Seed-NANOHA_140氏_第24話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 18:28:19

「あれ……俺……」

シンは目を覚ますと、周囲は真っ白な空間を漂っていた。

(そうか……俺……死んだんだっけ?……)

思い起こされるさっきの戦い。

敵の直撃を受けて、デスティニーが爆発した。

それで生きているはずがない。

こうやって、わけのわからない空間にいるのがそれを物語っている。

「じゃあ、ここは天国……んなわけないか」

シンは軍人だ。

どれだけ大儀を掲げようと、結局は多数の人を殺した人殺しに過ぎない。

なのはの世界へ来て、それが身にしみた。

そんな自分が、天国にいけるなんて到底思えない。

おそらくここが「あの世」というものだろう。

「親不幸ものだな、俺……」

そして、家族のことを思い出すと、妹を思い出す。

(マユ……)

死んだはずの妹と再会し、そしてすぐに分かれた。

自分が死ぬ形となって……

(ごめんよ、マユ……)

そして、はやてたちにも謝なければいけない。

「祝うって約束したんだけどなあ……」

はやての誕生日。そして、騎士達とはやてが出会って1年がたつ祝い事の考えている楽しそうなはやてを思い浮かべる。

(死ぬっていうのは、こういうことなのか?)

その時、目の前が光った。

閻魔大王が自分でも迎えに来たのだろうか……

「シン……」

そう思うと光が消え、目の前に現れたのは、シンが知っている意外な人物だった。

「ステラ?」

目の前には、最初に出会ったときのドレスのような洋服を着たステラがいた。

シンには、ステラの姿がどこか天使のように見えた。

「ステラ、どうして君がここに?」

シンがそういうと、ステラは微笑む。

「シンに、あのときにいえなかったことを言いに来た」

ステラの言っていることが、シンには理解できなかった。

「シン、ありがとう」

「え?」

ステラの言葉にシンは驚く。

「ステラが死んだとき、シン、そばにいてくれた」

そういっているステラの顔は、笑っているが、どこか泣いているようでもあった。

「そんな、俺は…君を助けたくて……」

そう言って、シンは下を向く。



「けど、君を守れなかった。俺が君を守るって言ったのに……」

ふと、シンの目から涙が零れ落ちる。

そんな言葉に、ステラは首を横に振る。

「なんとなく解ってた。ステラはもう死んじゃうって」

ステラは、様々な薬物の投与で、体が持たないことをなんとなくだが解っていた。

「だから、そばにシンがいてくれて、嬉しい」

「ステラ……」

シンはステラのほうを向く。

「だから、今度はステラが、シンを守る」

そういうと、ステラはシンを優しく抱く。

いきなりのことで顔が赤くなるシン。

抱きついたとき、ステラの体が白くなり始める。

「ステラ?」

守る?自分を?

既に死んでいる自分を、どうやって守るというのか。

「シン…好き……」

ステラが、シンに最後に言った言葉を、また最後に言う。

そのステラの言葉を最後に、ステラは光に包まれ、だんだんと小さくなっている。

「ステラ!」

光は止み、そこには一つのペンダントのようなものが浮かんでいた。

「これって……」

シンは、そのペンダントを見たことがあった。

以前に、はやてと家に帰っているときに拾った空っぽのデバイス。

シンはそれを手に取る。

すると、シンもまた光りだした。

「な、なんだよ?こ……れ……」

シンも光に包まれ、意識もだんだんと失っていった。



「彼女はどうなっているの?」

プレシアはクルーゼにマユの事を聞く。

それを聞いたクルーゼは困ったような顔をする。

「まだ目は覚めておりませんが、私が彼女に会うのはまずいでしょうな」

どうして?とプレシアはクルーゼに聞く。

「私が討ったMS。そのパイロットはマユの兄かもしれん。

クルーゼの言葉にプレシアは驚く。

「彼女の家族は死んだんじゃないの?」

マユは確かに、家族は死んだといっていた。

「さあ、それは解りません。それよりも……」

クルーゼは深刻そうに言う。

「事実、彼女の兄を私は討った。彼女がそれで私達の所へ来てくれるかどうか」

そこで、クルーゼはあることを提案する。

「彼女には。もう一度忘れてもらう必要があるかも知れない。兄のことを…」



「…ン……シン……シン!」

なんだろう、声が聞こえる。

そう思いシンは目をあける。

今度はどこに飛ばされたのだろう。

本当に地獄なのだろうか。

「シン!…シン!!」

「はやてちゃん、おちついて」

何か聞き覚えのある声が聞こえる。

だんだんと視界がクリーンになっていく。

そこに移ったのは……

「はやて?」

何で目の前に彼女が?

