しのぶさんのお料理教室

Last-modified: 2024-01-26 (金) 13:13:17

元スレ
【育成SLG】セカンドールマスター 3世代目
http://engawa.5ch.net/test/read.cgi/gameama/1220671502/


359 :245:2009/05/30(土) 23:04:19 ID:ZRFtUC+5
やっと…やっと完成した…
一ヶ月以上かかってしまった…
今から投下します。

設定は>>317で、名前が>>326より、天使18→イース 天使15→リラ です。


360 :245:2009/05/30(土) 23:07:00 ID:ZRFtUC+5
   第3期 3月

仕事をひと段落終え、ぐっ、と背筋を伸ばす。自然と声が漏れた。
点けっ放しにしてあったテレビから、ニュースの音声が流れてくる。

「天覇大集会、優勝は……」

選抜大会、天覇大集会と共に3月は終わりを告げる。
ドール達も私も、ようやく羽を伸ばせるようだ。
そう。
4月からは 大会第3期上級称号者特別休暇 が始まるのだ。
幸運な事に、我が「おなまえ氏」に在籍するドール達は皆、上級称号を所有している。
つまり、休暇中はおなまえ邸には誰も居なくなる、という事だ。
となると当然、私の仕事も大幅に減る。
言ってみれば、おなまえ様や私の休暇でもあるわけだ。
時に、多くの人は私達、育成者の助手という仕事をよく知らないのではないのだろうか。
そのように考えてしまう事がある。
無論、おなまえ様やドール達の方が楽だと言っている訳ではない。
ただ、もう少しくらい理解してくれても良いのではないか、などと思ってしまう。
とはいえ他家の助手の話を聞いていると、どうやら家は随分マシの様だ。
まあ、何はともあれ来月からは休暇なのだ。愚痴を言っていても仕方が無い。
この休暇中は何をしようか、などと考えていた時だった。

「しのぶさーん!」

元気な声が部屋に響くと同時に扉が開かれ、3人のドールが入ってきた。


361 :245:2009/05/30(土) 23:08:56 ID:ZRFtUC+5

しのぶさん「あら、イースさん、リラさん、マッドナイスさん。揃ってどうしたんですか?」

彼女らはこのおなまえ氏の主力メンバーだ。最後の一人のホットレイラは、どうやら一緒ではない様だ。
それにしても、わざわざ休暇前に私の所になど来るなんて、一体どういった用なのだろうか。
…まさか。私の頭にうっすらと嫌な予感がよぎった。

リラ「わたしたち、休暇は魔王退治に行こうと思ってるんです!!」
イース「それで、お弁当を持って行こうと思っているんです。ですが…」
マッドナイス「あたし料理できなーい!」

…どうやら予感は的中したようだ。
と言ったものの、それほど悪い話ではない。
これくらいならば大した労力にはならないからだ。

しのぶさん「分かりましたよ。お弁当、用意しますね。」
イース「あ、いえ、違うんです。しのぶさん。あの…」
リラ「わたしたちにお料理教えてよ!!」

成る程、そう来たか。
3人分の弁当くらい、ちゃちゃっと作ってしまえば良いと思っていたが、そうはいかないようだ。
しかし、増す労力に反し私の心は躍っていた。
人に料理を教える事は少なからずも楽しい事だ。他人がどうかは知らないが、私はそうだ。
ましてや、我が子同然に過ごしてきたこの子達に、とあらば尚更だ。

しのぶさん「分かりました。いいですよ。」
マッドナイス「やったぁー!!」
イース「それじゃあ、出かける前日にお願いしますね。」
マッドナイス「ホットも誘っていいー?」
しのぶさん「もちろんいいですよ。」

どうやらいつものメンバーで休暇を過ごすようだ。
ホットレイラは引っ込み思案な所があるので、こういった時に孤立してしまわないか気懸かりだったのだが、
その心配も無用だったようで少し安堵した。


362 :245:2009/05/30(土) 23:09:39 ID:ZRFtUC+5

   「しのぶさんのお料理教室」


363 :245:2009/05/30(土) 23:10:23 ID:ZRFtUC+5

 第三期休暇

しのぶさん「では、手をしっかり洗って、エプロンと三角巾を着けてください。」
皆「はーい!!」

ホットレイラは最初、これに参加するのを嫌がった。自分に料理なんて、という事らしい。
それに加え魔王退治にも行かないなどと言うものだから、マッドナイスが怒りだし、止めるのが大変だった。
イースの説得により怒りは静まり、ホットレイラも参加する事となった。

