幽霊(食用)

Last-modified: 2023-01-09 (月) 08:13:32

この項目では、食材としての幽霊について説明しています。幽霊の基本的な情報については「幽霊」をご覧下さい。


幽霊を摂食する文化は世界各地に存在する。

幽霊の採集

人間が幽霊を採集しようとする試みは紀元前15世紀頃のメソポタミア文明の時代には既に行われていたと考えられている。当時はまだ幽霊の採集に特化した器具は無く、槍などの通常の武器または手づかみでの捕獲が行われていた。だが幽霊は基本的に実体を持たないため、これらの方法で幽霊が採集できることはごく稀だった。
この頃、幽霊の採集はある種の神事として、或いは単に娯楽目的で行われていたと思われる。当時、採集した幽霊を食べた人間がいる可能性は否定できないが、滅多に採集できない幽霊を食材として消費してしまう行為が既に文化として根付いていたとは考えにくい。

紀元前13世紀頃、適当な儀式を施した食塩(清め塩)を用いることで幽霊を実体化させられることが発見されて以降、幽霊の採集が本格化した。幽霊を摂食する文化が誕生したのもこの頃だと考えられる。
この時代、槍の先端に清め塩を塗って幽霊を刺すという幽霊の採取方法が確立され、世界各地に広まった。またエジプトのナイル川沿岸では、清め塩を揉みこんだ網を二本の柱の間にかけ、風に乗ってやってくる幽霊を一網打尽にするという効率的な幽霊漁が行われていた。

産業革命以降、アンデルセン法と呼ばれる効率的な幽霊の採集法が確立されたことにより、幽霊の流通量、消費量は急激に増加した。アンデルセン法は、家畜の屠殺場に併設された専用の施設で行われる。屠殺場の上の階には霊媒室があり、ここで霊媒師が霊祓いを行うことで屠殺により発生した幽霊が下に移動する。屠殺場の地下には清め塩水溶液で満たされた水槽があり、ここで実体化した幽霊を回収する。この方法は今までに発明されたどの幽霊採集法よりも効率的であるとされており、現在世界で生産されている食用幽霊の9割以上はこの方法によって採集されたものである。2015年にはパナソニック社が霊媒師と同様の効果を持つ自動霊祓機を開発したことで、アンデルセン法がより盛んに行われるようになった。

調理

幽霊は採集された後、一旦全て塩漬けにされる。幽霊を塩分に触れていない状態で放置すると自然再幽体化を起こすためである。また、生の幽霊は体のおよそ九割が幽素によって構成されており調理しづらいが、この工程を経ることで食塩の浸透圧によって幽素が抜け、後の工程が格段に楽になる。通常の幽霊と脱幽済みの幽霊を区別する場合、脱幽前を幽霊、脱幽後を霊と呼ぶことがある。霊は常に実体化しているため、通常の食材と同様の調理が可能である。霊は加熱すると溶けてゲル状に溶け、冷やすと再硬化する性質(熱可塑性)を持つ。
幽霊を使った料理には、独特のコリコリとした食感を活かしたものが多い。また清涼感を感じさせる半透明の見た目から、夏の風物詩として幽霊料理がよく食べられる。自由に整形できる特徴から、文字やキャラクターを模した形の幽霊が飾り付けに用いられることもある。

各国の料理

中国では、伝統的な幽霊料理として、鳥の足や尾などの骨付き肉に幽霊入りの衣をつけて揚げたものが挙げられる。幽霊を揚げると独特の食感が得られる。また幽霊の身をスープにしたものも一般的なメニューである。

台湾では、幽霊を蒸したり茹でたりした後に調味料で味付けしたものをよく食べる。他にも幽霊のすり身で作った団子などもある。

東南アジアでは、魚に幽霊を詰めて煮込んだものが一般的であり、特にタイのトンプンチェが有名である。またベトナムでは、鶏肉と幽霊をスパイスと一緒に炒めて米飯にかけて食べる料理が名物として知られている。これらの地域では、幽霊は鶏や豚の内臓のように一般的かつ安価な食材として扱われている。

フランスでも、幽霊を詰めたパイはよく食べられている。フランスでは伝統的に幽霊は高級品であるため、幽霊入りケーキは非常に珍しい。

イギリスやアメリカの一部でも幽霊料理が存在する。イギリスでは、幽霊入りのシチューが定番の家庭料理とされている。アメリカでは、幽霊を詰めたミートローフが人気のようだ。