俺は確か……

「シン!」

「うわ!」

少し考えていると、はやてが抱きついてくる。

その顔は涙であふれていた。

「よかったぁ……」

『そうですね、はやてちゃん』

肩に乗っているリィンも喜んでいる。

シンは周囲を見る。

そこは医務室で、はやてとシャマル、そしてなのはたちがいた。

「あれ、俺……」

どうやら自分は生きているみたいだが、まだ実感がわかない。

そこでふと、

「はやて、俺って生きてるのか?」

と、こんなことを聞いてぎゃくはやてがへ?っとシンを見た。

「ああ、ちゃんとお前さんは生きてるよ」

そこへ、リンディとレイ、そしてムゥが入ってくる。

「元気そうで良かったわ。この分だと、回復は早そうね」

?と全く状況が読み込めないシン。

「坊主、お前がクルーゼにやられたのはわかってるな?」

ムゥの問に頷くシン。

「そのあと、アルフさんがあなたをみつけて、シグナムさんが医務室に運んだんですよ」

そこまで言われても全然覚えてない。

その間ずっとシンは気を失っていたのだ。

(あれ、そういえば……)

ふとあの時のこと、ステラのことを思い出す。

(結局、あれって夢だったのか?)

自分が死んでないのだったら、あれは夢ということになる。

だがそれよりも……

「はやて、いい加減に離れてくれ」

さっきからずっとはやては抱きついたままであった。

「いいじゃない、ずっとはやてちゃんを心配させたんだからこのくらい」

ずっと?と思っていると、ムゥは奇妙なことを聞く。

「ところで坊主、今日は地球時間で何日かわかるか?」

ムゥに言われて、えーと、と思い出す。



戦った日が6月2日。

気を失ってるから1日くらいたってるだろうと思い…

「6月3日?」

そんなシンの答えに、ムゥは首を横に振る。

「今日は6日だよ」

なのはの言葉に、シンは驚く。

ほぼ4日間、ここでずっと寝込んでいたことになる。

「その間、ずっとはやてちゃんはあなたのこと心配してたよ」

フェイトの言葉に、勿論、私達もね。となのはも言う。

学校が終っては、かえってすぐに皆でシンのところに見舞いに来たらしい。

このときばかりはすずかとアリサも来たらしい。

魔法のことを知っている二人なら信頼できるとリンディが判断したからだ。

今日は習い事があって来れなかったみたいだが。

「あと、お姉ちゃんも1回来たよ」

みんなの言葉で、いろんな人に心配かけたんだなあって思ったシン。

「だからこれくらいは、ね」

シャマルに言われてはやてを見る。

確かに心配させてすまないとは思っているけど……

「結構傷口に痛むんだよ」

はやてが抱きしめているところは、シンの傷口にヒットしている。

もっとも、そこまでひどい傷ではないのだが、やはり少し痛い。

「あ、ごめん……」

シンの言葉で、やっと手をはなすはやて。

「それから、一ついいニュースがありますよ」

リンディの言葉に、いいニュース?と彼女を見るシン。

「けど、まずは皆のところに行かなくちゃね。立てる?」

リンディに言われ、ベッドから降りるシン。

どうやら歩くことに問題はないようだ。

こうして一行は会議室へと向かう。

会議室には。

「目が覚めたようだな」

そこには残りのメンバーが集まっていた。

少し違うのはあまり見たこともない、なのはぐらいの年齢の子供がいるぐらいである。

「シン、大丈夫か?」

ヴィータが駆け寄り心配する。

「怪我してるけど、大丈夫だよ」

そういってシンは席に着く。

「さて、皆が集まったところで、シン君」

リンディはシンを見て、あるものを取り出す。

「これ、何だかわかる?」

言われて渡されたのは、奇妙なペンダントだった。

これを見て想像できるのが、

「デスティニーの翼?」



このペンダント見て、あることを思い出す。

出撃のときに、持っていた貝殻のペンダント。

確かコックピットに掛けておいておいたはず。

そこで気付く、破壊されたときに一緒に無くなってしまったんだと。

じゃあ、デスティニーを失った今、これは何なのだろうか。

「これは、アスカの首にかかっていたものだ」

シグナムの言っていることにえ?ともういちどペンダントを見るシン。

「おそらく、あの空っぽのデバイスが変化したものだろう。このデバイスにも魔力も感知される」

そして、とシグナムはシンを見て言う。

「お前からも魔力が感知される」

へ?とシンは自分を見る。

っということは……

「お前も魔術師になったんだよ」

ヴィータの言葉にええ?とシンはペンダント、もといデバイスを見る。

(俺が…魔術師?)

