Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第21話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:45:57

「防御陣形!!隊列、乱したらあかんよ!」
ゆりかごからの砲撃。
一度の砲撃で数十の航空魔導士が地へと落下して行く。
それを見てはやては瞬時に判断し、指揮をとる。
(それにしても…大きい…。)
視界を塞ぐ巨大な戦艦。
人が豆粒のように見える。
(外からだと、魔導士が何人あつまってもどうにもならへんなぁ…。)
しかも射出口からは大量のガジェット二型が姿を現す。
「さぁ、ミッド航空魔導士部隊、勇気と力の見せどころやで!」
夜天の書が開かれた。

ゆりかご内部突入場所を探すヴィータとなのは。
すれ違うガジェットを叩き落としながらの作業だ。
『高町一尉、突入口が見付かりました。突入部隊二十名が潜行しています。』
航空魔導士から入る通信。
『外周警戒は私が引き受ける。なのはちゃん、ヴィータちゃん、行ってくれるか?』
はやてからの通信が割り込んだ。
二人は了解と返事、送られてきたデータを頼りに突入口へと向かい、突入口を拡張爆破。
「機動六課スターズ1、2内部通路、突入!」
そんな二人を異変が襲う。
飛翔魔法の維持が困難になった。
「AMF?」
「内部空間全部に!?」
驚きつつも、何とか飛翔魔法の維持、二人は着地した。

スカリエッティ、アジト。
地を揺るがす振動。
「烈風一陣!!!」
掛け声ととも跳躍するシャッハ、カートリッジを消費。
「切り裂け!ヴィンデルシャフト!!!」
ガジェットの群れへと飛込んで行く。
一機、また一機とヴィンデルシャフトを巧みに操りガジェットを破壊。
「はぁぁ!!」
カートリッジ二発と引き替えに巨大な魔力刃をさらに巨大化、ガジェットの大群を一刀のもとに薙払うのはフェイトだ。
どうやら辺りのガジェットを一掃したようで、フェイトとシャッハが笑顔を見せる。
『別動隊、通路確認。危険物の順次封印を行います。』
「了解!各突入ルートはアコース査察官の指示に。」
『了解』
フェイトは別動隊に指示をだし、通信を終え、それからシャッハへと向き直る。
「ありがとうございます。シスターシャッハ。お二人の調査のお陰で、迷わず進めます。」
「探査はロッサの専門です。この子たちもよくやってくれました。」
シャッハはそう言って、側にいる猟犬の一匹に視線を落とす。

「あなたは、このまま奥へ。スカリエッティの居場所まで!」
「はい。」
シャッハにその場を任せ、フェイトはスカリエッティの元へと向かった。

廃棄都市街。
ガジェットの追撃を受けるヘリ。
シン、スバル、ティアナ、エリオ、キャロとフリードの五人と一匹。
中々安定しないヘリ、その為、メンバー一同、降下出来ないでいた。
「ごめんね、皆、思いっきり揺れるからしっかり捕まってて!」
アルトが言うが、
「アルトさん、俺が援護する!だから、ハッチ開けて!!!」
そういうことならと、ハッチが開けられ、シンが飛び下りた。
すでにバリアジャケットは装着済みだ。両手には二刀のアロンダイトを持つ、つまり、デスティニー最終形態、いや、セカンドフォームだ。
許可は降りている。
この緊急事態力を出し惜しみしていても仕方ない。
『High-energy long-range cannon』
片方のアロンダイトの切っ先をヘリを追うガジェットへと狙いを定める。
二つのリングがアロンダイトを中心に発生、切っ先には環状魔法陣が展開された。
そして
「行っけぇ~!!」
一瞬で膨れ上がる緋色の閃光が一直線に放たれ、ガジェットを破壊。
シンはヘリを追い、ビルの隙間を縫うようにして移動するヘリを追い掛ける。
「よし!皆、降下ポイントに着くよ!準備はいい?」
ガジェットが一掃された事を確認してアルト。
「「「「はい!!!」」」」
シンを除いたメンバーが返事をし、同時にハッチが解放された。
シンが中へと入ってくる。
「確認するわよ?」
ティアナがモニターを開くと画面には地図。
「私達はミッド中央、市街地方面!敵戦力の迎撃ラインに参加する。
地上部隊と協力して向こうの厄介な戦力、召喚士や戦闘機人たちを最初に叩いてとめるのが私達の仕事。」
「他の隊の魔導士たちは、AMFや戦闘機人戦の経験が殆んどない。
だから、私達がトップでぶつかって、とにかく向こうの戦力を削る!」
ティアナを引き継いでスバル。
「あとは迎撃ラインがとめてくれる…そういうことか?」
「そう。」
シンの言葉にティアナが頷くと、エリオが口を開いた。
「でも、こんなときに不謹慎ですけど、ちょっとだけエースな気分ですね。」
頷き、少しだけ緊張を緩める一同。
「あぁ、そうだな。けど、任されたからにはきちんとこなしてのエースだ。気を抜くなよ、皆。」
しかし、シンの一言で再び緊張の糸がはりつめた。

