X-seed◆mGmRyCfjPw氏 プロローグ

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:03:47

かつてその世界では戦争があった。
1つの宇宙コロニーの独立運動に端を発したその紛争は、地球全土、そして宇宙をも巻き込む全面戦争となる。
戦況が膠着状態となった八ヶ月後、宇宙革命軍は戦況の打開案として、コロニー落とし作戦を密かに進行させ、地球連邦政府に対して降伏を迫った。
対して連邦軍は、極秘に開発していた決戦兵器モビルスーツ『ガンダム』を前線に導入し、徹底抗戦の構えをとった。
だが、一機とその一機が操る12の同じ『ガンダム』があるコロニー放った光が全ての運命を決定付けた。
コロニーへの一撃を重く見た革命軍は作戦を強行し、連邦軍も応戦した。
しかし落ち行くコロニーが両者の勝敗の行方を他所に、人類全ての故郷である地球に取り返しがつかない程の破壊を与えた。
南米を中心に落とされたコロニーによって人類はその後3年間核の冬を経験する事となり、100億近くあった地球人口は9800万にまで激減した。
勝者敗者も無くなったこの戦争はそのまま済し崩しの様に終戦を迎えた。
それから一年。漸く復興の兆しが見えて来ていた地球に戦争の嵐が吹き荒れようとしていた。
が、そうなる事を阻もうとしている者達がいる事もまた1つの事実であった。
戦争を望む者、過ちを繰り返させぬ為起こさせまいとする者。
それぞれの主張をする両者とも言える4人は互いに譲り合う事も無いまま月と地球の間でかつて彼等の世界を死の世界へと導いた銃口を向け合った。

連邦軍も革命軍も互いに互いを滅ぼさんと狂った様に戦闘を続けている。
そんな中フロスト兄弟の真意を知ったガロードは自機周辺宙域の戦闘を仲間達に任せ、彼らの元に全速力で駆けつけた。
見れば、兄弟のガンダムは世界を死に結びかけたサテライトシステムを利用した砲を連邦軍、革命軍の戦闘宙域に向けていた。
だが、まだガロードには救いがあった。
彼らが月のマイクロウェーブ発信基地からエネルギーを充填し始めてまだそんなに経っていなかったからだ。
ガロードはD.O.M.Eを信じ兄弟のガンダムの前に立った。自分に忘れえぬ物を残した男が死に際に発した言葉をはっきりと口にして。
「過ちは繰り返させない !! 」

「あれは!ダブルエックス ! 」
兄シャギアのガンダムの土台となっていたガンダムにいたオルバは眼前の光景に驚く。しかしそんな感情はすぐに消えた。
何しろサテライトシステムを利用したサテライトキャノンを打つ為に必要なマイクロウェーブ送電システムは数刻前に月にいるD.O.M.Eの手から離れ自分達の手中に収まっていたからだ。
ガロードの操るダブルエックスにもサテライトキャノンは二門状態で装備されていたが、送電システムが彼の方に向く事はない。
撃つ事も儘ならない、デッドウェイトにしかなっていない装備を背負っているダブルエックスは余程の事が無い限り恐れる事も無いと思っていた。
が、その自信はマイクロウェーブ照射がダブルエックスにシフトした瞬間脆くも崩れ去った。
「バ、バカな !! 送電システムはこちらの手中にあるはず !! 」
実際にトリガーに指をかけていた兄、シャギアの驚きはオルバの比ではなかった。
通信機越しに焦りが感じ取れる。
堪らずオルバはシャギアに向かって叫んだ。
「兄さん !! 」
「ダブルエックスを撃つ ! 」
帰ってきた返答にオルバはぎくりとする。充填されたエネルギーの量はオルバの機体でもモニタリングする事が出来たが、明らかに大ダメージを与えるには少なすぎた。
「でも、チャージが ! 」
「構わん !! 」
シャギアは言葉を全て言い終わらない内にサテライトランチャーのトリガーを引いていた。

「させるかぁぁぁっっ !!! 」
発射シークエンスを終えたガロードもやはりツインサテライトキャノンのトリガーを引いた。
次の瞬間、二つの光の奔流は衝突し、周辺を強烈な光に包んでいく。
それは次第に肥大していき、両者すらも巻き込んだ。
いや、それだけではない。近くで戦闘を行いながらもガロードの様子を見守っていた者達すらも・・・・・・
宙域で永遠に続くかと思われた球体の光は、暫くして収まっていく。
だがそこには何も無くそこにあったものが全て何処かに消えてしまった様にぽっかりと穴が開いたようになっていたのだった。
通常はMSの残骸等が残る筈にも関わらずである。
不気味な静寂だけが戦闘宙域を支配する。

一方ガロードはまだ光の中にいた。
モニターは先程からホワイトアウトしたままで、ガ?ガーと鳴るノイズも五月蝿い。
あらゆる計器が異常数値を示す警報を引っ切り無しに、けたたましく告げている。
だがどのボタンを押しても状況が進展する事は無い。
肉体的、精神的にも限界が近づいていたガロードは最早息をするのも辛い状況に追い込まれていた。
次々に当てにしていた装置が死んでいくのを、ガロードはただ見ている事しか出来なかった。
コントローラーも反応は無く、空振りしているような感覚しか手に伝わって来ない。
朦朧と薄れ行く意識の中でガロードにある少女の声が聞こえてくる。
「ガロード・・・・・・」
「 ? ティファ ? ティファなのか ? 」
ガロードにとってはこんな状況でも救いになってくれそうな、いやなって欲しいと信じている優しく、包む様な声。
「すまねぇ、ティファ。俺もう会えねぇかもしれねんだ。」
「いいえ、大丈夫です。ガロードは助かります。私にも、また、会えますから。」
「えっ ? それってどういう・・・・・・うわわっ !!! 」
突如聞こえてきたティファの声と「自分は助かり、またティファと会える」という予知。
その答えを聞く前にガロードは更に強力な光を受け、気を失ってしまった。