Seed-NANOHA_140氏_第20話_後編

Last-modified: 2007-12-23 (日) 18:26:26

「本当なの?」

研究室で、さっきのことを報告するクルーゼ。

「ええ。私のほかにもコズミック・イラの世界からの来訪者が数人、MSがある状態で管理局側にいました」

それを聞いてプレシアが考え込む。

非常にまずい状況だ。

プレシアもプロヴィデンスを見て驚きの連続だった。

それが、クルーゼがいたときは2体。だが、クルーゼの予想ではおそらくもう1体いるという。

しかも、彼が見たMSはプロヴィデンスよりも後に作られ、性能は上だという。

だが、クルーゼは笑いながら言う。

「まあ、何とかなるでしょう。私も独自ではあるが魔法というものも使え、あなたもプロヴィデンスを改良してくれた。性能面ではおとりはしないはずさ」

そして、パイロットとしての腕も上だという自身もある。

「ですから、MSは私に任せてもらえれば何とかなるでしょう」

それを聞いて考えるプレシア。そして………

「わかったわ。じゃあ私も行きましょう。おそらくチャンスはこれしかない」

そう、アリシアのためにも、どうしても必要な存在、フェイト。

アリシアのためにも彼女が必要不可欠である。

「あのお………」

ふと気付けば、マユが扉の前に立っていた。

「できればでいいです、私にも手伝わせてください」

いきなりのマユの言葉に、プレシアは考える。

「いままでずっとお世話になりっぱなしで、私にも何か出来ることがあればさせてください!」

だが、今回は管理局があいて、まだ魔法を覚えたてのマユには荷が重い。

だが………

(いいではないですか)

クルーゼがマユに悟られるよう念話で話しかける。

(運よく彼女はフェイト・テスタロッサと接触している。それを利用できるのでは?)

クルーゼの言葉を聞いてもう一度考えるプレシア。

そして出した答えは………

「わかったわ、けど決して無理はしないでね」

正直戦わせたくなかったが、クルーゼの言い分、そして何よりマユの言葉に心が揺れた。

本当に以前の自分にもどりつつある。

この自分ならフェイトを自分の娘として迎え入れられる。

そんな気がした。



レイの放った言葉に、一同が凍りつく。

驚かないのは事情を知っているムゥだけだった。

「人類の抹殺?」

クロノにとっては、それこそ漫画やゲームでしか聞いたことの無いような言葉だった。





「ええ」

レイは冷静に答える。

「以前も言いましたが、ラウもクローンです。それで俺と同じように出来損ない呼ばわりされました。勝手に作っておきながら、勝手に失敗作呼ばわりされる。それで彼は憎んだんです。愚かで身勝手な人を」

