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分析機器編

Last-modified: 2017-03-25 (土) 16:56:06

実験の友

質量分析 編 Edit

マイクロチューブに少量の試料を移したい Edit

マイクロチューブに少量の試料を移す
北海道大学農学部 「ぶんせきの友」FAQ & Tips GC-MS & NMR Lab.

少ないサンプルでFAB-MSを測定したい Edit

少ないサンプルでFAB-MSを測定する
北海道大学農学部 「ぶんせきの友」FAQ & Tips GC-MS & NMR Lab.

赤外分光分析 編 Edit

IRってなんですか? Edit

端的に言って、官能基を見る分光法である。特にカルボニル。またはニトリルやニトロなどの特殊な官能基を検出するのに使う。
それから、同一物質では指紋領域を含めて一致するし、異なる物質では必ず異なるスペクトルが得られることになっている。その点に関してはNMRより手堅い。
ただ、今時、IRで芳香環の置換パターンを検出するなんて時代遅れだ。

サンプリング方法は何がいいですか Edit

溶液法、フィルム法、KBr錠剤、反射、nujol法etc.がある。指導者と相談して適当な方法を選ぶ。オイルだったら簡単なのは液膜(フィルム)で、これはIR室のデシケーターに転がっているNaClやKBrの結晶に塗りつけて赤外光路に置く(立てかける)だけで測定することができる。

KBrのタブレットが上手にできません Edit

KBrのタブレット作成法は、自分の知る限りにおいてローカルルールが最も厳しい実験だ。
サンプルをメノウ乳鉢で擦り始めた瞬間に「そんなやり方は間違っている!」とダメ出しされることも珍しくない。KBrはキューブ派・粉末派、ポンプで引く派・引かない派、加圧中はポンプ止める派・止めない派、プレスに時間かけろ派vs減圧に時間かけろ派、後始末で器具を水洗するかしないかなどなど、たかが赤外の測定で研究室が三つ巴四つ巴の大混乱に陥った例を何度も目撃した。
学生だったら悪いこた言わね、指導者の意見に素直に従え。だけど、多少濁っててもヒビが入ってもスペクトルそのものは結構取れるよ。定性分析だけだったら、ミクロKBrで十分。ただし、塩置換が起こる可能性があるので無機物の取り扱いは注意してね。

炭酸ガスの吸収に注意 Edit

対照側とサンプル側の光路長(空気厚)を厳密に一致させること。ダブルビーム型だったらダミーのセルを対照側の光路に入れる。FTだったら、ブランクを取るときに空のセルを入れておく。そうしないと、炭酸ガスの吸収(2350 cm-1)がバックグラウンドに現れる。

  • まぁプロになれば、そんなのに惑わされないし、水蒸気のほうがよっぽど邪魔なので、困ったらプロにとってもらうことをお勧め。
    • ↑何言ってんだかわかんない

波数の単位cm-1 Edit

カイザー(Keiser)は普段からなるべく使わない。特に学会では使用禁止。cgs単位系で、しかもケルビンと紛らわしいので「使用を避けるべき」とIUPACからはっきり勧告されている。そもそも日本でしか通用しない用語だ。
国際学会ではreciprocal centimeterと言う。日本でも物理化学系では「wave number」または「毎センチメーター」への言い換えが進んでいる。なおper centimeterはこれまた海外では通用しない。

核磁気共鳴 編 Edit

データの加工(画像処理)はいかなる理由があろうと、絶対に禁止 Edit

不純物のピークを消すなどの行為を軽い気持ちでやらないこと。研究室内の実験検討会などであろうとも、そういうことをする奴がいたら、泣くまで怒鳴りつけても罵倒してもよい。
もし学会でそういう事例を発見した場合は、指導教授を呼び出して壇上で釈明させてもよい。

