Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第18話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:44:16

機動六課隊舎。
「これで全員です。」
「ご苦労様。」
フェイトは隊員に挨拶し、エリオとキャロを探しに向かった。
怪我人の搬送をするため、今回重症をおっていない隊員たちも手伝いに来ているのだ。
ティアナもフェイトと一緒に戻っている。なのはとはやての二人に関しては今日は地上本部に残るとのこと。
「エリオー、キャロー?」
雨音に負けないよう少しだけ大きい声で呼ぶ。
「…フェイトさん……。」
エリオとキャロがこちらを向き、雨で張り付いた前髪を払いもせずフェイトを虚ろな目で見た。
「こんなに濡れて…早く戻らないと風邪ひいちゃうよ?
キラは?もう、戻ったの?」
ふと視界に入る地に落ちたままのストラーダ。
柄部分が途中から折られていた。
「ッ!?エリオ?どっかやられたの。」
フェイトが心配し、エリオに言うが首をふり、否定した。それから、声を喉から絞り出すようにして
「キラさんが…キラさんが…連れていかれました…。」
「キラが!?」
なるほど、道理で先ほどから姿をみないはずである。
「私たち、何も出来なくて…。助けてあげられませんでした。」
おえつを漏らしながらエリオとキャロは声を上げ泣いた。
自分の非力さに泣いた。
フェイトは複雑そうな表情でその様子を見ていたが、やがて二人の肩を抱き、耳元で囁くように言った。
「キラのことは…きっと私たちが何とかするから…。
今は皆のところへ戻ろう?今は体を休めて…明日のために…。」
「「……はい……。」」
フェイトは二人の手を引き、搬送ヘリに戻った。

翌日、病院一室。
スバルは体を起こしてからも終始無言で窓の外を見ていた。
すっかり雨雲はさったようで、今日は中々に日差しが強い。
ちなみに、隣のベッドではシンが雑誌を読んでいる。といっても、目次を開いたまま一行に開く気配がない。
室内には重苦しい雰囲気が漂っていた。

コンコンッ
そこへ、ノックの音。
「入るわよ~!」
「「失礼します。」」
声から察するに、ティアナ、エリオ、キャロだろう。
「ど~ぞ~。」
シンが言うと、三人が部屋に入ってくる。
「シンさんもスバルさんももう起きててもいいんですか?」
「あぁ…、俺の方は大丈夫だ。」
「私も大丈夫だよ。」
キャロに微笑んで答えるシン、スバル。
「差し入れ、持ってきたわよ。どうせ二人ともご飯食べてないんでしょう?」
会話もそこそこ、エリオとキャロ、ティアナが持っている袋から食べ物を並べていく。
おにぎり、サンドイッチ、ホットドック、冷たいカップのスープに惣菜、お茶、etc...。
食べ物を見た瞬間、シンのはらが鳴る。
「昨日、何も食べなかったからなぁ~…、食べていいのか?」
「…どうぞ。」
キャロが包装を剥ぎシンにおにぎりを渡す。
「おぅ、サンキュー、キャロ。」
シンは勢いよく食べ始めた。

別室、シャマル、ザフィーラの部屋。
ヴィータが部屋に入ると、シャマルが体を起こし向かえた。
「別に、無理して起きなくてもいいんだぞ?」
「うぅん、別に無理なんか…、私よりザフィーラの方が重症だから…。」
「そうか…。」
「あの一瞬、ザフィーラが私をかばってくれなかったら…どうなってたことか…。」
シャマルが隣のベッドに包帯を巻き横たえているザフィーラを見た。
「まぁ、ザフィーラもヴァイスもリィンも峠を越えたみたいだし…、リィンは明日にでも目を覚ますそうだ…。
ただ…。」
ヴィータは口を濁し、その先を言おうか言うまいか悩んでいたが、
「ただ、ライトニング5…キラ・ヤマトな…。
あいつは…やつらに連れていかれた…。」
「……連れていかれたって……?」
「…戦闘中、シンも敵に連れていかれそうになったけど…、シグナムが連れ戻してくれた。」
室内が沈黙に包まれる。
「……また、あとで来るよ。でも…あいつ…キラのことだけど……。」
ヴィータはドアを開けたまま立ち止まり
「何でもない。」
そう言って病室から出ていった。

一方、戻ってスバルとシンの病室。
「そっか…キラも…。」
エリオとキャロから詳しい事情を聞かされるスバルとシン。
それから、スバルとティアナから聞く話によれば、ギンガ・ナカジマ、スバルの姉も連れ去られたらしい。
「敵として…出てこなきゃいいけどな……。」
シンが呟く。
前回地上本部を襲撃してきたのはスカリエッティ一味。
そのスカリエッティは生命操作などの技術にたけていると聞いた。
ならば、この世界には存在しないコーディネイターはスカリエッティにとって興味深い存在だ。
利用しようとしないはずがない。
シンの呟きはその場の全員に聞こえていた。