いきなり言われても信じられない。

リンディもシンの表情を見て彼がどう思っているのかを察する。

「一度、デバイスを起動させてみたら?」

シンは、リンディの言葉を聞いてデバイスを見る。

本当に自分が魔術師になったのか、試しに起動させてみる。

名前は、自分機体から……

「デスティニー!」

たからかと自分の愛機の名前を叫ぶが……

…………何も起きない。

自信に満ちていったのに違った。

周囲には何故か空しさだけな漂う。

試しに………

「インパルス!!」

…………ちがう。

だったら……

「フォースインパルス!ソードインパルス!ブラストインパルス!!」

………どれもちがう。

次は……

「ミネルバ!!」

…………これも違う

何故なんだ?

シンは悩む。

「ほかに、シン君に関係するようなものはないの?」

なのはにいわれて、あのときのことを思い出す。

(いや、まさかな)

とシンは思ったが、ものは試しに言ってみる。

「……ステラ」

ありえないと思ったが、ステラという言葉に反応して、デバイスが光りだす。

「え?」

シンは光に包まれ、少し時間がたつとそこには、赤と白を基調としたバリアジャケットを着用したシンがいた。



「意外と似合ってるな」

ヴィータがシンを茶化すと、そこでなのははあることに気付く。

「あれ?デバイスは?」

シンはデバイスを起動させたのに持っていない。

そのなのはが感じた疑問は、すぐに解決する。

「こんにちは、マイマスター」

ふと、手から何か聞こえたので、シンは手を見る。

なるほど、自分のデバイスはデスティニーの手か。

一風変わったデバイスだな。なのはたちはそう思った。

だが、それ以前にこのデバイスの声。この声はまさに……

「ステラ………」

シンはデバイスを見つめる。

(だから、今度はステラが、シンを守る)

ふと、こんな声が聞こえた気がした。

(そっか、あれは夢じゃなかったんだな……)