  • 学会でたまに見かけるのは、HMBCでサテライトピークを画像処理で消している例。不審なデータがあったら、質問してよい。

NMRの測定法や理論って、どうやって勉強すればいいですか? Edit

独学。
JEOLのユーザーズミーティングの資料はためになるが、簡単に手に入る方法は知らない。

NMR管をうまく振って混和できない。混和してるか心配。 Edit

  1. NMR管を利き手で鉛筆をもつ要領で持つ。
  2. 利き手じゃないほうをグーにする。
  3. グーにした手にNMR管を握った手の手首をぶつける。

コツがいるけど、溶液がキャップにつかずにきれいに混和できる。

分解能が上がりません Edit

サンプルに浮遊物があると、分解能は上がらない。Dシグナルがふらつくときは、それを疑ったほうがいい。
パスツールピペットに少量の綿を詰めて、綿栓濾過する。少量のサンプルの場合は、秤量する容器に移し込む時に濾過する習慣をつけておくとよい。
また、サンプルチューブに傷がついていると分解能は上がらない。チューブの洗浄は竹ひごで作った綿棒で注意深く行う。
サンプルチューブ内の液量によって、シムはズレる。4 cmの液量は守ろう。実験台の天板の厚さが大体4cmなので、それに合わせるのがコンビニエンス。
サンプルチューブの真円率で確かにシグナルの精度は影響を受けるが、サンプル調製の影響のほうがずっと大きい。チューブは安いので十分。学会会場でタダで配っているディスポのサンプルチューブで、1年間持たせる猛者もいる。

サイドバンドが発生したら Edit

サイドバンドは、メインピークからサンプルチューブのスピン速度(例えば15 Hz)離れた位置に発生する。この主な原因は分光系の調整不十分と、サンプルチューブの偏心だ。
分光系に原因がある場合、スピンを止めて高次シム項の調整を行う。これはマニュアルであれば、慣れた人でも1時間以上かかる。なお、これはプローブの物理的寸法の変化(つまり温度変化)の影響を受けやすく、いくら恒温室でも季節変動が原因になりやすい。
サンプルチューブの偏心の場合は、もちろんチューブを変えれば状態が変化する。キャップが斜めに被せられていることが原因であることも多い。
なお、メインピークから70-80 Hzぐらい離れているところの左右に出現するピークは1H-13Cカップリングによる「カーボンサテライト」である。これをサイドバンドであると言い張る教授は珍しくないが、これは絶対に消すことができない。冷静な時に誰かが説明したれw

NMRのロックやシミングって何やっているんですか? Edit

ロックは超電導磁石の磁場が時間変化(ドリフト)するのを重水素シグナルを見張って補正する機構.
シミングはサンプルにかかる磁場を空間的に均一に補正する操作。その磁場によって起こるゼーマン分裂を、0.01 ppm(1億分の1)の精度で検出するのがNMRという装置なのであって、サンプルごとに調整が必要であるのは必然である。
なお,『シム』というのはかつてコイルの位置を調整するために使っていたくさび(shim)から来ている.

シグナルの質が悪かったら、温度を変えてみよう Edit

シグナルがブロードだったり、純品なのに特定のピークの頭が割れるなどの不審なスペクトルが得られたら、温度を変えてみましょう。コンフォメーション多型を示す物質ではシグナルに変化が現れる。通常は50℃位でよい。アミドを持つ化合物、ビフェニル、中環状~大環状化合物、不自然な立体障害を持つ物質でよく起こる。
温度が安定したところで、必ずチューニングを取りなおす。場合によってはシム調整もやり直す。指導者によく聞いてください。
調整に手間取ることがあるのでなるべく空いている時間帯に測定することが望ましいが、次のユーザーのために測定ノートに必ず温度可変実験をやった旨の記録を残すこと。

NMRで水のピークを消したい Edit

重クロの入ったNMR管に重水を一滴(10μLもあれば十分)入れて、振ると水のピークが消える。
ただし、OH や NH などのピークも消えてしまう。*1この時にOHやNHとカップリングしていたシグナルはシャープになるのが観測されるはずである。
なおHDOのシグナルを検出しないようにするためには、昔の水銀体温計を振る要領でサンプルチューブに遠心力を与え水層を重クロの上に浮かせるとよい。

微量の試料についてはこちら*2も参照のこと。

またパルステクニックで水などの巨大ピークを消去したい場合は、homegate decoupling (presaturation) を使う。最近、有機化学系では何故か全然使わなくなったが、これを使うと軽水-5%重水などでもOHやNHのシグナル損失なしで測定可能だ。

微量試料管の使用する Edit

微量試料管の使用する
北海道大学農学部 「ぶんせきの友」FAQ & Tips GC-MS & NMR Lab.