そこで、ムゥは立ち上がる。

「それで、お前はどうするんだ?」

レイはムゥを見る。

その顔は険しい。

「お前さんはあいつに一緒に来いっていったんだよな?あんたはどうするんだ?あいつの元へ行くのか?それともここに残るのか?」

確かにムゥの言いたいことはわかる。

レイはムゥに育てられたと聞いた。おそらく今でもかなり慕っているだろう。

「レイ………」

シンもレイを見る。

レイはうつむいたままである。

「レイ君。どうしたいのか言ってみてくれる?」

リンディは優しくレイに話しかける。

レイは顔を上げて……

「確かに、ラウは俺を育ててくれて、俺もラウを慕ってます。ですが……」

レイは言葉をつまりながら言う。

「俺は彼と同等以上に慕っている人がいる。その人が今俺を必要としています」

シンはそれが誰なのかなんとなくすぐにすぐにわかった。

「デュランダル議長のことか?」

確かにレイはデュランダル議長を心酔している。

以前の話でも議長に育ててもらったこともあると言っていた。

シンの言葉に、レイは頷く。

「議長は、人類の抹殺なんて望んじゃいない。俺だってそう思う。生きられるのなら、生きたほうがいい」

それを聞いてムゥは確かめる。

「それじゃあ、お前さんは裏切らないんだな?信じていいんだな?」

それを聞いて頷くレイ。

「出来ればラウとは戦いたくありませんが、背得してみようと思います。ともに未来を歩もうと。デュランダル議長についていこうと」

それと聞いて、何故か今度はムゥは黙りこんでしまう。

「おまえは、デスティニープランに賛成なのか?」

ムゥの言葉に何を…といった感じで見るレイ。

「デスティニープランこそ人類を救う唯一の手段です。」

二人の会話にあまりにも話が飛びすぎて混乱するアースラのメンバー。

「とりあえず、あなたは逆にそのラウって人を説得するってことでいいのね?」

リンディの問いにレイは頷く。



その後もいろいろ話が行われ、みんながそれぞれの家に戻っていく。

その中でシンは念入りにデスティニーの調整をしていた。

今度の戦いはおそらくMS戦になる。

ならば念入りに調整しておく必要がある。

そのときだった。

「お、いたいた」

今はコックピットはあけてある。

そこへヴィータがわざわざ飛んでここまで覗き込んできた。

「なんだよ?」

シンは聞きながら作業を進める。



「なんだよって、いきなりいなくなるから皆で探してんだぞ」

そう言われて、ああと思います。

シンは誰にも言わずにデスティニーの方へ向かった気がした。

「悪かった。じゃあはやてに遅れるって言っておいてくれ」

シンはいいながら作業を勧める。

「シーンー」

また声が聞こえたので、今度は誰だよと思いながら顔をのぞかせる。

そこにはなのはとはやてがいた。

「悪い、言うの忘れてた。今デスティニーの調整してるからちょっと遅くなる」

それを聞いて、判ったと返事をするはやて、そして

「この後皆で翠屋でよるからシン君もきなよ」

皆よくあそこに足を運ぶな……シンはそう思った。

「わかった、調整が終ったらいくよ」

そんなやりとりを見ているヴィータは、ふとデスティニーのコックピットを見る。

そこには大小さまざまなボタンがあちらこちらにある。

長生きしているヴィータでも、設定年齢はわずか7歳かそこいら。

今シンはなのはたちと話をしている。

あとでシンに怒られるかもしれない。

だが、それよりも好奇心が勝ってしまった。

「おりゃ」

適当にボタンを押しまくるヴィータ。

ちなみに、今シンは立ったままのデスティニーのコックピットでなのはたちと話をしているため、コックピットから乗り出している。

「なんだ!?うお!!?」

急にコックピットが閉まりだし、いきなりのことで慌てて、コックピットへ落ちていった。

もう少しで放り出され、コックピットでは無く地面にまっさかさまに落ち、魔法などもたないシンは死ぬところだった。

「っつ………」

シンは打った頭をさすりながら、犯人であろうヴィータを見る。

「あは、あはははは…」

渇いた笑い声でヴィータはシンを見る。

顔も作り笑いで、脂汗が流れ出ていた。

「すごいな、閉まったぞ」

だが、シンにはそんな事など聞こえはいない。

わなわなと手に力を入れて。

「殺す気か!!この馬鹿!!!」

ボコ!

「いっつ!!……」

一喝して思いっきり拳骨をかます。

ついでにいえば、ヴィータが適当に押したボタンの一つに、全周波マイクにもスイッチが入り、ドック内でシンの叫び声と拳骨の音が響き渡った。





喫茶翠屋。

今ここの一部の席で異様な空気が漂っている。

救いは、今店内にはいつものメンバーしかいないこと。

「わかっとる!?ヴィータ」

「ごめんなさい……」

ある席で、さっきの事でもう少しでもしかしたらシンが死んでいたかもしれないので、そのことでかんかんに怒るはやて、それでしょぼくれてるヴィータ。

それで、15分くらい話をしているのではやての横で桃子がまあまあと止めに入る。

正直、説教なら自分の家でして欲しいのだが………

「まあまあはやてちゃん。そろそろこれくらいで、ヴィータちゃんも深く反省してるみたいだし、シン君も許してるみたいだし、ね?」

シンはあのときの拳骨で一応許している。

しかし、そんな桃子の言葉に、はやては反論する。

「あかん、この子は一度ビシッと言っとかなまた同じことしますから」

ちなみに、今回はいつも怒っているシャマルとシグナムがいないのは、今回のはやての剣幕が恐ろしかったため、自分達の出番ななさそうだとさっとたため、その光景を見ながらリンディとお茶を楽しんでいる。

ムゥはそれをみながらつぶやく。

「あの嬢ちゃん。すっかり母親役が馴染んでるな」

みんながそれを聞いてみんなが頷く。

「将来、いい嫁さんになりそうだ」

そうですね、と同意するリンディとシャマル。

その横で、恭也はぶつぶつと何かを言っている忍を見る。

「私もちょっと押してみたかった」

聞かなかったことにしよう。あとで絶対に面倒なことになる。そう思い恭也は何事もなかったかのようにはやてとヴィータを見る。

逆に、子供たちは普段見せないはやての表情に唖然としている。

「はやて、もうすっかりお母さんじゃん」

アリサがムゥと同じような言葉を口にする。

ふと、今度はなのはがポツリ。

「はやてちゃん。怒ったらお母さんより厳しい……」

というより、桃子が怒ったときなど思い出せない。

「母さん、お前達を甘やかすのが好きだからなあ」

そういって士郎はコーヒーをすする。

だが、なのはたち兄弟はこの夫婦が本気で怒っているところなど見たことが無い。

その中でシンは考える。もうこんなことはしないだろうが、念を押したほうがいいだろうと思い立ち上がる。

それに、しょっちゅうあいつに振り回されてるんだ、たまにはこっちから仕掛けてもいいだろう。

……多少皆を巻き込みかねないけど……

「どうするつもりだ?」

レイはそういてシンを見る。

「9割くらい本当の嘘をつきに行く」

何を言っているのかさっぱりわからなかったが、まあいいだろうと思い、レイは翠屋の名物シュークリームを口にする。

(うまい。元の世界へ戻るときに、ギルにお土産として持って帰ろうか……)

