天蝕(天食、天体蝕、英:Heaven Eater)は、天体が太陽に近づきすぎた時に起こる現象である。日蝕や月蝕と異なり、時間を問わず常に観測することができる。太陽の直射光を遮る雲がないため、この現象が見られると、地上からでも容易に観測できることが多い。
解説
天蝕とは、天体が太陽に取り込まれることで起きる。これは、天体の持つエネルギーの一部が太陽に吸収されて失われることを意味する。
天球上において、太陽と惑星の距離が最も近づく位置では、惑星のエネルギーの一部は太陽によって吸収され、またその逆に、惑星の軌道面に対して太陽の位置する角度が大きいほど、より多くの太陽のエネルギーが失われることになる。
これはつまり、通常であれば天体と太陽はエネルギーの受け渡しをしているということで、本来そこにエネルギーの余剰や不足は発生しないのだが、天蝕の状態では、このエネルギーのやり取りの間に不均衡が生じてしまうことになる。その結果として、天体が徐々に小さくなっていき、最終的には消滅する。これを滅光と呼ぶ。
観測された天蝕によって失われた天体一覧
・虚王星(1932)
・浪星(1948)
・海明星(1959)
・空星(1969)
・新星(1971)
・第二新星(1981)
・衝星(1985)
1985年以降、現在まで天体蝕は観測されていない。
その他
天文学の分野においては、特に太陽の近くに存在する小惑星や彗星などの小さな天体が太陽に取り込まれることを指すこともある。例えば、彗星は太陽に接近した時、彗星核内のガス状物質を放出することで質量を減少させるが、放出されたガスのうち大部分は木星などの大きな衛星や地球などに落下し、その一部は再び彗星核に戻ることが知られている。
また、太陽近傍に存在する小天体の多くは太陽表面との相互作用により軌道が変化しており、これらの天体も太陽に取り込まれることがある。しかし、これらのほとんどは他の天体と衝突したりして、太陽に到達する前に消滅するため、実際に太陽で観測されることは少ない。
一方、太陽から遠く離れているはずの恒星でも、例えば超新星爆発などの影響で急速に太陽に近づいてくることがあり、そのような場合は太陽に飲み込まれることがある。このような天体は、誘引星と呼ばれる。