「ガジェットも戦闘機人も迎撃ラインを突破されたら市街地や地上本部までは一直線です。」
「市民の安全と財産を守るのがお仕事の管理局員としては絶対!行かせるわけにはいかないよね!」
キャロとスバルが熱を込めて言った。
「あとは、ギンガさんとキラが出てきたら優先的に対処、安全無事に確保!」
皆に最終確認をとったティアナの号令で一同はハッチから飛び下りた。
スバルはマッハキャリバーで道路を滑り、エリオとキャロは力を解放したフリードの背にのり、空を行く。
そして、そのフリードの隣を飛翔するのはティアナを抱えたシンだ。
赤い羽が展開され、その隙間から透明感を帯た薄紫の鮮やかな光が吹き出している。
その様子を遠方から監視している人影、オットー。
空間モニターを使い眺めている。
「ノーヴェ、ディード、ウェンディ…、例の四人と、見慣れないのが一人そっちに向かってる。」
『ホントか?』
問い返してきたのはノーヴェ。
「あぁ、ただ、前とは状況が違う。正面から戦う気で来てる。」
『なぁ~に、望むところッスよ!』
モニター越しに写るノーヴェの横に現れたのはウェンディだ。
「ゆりかご浮上前に中央本部を制圧…、指令部を押さえたい。
状況に対する不確定要素はなるべく排除する。」
そう告げ、オットーは通信を切った。

「あっ!」
廃棄都市街にいくつもそびえたつ高層ビルのひとつ、その屋上にルーテシアを発見したキャロ。
目が合う。
ルーテシアは腕を動かし、ある一点を指差した。
アルトの操縦するヘリが丁度旋回行動中だった。
「フリード!」
危機感を感じたキャロはフリードに指示、ティアナが声をかけるが、エリオ共々行ってしまった。
「いいのかよ?」
シンが目をパチクリとさせる。
「んなわけないでしょ!シン、スバルの近くに」
ティアナの指示通り、マッハキャリバーで疾走するスバルの元へ追い付く。
「予定変更、キャロたちが向かった方を先に捕まえる!いいわね?スバル」
「うん!ウィング!!」
スバルがウィングロードを展開する前に緑色の閃光が走った。
スバルは飛び退き、シンはティアナを抱えたままシールドを展開。
オットーが放ったレイストームを防いだ。

