Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第05話『嫉妬』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:31:04

「ルナマリアとレイと俺は敵艦を叩く。
シンはミネルバの護衛を頼む」

強奪部隊へ接近することに成功したミネルバのMSデッキでは、
ブリッジからの通達により各々の機体に乗り込むパイロット達がいた

Zからの通信を肝に命じるパイロットたち――ただ一人を除いて

「何で俺が後方なんですか!?」
「こっちが接近しているのに、敵艦が進路を変えないのは納得出来ない
伏兵がいるかもしれないからな」
「だったら、あんたが残ればいいでしょう!?」
「あのな!状況への対応力が高いインパルスが適任だというのが分からないのか!?
ブラストで出撃!MS戦になったらフォースに換装!わかったな!?」

一方的に通信を切るカミーユ――シンとの関係は冷えきっていた

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機動戦士ZガンダムDESTINY
第05話『嫉妬』

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インパルスを残して、敵がいると思われる地帯へ索敵しながらじわじわと進む三機――

『敵です!』
「散開!」

ルナマリアの報に対応して指示を出すカミーユ

「時間稼ぎだけじゃもの足りねぇな……
アウルの借りを返すぞ……!行くぜ、ステラ!」
「……うん」

スティングのカオスはポッドを分離させ、Zに狙いを定め、
ステラのガイアは変型し、赤いザクに狙いを定める

「出て来なければ……死なずに済んだのに!」

回避運動をしつつ、ライフルを放つが、カオスはシールドで防ぐ
その後方では二機のザクがガイアと交戦していた

「おい、お前ら!」

カミーユが回線をオープンにする

「なんだ……?」
「……?」

敵からの通信という予想外の事態に、二人は一瞬戸惑った

「カオスもっ、ガイアもっ……!俺が図面を引いて、一から創ったんだぞ!
よくも……よくも盗んでくれたな!!」

カミーユから漏れる本音――シンと初めて会った時の不機嫌さは、
このせいだったのかもしれない

「だからなんだ!?花嫁衣装でも着せに来たのかぁ!?」
「花嫁泥棒が言えたことかよ!」

接近するZを落とさんと、カオスは変型して
腹部ビーム砲を撃つ――しかし、かすりもしない

「くそっ……ステラの負担も大きいな……ネオはまだか!?」

――その頃ミネルバの護衛をしているシンは――

「だいたい、何で敵が来るって前提なんだ!?」

愚痴を漏らしていた。来るかも分からぬ敵の伏兵に戦力を裂くとはどういうことだと、カミーユの判断に懐疑的である。

――その時――

凄まじい爆音が響いた
「な、なんだ!?」
『後方から敵艦の攻撃を受けています!直ぐに援護を!』

メイリンからの状況報告に、先程までの懐疑は爆音と共に吹き飛んだ

「くそっ!」

後方に振り返って、二門の大型ビーム砲を照準もそこそこに撃つ――牽制が目的だ

「これじゃ、あいつの言った通りじゃないか!」

認めたくない――だが、認めざるを得ない

それはシンだけではなかった

「MSが残っているだと!」

ネオが驚嘆したように叫ぶ

「敵はこちらの奇襲を読んでいたのかもしれませんな」

傍らの艦長、イアン・リーは対照的に冷静そのものだった

「くそっ……時間を稼がれると奇襲の意味が無いな……
あいつらの回収もきつくなる……
よし、俺も出る。後は任せた」

足早にブリッジを去るネオをイアンは敬礼で見送った

「このぉ!」

シンはブラストの火力を最大限に使用し、敵艦をミネルバに近付けまいと奮戦していた

『今、カミーユさんがこちらに向かっています!頑張って、シン!』

メイリンからの激励に応えるように引き金を引き続けるシンの目に、
先の、自分に辛酸を舐めさせたMAの姿が映った

「メイリン!フォースを出してくれ!」
『了解です!』

間髪入れずに装備変更をする
ブラストでは的になるのが目に見えていての判断だが、
またしてもカミーユの思い通りになると考えるのは癪だった

「厄介だねぇ、換装システムってやつは」

ガンバレルでインパルスの周囲を囲み、一斉射撃を加える
シンはシールドを使いながら慌ただしく回避を続けた

「このままじゃ前と一緒だ……!なら!」

バーニアを一気にレッドゾーンに持って行き、エグザスに接近する

「近付けば、あの武器は使えないはずだ!」
「おっと!」

ガンバレルをビームスパイク形態に変え、インパルスのコックピットに突撃させる

「なっ……!うわぁぁぁ!」

予期せぬ攻撃に悲鳴を上げるシン――急加速した機体は、すぐには止まれない
シールドも間に合わない
それは死に繋がっている――

「させるかよぉ!」

――はずだった。
しかし、一条の閃光が凶刃をとらえ、ガンバレルは爆散した

閃光が発した先を見据えると、ウェイブライダー形態のZガンダムが
猛スピードでこちらに向かってくる

「あいつか!?くっ……イアン、撤退するぞ!
あいつらにも伝えろ!所定のポイントで合流だ!」

潔いとも取れる素早い撤退に、シンは反応が遅れてしまい、
カミーユが着く頃には、敵艦は既に踵を返していた

「くそっ!相変わらず引き際がいい……」
「……」

悔しがるカミーユとは対照的に、シンは無言だった

「……深追いは禁物だな……
シン、よくミネルバを守った。帰るぞ」

カミーユは簡単にシンを称え、変型してミネルバへと帰還していく
しかし、シンはそのまま宙を漂い続けた

「……あんたなんか……認めてやるもんか……」

嫉妬――カミーユの的確な判断と凄まじい技量に、
シンは命を助けられたのも忘れる程、嫉妬していたのだ