FG測定って・・・? Edit

Field Gradient(FGまたはPulse FG = PFG)測定は通常の有機化学実験に伴うNMR測定では、測定条件決定の煩雑さやパルス条件の決定などの微妙さ、メンテの必要性を考慮すると、あまり有用性を感じない(反論は認める)。

 

ただしインバース測定(HMQC, HMBC)ではメインピークの消去(つまりF1ノイズの劇的減少によるS/Nの向上)とピークのリフォーカシング(測定条件の設定が不十分で1H-13Cカップリングによって左右に分離したピークの解消)に絶大な威力を発揮するので、特に低濃度のサンプルで13C情報がほしい天然物サンプルを扱っている場合には是非試して自分のものにして欲しい。絶対に損はさせない。
測定条件の練習には夜間や休日を活用しましょう。測定そのものは通常測定よりも時間はかからないし、パルス幅さえきちんとしていれば条件設定も(原理的に)敏感ではない。
なおFG測定では必ずスピンを止めること。

データの読み方 Edit

  • 分子量の小さい化合物で特殊測定(二次元)をするときは、長い緩和時間に注意。パルス待ち時間pulse delayを思い切って長く(20秒ぐらい?)取らないと、目的とするシグナルがまったく観察されないことがある。
  • 濃度の低いサンプルで13Cを測定する場合に、つい90度パルスで感度を稼ぎたくなるがこれは逆効果である。むしろ45度以下のパルスでdelayを減らしたほうが、時間あたりの感度は向上する。
  • COSYでカップリングコンスタントが小さすぎて思ったクロスピークが得られない場合は、短めのmixing timeでTOCSYを試してみるとよい。
  • カップリングコンスタントを問題にするときは、横軸のデジタル分解能に注意する。観測幅や測定磁場にもよるが、普通は0.3 Hz程度の刻みである。ポイント数を増やしたり、ゼロフィリングをすることで分解能を向上させるとよい。

NOE測定 Edit

  • NOEを検出する場合、感度を重視するなら差スペクトル、定量性重視ならHomegate decoupling、複数の情報を得たい場合はNOESYを使用する。目的に応じて使い分けること。
  • NOEが出たから接近しているという結論は間違っていないが、出なかったから遠い、という結論を出さないのが原則。
  • 配座解析にはNOE情報だけではなく、カップリングコンスタントを活用しよう。Karplus式からH-Hの二面体角は簡単に精度よく計算できる。C-H二面体角よりもずっと簡単。
  • NOE差スペクトルから得られたデータで、NOE強度を%で表記するのはあまり勧められない。通常は照射位置の積分を-100%にして積分数値をNOE増分にするが、照射した時に照射位置の積分がゼロになることはほとんどない。したがって、数値には気休め程度の意味しかない。
  • NOEでは常磁性物質である溶存酸素の影響を受けやすい。軽く脱気すると感度の向上が見られる。もちろんfreeze-thawで脱気するのが一番だが、ビーカーに沸点程度の湯を用意しておきサンプルチューブを浸しながら超音波をかけるのが手軽で便利。2~3分やればよい。その後、不活性ガスを吹きつけてキャップすれば数時間の測定ぐらいには耐える。
  • NOEの強度は測定磁場が小さいほうが出やすい。特に分子量が500から1000ぐらいの分子ではその傾向が顕著に現れる。思ったようなシグナルが観察されない場合、装置を変えてみるとよい。またはROESYを測定すると良い結果が得られる。ただしROESYはパルス幅に敏感なので、チューニングをきちんと取ること。