スカリエッティ、アジト。
元はナンバーズが眠っていたカプセルに先の戦闘にて回収されたギンガ・ナカジマが加えられた。
因みに、ディード、オットー、チンクなんかは修理中。とりあえず、スカリエッティはそれらをクアットロやウーノにまかせ、自分はキラ・ヤマトのデータをとっているところだ。
キラが運ばれてきてからすぐに作業を開始したのだ。
口の両端をつり上げ、目を見開き、キラの、いや、世界最高のコーディネイターに関して調べていく。
「すばらしぃ…。」
遺伝子操作を用いれば、優れた魔導士をいくらでも量産できる。
学習能力も向上させられる。戦闘機人と違い、いちいち調整する必要もない。
「すばらしいよ…コーディネイター…。さて……。」
キラについてはデータをとり終わった。
キラの隣にはアレックスとラウ、二人も寝かせてある。
アレックスとラウに仕込んだキラを敵だと認識させるための記憶操作を解除する。
「アレックスとラウにはまだ協力してもらおう…。
世界最高のコーディネイター…君には…これからを盛り上げるために…協力してもらおうか。」
暗い部屋、スカリエッティの笑い声が響きわたった。

「いやぁぁああ!!やだぁ!!!」
台座に縛り付けられ、泣き叫ぶヴィヴィオ。
ウーノとクアットロが気にもとめずにレリックを埋め込む準備が進められて行く。
すると、ドアが開きレリックのケースを持つスカリエッティとバリアジャケットを纏ったキラが立っていた。
「……キラ…。」
ヴィヴィオが泣きやみ、きょとんとした表情でキラを見つめた。
「…大丈夫だよ…ヴィヴィオ…。」
キラがゆっくりと歩み寄っていく。
「…僕が……側にいるからね。」
ヴィヴィオの涙を手で拭い、微笑むキラ。しかし、その目の光は失われていた。

はやてはアコースのもとへ向かっていた。
時空管理局地上本部にて確認をとろうとしていたことがあるのだが、それは秘匿事項ということで確認をとることは出来なかった。
それに、レジアスがスカリエッティに手を貸しているというのは、あくまではやての推測に過ぎない。
推測で疑われる側の気持を考えれば、ぶしつけだったかもしれない。
しかし、それでも先の戦闘にて失った戦力は大きい。スカリエッティがあれほどの戦力を蓄えているとなれば、のんびりしている分けにはいかない。
まだ管理局が崩壊したわけではないのだ。
「まだや…まだ予言は当たってへん。」
覆すチャンスはある。
はやては後部座席から運転手に向かって言った。
「すまんけど…急いでくれるか?」
「はっ、了解しました。」
運転手はアクセルを踏み込み、車のスピードをあげた。

シンとスバルの病室。
「スバルが戦闘機人?」
シンが声をあげた。
「うん、ごめんね。私がスバルに口止してたの。」
ティアナが言う。エリオとキャロも少し驚いたような表情をしていた。
「まぁ、それは…別に…。でも隠すようなこと…。」
いいかけてシンは口をつぐんだ。
コーディネイターとナチュラルの事を思い出す。
「そうか…。」
暗い雰囲気漂う病室。ティアナがスバルとシン、二人の肩を叩く。
「まだ全てが終わったわけじゃない。私たちはまだ戦える。
だから、スバル、シン、エリオ、キャロ、奪われて悔しいなら取り返してやればいい!
きっとギンガさんもキラもまだ生きてる。」
病室にいる全員がティアナの言葉に力強く頷いた。

機動六課隊舎屋上。
「なのは、落ち着いた?」
ヴィヴィオ守ると誓ったにも関わらず奪われた悔しさと、不安にかられ泣いてしまったなのはを抱き締めながらフェイトが言った。
「うん…。」
涙を拭いながら顔をあげるなのは。
「私もヴィヴィオのことは心配…でもキラのことも心配だ…。
まだなのはには知らせてなかったけど六課防衛の為、戦ったキラはアレックスに捕獲された。」
「………そんな…。」
「アレックスもラウも記憶を操作されているから、キラやシンの敵に周り戦った。
だとすれば、キラが敵に回る可能性はかなり高い。」
「…そうだね…。泣いてる場合じゃないよね…。
取り戻すんだ、ヴィヴィオも…キラも…!」
「がんばろう、なのは!」
あれほどの戦闘のあとにも関わらず、晴れわたり、澄みわたる夜空の下、決意を新たにする二人だった。