Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第06話『修正』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:31:15

「カミーユさんって、どんな人なんすか?
先輩はセカンドステージの設計に関わったんでしょう?」

戦闘が終わり、破損区域を修理しながら、ヨウランは古参のメカマンに尋ねた

「うーん、一言で言うならユニークってとこかな」

歯切れの悪い回答に、ヨウランは顔をしかめる

「……それじゃ分かりませんよ。
でも凄ぇよなぁ……エースパイロットで、
正規採用されるような設計も出来て……才能が羨ましい……」
「おいおい、あいつはナチュラルだぜ?」
「えっ!?」

驚愕の表情を浮かべたヨウランに構わず、古参メカマンは続けた

「とはいえ、最初持ってきた図面は酷かったぜ
だがな、俺たちコーディには考えもつかないユニークなコンセプトが多々あってな
それを俺たちが改良を加えて、セカンドステージが完成したんだ
……だから俺はナチュラルを卑下出来ねぇな
俺たちは優秀だが、理屈が先走って革新的なことは出来ねぇ
って知っちまったからな」
「……バカと天才は紙一重って奴ですか?」
「ま、そんなとこだな。さ、手を動かせ、手を」
「……はい」

ヨウランはショックだった
劣等とばかり思っていたナチュラルだが、
コーディネイターを凌駕する部分もあると
身をもって知ってしまい、認識を変えざるを得ないのだから

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第06話『修正』

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「ナチュラルだって!?」

シンは自室に備えられたコンソールが映す人物資料を見て驚愕した
嫉妬の対象であるカミーユ・ビダンの人物像を調べるために、プロフィールを参照していた時のことだった

「なんで……ナチュラルのくせに!!」

壊さんばかりの勢いで、コンソールに拳を叩き付ける

シンは苛立っていた
認めたくない対象が、劣等という存在であることを知ったのだから

「ユニウスセブンが落ちている!?」

談話室で、レイが切り出した話題にヨウラン、メイリン、シン、ルナマリアは驚き果てた

「ああ。ミネルバはこのまま破砕作業に出るらしい」
「強奪部隊は?」
「断念だろうな」

静まり返る一同

「なんで俺たちが……!」
「そうだよねぇ……冷静に考えたら、
私達がユニウスセブンを砕く義理なんて無いし……」

口火を切ったのは、シンとメイリンであった

「面倒ね……」

ルナマリアもそれに続く。レイとヨウランは黙ったままだ

「いっそのこと、ナチュラルなんて死に絶えりゃいいんだ」
「お前たち!!」

シンの呪詛にも近い言葉に、偶然その場を通りかかったカガリが噛みついたのだ

「よくそんなことが言えるな!人がたくさん死ぬんだぞ!」
「あんたに言われることじゃないね」
「シン、やめろ」

ヨウランがシンをいさめた。ヨウランをよく知る一同が唖然としている

「ヨウラン?……お前らしくないな」
「ナチュラルだって良いとこはあるんだから、助けてやろうぜ」

ヨウランはなるべく語勢を穏やかにして話したが、それでもシンは気に入らない

「そうだ。そいつの言う通りだ」

カガリの同意に、シンの堪忍袋が更に膨らむ

「だから、あんたには関係ないだろ!?」

怒鳴り声が響く――それを聞き付けたカミーユが人知れず談話室にやって来た
カミーユは場から少し離れていたレイにひっそりと尋ねてみることにした

「どうしたんだ?何があったんだ?」
「少し揉めています」

――返ってきた淡々な報告とは裏腹に、重たい空気――

「ちょっといいか?
……お前は代表が気に入らないみたいだが、何故だ?
下らない理由での行動だったら、只では済まないぞ……」

アスランが語気を強め、威圧的に問いかけた
――シンの瞳は赤い――

「下らないなんて言わせるかっ!!
俺の家族は……俺の家族はアスハに殺されたんだ!!」

――シンの怒りの言葉の一部始終――
それを聞いたカガリは顔面蒼白で、アスランは戸惑いを隠せなかった
そしてカミーユは、複雑な心境だった
似ているとは思ったが、まさか境遇も似ているとは思っていなかったからだ

「だから、ユニウスセブンが落ちようが、関係ないね!
オーブなんか滅べばいいんだ!」

――だが、この発言は聞き捨てならない――

「おい、シン」
「あんたは……!」

カミーユの存在にレイを除く一同が気付き、その危機迫る表情に閉口した

「人が死ぬんだぞ」
「……」
「人がいっぱい死ぬんだぞ」
「……何が言いたいんです?」
「命は……この世界を支えるものなんだ……
それが簡単に失われることは、酷いことなんだよ!」
「ふん……ナチュラルどもが死んでも影響無いんじゃないんですか?」

わなわなと震えるカミーユ

「歯ァ食いしばれ!!」

――振り上げられる拳
「そんな奴は、修正してやるぅぅ!!」

――鈍い音――
振り上げられた拳はシンの顔面を殴打し、シンは壁際まで吹き飛ばされた

「あんたは……」

うずくまりながらシンは口を開く

「あんたはナチュラルだからそんなこと言ってんだろ!!」
「……立てよ」

カミーユはシンの襟首を掴み上げ、無理矢理立たせた

「そんなものに俺が囚われていると言いたいのか?」
「……ナチュラルもコーディネイターも、皆囚われていますよ」
「貴様っ!!」

シンに再び修正が加えられ、シンは立ち上がることが出来なかった

「誰でもいい……こいつを自修室へ連れていってくれ」

もう誰も口を開く者はいない
一同は、思い思いにカミーユの言葉を噛み締めていたのだ

カミーユは、ヨウランとレイに連れて行かれるシンの背中を見ていた

カミーユの背中は寂しげだった