レイストームはそのまま地に着弾。爆煙が上がった。
「何だ、一体どこから!?」
シンとティアナ、二人を覆う影、最初に目についたのは鮮血色の二刀のブレイド。
『フラッシュ・エッジ』
左手が緋色に輝き、アロンダイトが発生。
右手でティアナを抱いたまま振りかぶり、横一閃を繰り出すと、魔力の刃がディードへと回転しながら向かっていく。
相手が回避行動に移る間に近くのビルに着地。
「ティアナ!あいつは俺に!!お前はスバルの援護!」
「エリアルキャノン!」
赤い閃光が膨れ上がる。
「つっ!!」
シンは舌うちしつつ、左手のアロンダイトを回避行動中のディードへむけ投剣。先程放ったフラッシュエッジが折り返し戻ってくる。
丁度挟み撃ちの形になった。
挟まれたディードの反応が一瞬、驚愕に遅れる。
充分な隙。
『High-energy long-range cannon』
ウェンディのエリアルキャノンに狙われるスバルを助けるべくして放ったそれは見事エリアルキャノンの発射阻止に成功した。

「スバルさん、ティアさん、シンさんが…。」
巨大な白竜、フリードの背中から振り返りみるキャロ。
その視線の先には立ち上る煙と響く爆音。
「合流を!」
エリオがそう言って手綱を引こうとした時、上空から接近するガリュウの姿。
『ホイール・プロテクション』
ケリュケイオンから放たれる桃色の閃光。ガリュウの攻撃を何とか回避した。

「(ティア!シン!)」
スバルからの念話。
「(この状況で個人戦は不味いわ!合流を)」
三人は分断され、ティアナは廃ビルの中、スバルは道路。シンは民家の前にいる。
「残念でした、合流はさせねぇッス!」
声、ティアナは慌てて物陰に身を隠す。戦闘機人二人、ガジェットが六機。
声のした方向を覗き見、確認する。
「(スバル、ティアナは廃ビルの中だ、今場所を送る、援護いけるか?)」
「(ちょっと時間かかりそうだけど、必ず。)」
スバルは足を止め、目の前の敵と対面した。
「ギン姉ぇ…。」

時間がかかる、ということはティアナが圧倒的に不利に立たされている以上、危険だ。
何よりビルに閉じ込められている。外にはギンガとディード、そしてこちらの動きを観察している敵もいるはずだ。

シンは目の前の敵、ディードを見据えた。

あの結界の中に何人敵がいるかは知らないが、早く終わらせるに越したことはない。
シンは切っ先をディードへむけ、つばさを展開、つばさからシンの身の竹ほどの鮮やかな光が漏れだした。

廃ビル内部。
「仲間と引き剥がされた気分はどうッスか?」
相手、つまりはウェンディとノーヴェだが、ティアナは二人の様子を窺いつつ、思考を巡らせる。

こっちは結界の中、シンはともかくライトニング、スバルは分断距離と戦力負担がかなり大きい…。
背中を見せたら…その瞬間に終わる。

クロスミラージュを握る手に力を込め、祈るように額にクロスミラージュを預ける。
「(ライトニング、スバル、作戦、ちょっと変更。目の前の敵、無理して一人で倒す必要ないわ。
足どめして削りながらそれぞれに対処。それでも充分、市街地、中央本部は守れる。
シン、悔しいけどあんたは私達とは別格、目の前の敵を全力で叩いて!)」
「バッカじゃねぇーの?お前ら倒すのにそんなに時間はかかんねぇーし、第一そう簡単にあたしらがやられるかっつの!!」
怒声とともにノーヴェが物陰から踊り出て拳を振りあげる。
ティアナ定石通りバックステップ、ノーヴェの拳がティアナを捉え損ねる。しかし、背後にはボード状の武器を振り被ったウェンディがいた。
「あんたは捕獲対象じゃないッスから、殺しちゃっても怒られないっすからね!」
ティアナは瞬時に膝の力を抜く。
ダッキング。
髪が何本か持っていかれた。空を切るウェンディの攻撃。
ウェンディ、ノーヴェ、二人が驚愕に目を見開く。
だが、ノーヴェが足を振り上げた。
ティアナは左右のクロスミラージュでノーヴェ、ウェンディに狙いをつけ、躊躇いなくトリガーを引く。
着弾した魔力弾が音を立て破裂音とともに煙を発生させる。
その煙の中から伸びる魔力で生成されたアンカー。
中央にぽっかりと開いた穴を飛び越え、ノーヴェ、ウェンディとは反対側へと飛び移った。

