Zion-Seed_51_第06話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 18:04:09

1.

「ご無事ですか大尉!」

 X303“イージス”に乗ったクリスチーナ・マッケンジー中尉から通信が入る。

「ええ……クリス、ストライクは戦闘ができないわ。そっちは?」
「OSはインストール済みです。いけます」

 ヨタヨタとぎこちない動きをするX105“ストライク”に比べ、紅いMSはスムーズに動いていた。
 そんな2機を遠くからみていたデニムは冷静さを取り戻し考える。

(単機ではジンと連合の新型2機を相手にするのは無理だ。それに本来の目的は偵察であり戦果ではない)

 デニムはザクの残骸をチラリと見ると――

「すまん、ジーン」

 ヘリオポリスから脱出すべく自機を動かした。
 一方のミゲルは自分の腕に自信があるのか、単機での捕獲を試みる。

「アレが残りの機体か……おもしろい!」
「く、来る!」

 ジンは突撃機銃を発砲し、放たれた76mm弾がイージスを襲う。

「……アウッ!!」
「所詮テストパイロットか!」

 重斬刀がイージスに振り下ろされた。
 そんな光景を見ていたキラは、たまらずマリューに噛み付く。

「何してるんですか、やられちゃいますよ!」
「大丈夫、ジンのサーベルなどXナンバーには通用しない!」

 XナンバーであるイージスとストライクにはPS(フェイズシフト)装甲が導入されている。
 この装甲は一定の電流を流して位相転移を起こすことによってあらゆる物理攻撃を無効化するものである。
 実際にイージスのPS装甲は重斬刀を弾き返しているが、事情を知らないキラは気が気ではない。

「こんなものに乗ってるんだったら何とかして下さいよ!」
「この機体はまだOSが出来てないの! 仕方ないでしょう!」

 キラはマリューの言葉に頭に来たが、モニターに目をやると深呼吸をし決断した。

「……どいてください! はやく!!」

2.

 二人が口論している間も戦闘は続く。
 クリスは初の実戦で最初は焦ったが、今は冷静にジンの動きを追っていた。

(焦っちゃダメ。落ち着くのよクリス)

 イージスの武装は75mm対空自動バルカン砲「イーゲルシュテルン」とビームサーベルしかない。
 本来は60mm高エネルギービームライフルを装備しているはずなのだが搬入作業のため取り外されていたのだ。
 そうなるとビームサーベルで勝負を決めなければならない。

「一撃で決めなきゃ……」

 相手は経験豊富なコーディネイターである。
 初めて実戦を経験するナチュラルのクリスでは困難な戦いだ。
 クリスは防御に徹し、相手が隙を見せるのを待った。そして――

「いい加減に落ちろっ」
「いま!!」

 苛立ちはじめたミゲルの一瞬の隙を狙って、ビームサーベルを抜き放つ。
 その一撃はジンを捕らえたはずだった。

「はずした!?」

 その瞬間、ミゲルは反射的に重斬刀を構えビームサーベルを受け止めようとしたのだ。
 もちろん重斬刀は切断されてしまうが、その所為でビームサーベルがジンに届くのにコンマ数秒遅れた。
 それは超人的な反射神経を持つコーディネイターが機体を動かすには十分な時間だった。

「貴様ー! ナチュラルの分際でっ!!」

 激昂したミゲルはイージスを踏みつけ、至近距離で突撃機銃を乱射する。

「キャァッ!! こ、このままじゃ!!」

 PS装甲があるとはいえ、エネルギーは永久ではない。
 数十発の弾丸をうけたイージスは装甲から色が抜け落ち、みるみる暗い鋼の色になってしまう。

「死ねぇ!!」

 止めを刺されるまさにその時、もう一つの新型MSストライクがジンに迫った。

「やめろおぉぉっ!」
「なに!? さっきと動きが!!」

 勝負は一瞬で決まった。
 キラが操るストライクはアーマーシュナイダーをジンに突き刺した。
 機能を停止させたジンは糸を切られた人形の様に地面に倒れこんだ。

3.

「デニム曹長が突出した?」
『はい! コロニー内部にジンが侵入し、破壊活動を始めたのです』

 ヘリオポリスからほど近い宙域にある小惑星の陰に1隻の軍艦がその身を隠していた。
 ジオン公国のムサイ級巡洋艦“ファルメル”である。

『その後ジンと抗戦になり、非常事態とみて自分は脱出したのであります』
「よくやった、スレンダー伍長」

 仮面で顔を隠した長身の男。
 彼こそが、全世界にその名をとどろかせている赤い彗星ことシャア・アズナブルである。

「連合軍の新型MSは存在するのだな?」
『ハッ!』
「もういい、帰還しろ! 詳しい報告は後で聞く!」

 通信を切ると副官のドレン中尉が言う。

「意外でしたな、デニムに兵が押さえられんとは……」

 重苦しい空気が漂う。
 そんな中、一人の女性士官がブリッジに入ってきた。

「少佐、私の言った通りになりましたね」

 シャアに話しかけた女性は、まだ少女のようなあどけなさを残していた。

「あの二人には新型を与えたのだがな」
「あの人は腕が悪かったから」
「手厳しいな、ララァは……」
「でも曹長は生き残りました。少佐のおかげです」

 シャアは笑うと、スクリーンに映ったヘリオポリスを眺めた。

「若さゆえのあやまち……か……」




ちょいと補足説明
クリスについて
 初めはリュウでした。
 でも連邦軍人がパオロにリュウじゃ、死亡キャラを選んでるみたいだったので変更しました。
 テストパイロットだし、コンピュータの調整もできるし、バーニィ出したいし・・・

ララァについて
 何度も書きますが戦争は1年以上経過しているので・・・