Z-Seed_942_第00話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 13:01:12

シロッコ in C.E

『プロローグ』

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私は死んだ筈だった。
そう、ジ・オのバイオセンサーを乗っ取られるという、ニュータイプとして完全敗北を喫したのだが――

「えー、貴方の名前は?」
「パプティマス=シロッコです」

――何故か今、面接を受けている。

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目醒めた時、私は図書館にいた。
余りの驚愕に、頬をつねったり、慌てふためくという自分らしくない行動をしてしまったのは秘密にしておきたい。
暫く経って頭が冷静さを取り戻した頃、私は新聞を手に取った。
情勢把握には新聞が最も適切なメディアだったからである。

「な、なんだこれは!」

不覚にも大声を出してしまい、周囲の目線が私を突き刺した。
咳払いを一つし、再び新聞に目を遣る――

――見間違いでは無かった。

平行世界というものの存在を認めざるを得ない情報が、誌面に躍っていたのだ。

「……どうする?」

現状把握は済んだので、とりあえず持ち物を確認した。
ポケットの中にあった履歴書が唯一の所持物で、そこには私の知らない私の事実が明刻に記してあり、それが一層、平行世界を私に確信づけさせた。
金品類は一切なし。
服装は黒いシャツに、くたびれたジーンズというラフな格好。
髪止めは無く、前髪が目の前にちらつき、苛立ちを誘う。

――絶体絶命である――

決して、服装がどうだの、前髪がどうだのと文句は言わないが、金が無いのは致命的だった。
過去の栄光は潰え、今日の食事もままならぬ状況なのだ。
しかし、逆を謂えば、煩わしい過去も全て消失したのだ。

「私は終わってはいなかった……ククク」

思わず笑みが溢れた。
女学生が私を見て『キモい』という聞き慣れぬ単語を言っていたので、辞書を引いてみた。

少し泣いた。