対キラ・ヤマト戦で完全なる敗北をきっしたディード。だが、その戦闘経験は大いに成長の役立った。
シンの動きを確実に目で捕えていた。
「フッ!」
「チィッ!!」
呼吸とともに振り下ろされる刃。
『Warnning!!』
デスティニーの警告。背後から降り注ぐ閃光の嵐。
「何でこいつらは!デスティニー!」
『フラッシュエッジ・アロンダイトシフト』
右手の大剣をディードに向かい投剣。
「そうそう何度も!」
その攻撃は交され懐に潜り込まれる。
「こいつら…。」
鍔競り合い。力で強引に弾き飛ばす。戻ってきたアロンダイトを掴むと
「IS発動、レイストーム。」
背後で声。緑色の閃光がシンの視界を塞いだ。

スカリエッティ、アジト。

「これは…人体実験の素体?」
人体実験、分かっていたことではあったが、あまりの数の多さに舌を巻くシャッハ。
「だと思います。人の命をもてあそび、ただの実験材料として扱う…。あの男がしてきたのは…こういう研究なんです。」
いつもよりもいくらか低い声音のフェイト。
「一秒でも早く…止めなければなりませんね。」
二人が話していると
ズゥン…
振動。
頭上にはガジェット三型、このままだと直撃、そう判断したフェイト、シャッハはその場から飛び退く。
しかし、突然足元に現れたセインの手によってシャッハは足を捕まれ、動けなくなってしまう。
「シャッハ!ッ!?」
空を切る音、冷たい金属の刃がフェイトに向かって飛んでくる。
スローターアームズ。
ナンバーズ七番目、セッテの攻撃。バルディッシュで弾くフェイト。
そして、シャッハの頭上からガジェット三型が落下してくる。
シャッハは足を掴まれて動けない。
苦肉の策だ、ヴィンデルシャフトから消費されるカートリッジ。フロアに向け渾身の力で叩き込む。
シャッハはフロアをぶち抜き、地下でセインと対峙する。
「(フェイト執務官、こちらは大丈夫、戦闘機人を一人、補足しました。
この子を確保次第、すぐにそちらへ向かいます。)」

「(了解。)」
念話で会話するフェイトのもとに近付いてくる足音。現れたのはナンバーズ三番目のトーレとセッテだ。
その背後にはラウと名乗った少年もいた。
「フェイトお嬢様…。こちらにいらしたのは帰還ですか?それとも反逆ですか?」
トーレとセッテ、ラウ、有る程度までフェイトの近くにやって来ると、三人は立ち止まった。
「どっちも…違う…。犯罪者の逮捕…それだけだ。」
そんな三人を警戒し、フェイトはバルディシュザンバーを構えた。

ゆりかご内部。
ガジェット一型による射撃弾幕をくぐり抜け、グラーフアイゼンを叩き込み、破壊する。
ついで出てきたガジェット三型にはギガントフォームで対処。ヘッドが巨大化し、そこから打ち出される巨大な鉄球に魔力を付加。
ガジェット三型を一掃した。

