「っく……ううう……」
レイは珍しく昼寝をしていると、奇妙な夢にうなされる。
彼は今どこだかわからない空間にいる。
「ここは?」
ふと前を見るとだれかいた。
『……み……君は……君はレイ・ザ・バレルだね?』
目の前にいるのは自分が見たこともない少年だった。
「誰なんだお前は?……」
レイが問いかけると、彼は話す。
『君の言葉を借りるなら、僕は君でもあり、僕は彼でもある』
最初言っている意味が分からなかったが、その意味はすぐにわかった。
君とは自分のことで、彼はおそらくクルーゼのことだろう。
そのことで言える言葉は一つ。
「ブレア・レヴェリー?」
彼はおそらく3人目の実験体。
レイの言葉にブレアは頷く。
「既にこの世にいない亡霊が何をしに来た?」
レイはブレアを睨む。
それになにも臆さずブレアは言葉を続ける。
『以前、君や彼と同じように自分の生まれを呪った人がいた。名前はカナード・パルス』
ブレアはその人物を懐かしむように、そして寂しそうに語る。
『彼は君も良く知っている人、キラ・ヤマト。その失敗作』
キラ・ヤマトと言う言葉にレイは反応する。
『彼は失敗作という言葉から、彼はキラ・ヤマトさえ殺せば自分が本物になれると思っていた』
それがどうした、と言った顔でレイはブレアを見る。
『けどそれは違う、どう生まれようと、その人はその人自身なんだ。彼もそれに気付いた』
そしてブレアはレイを見る。
『それは君も一緒だよ、レイ。君は君だ』
その言葉にレイは苛立ちを覚える。
(コイツもあいつらといっしょのことを言うのか……)
レイはキラ・ヤマト。そして自分の同じようにクローンとして作られるた人間、フェイト・テスタロッサ。
『勿論、彼女も彼女だよ』
ブレアの言葉に何も言えないレイ。
ふとこう思う。
もしかしたら、自分は心の中で思っているのかもしれない。
自分は自分だ。彼じゃないと言うことに。
けど、どこかそれを認めない自分がいると言うことに。
(いや、そんな事はない……)
そういうが、いつもと違っていつになく弱気になるレイ。
「俺は………」
そう思ったとき、ふと目が覚める。
「夢、か……」
そう思ったときだった。
『レイ・ザ・バレルさん。至急会議室まで来てください。至急、会議室まで来てください』
館内放送で呼ばれて、なんだ?と思いながらもレイは静かに会議室へ行く。
その顔はさっきまでとは違い、いつもの表情だった。
「何ですか?話って?」
シン達はリンディたちに呼ばれて、現在アースラに来ている。
シンが来たときにはレイとムゥが既にいて、はやてたちも学校が終ってるから来ていた。
「今回読んだのは、二つの報告がって来たの」
そういって、リンディは一つの事実を告げる。
「プレシア・テスタロッサのいる場所が見つかったの」
その言葉になのは達は驚く。
それと同時に、フェイトが少しくらい雰囲気になる。
「ってことは、クルーゼもそこにいるのか」
彼もおそらくそこにいるだろう。
そして……
「やっぱり、マユちゃんもあそこにいるのかな?」
眉もあの中にいるのだろうか……となのは達も思う。
それを聞いて、シンはあの時、自分の目の前に立っていた(浮いていた)マユを思い出す。
「それで、もう一つの報告とは?」
レイの言葉に、リンディがそうね、と言って笑いながらシンを見る。
「喜んで。あなた達の世界、コズミック・イラの場所がわかったわ。もう少し詳しいことを調べるから、遅くても数日後にはあなた達は元の世界へ帰れるわ」
リンディの言葉に、シン達は驚く。
なのは達もシンを見る。
「よかったわね」
リンディの言葉に、シンは素直に頷く。
やっと帰れる目処が立ったのだ。
これでやっとわかる。あれから自分たちの世界はどうなったのかを。
その中で、はやてとヴィータは少しくらい顔を見せる。
「はやてちゃん、ヴィータちゃん。どうしたの?」
なのはは二人の様子を見てどうしたのか聞くが、
「な、なんでもないよ」
「うん、なんでもないなんでもない」
勿論、そんな事は嘘であり、何でそうなっているかもなのは、そしてフェイトにはわかった。
「今までずっといたから、分かれるのは寂しいね」
フェイトの言葉に、うんとはやては頷く。
一方シンは、レイとムゥ、3人で何か話をしていた。
「で、お前ら二人はどうするんだ?」
ムゥの言葉に二人は考える。
果たしてこのままもとの世界へ帰っていいのかどうか……
ムゥがそう考える理由はラウ・ル・クルーゼのことだ。
やつがいったい何をするのかわからない。
「俺はこの世界へ残るつもりだ。ラウを何とかしたい。シン、お前はどうする?」
レイにいわれて、シンは考える。
ミネルバ、自分達の世界のことは確かに気になる。
しかし、あいつをほうっておくことは出来ない。それに……
(もう一度、マユに会いたい。何でマユがあいつらなんかと……)