ロシアでは、幽霊の酢漬け(ビズチ)が代表的な食品の一つである。
オーストラリアでは、幽霊を塩蔵した塩辛が珍味として知られる。

カナダのイヌイットの間では、幽霊の塩漬けを発酵させて作るキヌアが食されている。

チベットでは、死んだ動物の頭蓋骨に幽霊を入れたカレー粉を塗って焼くという幽霊のカレー粉焼きが有名である。

日本では、幽霊の刺身や幽霊の握り寿司が食されている。これは世界でも珍しい、脱幽前の生の幽霊を使った料理である。

栄養価

幽霊に最も多く含まれている栄養素は炭水化物であり、次いでタンパク質、脂質の順に多い。また霊糖と呼ばれる特殊な糖質も含まれているが、これは摂取しても吸収されないと考えられている。
その他の主な成分としてはビタミンB群、ミネラル類、アミノ酸、不飽和脂肪酸、微量の重金属元素が挙げられる。
WHO(世界保健機関)は幽霊の栄養価を高く評価しており、一日に250g以上の幽霊を摂取することが望ましいとしている。また、幽霊を原料としたサプリメントも多く流通している。

一方で、幽霊の過剰摂取は人体に大きな悪影響をもたらす恐れがある。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、一日あたりの推奨量を超える量の幽霊を摂取した場合、健康障害を引き起こす可能性があると警告している。
例えばアメリカでは、毎日300kgの幽霊を食べた男性が心不全で死亡した事例がある。
他にも、イギリスの研究機関が行った実験では、毎日1000~3000kgの幽霊を食べ続けた被験者が脳出血を起こしたという報告もある。
このように、多くの国や地域で過剰な幽霊の摂取は有害だと認識されている。そのため、欧米では幽霊を使用した食品のパッケージに摂取目安量を明記することが義務化されている国が多い。

文化的意味

幽霊は他の食材とは異なる特別な文化的意味が与えられている場合が多い。

キリスト教圏では、かつては聖書に記述されていないという理由で幽霊を邪悪な存在と見なし、幽霊食は禁忌とされていた。だが時代が下るにつれ幽霊食は黙認されるようになり、現在では普通に食べられている。これは民間信仰に深く結びついていた各地の幽霊食文化が次第に宗教的な意味合いを喪失していったことが大きいとされる。

イスラム教では現在でも幽霊を食すことがタブー視されている。一部宗派では適切な祈りを受けた幽霊は食してもよいとし、ハラール幽霊が販売されている地域もあるが、そのような宗派は異端とされることが多い。

中国では、幽霊を食べることは死者を弔う意味があるとされ、特に葬式の際には必ず食べる習慣があった。現在は宗教上の理由ではなく飽食の時代の影響からか、あまり食べない傾向にあるようだ。

日本では、肉食を忌避する仏教の考え方が幽霊にも適用され、幽霊食は野蛮な文化と見なされていた。だが一部地域では幽霊を食べて死者を弔う中国の文化が輸入され、根付いていたようだ。文明開化によって西洋の幽霊食文化が取り入れられて以降は広く幽霊が食べられるようになり、現在では世界でも有数の幽霊消費国となっている。

インドでは、古くから霊魂は不浄なものとされてきたため、死後一定期間経過した人間の肉体は火葬するのが習わしであった。しかし近年では、死体焼却による環境破壊や伝染病のリスクが高まるという理由から、都市部を中心に土葬回帰の動きが広がっている。それに伴い都市部で幽霊が多く見られるようになったため、タダで手に入る食材として主に貧困層の間で幽霊が消費されるようになった。

西アフリカでは、神憑り状態へと至る呪術的な行為として幽霊食が行われていた。祭壇の上でシャーマンが幽霊を食べてトランス状態に陥り、呟いたうわ言が神の言葉であると解釈されたのだ。この地域では幽霊は神の食物とされ、下等な身分の者は口にするどころか触れることすら許されなかった。