肩で息をするヴィータ。
AMF空間内での連続魔法使用で魔力、体力共々削られていた。
「ヴィータちゃん、あんまり飛ばし過ぎると…。」
着地したヴィータに習ってなのはも着地。ヴィータに駆け寄る。
「うるせーよ…センターや後衛の魔力の温存も…はぁっ…前衛の仕事のうちなんだよ…。」
それはなのはにも解るが、本人がこう言っている以上、いくら行っても無駄であろう。
『突入隊、機動六課スターズ分隊へ。
駆動炉と玉座の間、詳細ルートが判明しました。』
空間モニターが展開され、ゆりかご内部の図面が現れる。
駆動炉、玉座の間の位置は真逆方向だ。つまり…。
「仕方ねぇ…、スターズ1とスターズ2、別行動で行く。」
「ヴィータちゃん!?」
なのはが引き留める。
「駆動炉と玉座の間のヴィヴィオ…、片っぽ止めただけで停まるかもしんれねぇーし、片っぽ停めただけじゃ停まらねぇかもしれねぇんだ。
こうしてる間にも…外は危なくなってる。」
「でも…ヴィータちゃん…、ここまでの消耗が…。」
ここまで、なのはの魔力を温存させるためヴィータが一人で戦ってきた。
ヴィータの表情にも疲労の色が見える。
「だから私が駆動炉に回る。お前はさっさとヴィヴィオを助けに行ってこい。」
不適にもヴィータはなのはに笑って見せた。
「でも…。」
「私とアイゼンの一番の得意分野、知ってんだろ?」
グラーフアイゼンを彼方へと向けるヴィータ。
「破壊と粉砕…鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵、グラーフアイゼン…。
砕けねぇものなぞ、この世にねぇ。」
ヴィータはなのはに背を向け、歩き出す。
「一瞬でぶっ壊してお前の援護に向かってやる。さっさと上昇を停めて、表のはやてに合流だ。」
心配そうにヴィータの力強いけれども小さな背中を見送るなのは。
「…うん…気を付けて…。絶対、すぐに合流だよ!」
「ったりめーだ。」
なのははヴィータに背を向け走り、跳躍。
飛翔魔法を開始。ヴィータとなのはは別れた。

ゆりかご外部周辺。
息を切らすはやて。撃てども撃てども減らないガジェットの数。
『スターズ1、玉座の間へ、スターズ2、駆動炉へ向かいました。』
入る通信。
(なのはちゃん、ヴィータ…。)
はやては胸の内、言い知れぬ不安を覚えた。

廃棄都市街、ビル、結界内。
四角形の作り、中央には同じ形状の吹き抜け。
淡い青色の結界のせいで外からの光も同色に染まる。
そして、その吹き抜けの間を飛び交うオレンジ、黄色の二色の魔力光。
ティアナの走る姿、目の前に現れるウェンディ。
ティアナが逃げ場を塞がれ足を停めた。
吹き抜けからブレイクライナーを用い姿を現すノーヴェによる隙を着いた攻撃がティアナを捕えた。
しかし、瞬間、ティアナの姿が破裂消滅してしまう。
「やっぱり幻影…。」
面倒臭そうに言うウェンディ。
しかし、今度は四人のティアナが一斉にシュートバレットを連射する。
「幻術馬鹿のひとつ覚えが!」
弾幕をかいくぐり、ウェンディ、ノーヴェがティアナに接近する。
「見えてんだよ!!」

周りの幻影を無視し、一直線に自分へと向かってくるノーヴェ。
まずい。
ティアナは判断し、右のクロスミラージュで直ぐ様アンカーを射出。吹き抜けに向かって飛ぶ。
間髪入れず、空を切るノーヴェの蹴り、
「ウェンディ!」
「分かってるッス。」
放たれるエリアルキャノン。同時に左のクロスミラージュのアンカーを射出、右のアンカーを消し、方向転換。
右のクロスミラージュでシュートバレットをウェンディに向け放った。

現在ウェンディ、ノーヴェがいる階よりも三階上の廊下に姿を消したティアナ。
「前より弾丸が鋭くなってるッスね…、飛べない分、楽勝だと思ってたんスが…。」
「あんな豆鉄砲、一発、二発ぐらいどうってことねぇ!あのアンカーだって絶っちまえばそれまでだ。」
「まぁ、そうっスけど…。」

(こんな狭いところで二人相手じゃ、持ち答えるのが精一杯。結界破壊スタッフが来るまで何としてでも生き延びなきゃ。)
柱の陰に隠れ、ウェンディ、ノーヴェの様子を窺いながら、自分の圧倒的不利を実感する。
「…フゥッ…」
一息つくティアナ。
しかし、手がないわけではない。自分にはまだ切札がある。
だが、その切札を使用する為の状況をつくる為の策がまだ出来ていない。
敵が動き出した。
ティアナもその様子を見て、策を考える時間を造るため行動を開始した。