なんとなく、そんな感じがした。

そう思い、微笑むシン。

そんなシンを、みんなは不思議そうに見ていた。

「ところでシン君」

リンディはシンを真面目な顔で見る。

「あなたはMSを失って、新たにこのデバイスを手に入れて魔術師になった」

その後、クロノが厳しいことを言う。

「だが、いくら魔術師になって君が協力するといっても、君は初心者もいいところだ」

そこで、とクロノが言う。

「君の特別特訓メニューを用意したんだが、どうする?」

シンはしばらく考える。

確かに、いまさら初心者の魔術師が加わってもたいした戦力にならないと自分でも思う。

けど………

「やってやるよ……」

シンは小さく呟く。

せっかく妹が生きてたんだ。どうしてクルーゼと一緒にいるかわからないが、絶対に連れ戻してやる。

リンディはそれを聞いて、わかったわ。とだけいう。

クロノは、そんなシンを見て言う。

「実は、お前のことだからそういうと思って、既にコーチを準備している」

解ってたのだかよ、とシンはなぜかだまされたような感じになる。

「けど、多分来るのに数日かかるからそれまではなのはやはやてたちから基礎を学ぶといい」

クロノの言葉に、シンは解ったよ、と言ってを解く。

何故かはやてもほっとした。

そのときだった……

「その必要はないよん♪」

ばたんと、自動ドアなのに無理やりバタン!とドアを開けたのは、猫の耳と尻尾をもつ人が二人いた。



「意外と早かったな……ロッテ、アリア」

クロノがやれやれ、とため息をはいてその二人、リーゼロッテ、リーゼアリア。

「父様が管理局を辞めてから、私達も暇になってね……」

二人のうちの一人、リーぜアリアが早く来た理由を簡単に言う。

「やっほー、クロスケー!」

そしてもう一人のリーゼロッテが、いきなりクロノに抱きついてきた。

「おひさしぶりぶりー。げんきにしてたー?」

そのままクロノを抱き寄せるロッテ。

それを呆然と見ているシン達。

ただ、エイミィとリンディだけが笑いながらその光景を見ている。

「やめろロッテ、今は会議中だ。僕達だけのときならともかく、他の人を待たせるな」

そういって、ロッテは周囲を見る。

確かに、ほかにもたくさんいる。

「で、クロスケが言ってたのってどいつ?」

ロッテの言葉に、クロノはシンを指差す。

「へぇ、この子が」

ロッテはシンのところへ近づく。

「えっと……誰なんだコイツ?」

シンの言葉に、ロッテは急にシンに抱きつき、シン顔を自身の胸に寄せる。

「な!」

いきなりのことで顔を赤面させるシン。

「これから師匠になる人物に対して、生意気だぞぉー」

師匠?と思っていると、変わりにクロノが説明する

「彼女達は僕の師匠なんだ。今君に抱きついているのは接近戦担当のリーゼロッテ。そしてもう一人、ドアでたっているのは魔法担当のリーゼアリア」

だからなんだよ?というシンに、哀れみの目でシンを見つめるクロノ。

「これから君は、しばらく彼女達の元で魔術師としての特訓をしてもらう」

そういうこと、と先ほどよりも力と強めてシンに抱きつく。

「じゃあ、こいつもらってくわね」

ロッテの言葉にまて、とクロノはとめる。

「話しは最後まで聞いてくれ。彼は今怪我をしている。お持ち帰りしてもすぐ訓練できるような体じゃない」

おい、とシンは心中で突っ込む。

(人を物に対に扱うな!)

だが今はそれよりも……

「おい、いい加減そろそろ離せよ」

さっきから胸の感触が………

ロッテはそんなシンを見て、ニヤッと笑う。

「さっきも言ったけど、師匠に向かって使う言葉じゃないなぁ、そんなやつはこうしてやる!」

そういってロッテはさらにシンを締め付けるが……

「っつ!……傷口!傷口にあたってる!!」

傷口を思いっきり締め付けられ、条件反射でロッテを突き飛ばす。

「それはごめんごめん」

絶対本気で謝ってないだろ?シンはそう思った。

「それで、彼の回復の見込みは?」

このままでは話が進まないと思い、アリアがクロノに聞く。



「シャマルの言葉によると、数日もあれば治るらしい」

クロノはそういって、シャマルは頷く。

そしてアリアは……

「じゃあ、数日は養生しつつ魔法の基礎を教えて、傷が治ったら接近戦と応用して教えたら言いわけね」

アリアがそういって、クロノ、シン、さらにはやてまでもが「え?」という。

「さっきもいったけど、私達も暇だから」

そういう問題かよおい!そう思いながらもシンはアリアによってバインドで拘束されてしまう。

「おい!離せよ!!おい!」

だが、そんなシンの抵抗もむなしく、リーゼロッテに引きずられていく。

「それじゃあ、しばらくおかりしまーっす」

ロッテはそういい残して、もう一度自動ドアなのにドアを無理やり閉めてでていった。



「あんな人たちだったんだ……」

なのはとフェイトはリーゼロッテを見て唖然とする。

今まで二人はリーゼと聞くと、あの謎の仮面男の印象が強い。

二人が呆然としていると、なのはははやてが何かボーッとしていることに気付く。

「はやてちゃんどうしたの?」

なのはにいわれて、え?とはやてはなのはのほうをむく。

聞こえてなかったのだろうか。

「い、嫌、別になんでもないよ」

どうみても苦笑いを浮かべるはやて。

一方ヴィータはクロノを睨んでいた。

その理由にフェイトが気付く。

「そっか、この土曜日ってはやてちゃんの誕生日だったね。」

なるほど、それでシンも参加するはずだったのにリーゼたちに無理やり連れて行かれ、その二人を呼んだクロノにヴィータは睨んでいるのである。

「し、仕方ないだろう。早くあいつに強くなるには最良の手段だと思ったんだ」

すっかりはやての誕生日のことを忘れていたクロノは、必死で言い訳をする。

別に悪いことはしてはいない。時期が悪かっただけである。

「心配せんでええんよクロノ君。うちは全然気にしてへんけん」

あはは、と渇いた声で言うはやて。

確実に気にしている。

そんなはやてを見て、皆はクロノをみる。

そのあと、数日間クロノは、はやてにいわれるまでヴォルケンのメンバーから無視されることになる。