。
「すぐに終わらせる…。ディードはルーお嬢様の元へ…。」
「分かった…。」
ディードがキラに背を向け、立ち去ろうとした瞬間。ディードの顔のすぐ横を蒼き閃光が駆け抜けた。
「行かせないよ…。僕は…君達を…討つ!」
オットー、ディードの二人は不適に笑った。
「フリーダム、ドラグーンは使わないよ。」
『バリアジャケット・ヴァリアブルフェイズシフト。
ヴォワチュール・リュミエールを展開します』
十枚の蒼き翼が、形を乱し、激しく波打つ。
『サーベルモード』
音を立て形成される蒼い魔力刃、地を蹴り、キラは空に飛び上がった。

「IS発動、レイストーム。」
複数の青き光線が、上空のキラを狙い、全包囲360度からキラを狙う。
それら全てを急降下し、かわすキラ。
「何だ…こいつ、早い!!」
『クスィフィアス』
降下しながら発射されたそれはオットーのバリアに着弾、爆煙をあげ、直後、風がオットーの体を通り抜ける。
煙が渦をつくり霧散、その煙を裂いてオットーの背後に現れたキラは反転し、ガジェットの群れへと狙いをつける。
弾け飛ぶ4発の薬莢。
『ハイマット・ヴァリアブル・フルバースト』
多重弾膜のバラエーナ、クスィフィアス、そして通常射撃が、ガジェットⅠ型、Ⅲ型の群れを壊滅させた。
そのまま、地上に立つディードへ狙いを定め、着地しながらの縦一閃。
ディードは跳躍してそれをかわすとツインブレイズの片方で突きを放つ。
『シールド』
腕から発生したシールドで突きをうけ流し投げ飛ばす。
空中で姿勢を建て直し、斬撃を繰り出すが、キラは跳躍、そのまま飛翔する。
何本も放たれるレイストームの嵐を上昇降下しながらかわし、ターン、今度は左右に体を振りながら飛行。
ほとばしる奔流を避ける。
オットーのすぐ横をすれ違う刹那に蒼き刃を振り抜き、反転、バラエーナを放つ。
両手が宙を舞い、バラエーナが着弾した両膝から下が力なくだらんと垂れ、オットーは地に伏した。
「お前ッ!!」
こちらへ飛翔しながら向かってくるディードをキラも迎え撃つ。
キラによる一刀の斬撃を二刀をクロスさせうけるディード。
赤い光と蒼き光が反応をおこし、紫電を巻き散らす。
『クスィフィアス』
「何ッ!?」
キラの腰部に添えつけられた砲芯が持ち上がる。
慌ててバリアを展開するディード。
距離はほぼ零。
凄まじい衝撃と爆発、爆煙が舞い上がる。
「ぐっ!!」
歯を悔い縛り耐えるディード。
薬莢が排出される音が響く。バリアごしに見えるのは5つの魔力光。
『High MAT Full Burst』
バリアが派手な音を立て、砕けちった。
何とか後退させられるだけですんだディードはフラつく足を必死で立たせ、ツインブレイズを構える。
と、一発、弾け飛ぶ薬莢。金属音を響かせ、地に落ちる。
閃く圧縮された高濃度の魔力弾がディードの右肩に直撃した。
片方の剣を取り落とし、だらんと垂れる腕。
さらに一発。弾け飛ぶ薬莢。
今度は左腕がだらんと力なく垂れる。
冷ややかな視線をディードへ向け、直立不動でフリーダムの引き金を引くキラ。右足、左足を射抜き、ようやくフリーダムを下ろした。

地に伏したディードを無視し、オットーへと近付いて行くキラ。
体を起こしたオットーはキラを睨みつける。
あえてキラは視線を合わせ、その光を失った目で見下ろしながら通りすぎてゆくとザフィーラとシャマルのもとへ向かった。
暗雲立ち込める空。
ポツポツと少しずつ、雨が降り始めていた。