一瞬、戦いのことを忘れて、すこし有意義な時間をさりげなく過ごすレイであった。



「まあ、本当に反省してるみたいやし、もういいわ」

そういって、やっとはやてのお説教が終った。

その時間およそ20分。

「ごめんなさい、ひっぐ、えっぐ」

ヴィータはもう泣きじゃくっていた。

「ほら、もう終ったからもう泣かんでええよ」

さっきまであれだけ怒っていたのに、お説教が終るといつもの笑顔に戻る。

流石だなとみんなは思う。

「最後に言うけど、ほんまにもうそんな事はしたらあかんよ」

はやての言葉にはい、とまだ泣いたまま言うヴィータ。

そこへ……

「ヴィータ」

シンの声が聞こえて、ヴィータはシンを見る。

「さっきは…ごめん」

さっきまでとは違いだいぶいつもの調子を取り戻すヴィータ。

「別にいいけど、お前謝る相手違うこと無いか?」

え?と疑う目でシンを見る。

だって実際あいつが自分のせいで危ない目にあってさっきまではやてにこってり怒られたのに。

シンは、ヴィータがわかりやすいように説明する。

「言い忘れたけどな。デスティニーのボタンの中の一つには自爆ボタンがあるんだ」

至極真面目にうシン。

それをきいてえ?とシンを見るヴィータ。

ヴィータ以外にも、なのはの世界の全員が驚いてシンを見る。

「もしお前が謝ってそれを押してしまったら、デスティニーは大爆発。俺やヴィータは勿論、周囲にいたなのはやお前の大好きなはやて、はたまたドッグにいた人たちまで死んでしまうところだった」

自分のせいではやても死んでいたかもしれない。その言葉でまたヴィータの顔が泣き出す。

「本当か、それ本当なのか!?」

ヴィータはもう、シンが嘘をついているなんて微塵も思ってはいないだろう。

そう思ったシンは、せめて大人のメンバーだけでも自分はある程度嘘をついているとわからせるために、ちょっと大げさに言う。

「ああそうさ。あ、また思いだした。やっぱり被害はもっとひどいな」

流石にそうまで言うとシンがわざと言っていることに気付く。

ふと、リンディがムゥとレイに聞く。

「彼の言っていることって本当なの?」

流石に怪しくなってきた。

そのリンディの答えにレイが答える。

「ええ、大方は本当ですよ」

レイがそう言って、そばにいたなのははぞっとした。

そういっている間に、シンの話は続く。





「デスティニーは、実は核動力っていうので動いているんだ」

ふと見ると、はやてまでシンの話をまじまじと聞いている。

さっきまであんなに母親面してたのに……

それを見て、ちょっとやりすぎかな?と思ったシン。

だが、言っておいたほうがいいだろうと思い、言葉を続ける。

「自爆するときには核動力を暴走させて爆発する。そうしたら、下手したらアースラ自体が沈みかねない」

というより絶対沈む。流石にいわなかったが、近くにはレジェンドもある。

2体分の核動力が暴走すれば、艦などあっという間に消滅する。

シンの話をまとも聞いていたはやては足に何か当たったと思いそれを見る。

それはレイジングハートだった。

なのはが、はやてだけでも本当のことを教えようと、レイジングハートに頼んだら以外にも快く承諾してくれた。

レイジングハートを見て後ろを向くと、ちょいちょいとこっちに来るよう指示するなのはとフェイトの姿があった。

はやてはこそっとなのはたちのところにいく。

ヴィータはシンの話で混乱して気付いていない。

「もし、あの時お前がそれをしたら、どれほどの被害になるか……それ以前にアースラの乗組員の家族にどう顔見せしたら言いか」

この時点で自分死んでるだろ、と突っ込むが、ヴィータはまた泣きじゃくって謝ってばかりで気付くそぶりもない。



「え?あれ嘘なん?」

レイたちから事情を聞いておどろくはやて。

「まあ九割方事実だが……」

レイは、本当のことを言う。

「実は……そもそも自爆スイッチなんて無いんだ」

それを聞いて、それじゃあ全部嘘じゃない?とたずねるアリサ。

「だが、スイッチの変わりにコンソールに特定の順番で数字を押すと自爆するようになっていて、核も実際搭載されていて、あの少女が誤ってコードを入力したら、俺達は実際ここにはいずに死んでいる」

それ以外は全部事実(ただし、アースラが本当に全壊するかはとりあえず不明)で、確かに九割方合っていた。

それを聞いて、アースラ一同は本当にほっとした。

シンが念を押す理由がやっとわかった

「ヴィータも、これで多少はこりればいいが……」

流石に大丈夫だろう、そうシグナムであった。

なお、この事実は、永久的にヴィータに語られることは無かった。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」