『辛いとき、悲しいとき。人はそんな時、心の隙間に闇が出来る。
その心の闇に、魔物たちは容赦なく入り込んでくるのだ!
だけど、くじけるな!落ち込むな!ぷよぷよするな!!
何事にも屈しない、強靭な心こそが、最強の武器なのだから!!』
『これは、すこし怪しげで胡散臭そうな男、矢部野彦麻呂が駆け巡る、魔物たちとの壮絶な戦いの物語。
新番組、レッツゴー陰陽師!第一話「矢部野彦麻呂」』
『悪霊共、成仏しろよ』
既に夕食も終わり、皆がテレビを見ているときだった」
「え?ヴィータ、今何て?」
その話ものきっかけは、ヴィータの一言で始まった。
「だから、闇鍋って何なんだよはやて」
えーと、とどこから突っ込もうか考えるはやて。
「どこでその言葉覚えたん?」
はやてに聞かれて、ヴィータは昼のことを話す。
いつものようにヴィータが近所のじーさんばーさんたちとゲートボールをしているときに、とあるじーさんが孫が闇鍋をしたときのことを話していて、気になったヴィータだが結局どんなのかさっぱり解らなかったのだ。
「なるほどぉ」
ヴィータの言葉に、はやては残念そうに言う。
「ごめんな、うちも闇鍋って中身はどんなんか知らんのよ」
そっか、と残念そうに俯くヴィータ。
まあ、またジーさんたちから聞けばいいだけの話だ。
そのとき……
「闇鍋って、あれだよな?」
シンの言葉にヴィータはシンのほうを向く。
「知ってるのか?」
ああ、とシンは以前、訓練時代にレイやルナ、ヨウランたちいつものメンバーでした事を思い出す。
「前にしたことがあるんだよ。部屋を真っ暗にして、各自が事前に持ち込んだ材料で鍋をするんだ」
あのときを思い出し、一瞬ぞっとする。
「あの時はびっくりしたよなあ……ヴィーノがセオリーどおりスリッパをぶち込んだときは……」
あのときにスリッパをかじったレイの顔は真っ暗で見えなかったが、どんな顔をしていたか容易に想像できた。
そのシンの話を聞いて、うえ、と嫌な顔をするヴィータ。
「そんなもん入れるなよ」
ヴィータの言葉に、仕方ないだろう、とシンはいう。
「原則ルールとして、もって来た中身は持ってきた本人以外は食べるまでわからないんだ。」
さらに……
「掴んだものは絶対に食べなきゃいけないルールなんだ。…流石にスリッパみたいに絶対に食えないのは食わなくていいけど」
まあ、ちょっとしたギャンブルのようなもの、とシンは付け加える。
それを聞いて、はやては少し考える。
「なんか面白そうやな」
それを聞いたシンはえ?とはやてを見た。
ひょっとしたら、言うべきじゃなかったかもしれない。
「はやて、もしかしてする気なのか?」
シンの言葉に、はやては首を盾にふる。
「だっておもしろそうやし。なのはちゃん達も誘ってしてみようかなぁって」
まあこいつらだったら遊んだりしないだろうとは思うのだが……
「場所どうする?結局いつものメンバーでやるんだし、この部屋じゃ狭くてできないぞ」
それもそうやな、と思いはやては少し考える。
「まあ、それは皆できめたらええわ。ほな、ちょっと皆にメールするな」
そういってはやては各自の家にメールを送る。
「ん、メール?はやてちゃんからだ」
なのはは皆で話をしている最中にはやてからメールが来て、その内容を見る。
その内容は……
『今週の土曜日ぐらいに、闇鍋パーティーをしようとおもうけど、なのはちゃんも来る?』
メールを見てまず一言
「闇鍋って何だろう……」
なにはの言葉に、士郎はああ、と説明する。
「部屋を真っ暗にして、みんなが内緒で持ち込んだ材料で鍋をするんだよ」
士郎の言葉に、恭也も以前のことを思い出す。
「俺もこの前大学の仲間とやったよ」
友達いたんだ、となのはは少しひどいと思いながら心の中で思った。
兄は、大体いつも忍といるからあまり大学の友達と何かをするというものを想像できない。
「お前達だけでするなら心配いらないと思うが、一応注意しとけよ」
恭也の言っていることを疑問に思うシン。
