ふあ~~~…で? 何で俺達はこんな所にいる訳?」
ガロード達はマードックやアーノルド・ノイマンなどのブリッチクルーの一部と共に、食堂に集められている
「ユーラシアって味方のはずでしょ?大西洋連邦とは、仲悪いんですか?」
「そういう問題じゃねぇよ」
「 ハァ…識別コードがないのが悪い。」
「それって、そんなに問題なんですか?」
「どうやらねぇ…」
どうやらアークエンジェルは今だ極秘艦で味方の認識コードも無かったようだ。
「本当の問題は、別のところにありそうだがな」
「…ですね」
「てことは何? 解っててこう言う事やってる訳かよ?」
「どうせ奴さんは上手いお宝が転がり込んで来たとか考えてんだろうぜ」
もっともそれだけではない様だ。
「ガロード…」
「ん、キラ?」
「これ…」
キラがそう言うとそっとガロードに紙を渡した。
「それに書いてあるパスワードでガンダムは動くから…」
「了解…へへ、フラガのおっちゃんなんか動いてるかと思ったらこういう事かよ」
「うん…どうするの?」
「こういうのは俺、なれてっから大丈夫だって…もうちっと様子見てからだけどな」
ガロードは悪戯っ子の様な微笑を浮かべた。
「この艦に積んであるモビルスーツのパイロットと技術者は、どこだね?」
ガロード達が集められている食堂に小太りの男が先頭に何人かの兵士が来た。
「パイロットと技術者だ! この中に居るだろ!」
「何故我々に聞くんです?」
「なにぃ?」
ノイマンは果敢にもそう応えた。
「艦長達が言わなかったからですか? それとも聞けなかったからですか?」
「なるほど。 そうか!
君達は大西洋連邦でも、極秘の軍事計画に選ばれた、優秀な兵士諸君だったな」
小太りの男はそう持ち上げるが、
「…ストライクをどうしようってんです?」
ノイマンはそれに応えなかった。
「別にどうもしやしないさ。
ただ、せっかく公式発表より先に見せていただける機会に恵まれたんでね。 パイロットは?」
「フラガ大尉ですよ。お聞きになりたいことがあるなら、大尉にどうぞ」
マードックがそう嫌みったらしく応えるが、
「先ほどの戦闘はこちらでもモニターしていた。
ガンバレル付きのゼロ式を扱えるのは、あの男だけだということぐらい、私でも知っているよ」
小太りの男はそう応えミリアリアを掴んだ。
「……うっ…」
「ミリアリア!」
「女性がパイロットということもないと思うが…この艦は艦長も女性ということだしな…」
小太りの男がそう言うとすっと動く影があった。
その影はさっとミリアリアを掴んでいた手を掴み、捻りあげた。
「な、何をする!」
「はいはい、大人しくしてなおっさん…これが見えないのか?」
動いた影…ガロードは小太りの男の手を捻り挙げた後その手を背中に持って行き銃をその男の頭に押し付けた。
なおガロードはどこから出したのかサングラスをかけていた。
「この!」
「おっと、動かないでね兵隊さん…もし下手に動くとこの引き金が間違って引いちゃうから…」
「く…貴様こんな事をしてただで済むと思ってるのか!?」
「おっさんこそこんなとこで俺達を足止めさせて…しかも女の子に手荒く振舞うし、別に味方って訳でもなさそうだからね…それに俺今眠くて機嫌が悪いから…」
ガロードはそう言うと獰猛な微笑を浮かべた。
「わ、私をどうするつもりだ!?」
「勿論武器を捨ててこの艦から出て行ってもらうのさ…あんたは艦長達と交換だよ」
「そ、そんな脅し乗る…」
小太りの男がそう言い切る前にガロードは銃を少しずらして発砲した。
「ヒィ!」
「こう見えても気は短いんだ、早くしないとこのおっさん殺しちゃうよ!?」
「わ、解った! 言う通りにする! だから…」
「だったら速くそっちの兵隊さん達の武器を捨てさせなよ…」
「こいつの言う通りにしろ!」
小太りの男がそう言うと、アルテミスの兵士達はしぶしぶ従った。
「な、ガロード君!?」
「はいはいお話は後、艦長達早く乗って!」
ガロードがそういう先ではノイマン達も協力し、アルテミスの兵士を追い出していた。
「貴様! 一体何…うわ!」
ナタルが、ガロードにそう詰め寄ろうとした時、アルテミスが行き成り振動した。
その拍子に銃が外れ、小太りの男は命からがらと言う風にその場を走っていった。
「あちゃ~、まあ良いか」
「良いかではない! 貴様なんて事を!」
「まあまあそう怒るなよ、現に坊主のお陰でこうして戻って来れたんだしさ」
「しかし!」
「それに俺は軍人じゃないし、小難しい事は知らないけど緊急措置だよ」
ガロードはそう言うとさっさとストライクのある格納庫へ行ってしまった。
「あ、待て!」
「まあまあ、バジルール少尉…まずはさっきの振動の原因を突き止めましょ?」
「しかし!」
「あんまし硬くなんなって、
それにあの坊主は傭兵だし俺達みたいに軍の規律なんか適応されないしよ」
「ぐ…解りました」
「それよりも速くブリッチへ行きましょ? もしかしたらこのまま発進しなきゃいけないかも知れないわ」
マリューにまで言われナタルは不承不承頷いた。
「おっさん!」
「坊主! 今回の装備は小回りが利くソードだ! 遠慮しないでぶった切れ!」
「おう!」
「けど結局パスワードは必要なかったな!」
マードックがそう言うとキラはこくこくと頷いた。
「ま、ああいうのは慣れてるもんでね」
「そうかい…ほら、嬢ちゃんがお待ちかねだよ」
「おっとイケね!」
「ガロード…」
「待たせたな!」
ストライクのコクピットに乗り込むと、そこにはティファが待っていた。
ガロードが乗り込むとティファはガロードの体を見渡して、
「…怪我は無い?」
と訊いた。
「へへ、大丈夫だって! んじゃいきますか!」
『相手はブリッツて言う黒いMSよ!