幽霊食に関するイベント

アメリカでは、毎年春にゴースト・イーターズ・コンテストと呼ばれるイベントが開催される。これは幽霊料理専門の料理コンテストであり、毎年世界各国から腕によりをかけた料理人が集まり、幽霊料理を競う。優勝者には賞金10万ドルが与えられる。
また、アメリカの一部の地域では、ハロウィンの時期になると仮装した人々が「トリック・オア・トリート」と言いながら家々を訪れ、お菓子の代わりに幽霊菓子を要求するという風習がある。幽霊クッキーや幽霊飴など現代では当たり前に食べられている幽霊菓子はそのほとんどがこの風習にルーツを持つと言われている。
幽霊生産量世界一位のルーマニアでは、毎年11月1日を「幽霊の日」とし、幽霊料理を食べて幽霊の豊漁に感謝する。この日はルーマニアの国民の祝日である。
幽霊食品の日本トップシェアを誇る幽谷食品株式会社は、ルーマニアの幽霊の日に合わせて毎年幽霊まつりを開催している。幽霊まつりの期間中は幽谷食品のホームページで抽選企画が行われており、当選すると限定グッズや同社の幽霊食品が無料でプレゼントされる。
幽霊生産量日本一を誇る青森県むつ市では、「お化け祭り」という幽霊関連のお祭りが行われている。毎年8月に開催されるこの祭りでは、市内の商店街などで様々な催し物が行われる他、幽霊関連商品の即売会も行われる。特に、同市のもう一つの名物であるりんごを使ったゴーストアップルパイの屋台は有名である。

動物による幽霊の摂食

幽霊を食べるのは人間だけではない。幽霊は実体を持たないため通常の餌よりも食べるのが難しいが、進化の過程で幽霊を食べられるようになった動物は複数種存在する。動物にとって、幽霊を食べることは他の種との餌の競合を避ける意味があると思われる。以下に幽霊食の動物を列挙する。
・ユウレイハミ
鯨偶蹄目反芻亜目真反芻下目ユウレイハミ科の哺乳類。本種だけでユウレイハミ属を形成する。アナトリア高原からカスピ海西岸にかけて生息している。幽霊を専食する数少ない動物の一つ。前歯の表面が塩化ナトリウムを含む粘液に覆われており、歯に触れた幽霊が自動的に実体化する。胃の中には幽素を分解する脱幽性細菌が存在しているため、胃の中で幽霊が再幽体化することはない。
・イエネコ
ネズミ等の小動物を捕食した後、胃から発生する幽霊を再消化する能力が備わっている。獲物の魂すらも栄養とする極めて効率的な消化システムだが、市販されているキャットフードには幽霊が含まれていないため、この能力が活かされることは少ない。最近では幽霊が添加されたキャットフードも販売されている。
・チンパンジー
儀式によって清め塩を生み出し、それを用いて幽霊を実体化させ、塩蔵して脱幽するという、人間が行うのとほぼ同じ工程を経て幽霊を食べる。人間が幽霊を食べる方法を見て学習したという説が濃厚だが、人間の活動とは無関係に自力でこの方法を編み出したという説、更にはチンパンジーが幽霊を食べているのを見て人間がそれを真似したのだという説も存在する。いずれにせよ、チンパンジーの幽霊食は彼らの知能が極めて高いことを示している。

倫理的問題

幽霊を食べる行為について倫理的な問題が指摘されることがある。幽霊とは、死亡した生物の魂、またはその欠片と考えられている。そのため、幽霊を食べることによって死者への冒涜になるのではないかという意見もある。
一方で、死者の魂は生前の記憶をほとんど失っていると考えられており、仮に食べたとしても故人の魂を汚すことにはならないという意見もある。そもそも、人の死というのは生命活動の停止であって記憶の喪失を伴うというのが一般的な考え方であり、幽霊を食べても死者を冒涜することにはならないとされている。
また、幽霊を食べる行為がある種の宗教儀式として行われている例もあり、これを非人道的であると批判するのはおかしいという主張もある。

他にも、幽霊の採集過程に動物の屠殺が組み込まれていることについて、動物愛護の観点から批判されることもある。これを受け、アメリカ合衆国の一部州では、幽霊の採集を主目的とする動物の屠殺を禁止する法律が制定されている。ただし、あくまで動物の屠殺が一切禁じられた訳ではなく、食肉加工等を目的とした屠殺の副産物として幽霊を採集することは認められている。

関連項目

幽霊
人類による幽霊の利用
幽霊発電
死後に幽霊が冷凍保存された著名人の一覧