XXXスレ360 氏_SEED DESTINY AFTER 龍宮の守人編_第7話

Last-modified: 2009-06-06 (土) 01:07:10

○前回までのあらすじ
イザーク「火星の海でお宝探し!」
アリー「ところがぎっちょん!」

 

火星フェスティバルに乗り遅れた…では本編です。

 
 
 

突然に、シンの目前にある《ゲイツR》の脚が爆ぜた。
同調するかのように、展開していた他のモビルスーツも次々とパーツを失う、
コロニー外壁に取り付いていた《ザク》の腕が吹き飛ばされる。
護衛についていた《グフ》の腰が切断される。
突然の攻撃?判断して、対応できたのは一握りのパイロットだけだった。

 

「ルナ!新兵!後退しろ!」
殆ど勘だけで動いたシンは、機体の右肩を削り取られながらも異変の正体を掴んだ。

 

ドラグーン…遠隔操作できる砲塔による、ビーム攻撃。

 

一寸目線が捕らえた細長い砲塔へと、シンは頭部機関砲を放つがかすりもせずに砲塔に逃げられる。
「シホォ!出所を掴め!」
叫びながらイザークは、白く塗られた《グフ》のソードを振り回させる。
ドラグーンに近寄らせまいとしながらも、生き残るためには頭を働かせる。
シホの《ザク》に装備させているスカイアイ・ウィザードなら、
ドラグーンを操る際に用いられる量子波を探知し、出所を掴むことができるはずだと。
「エリアE13に感アリ!ドラグーンは20基を超えて…くっ!」
途中で報告が途切れる。
シホの《ザク》も背中に被弾して、背負っていた大型レドームを喪失してしまった。
それだけ分かれば十分、とばかりにシンは《ダガーⅡ》を指示されたエリア…
丁度コロニーの影に隠れているエリアへとその身を滑らせた。
「無策で突っ込むなあ!シン・アスカ!」
「大丈夫ですジュール隊長!」
怒号を浴びせるイザークを、ルナマリアがフォローする。
「私達の《ダガーⅡ》はビームに強いですから。というわけで行って来ますね」
「チッ、分かった。アテにするぞ!ディアッカ!」
「はいはいっと」
そしてイザークもディアッカを伴って、ドラグーンに翻弄される友軍を支援すべく前に出る。

 

一々機体に当たるビームには構っていられなかった。
ドラグーンのランダムな動きは追いきれなくとも、撃たれるポイントとタイミングさえ分かれば
シン・アスカには十分だった。
そして《ダガーⅡ》はラミネート装甲が強化された機体である。
ドラグーンの低出力ビームなら、バイタルパートと間接部への直撃さえ避ければ十分に耐えられる。
そしてシンはその事実も利用する。
わざとガードを甘く見せたポイントにビームを撃たせて、それを腕で受け止める。
段々と機体は焼かれていったが一撃で致命傷を負わないのなら…追い切れる。
ドラグーンの操縦は見事だが、パイロットとしては二流。そう判断してシンは機体を加速させた。
「捕捉した!」
大きな動体反応を掴んだ、恐らく核エンジン搭載機。
しかし、カメラで捕らえたドラグーンの『親機』の姿を見て、シンは驚いた。

 

「コイツ、《インパルス》なのか…?」

 

顔とカラーリング、外観の印象は正しく、嘗ての愛機《インパルス》の物だった。
しかし、機体は異形の様相を見せた。肩と腰が大きく張り出し、
手足が一般的なモビルスーツと比べて異様に長い。
そのために顔と胴体が一回り小さく見える。
さらに背中に背負ったシルエット…オプション装備は、
《レジェンド》やその前身である《プロヴィデンス》に酷似していた。

 

ザフトの新型?しかしこんな機体があるなど聞いたことも無いし、
核エンジン搭載タイプのモビルスーツはすでに製造・保有が禁止されたはず…
また例によってクラインお得意の極秘裏に製造というヤツか?

 

一瞬でそこまで考えたあと、シンはその機体に向かって呼びかけた。
「こちらザフトパトロール!我々はこのコロニーの調査に着ただけだ!攻撃を止めてくれ!」
眼前の《インパルス》もどきは聞いてくれたのか、シールドとライフルを構えつつも、
攻撃を加えるそぶりは見せなかった。
「よかった…話を聞いてくれ。我々に危害を加える意思は無い。銃を収めてくれないか」

 

『…マスターに聞く。そのまま動くな』

 

通信機から聞こえてきた声は少年のものに聞こえた。
マスターというのは彼の…このコロニーの責任者なのだろうか。
友軍へのドラグーン攻撃が止んでいることを確認して、一息つこうとしたシン。
彼の《ダガーⅡ》の視界の端から、もう一機の《インパルス》もどきが飛び込んできたのはその時だった。

 

まるで体当たりをかます様に突っ込んできた《インパルス》もどきを、
シンはうしろ飛びをするようにスラスターを吹かして避ける。
「くっ…何だ!?」

 

『油断するなアハト!ザフトを騙った賊に決まっている!』

 