「何で…、こんなことを!!」
シンは赤い瞳に怒りを露にしてディード、オットーを睨みつける。
「別に…命令だから。」
「第一、お前が知る必要もない!」
切りかかってくるディードを目の前に、アロンダイトを連結。
「…そうかよ!」
自分の身長を越える魔力、実体に分かれる連結長剣。
市街地を巻き込んでの戦闘、人造魔導士の素体とされた無関係な人々、避難に逃げ惑う一般市民の姿が浮かぶ。

「お前らが…、こんなことをするから!」
『Type Power Seed Burst』
緋色の魔力光が輝きを増した。右袈裟一閃、ディードがツインブレイズの片方で受け止めるも、明らかなパワーのさが歴然。
受けた筈の刃は思いきり地面に叩きつけられ、アロンダイトは地を砕く。
「うぉぉおおおお!!」
返す刀で左逆袈裟一閃。舞い上がる瓦礫。
ツインブレイヅを片方弾き飛ばした。
「なっ、IS、レイストーム。」
『シールド』
全ての閃光はシールドに防がれる。連結を解除、アロンダイトの片割れをオットーに向け投剣。
オットーはたまらず障壁を展開。アロンダイトが突き刺さり、障壁を破壊する。
大きく体勢を崩すオットー。
「オットー!ッ!?」
叫ぶディードの顔面をシンの左手が掴んだ。
『パルマフィオキーナ』
顔面をつき抜ける緋色の閃光。力なく崩れ落ちるディード。
『Change Speed SEED Burst』
展開される翼から漏れ出す魔力の噴射炎。
一刀のアロンダイトの切っ先をオットーに向けた。
体を沈める、そして、地面をおもいっきり蹴り、オットーへむけ低く、けれども力強く跳躍した。

「シューティングレイ!」
飛翔するフリードの背中にのるキャロ。
桃色の閃光が幾重にもわかれ、ガジェットに乗るルーテシアを狙う。
「あなたは…どうしてこんなことするの!」
ルーテシアはキャロの攻撃を迎撃、全てを相殺する。
一方、エリオとガリュウも空中で激戦を繰り広げていた。激しくぶつかりあうストラーダの刃とガリュウの刃。
「こんなところで、こんな戦いをする理由は何なんだ!」
ストラーダを巧みに操り、エリオは空戦をこなしながら問掛ける。

「目的があるなら教えて!悪いことじゃないなら、私達、手伝えるかもしれないんだよ!」
戦場を飛び交う言葉と思い。
ルーテシアは聞く耳持たずといった感じでダガーを生成。キャロとフリードを狙う。
「キャロ!」
一瞬それたエリオの注意。
ガリュウは見逃さない。エリオはガリュウの攻撃を跳躍して回避。
そのままストラーダでフリードの元へと飛行し、キャロを守るようにして降り立つ。
そんな二人を見て、ルーテシアが悲しげな表情を見せた。

管理局地上本部の塔を目指すゼスト、アギト、アレックス。
しかし、その進路にはシグナムと、一般魔導士数名が立ちはだかっていた。
「局の騎士か?」
ゼストは空中で静止し、シグナムに問う。
「本局機動六課、シグナム二尉です。前所属は首都防衛隊…。あなたの後輩ということになります。」
「そうか」
オロオロしだすアギト。アレックスは表情を変えもしなかった。
「古い友人に、レジアスに会いに行くだけだ。」
「それは…復讐の為に?」
「言葉で語れるものではない。道を…開けてもらおう。」
ゼストは槍を、アレックスは盾を構える。
「言葉にしてもらわねば、譲れる道も…譲れません。」
鞘から姿を現す研き抜かれた刀身、レヴァンティン。
カートリッジをロードし、一瞬、炎が現れた。
「あっ!」
「どうかしたか?アギト。」
「何でもねぇよ…、グダグダ語るなんてな!騎士のやることじゃねぇんだよ!」
ゼストと融合するアギト。
「騎士とか、そうでないとか、お話しないで意地をはるから戦うことになるんですよ!」
リインがシグナムと融合する。
それぞれ姿(色だが)を変えて対峙する。
「アレックス、お前は一般魔導士を頼む。」
「わかった。」
ゼストの言葉に、静かにアレックスが頷いた。

