合成経路

Last-modified: 2017-12-24 (日) 11:38:37

ピペドあがりは何をやっても苦労する

試薬の力だけで合成経路を立案するな

今は試薬が進歩していて、試薬の反応性だけで選択性を決定できる時代になった。だけど、特に原料合成では基質をデザインすること、つまり出発物質を適切に選択することが合成経路をシンプルで効率良くする。

  • 不斉点は原則エポキシ化かAD-mix、パラジウムカップリングで炭素を伸ばしていき、最後はRCMとかいう全合成の研究室に他大学から絶対に進学してはいけません。
  • 見たこともないような不斉錯体試薬を使って不斉DA反応やene反応で魔法のように骨格形成する全合成研究室にも、他大学から進学してはいけない。ドクター取る頃には合成が大嫌いになる。

大量合成では結晶化による精製が原則

試薬分解物の除去などにカラム精製をしてもいいが、極力結晶化で精製すること。結晶化困難な場合は、クルードで数段階進めても構わない。クルードでも目的とする反応性や選択性が得られることを確認しておくこと。
また条件検討するためのベースキャンプ中間体には、必ず結晶性の物を選ぶ。

  • または、蒸留精製だ。ただ保存サンプルとしては、酸素が溶け込んで分解する可能性がある液体よりも、結晶で取っておいたほうがよい。

合成経路に安く買える試薬が意外とある

よく考えずに実験してる院生の合成ルートに試薬で買える化合物が入っているのはよくある事。25g4000円で買えるケトンを必死に作ってたり。

お金で解決できる問題は、お金で解決する。

どの程度の量が必要かにもよるし、もちろん研究室の予算と相談の上だが、買ったほうが安い場合がほとんどだ。特にアミノ酸ユニットを含む化合物を合成しようとしている場合、ためらわずに保護基が導入されたものを買う。

  • 潮解性や酸化によって変質しやすいFeBr2の値段が高いとの理由で、変質したモノを電気炉で焼いて再生するよう指示していた教授が居た。
    過程は省くが、予想通りゴミが出来て結局新しいものを注文する羽目になった。
    指示されていた学生は卒論直前の貴重な3週間を無駄にする結末になった事は言うまでもない。

ペプチド合成などの繰り返し反応では条件を統一せよ。

特にペプチド合成では、必要がなければカップリングごとに縮合試薬を変えたりしない。ほんの数%の収率向上よりも、再現性が優先。「なぜ再現性がないのか」ということが重要な意味を持たない限り、無駄に条件を振ってはいけない。

  • 逆に言うと、前もってシミュレーションとモデル実験を十分に行なっておく必要がある。反応がうまくいかなかったら、条件検討や試薬を変えることで乗りきれる可能性はほとんどない。

ペプチド合成では最大保護が原則

ペプチド合成に不慣れな研究室が、異常ペプチドや蛍光ラベルペプチドの合成に手を出して失敗する最大の原因は保護基をケチる事だ。最初は順調だったのに、途中から試薬ばかりが消費されて反応がさっぱり進行しなかったり、未反応の原料が全く回収できなかったりする事故に悩まされる事になる。
反応に直接関係ないはずの側鎖アルコールやアミド(-CONH2)など、がっちり保護しておく。この時に、ついシリル系保護基を使いたくなるが禁止。ちょっとした酸塩基の条件で分子内転位を経由して、外れてしまう。また側鎖の疎水性が高くなると、アミド鎖間の分子間水素結合で溶解性(と、おそらく反応性)が極端に落ちる事を覚えておくこと。「どんくさい」と思っても、tBuとかTrtとかの反応性がよく知られている古典的な保護基で前もって保護し、最後に酸で全部外れる合成経路を設計することが成功の秘訣。原料合成に手間取って、教授からイヤな顔されても気にするな。

法律に触れる化合物を作ってない?

法律に触れる化合物って意外と簡単な構造であることも多い。ここにも「〇〇は××から簡単にできるから注意が必要だ」とか不用意に書かれていたが、「〇〇の合成法」としてgoogleでトップヒットしてしまった。慌てて削除。

  • そういう品って大体純度何%以上だと引っかかるとか
    って感じの規定じゃないっけ?
  • 色々なタイプの規制がある(規制根拠の法令による)。
    含量xx%以上というのもあれば、微量でもアウトな化合物もある。
    純品のみ規制の場合もあるが、「純品」の明確な基準はない。
    果ては、意図して入っていると微量(0.1%でも)でもダメ、
    意図せぬ不純物としてなら(数%入っていても)OKというのも。
    つまるところ、法令を見ないとわからないのだが、非常に読みにくい上に数が多い…。

合成経路にtBuLiを100mlもシリンジで吸う反応がある。怖い

  • t-BuLiを100mLシリンジで吸うような実験計画を立てるやつがアホだ。
    大体において、吸ってる途中で詰まりそうだ。
    sure-sealボトルにセプタムつけてキャニュレーションで滴下漏斗に移すよ、自分だったら。
  • tBuLiを大スケールで使う反応ってのもなぁ
  • tBuLiを100mlも使うスケールアップを考える方が悪い。
    多少収率が悪くとも別のルートを考えるべきだ。なぜtBuLiを使わなければならないのか、まずそこをよく検討する。塩基を強くする方法も強力なリチオ化をさせる方法も、より安全な手段が知られている。そこであくまでtBuLiに固執する指導者は、無能だ。
  • どうしてもそのルートじゃなければ駄目だ、という場合はtBuLi 100mLをベースにスケールを設定すべし。そしてtBuLiのsure-sealボトルにセプタムをつけて、ボトルに直接アルゴンのバルーンから圧力をかけてキャヌラ経由で反応系内に試薬瓶の全量を(シリンジで容量を測ることなく)送りこめ。接液部を極小にすることで事故を起こす確率は少しでも減らせることができる。