ホットレイラ「手、洗ってきたよ」

そう言ったホットレイラは、用意してある食材を見つけると眼を輝かせた。
何だかんだ言って、彼女も楽しみなようだ。
手を洗い終えた3人も戻り、それぞれエプロンを着けはじめる。
そんな可愛らしい彼女らを見ていると自然と頬が緩んでしまう。

イース「何だかうれしそうですね、しのぶさん。」

イースが微笑みかけてくる。
当然の事だ。料理を教えてくれ、と頼まれる事がうれしくない筈がない。
まるで母親にでもなった気分だった。
そんな上機嫌のまま、私はさっそくお料理教室を始める事にした。


364 :245:2009/05/30(土) 23:11:28 ID:ZRFtUC+5

しのぶさん「それでは、まずはデーモンピザから作りましょう。
      生地の上に具を乗せていって下さい。」

各々が思い思いに用意された具をトッピングしていく。

マッドナイス「うえー! あたしナスビきらーい!! ホットちゃんあげる!」
ホットレイラ「え…? や、やだよ……!」
イース「はいはい、じゃあ私のに乗せてね。」
リラ「わたし肉ほしい!! 魔獣の肉いっぱい乗せる!!」
マッドナイス「あ、ずるいぃぃぃ!!」
イース「ケンカしないで。ほら、私の所から取っていいからね。」

予想通り、取り合いや押し付け合いが始まったが、イースの大人な対応により取り敢えずは納まったようだ。
リラもお姉さんなんだから、少しは天使18を見習って欲しいものだ。
食べ物の事となると、ほとんどのドールは途端に子供になってしまう。
ドールの食欲は人間の比ではない。それも関係しているのだろう。
しのぶさん「乗せましたか? では、生地をオーブンに入れてください。
      …入れましたね? 焼きあがるまで時間がありますから、次の料理に掛かりましょう。」


365 :245:2009/05/30(土) 23:12:43 ID:ZRFtUC+5

次の料理はジャイアントラットの塩焼き。
市販されているジャイアントラットのもも肉に塩コショウをし、七味を適度に振り、焼く。ごく一般的な料理だ。

しのぶさん「油は引かなくても大丈夫ですよ。…ああ、イースさん、それは一味…!」

大量に振り終えた後に気付き、てへっ、といった具合に舌を出してみせるイース。
どうやら少し天然が入っているようだ。
大丈夫だ、と表情こそは穏やかだが、彼女は辛い物が苦手だった筈……
私は、マッドナイスのおかわりになる予定であった余りの肉を、彼女にそっと渡してやった。
そして、暴れだすマッドナイスを沈めるのに更に時間を費やした。


367 :245:2009/05/30(土) 23:13:30 ID:ZRFtUC+5

野菜を炒める音と、漂う香りが芳ばしい。
昼食にはまだ早い時間なのだが、音と香りにつられ腹が鳴りだした。
ワイワイと騒がしい厨房では、どうやらしのぶさんがドール達に料理を教えているようだった。
耐え切れなくなりふらふらと向かってみると、彼女らの会話が聞こえてきた。

しのぶさん「マッドナイスさん… 豚肉入れすぎです……」
マッドナイス「いーじゃん! 肉好きだもん!!」

どうやら野菜炒めを作っているようだった。
ぼーっ、とその光景眺めていると、こちらに気が付いたイースが声を掛けてきた。

イース「あら、おなまえさま。どうなされたのですか?」
おなまえ「いや、良い匂いがしたからな。料理を教えてもらっているのか?」
イース「ええ。これから行く旅行先で食べようと思いまして。」

旅行、といっても魔王退治のはずだ。
1日だけで終わるものでもないが…… だから教わっているのか。
1人で納得していると、材料を取りに来たマッドナイスに、邪魔だ、と睨まれた。
育成者に向かってそれは無いんじゃないか、と思ったが、どうやら本当に邪魔そうなので退去する事にした。
味見をさせてくれ、などと言おうものなら何を言われるか分かったものじゃない。
空腹に耐えながら俺は厨房を後にした。