サンプルチューブ Edit

米国amazonでWilmadのサンプルチューブを激安(1本1ドル以下)で買うことができる。送料込みでも十分安いはず。ギフトラッピングもOKだw

元素分析 編 Edit

元素分析がなかなか当たらない Edit

  • カラム精製-濃縮-分析では、元素分析はなかなか当たらない。
    カラム精製したものをクーゲルロールを使って昇華・蒸留、あるいは再結晶したりするとグンと当たりやすくなる。
  • 油状物の元素分析
    普通にカラムかけたものをよく乾燥させれば、結構合う。
    少量 (10 mg程度)を適当な容器に取り、適切な乾燥剤を入れて一晩アセトン沸点で減圧下乾燥する。
    アプデルハルデン乾燥機を使えばよい。
  • 元素分析が当たらないと嘆く前に、まずはTLCをチェックしてNMRを確認せいよ。そこで純度に疑問があるのに、元素分析を当てようなんて根性がねじ曲がっとる。理論値に炭素が足らないからベンゼンを残しておこうとか、水素が足らないからヘキサン入れちゃおうかなとか考える奴は今すぐタヒね。
  • 世の中には元素分析が原則合わない化合物がある
    熱分解して窒素分子を放出するアジドなどの化合物は元素分析は合いません。ある種のDA adductなども同様。そういう化合物は無理して合わせて論文に載せる必要はありません。
  • 結晶水は考慮しても良い
    有機溶媒から結晶化したからといって結晶水を考慮しない必要はない。整数値でなくても良いよ。

旋光度 編 Edit

旋光度の精度 Edit

旋光度を測るナトリウムD線付近の波長域は、そもそもORD感度がものすごく悪い領域だ。どんなに頑張っても、絶対値で数度・相対値で数%(どちらか大きい方)の誤差は絶対に免れ得ない。
だからここだけの話、濃度はそんなに厳密に測んなくていいです。微量のメスフラスコなんか使う必要ないよ。

  • ただし、レフリーからイチャモン付けられないように有効数字だけは揃えておきましょう。

紫外・可視吸光度 編 Edit

構造解析上、もはや今日的な意味は失っているとはいえ、測定しなければならないこともある。慣れないだけに実験テクは失われつつある。

測定感度 Edit

NMRなどに比べると測定感度が数桁違う。
銅アンミン錯体は見た目ではインクみたいに濃い色がついているが、分子吸光係数εは80ぐらいしかない。これに対して有機化合物の発色団であるπ-π*遷移のεは10000程度もごく普通である。ちなみにn-π*は禁制だが、それでもεは100ぐらいある。
だから、光の透過度を精度よく検出できる範囲(=検量線を作れる範囲)に設定するには、濃度をものすごく低くしなければならないことを理解する必要がある。低い濃度を精度よく設定するためには「溶質の重さを測って溶かす」のでは無理で、決まった濃度の溶液を希釈するしかない。
溶媒として不純物を極力廃したスペクトル測定用を使う必要があるのは、こういう理由である。ピペットやメスフラスコも、普通は測定溶媒で共洗いする必要がある。
またpHなどの溶媒条件にも敏感なので、詳細な測定条件が不明である文献値と合わせるのは結構難しい。

  • 蛇足ではあるが、合成品を生成した時に多少黄色っぽく着色しても気にしなくていいという理由はこれ。不純物は多くの場合、芳香環や複素環が酸化縮合した物質の混合物と言われているが、極めて微量でも大きな可視吸光係数を持っているために着色させてしまう。

セル Edit

可視光測定用のガラスセルと、紫外が測定できる石英セルがある。ガラスセルは底が丸く、石英セルは角ばっている。
使用後に絶対に熱かけて乾燥しないこと。ドライヤーぐらいでもピキッと割れる。超音波洗浄も禁止。

融点 編 Edit

データ化の注意事項 Edit

結晶を作ったら融点を測定する。データとして残す場合は温度計の補正(温度計は全長を同じ温度にしたときに正確な値が出る。先だけ加熱する通常の測定では「未補正uncorr.」)、結晶化溶媒(溶媒によって結晶多形があり得るから)、結晶形(針状晶needles、プリズム晶prisms、板状晶platesなど。英語では複数形にすることを覚えておこう)を必ず書き添えておくこと。






*1 気ままに有機化学: NMR で水のピークを消す方法←この「気ままに有機化学」はどうもレベルが低いので、好かんな。
*2 北海道大学農学部 「ぶんせきの友」FAQ & Tips GC-MS & NMR Lab.