「でぇやぁぁああ!!」
咆哮とともにガジェット三型を叩き潰したヴィータ。
ゼェ、ハァと息をきらし、体力と魔力の消耗が窺える。
「ここまで…はぁっ…くりゃ…もうちょっとだカートリッジもまだある。」
(大丈夫、楽勝だ。)
その思った刹那、背後に気配、ヴィータは慌てて飛び退き、その何かと対峙した。
それはなのはを再起不能寸前にまで追い込んだ魔導機械。
ヴィータの目の色が変わり、全力で目の前の敵を排除した。魔導機械は爆破し、今度は目の前から多量の魔導機械が姿を現す。
四足で這ってくる機械。ヴィータはグラーフアイゼンを構え迎え撃とうとすると蒼い閃光がその全てを破壊した。
轟音、爆音が響きわたり、そして煙の中から現れたのはキラ。
「キラ!」
「ヴィータ副隊長!くっ!!こいつら!!」
『HighMAT Full Burst』
放たれる五の奔流が、キラの背後を追って来ていたガジェット、それからヴィータが先程叩いた魔導機械を破壊した。
「キラ、無事だったか…。」
「えぇ、ゆりかご内にナンバーズの姿が見られなくなったので何とか脱出を試みたんですが…。」
「まぁ、お前は管理局側の人間だからな…。そうそう油断しねぇだろ。」
キラの横をすれちがうヴィータ。
「私はこれから駆動炉に向かうんだ。キラ、お前はなのはがいる玉座に行ってくれ?」

ヴィータの腹部から伸びる蒼い魔力刃。

「えっ…?」
滴る血液。

「キ…ラ…お前…?」
グラーフアイゼンを振ろうと両手で柄を握ろうとする、しかし、握る場所がなかった。
左手に握るグラーフアイゼンはそのすぐ上から切断され、フロアに転がっている。
「なのはさんは玉座に向かったんだね?あとは僕にまかせて、ヴィータ副隊長はそこで休んでいてください。フリーダム!」
『HighMAT Mode』
キラは笑ってそう告げると、計八枚の翼を広げ、ヴィータが辿ってきた道を戻って行った。
ヴィータを膝を突き、フロアに伏した。
思えばおかしかった。『追われてきた』キラはそう言った。だがその割には息一つきらしていなかった。
追撃をうけたにしてはバリアジャケットも綺麗すぎた。恐らくはガジェットも、あの魔導機械もキラを追ってきたのではなく、ヴィータを追ってきたのだろう。
「…あぁ…ぁ…間に…合わねぇじゃ…ねぇかよ…キラ…。」
諦めの混じった力なくヴィータの口から呟かれる言葉。口に広がる鉄の味。
「ガハッ、ゴボッ、ゴホッはやて…、シグナム…、シャマル…、ザフィーラ…みん…な…ごめ…。」
意識が薄れて行く。
自分の甘さを呪った。敵に、あのスカリエッティに捕まったキラがただで済むはずがないとは分かっていた。
けれど、心のどこかで敵にしたくない、戦いたくない、甘さがあったのだろう。キラの無事を喜び、安堵する自分がいた。
「…で…なん…でだよ…。もうちょっ…とだった…のに…。なぁ…、なん…でだよ…キラ…。」
姿が小さくなって行くキラに向け、かすれた声で言う。無論、返事は返ってこない。
「ちく…しょう、ちくしょう…ちく…しょ…う………ッ……………………………………………。」
ヴィータは瞼を閉じた。