コノハナイト(このはないと)は静岡県富士宮市で産出される鉱石である。
概要
鉱物名としては、黒曜石の一種であるコランダムの変種とされる紅榴石(ガーネット)に相当するが、実際には結晶構造が異なっており、宝石としての価値はない。
産地によって色調が異なり、赤・青・黄などの色がある。また、同じ種類でも、産地や採れる場所によっても色合いが異なることがある。
色は、赤色系と青色系の2系統に大きく分けられる。一般に市場に流通しているものは、主に赤色系統のものである。
なお、この鉱石から作られるガラスをコニアと呼ぶ。
歴史
古くから富士山周辺で採掘され、火山灰層に混じって産出するため、古くは「灰長石」と呼ばれていたようである。
原産地については諸説あり確定できないが、山梨県東部の都留盆地で多く産出し、平安時代には既に交易品として流通していたと推定されている。江戸時代には、甲府勤番士により江戸にも運ばれていた。
用途
研磨すると鏡のように光るため、古来化粧用の道具として使用されていたが、明治以降は工業的に生産され、現在ではアクセサリーに使用されることが多い。
加工方法には研磨による平面的な面取りの他に、型押し成型の技法もある。
研磨剤に使われる水酸基含有硝酸バリウム(BaSO4-NO3H)
は、酸性のため注意が必要だが、硬度が高くて割れにくいことから、研磨剤として広く用いられている。
また、酸化アルミニウムとともに熱伝導性が極めて高いために、電気器具の内部部品に利用されている。
その他、ガラス工芸に用いられることもある。産出地である富士宮市では、この鉱石を使ったステンドグラスが有名であり、市内に専門店がいくつか立ち並ぶ。しかし、近年の環境問題の影響で生産量は減少している。
なお、日本名であるコランダムとは結晶中に不純物が含まれているものをいうのに対し、こちらは純粋に結晶のみでできているものを指す。
語源
結晶構造が花びらに似ているところから、コノハナノナトヨミコトという古語があり、それが転訛してコノハナイとなったという説がある。
しかし、この説ではコノハナとニギハヤヒの間に矛盾が生じる。
コノハナとは、木の花であり、植物の花ではないからだ。
コノハナナイという言葉自体は、日本書紀にある記述に登場する。ただしコノハナナトヨミミコトの名は記紀ともに見当たらず、別の神の名と思われる。
コノハナトヨミミコトは、天孫降臨の際にアマテラスの孫にあたる瓊々杵尊に伴われて降り立ったとされている。
日本書紀によれば、この二人は共に葦原中国を統治するように命じられた。その際に、コノハナトヨミミコトは磐根の草むす竜尾山に館を構え、そこに住まいしたとある。その故事に因んで地名のコノハナがついたのではないかとする説もある。
一方、語源由来辞典によれば、ギリシャ語の konoha naito, konorinaiton(血のない人)に由来するという説もあるが、真偽は不明である。
ちなみに、コノンというのは、古代ペルシャ語で人を指す単語である。
食用
コノハナイトは富士宮やきそばに欠かせない調味料である。主に麺の上に振りかける。
他にも、肉料理に使うソースや、カレールーの材料としても使われる。
コノハナイトの成分表をみると、ナトリウムが非常に多く含まれていることがわかるだろう。このため、塩分を控えたい人や高血圧気味な人は注意すべきかもしれない。
なお、富士宮やきそば用の麺を製造しているマルモ食品では、この鉱石から作られた粉を混ぜることでコシのある食感を実現しているのだという。
また、同じく粉末状のインスタントラーメンを作る際にも使用されることもある。
効能・効果. 疲労回復、老化防止、動脈硬化予防などに役立つといわれているが、具体的な効果は明らかになっていない。
紛争
1986年、当時の静岡市市長だった中田宏が、コノハナイトを巡る利権問題をめぐって対立し、後にコノハナイト戦争と呼ばれる抗争に発展した。
結果、静岡市側が勝利し、富士市の産業が大打撃を受けた。その後、両者は和解したが、現在でも両者の確執は完全に消えていないといわれる。例えば富士市の住民は出世大名家康くんを見ると露骨に嫌そうな顔をするし、静岡県庁の職員に対しても同じ態度をとることが多い。
コノハナイト戦争の教訓を生かし、静岡市側は現在、より安価な原料の輸入を模索している。
関連項目
コニア
ガーネット
ダイヤモンド
カイヤツ石
スファレライト