「さっき父さんも言ったけど、実際食べるまで中に何が入っている銅かわからないんだ。だから変なものを入れるやつも出てくる。俺もそれで鍋なのに卓球のラケットが入っていてね」
何で気付かなかったんだろう…と恭也は思い返す。
それを聞いて、あはは…と苦笑いを返すしかできないなのは。
「で、なのははどうするの?」
桃子はなのはに尋ねて、うーんと考える。
はやてのことだからみんなにもこのメールは届いているはずだろう。
何故かなのはには全員が参加することが予測できた。
勿論なのはも参加する。
なのはの読みどおり、いつものメンバーと、面白そうだから参加してみるハラオウン家のえメンバーすることになる。
さらに、場所もリンディの艦長権限でアースラの食堂ですることになるから、スペースの問題も解決した。
次の問題は、各々の食材選びである。
「うーん……」
シンはスーパーの食材売場(スーパーはほとんど食材売場だが)で何を買おうか迷っていた。
買うものは闇鍋の材料。
シンは以前のことを思い出す。
あの時シンが選んだのは無難に長ネギ。
あの時は終った後、ヴィーノに「もうちょっと面白いのをもってこい」といわれた。
だがあまりへんすぎるのを選んだら食べれなくなる。
今回は食べることが目的なのだ。
だからシンが選んだのは……
「長ネギがだめなら万能ネギで」
たまねぎは流石にやばそうなので万能ネギにする。
……なぜ全部ネギなのかは作者の勝手ということで。
あとは……
「変わったのも欲しいよな」
なべに万能ネギを薬味にせずそのまま入れるのも十分変わっているとおもうが、もう一つ欲しいと思い選んだものは……
「お、これいいじゃん」
そう思いシンはあるものを手にする。
「んー、なんにしようかなぁ」
一方はやてとヴィータはデパートへ来ていた。
何故二人なのかというと、ヴィータに一人で買い物は出来ないだろうと思ったことと、ヴィータはすぐにばらしそうだから、いっそのこと二人で選ぼう、ということである。
「なあはやて、これは?」
そういってヴィータが手に取ったのは……
「ちょっと普通すぎる気もするけど、まあ普通なものもはめんと奇妙な鍋になってしまうしなぁ」
そう思い商品をかごに入れる。
「後は変わったもんもほしいよなぁ」
そう思いまわっていると……
「これなんか変わっててええな」
はやても材料を選びかごに入れる。
「鍋って、一体何をいれればいいのよ!??」
アリサも近くの高級食材が並ぶデパートで食材を買うが、何を買おうか迷っていた。
アリサはあまり夕食の買い物とかしない。というかさせてくれない。
同じ金持ちのすずかの場合は姉や買出しに言ってそうなメイドが一緒だから一人でも食事の買い物は出来そうである。
「それにしても、何にしよう……」
ただでさえアリサは鍋なんてあまり食べたことがない。
だから闇鍋というものを少し楽しみにしている。
(それにしても、真っ暗にして、皆には内緒で持ってきたものを入れて食べるなんて、鍋って変わった料理なのね)
……今、アリサの中で鍋という認識が奇妙な方向へと進んでいった。
「ま、これでいいわよね」
アリサはあるものを何品か選び、それをレジにもっていく。
「うーん……」
リンディは考えている。
リンディ達も面白そうなので闇鍋パーティーに参加することになり、材料を選ぶ。
だが、リンディ達ハラオウン家も、あまり鍋というものはしたことがない。
ましてや部屋を真っ暗にして、中に何が入っているかどうか解らないような料理など全然知らない。
「この世界って、変わった習慣があるのね…」
まだまだ勉強不足だわ、とため息を付く。
そう思い何を選ぼうか迷う。
いろいろ回っていると、
「あら、これなんかいいわよね」
そう思い、普通鍋に入れないあるものを入れる。
こうして、他の人も各自の材料も決まり、後はパーティーの開催を待つだけであった。
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