これはミラージュコロイドとか言う装置で姿が見えなくなるから気をつけて!』
「了解! けど姿が見えねえのか」
「大丈夫です…」
ガロードがどうしようかと頭を悩ませた時、ティファがそっとガロードの肩に手を置いて言った。
「ティファ? …大丈夫か?」
「はい」
ティファは頷くとそっと目を閉じた。
ガロードはアークエンジェルから離れ、
機体を近くのくぼみに隠しいったん機能を全て切るとすまなさそうに、
「ごめんティファ…なんかレーダー代わりなことさせちゃって」
と言った。
ティファはそれに対し目を瞑ったままただ首を横に振った。
「来ます」
ティファがそう言った次の瞬間ストライクが機動、同時にブーストを噴かした。
「そのまま真っ直ぐ…」
「こう…か!?」
ガロードがソード言う名前の由来となる対艦刀『シュベルトゲーベル』をふるった。
切り込んだ先はなにも無い空間の筈だったが、対艦刀をふり切ったらブリッツが盾を構えたまま後方へ吹き飛んでいく。
見ると盾に一線傷がついているので浅かったものの当たった様だ。
「へへ、姿が見えればこっちのもんだ…いくぜ~~~!!!」
ガロードは対艦刀にビームをはわせる事無くそのまま突いていく…
この対艦刀は構造上この攻撃が一番貫通力が高く例え盾で防御しても貫く可能性が高い。
ブリッツはその事が解ったのか後退しながら右腕に装備されているランサーダートを発射した。
ガロードはこれに対し頭部バルカンで応戦するも、
ランサーダートは細長い形をしいてなおかつ速く、まず当たらない。
「ティファ捕まってろよ!」
「はい!」
ガロードはそう言うと一度ブーストを切り、体ごとブーストを右へ90度ずらし、一気に方向転換、勿論これに掛かるGはハンパではなく、大人でも失神できるほどだが、
小柄なガロードとティファはそのGを耐え切り、左腕に装備されているパンツァーアイゼンを使った。
ブリッツはこれに対し同種の武器、グレイプニールを使用、相撃ちにした。
それぞれがワイヤーを巻き取ると、
『ガロード、戻って! アークエンジェル発進します!』
とミリアリアからの通信が来た。
ガロードはそれに応えると、今まで使っていなかったマイダスメッサーというブーメランを使用、距離は離れていた為辛くもブリッツは回避、さらにここから離れようとするストライクへビームライフルを撃った。
しかしそこにブーメランが戻ってきて、左腕の肘から先を切断…ブリッツが体勢を立て直した時にはソードの姿は無かった。
「!…うっ…!…水!水ー!」
「あーもう…」
トールがテーブルに突っ伏してそう呻いた。
アルテミスを出てしばらくアークエンジェルは当てもなくさまよっていた。
「…うっ……うっ……水を!もっと水をー!」
「止めなよ、状況に合ってないギャグ」
「ギャグじゃねぇよ!…ったく~」
「ま、しゃあねえじゃん…補給所じゃなかったんだしさ」
ガロードがそう慰めるが、慰めた所で水が使える訳ではなくトールは沈黙で応えた。
「…けどマジでこれからどうすんだか」
「補給は受けられないんだろ?」
「だったらそこ等からかっぱらうか?」
「そこらって?」
ミリアリアが訊くとガロードはにやりと笑って、
「近くに戦艦の残骸でも2~3あればそっからかっぱらうのさ、いくら民間人がいるったってそんだけありゃ当分何とかなるさ」
「え!? いや、そんな追いはぎ紛いな事…」
「何言ってんだよ、確かに死んだ人は可哀想だしそっとして置いた方が良いだろうけど、それでこっちまで一緒に死んだら意味無いだろ? 俺達は生きてるんだぜ?