ラキセイン「あ、おなまえ様、何してんすかwww?」

ラキセインとすれ違った時、うちの男達は何をしているのか、と、ふと思った。
聞いてみると、彼等は揃ってパレスの別荘に遊びに行くらしい。
女性陣とは雲泥の差だと思いつつ、パーティCに彼等を出場させない事だけを告げ、自室に戻った。


368 :245:2009/05/30(土) 23:14:20 ID:ZRFtUC+5
やはり、たまごやきは難関だった。皆、うまく形にならず、悪戦苦闘しているようだ。
崩れてしまったたまごやきを見てホットレイラが泣き出す。
つられてか、リラまで目に涙を溜めているようだった。
マッドナイスは先程から、溜まりに溜まったストレスを全て吐き出すかのように怒り狂っている。
イースはというと、見事…とは言えないが、ほぼ完璧にたまごやきを完成させ、ホットレイラを慰めていた。

しのぶさん「失敗しても大丈夫ですよ。卵はまだまだありますから、たくさん練習してください。」

今日の昼食は、たまごやきに確定した。


369 :245:2009/05/30(土) 23:16:30 ID:ZRFtUC+5

イース「次はからあげですよね。どうやって作るんですか?」
マッドナイス「かっらあげ、かっらあげ~!」
しのぶさん「冷凍の物をレンジでチンしましょう。」
皆「(えぇぇぇぇ~……!?)」


371 :245:2009/05/31(日) 00:33:58 ID:oyZM+UQR
再開します

お料理教室も終盤に差し掛かる。
軽く水をきった手で、塩を混ぜたご飯を三角形に握る。そして海苔を巻いて完成。
ホットレイラも問題無く出来ているようだ。
私とイース、ホットレイラはおにぎりを握り、リラとマッドナイスはウインナーを炒めていた。
これといって教える事も無く最後の料理は終わり、後は弁当箱に盛るだけとなった。
その間に、私は焼きあがったピザをアルミホイルに包んでいく。
それが終わる頃には、弁当も完成していた。

リラ「見て見てしのぶさん!! 私の手作り弁当!!」
マッドナイス「あたしのも見て~!!」

完成した弁当を自慢げに見せるその姿は非常に愛らしく、正に至福の時であった。
こんなに喜んでくれるなら教えた甲斐があったというものだ。

イース「しのぶさん、わざわざありがとうございました。」
リラ「ありがとう!! また他にもいろいろ教えてね!!」
ホットレイラ「…楽しかったです。私にも出来て…。ありがとう、しのぶさん。」
マッドナイス「うんうん楽しかったー! たまごやきは強敵だったけどね!! しのぶさん、ありがとー!!」
しのぶさん「いえいえ、私も楽しかったですよ。
      今回の経験を生かして、旅行先でも料理を楽しんでくださいね。」
皆「はーい!!」

そう言って、最後におやつのメタルせんべいを持たせ、皆を見送った。


372 :245:2009/05/31(日) 00:36:50 ID:oyZM+UQR

彼女らを見送り、ぐっ、と背筋を伸ばす。自然と声が漏れた。
もうすべき事は無い。ようやく休暇を楽しめる。
そう思った矢先に私の目に飛び込んできたものは、何の後片付けもしていない厨房だった……

     END


373 :245:2009/05/31(日) 00:40:36 ID:oyZM+UQR
補足
ストーリー重視なため年齢はけっこう適当です。
天使18 天使15→成齢 マッドナイス ホットレイラ→中齢 くらいのつもりです。

あと、おまけはまだ完成していないので、書き終わり次第 投下します。


389 :245:2009/06/15(月) 19:50:43 ID:PBxns4bf
とりあえずおまけを投下します。

魔王城へ続く山道。
和気藹々と食事をしている最中、突如それはやって来た。
平穏を掻き乱す4つの黒い影。魔王の手下である事は一目瞭然だった。
ケタケタ、と笑う黒い影達。その笑い声は聞くに堪えない、不快なものだった。
温厚なイースが顔を顰める。彼女が顔を顰めるなど、滅多に無い事だ。
故に、それは分かりやすく不快感の度合を表していた。
にも拘らず、影達は依然として笑いを止めなかった。
思わずマッドナイスが飛び掛りそうになったが、イースがそれを制止した。
彼女は、無論 彼女以外の3人も、敵との実力差は理解していた。
迂闊に飛び込まなかったとしても、勝てるかどうか分からない。
ギリッ…と、マッドナイスが歯を軋ませる。負けず嫌いな彼女にとっては屈辱的な事だった。