以前の戦いのときに現れ、生きていたマユ。
なんぜプレシアと協力しているかはわからない。
だから、もう一度会って話がしたい。そして連れ戻したい。
シンはそう思っている。
「俺も残る」
こうして3人の意思は決まった。
そのことをムゥがリンディに言う。
「艦長。帰還の件だが、俺達は別に今回の事件が終ってからでもかまわないぜ」
ムゥの言葉に、皆は驚く。
だが、確かに驚くことではない。ムゥとレイはクルーゼという男とかかわりを持つことは既にわかっている。
驚いたのは……
「二人はわかりますけど……シン君はなんで?」
シンまで残ると言い出したことに皆は驚いた。
彼は残る理由がないのだ。
「そりゃあ、向こうのことは気になりますけど…やっぱり、あいつをほうっておくことは出来ません。それに……」
それに?とシンのほうを見るリンディ。
「それに、マユが…妹が生きてて、プレシア・テスタロッサと一緒にいて、どうしてそうなったのか知りたいし、連れ戻したいんです」
シンの言葉に、なのはたちはマユの顔を思い出す。
「やっぱりマユちゃんって、シンの妹やったん?」
はやての言葉にシンは頷く。
なるほど、確かにシンが残る理由もわかる。
そう思って、はやてはほっとする。
「それで、プレシア・テスタロッサの件なんだけど、上層部に問い合わせて、この事件は私達で解決することになって、本局からの武装隊の準備とかいろいろあって、作戦を決行するのは早くてもあと3日あるから、そのうちに心身ともに準備をしてね」
こうして、プレシア・テスタロッサとラウ・ル・クルーゼの身柄を確保するための作戦が始まる。
あの後、時間が時間なので会議の後、皆がそれぞれの家に帰っていった。
「よかったわねシン君。元の世界へ戻れて」
シャマルの言葉に、全くだよとシンは言う。
ようやく帰れるのか。と思えてくる。
(こう言ったらはやてに失礼かな?)
そう思うが、シンは早く帰りたかった。
別に、この世界が嫌と言うわけではない。
あれからプラントはどうなったのか。それが気になっている。
オーブだけじゃない、ミネルバの皆も心配だ。
そしてオーブは……
(くそ!どうだっていいだろ、あんな国!!)
あの国のことは忘れようとして、シンは何か違うことを考える。
そのことは勿論……
(マユ……)
シンは、妹の携帯を見る。
まさか、生きているなんて思っても見なかった……
それに、どうしてクルーゼと一緒にいるのかわからない。
もしかしたらマユはだまされているのだろうか……
(絶対に助けてやるからな、マユ……)
心のなかでシスコンパワーを全開にしていると、ヴィータに服の裾をつままれる。
そのしぐさは勿論……
「おい、ゲームするぞ!」
ヴィータの言葉に思考を切り替え、わかったと、といって席を立つ。
ふと思う。
こうやって、はやてたちと一緒にいられるのはもう少しなんだと。
(ま、こうもいっしょにいると、流石にな……)
シンもはやてと別れるのは寂しい。
だが、かといってここにとどまるわけにもいかない。
シンは既にある程度は割り切っているが、はやてはまだそういうわけにもいかないのだろう。
(異様に大人びてるといっても、まだ小学生だからな……)
おそらくヴィータもそう思っているのだろう。
最近やけにヴィータがシンにかまってくるのだ。
「はやくしろよ!」とヴィータが言ってきて、わかってる、とヴィータの元へ向かう。
「え?シン君の世界の場所がわかったの?」
なのはの家でも、シン達の世界が解り、今回の事件が終ったら元の世界へ帰ることを話した。
シンも妹が生きていて、それが以前会ったマユであることなど。
「似てるとは思ってたけど、まさか本当の妹だったなんて…それも、敵のほうにいるんでしょう?」
桃子はあのことを思い出す。
その中で、美由希はずっと何かを考えていた。
「そろそろね……急がなくちゃ……」
研究室でプレシアはふとしゃべる。
「そろそろとは?彼女の準備は出来たのですか?」
クルーゼはアリシアを見ながらいう。
「それもあるけど、そろそろ管理局の連中がここをかぎつけるでしょうね」
なるほど、とクルーゼはあの魔術師の集団、そしてレイとムゥを思い出す。
「私もやつらとは決着をつけないとな」
自分の目標のためには彼らが邪魔になる。
だから決着をつけなければいけない。
だが、プロヴィデンスはまだ壊れたままだ。
あの自分の知らない奇妙なMSにやられたのだ。
そのMSは自分が倒したのだが。
そこで、クルーゼは考えた。
「プレシア。すこしききたいことがあるのですが……」
何?とプレシアはクルーゼを見る。
「プロヴィデンスを傀儡兵みたいにし、こちらから遠隔操作できるようには出来ないのかね?」
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