オープン回線で飛び込んできた声…女の声は、今の《インパルス》もどきのパイロットだろうか。
体勢を直しつつ機体を探す。
捕らえた機体も《インパルス》の顔と歪な手足を備え、
さらに背中には《フリーダム》の羽根に良く似たバックパックを背負っていた。

 

『エルフ!この人は悪い人には見えない。話を聞いても…』
『適当抜かすな!』

 

《インパルス》もどき同士の口論を聞かせつつも、
フリーダム《インパルス》もどきはこちらにアプローチをかける、
手持ちのライフルを発砲しながら接近してきた。
「くぅ…くそっ!」
正確な射撃だ、今のザフトでコレだけの技量の持ち主がどれだけいるのか。
シンもシールドを構えて射撃に耐えるのが精一杯だった。

 

『覚悟しろ!賊め!』

 

雄たけびをあげながら攻め立ててくるフリーダムもどきに、一筋のビームが奔る。
機体を無理矢理に捻ってフリーダムもどきは回避した…いまのは、ルナの《ダガーⅡ》か?
『援護するわ!シン!』
ルナマリアの《ダガーⅡ》は背部のスナイパーパックと連結した大型のライフルを発砲しながら、
全速でこちらに向かってくる。レール砲とビーム砲を上下に並べた複合兵器だ。
それを連射してフリーダムもどきを釘付けにする。

 

「助かった!けど、撃墜はしない」
『どうして!』
「闇雲に戦ってもしかたないだろ!」
シンは粘り強く、向こうとの交信を続けようとする。
が、レジェンドもどきのパイロットは兎も角、フリーダムもどきの方が話しを聞いてくれない。
やがてこちらの戦闘に混ざろうとしたのか、イザークの白い《グフ》もこちらに滑り込んでくるが、
「手出し無用です!ジュール隊長!彼らと話を…ぐう!」
気が散っている間に、フリーダムもどきに飛び込まれてしまった。
そのまま組み付かれて、フリーダムもどきは腰アーマーの武装ラックからコンバットナイフを取り出す。
ナイフを付きたてようとするフリーダムもどきの腕を、シンの《ダガーⅡ》が掴む。
シンはそのまま背後を取るように機体を回して、後ろから関節を極めるようにフリーダムもどきを抑える。
パワー負けしようとも、間接部を抑えればそうそう動けるものでは無いはずだ、
なまじ人間めいた格好をしているから…

 

『かまうなアハト!私ごと撃ってくれ!』
『無茶言うな!』

 

「そうだ!こちらに落とすつもりはない、頼むから話を聞いてくれ!」
シンは辛抱強くフリーダムもどきに呼びかける。

 

何か、こんな聞き分けの悪い女が昔居たような気がしたが…

 

『コクピットを開けろ。話を聞いてやる』
女は、偉ぶった物言いでそう言った。

 

ああ思い出した。昔会ったアスハの馬鹿娘がこんな感じだったような…

 

馬鹿な感想を抱きつつも、女の要求は流石に了承しかねた。
さっきまで戦闘していた相手にコクピットを開けろと言われて、はいそうですかなんて言えるわけがない…
そう思っていたシンの目の前に、白のパイロットスーツで身を包んだ女が現れたので、シンは驚いた。
いつの間にかフリーダムもどきから降りていた女…体躯の小ささから、少女というべきか…
が、自分の《ダガーⅡ》の頭部カメラの目の前まで近づいてきたのだ。
極端から極端に走る奴だなと感想を抱きつつ、シンはシートの下に仕舞ってある
サバイバルキットの中から、小型の拳銃を取り出す。
装弾を確認したあと、腰に下げた。
向こうが生身を晒しているのだ、話し合うと自分で言った以上、自分も出なければならないだろう。

 

『シン、大丈夫?』
ルナマリアが心配そうに声をかけるが、
「大丈夫だ、多分…フォローは頼む」
そう答えるしかなかった。
『心配する身にもなってよ、もう…』
ルナには悪いと思いつつ、シンはコクピットハッチを開けた。
開けるや否や、正面にさっきの少女の体が飛び込んできた。

 

「貴様らがザフトだとしても、返答如何ではただじゃ…」
急に少女の声が途切れ、 自分の顔をじっと見るようにする。
相手の顔は放射線避けの金メッキで見えない。

 

「お前…まさか…本当の…」

 

「何だ?俺がどうしたんだ」
シンが何かを言う前に、少女は抱きつくように身体をシンに飛び込ませた。
「おい!急に何を」
「コクピットを閉めてくれ!顔を見せるから!」
急に興奮気味に、それも何故か嬉しそうに聞こえる声で少女が叫ぶ。
彼女に押されるようにシンは、シートに戻ってコクピットを気密した。
気密を確認したのか、少女はヘルメットのバイザーを上げて、顔を晒した。

 

「お前、シン・アスカだよな!よかった!シンが来てくれたんだ!
 これでレイ兄さんも喜ぶよ!マスター・アイン!」

 

言われた言葉の意味なの一割も理解できなかった。

 
 

ただ、自分の目の前にある、 シン・アスカの顔をした少女に対して、シンは言葉を失っていた。

 
 
 
 

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