390 :245:2009/06/15(月) 19:51:31 ID:PBxns4bf
薄ら笑いを浮かべながら、影達が歩み寄った。
余裕に満ちたその表情は、彼女らの怒りを増幅させる。
しかし、イースは飽く迄 冷静だった。
余裕に満ちた、という事は、己の実力に慢心しているという事だ。
となれば、必ず隙が生まれる。そこを突く他 勝機は無いだろう。

相手に悟られぬよう、3人に目で合図を送る。
チャンスは一瞬。タイミングが肝心だ。もし、少しでもミスをすれば、それは死を意味する。
汗がイースの額を伝った。彼女とマッドナイスは最も危険な囮役だ。
2人が敵の注意を引いている間、リラがホットレイラを強化し、ホットレイラが魔法で一気に止めを刺す。
敵の唯一の弱点が魔法である中、彼女らが取れる作戦はこれしか無かった。

気掛かりなのはホットレイラだ。この状況、彼女ならば恐怖で固まっているのではないか。
イースはそう思った。
だが、ホットレイラの目は淀みなく、しっかりと敵を見据えていた。
それを確認したイースは、少しの間だけ呼吸を止め、心を落ち着かせた。
そして……一瞬。

唐突な攻撃に敵も驚きを隠せず、作戦は見事に成功した。
予想以上にホットレイラの魔力は高かったらしく、影達は空の彼方へ吹き飛ばされていった。
それは漫画などでお馴染みのシーンそのままで、彼女達は思わず吹き出してしまった。
もう、邪魔をする者はいない。
後の魔王戦に備え、彼女らは食事を再開した。


392 :245:2009/06/15(月) 19:53:58 ID:PBxns4bf
 その2

魔王城へ続く山道。
そこで楽しそうに食事をしている4人組を見つけた。
よく見ると、それはどうやらおなまえ氏所属の女性ドール達のようだった。

パレス「うはwwwテラモエスwwwww」
ザンクロー「俺らも混ざろうぜwww」
キルアト「無理だろjk」
ユータサマナ「黙れよ明るい野郎が」

彼らは、かの有名な阿修羅の四天王だった。もちろん、負けず嫌いとしての著名である。本当は一人だけ負けず嫌いではないが。
そんな彼らが女性に近寄るとは、一体どういう意味を持つのか。即座に敵と認識され、攻撃を受けるだけだ。
にも拘らず女性に言い寄るのが負けず嫌い。愛すべきバカであるが、女性にとってはいい迷惑である。
彼らはいつもの様に襲い掛かろうとした。普通、大抵は何も出来ずに撃退されるだけなのだが、今回は違った。

キルアト「またやられるだけだって… 女ってこんな時だけ異常に強くなるんだから…」
ザンクロー「このヘタレがっ!!」
パレス「まぁ落ち着け。考えてもみろ。奴らはおなまえ氏所属のドールだ。」
ユータサマナ「それがどうかしたか?」
パレス「バカだなぁ~。いいか…? よく聞けよ…?」
皆「…ごくり」


393 :245:2009/06/15(月) 19:54:40 ID:PBxns4bf
パレス「あの子らは…大して強くない…!!」

ゴンッ!

キルアト「俺の話、聞いてたか?」
パレス「でもだ! 今まではサイレントアイやスーパーテンシに手を出してきて、やられていた。
    だが、今回はどうだ!? そこまでは強くないだろ!? だったら!! 俺達だって強いんだから大丈夫だろ!?」
ザンクロー「とりあえず落ち着けよ。」
パレス「うん」
キルアト「面倒臭い奴だな…」
ユータサマナ「でもパレの言うとおりだ!! さっそく行こうぜ!!」
ザンクロー「…そうだな! 今回は何だかいけそうな気がするわww」
キルアト「……まぁ、いけるならいくしかないよなwww」
パレス「よっしゃぁぁぁ行くべ!!」



結果は無論、言うまでもないだろう。昼間の空に、4つの星が輝いた。
たとえ実力があろうとも、それを過信、または敵を過小評価し、気を緩める事は、必然と敗戦へつながる。
油断大敵とはこのことである。