死者から生きる分だけ拝借すれば良いんだよ、荒らしたりしないでな!」
ガロードがそう言うとサイ達は反論しようとして…けど何も言えなかった。
確かに死者の場所を荒らすのは良くない、けどそれで自分達も死者の仲間入りになるのは違う…今の状況もあいまってヘリオポリス組は項垂れた。
「補給を?」
「受けられるんですか? どこで!」
「受けられると言うか…まぁ…勝手に補給すると言うか…」
「補給艦の残骸かなんかあったのか?」
ガロードがそう訊くとヘリオポリス組はうっと唸り、フラガは苦笑した。
「まあそれに似たようなもんなんだがな…」
「私達は今、デブリベルトに向かっています」
「…でぶりべると? って…」
「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々な物が集まっています。
そこには無論、戦闘で破壊された戦艦等もあるわけで…」
「うわ、タイムリー!」
トールはそう言うと手を顔に当て上を向いた。
「どうした?」
「いや、さっきその事でガロードに言われたんですよ…死者の墓場を荒らすのは良くないけどそれで自分達も死ぬのは違うって…」
サイがそう言うとナタル、フラガ、マリューは驚いた顔でガロードを見た。
「ま、そう言うこった…仕方ないだろ? そうでもしなきゃ、こっちが保たないんだから…」
「あなた達にはその際、ポッドでの船外活動を手伝ってもらいたいの」
「「「えぇー…」」」
「あまり嬉しくないのは同じだ。 だが他に方法は無いのだ。 我々が生き延びる為にはな…」
「ま、引き受けましょ…んで? 一体どれだけ必要なんだ?」
ガロードがそう言うとヘリオポリス組もしぶしぶ参加を表明した。
『大陸!? …こんなところに…』
「これが戦争に引き金になったって言うユニウス7の残骸か…」
ガロードがそう呟くと一旦目を閉じ黙祷をした。
「ん?」
ガロードが目を開けると視界の端に何かポットの様な物が浮かんでいた。
それはエールストライクよりも大きく、所々へこんでいるが爆発した形跡は無い。
ガロードはそれにそっと近づくと、割れ目からそっと中を見た。
「うお、ラッキ~♪ ジンとか言うMSじゃんか」
ガロードは一度通信を入れ、返事を待たずにそのポットをアークエンジェルへと引っ張っていった。
「でかした坊主! ちっと壊れてるが修理すれば何とか使えそうだし弾薬は無傷だ!
これで坊主が持って来たマシンガンなんかも使えるぞ!」
「へっへ~、ありがとさん…」
『ガロード、ご苦労様』
「おう!」
なお今回ティファはミリアリアに変ってCICを受け持っている。
そのミリアリアはガロードがアルテミスからかっぱらったミストラルに乗っている。
『ガロード、ミリィ達の護衛をお願いします』
「っと、そうだったそうだった…、んじゃちょっくら行ってくっから!」
『気を付けて』
「おう! 土産持って帰って来るぜ」
ガロードがそう言うと機体を再度発進させた。
なおその時ブリッチになんとも甘い雰囲気が漂いナタルが何度も咳払いをしていた。
ん? ありゃぁ…ジン、か?」
ガロードの目の前に黒い異型のジンがいた。
そのジンは肩に二つの丸い物を装備し、手には大きなライフルを持っていた。
後で知ったのだがこれは長距離強行偵察復座型ジンと言い、丸い物はレーダードームである。
目立たない色のジンをガロードが気付けたのだから当然ジンも目立つ色のストライクを発見している。
ジンは最初見慣れないMSに困惑していたが、ガロードが銃をジンに向けると慌ててデブリの陰に隠れた。
「チッ…こちらガロード、ジンを発見した」
『りょ、了解』
「なるべくこっちにくんなよ!」
ガロードは通信を入れるとジンを追った。
ジンは巧みにデブリの中を進み、ガロードはいつしか完全に身失った。
「くそ…どこだ?」
もしこの時ティファならばすぐに気付けただろう…ジンはストライクの後ろに回りライフルを構えた。
ガロードがキョロキョロと周りを見ているのをいい事にジンはその必殺の一撃を撃った。
その時ちょうどガロードはブーストを噴かしていた為本来背中の大型ブースに当たる筈が足に命中。
「な!? こん畜生!」
ガロードは後ろを向きすぐにジンをロック、ビームライフルを撃った。
ビームはライフルの反動と当たったのに無傷なストライクを見て動揺したのかジンはそのまま流され、デブリから出てきたジンの胸に命中、爆発した。
「あっぶね~、こいつの装甲じゃなけりゃやばかったぞ…ん?」
ガロードがため息を付くとちょうどその目の前を一つのポットが漂ってきた。