ジャギ同盟戦記 第三話 『Game Over』

Last-modified: 2009-07-30 (木) 19:38:04

目次


前書き



このSSは用語集のサ行の『ジャギ同盟』の項目を基に製作されています。
まずはそちらをご覧になることをお薦めいたします。


また、このSSはネちょ学の設定を使っていない部分も数多く含まれています。
予めご承知ください。


それではあまり期待せずに先にお進み下さい。



本編



【history】


バルドフェルド陥落から三週間が経過し、そこを足がかりとして大陸東側の各地で拠点の奪還作戦が行われ、そのほとんどが成功を収めていた。


結果、前線は大陸の中央から段々と東側へと盛り返して行き、ついに修羅本国浮遊島は目の前という状態にまで持ち込むことが出来た。


しかし、浮遊島が大陸に錨を下ろしている場所には修羅兵の生産工場でもある堅固な要塞が建てられていた。


修羅の技術を以ってして建造された要塞の攻略は困難を極め、新型の修羅兵の出現もあり音知世の軍は苦戦を強いられていた。


そして、地方の拠点征圧の支援に回っていたアーク使いたちが決戦の地へと招集されたのである・・・。






【Ⅰ】


召集を受けて大陸の東端へとばんじろうが運転するジープに乗って移動する間、大江戸ハーマイオニーは長かったこの戦争のことを思い返していた。


(思えば長く活動してきた戦争も終わりが見えてきている・・・。なんとかここまで生き延びることができた、が。)


これから向かう戦場は今までの戦場とは異質のものだ。報告では人型ではない大型の修羅兵や戦車のようなものまで確認されているらしい。守りも堅固で、通常装備の兵士たちだけではどうしても攻め込むことはおろか城門をを崩すこともできないでいる。


「見えたぞ。」


森を抜けたところでばんじろうが車を止める。
拓けた視界の先には目的地である大陸の東端、修羅の島が浮かんでいた。


「おーおー、でっけえもんが浮いてんなぁ。」
「映画にでも出てきそうですねえ。」


B.B.とAAAが後部座席から身を乗り出して様子を伺う。


「遠足できたわけじゃあるまいしそうはしゃぐなよ。気を引き締めろよ。」
「いやいや、リラックスできていると言ってほしいね。」
「僕も不思議と緊張してませんね・・・。」
「じゃあ出発するぞ。」


ばんじろうがジープのギアをローに入れ、基地への移動を再開する。
今ここに最後にして最大の戦いの火蓋が気って落とされようとしていた。






【Ⅱ】


「突破口を開けるぞ!1番から4番隊まで前進しろ!」


翁が大声で指示を飛ばす。
ほとんどのアーク使いを動員したこの戦いでも、一般の兵は制圧するためには欠かすことができず、その指揮は翁の手に委ねられていた。各地の前線で指揮を執り、損害も最小限に抑えつつ最大限に戦果を挙げてきた点が評価され、この土壇場の戦いで前線総指揮の役へと大抜擢されたのだ。


「隊長!アーク連隊から入電!突入を開始するそうです!」
「わかった!おい、お前たち!派手に戦え!敵の目をこっちに引き付けるんだ!」
「うぉおおーーーーっ!」




翁が奮闘しているころ、その戦場とは反対側、森の中にアーク使いたちが集結していた。
こちらの指揮は大江戸ハーマイオニーに任されている。森の中にアーク使いとして名を馳せた者たち二十数名が集結していた。翁の援護や、基地の防衛に回っている者もいるが大半のアーク使いはこの奇襲作戦に参加していた。


「よし、頃合だな。全員準備は良いか?」
「おっけーですよ。いつでも行けます!」


あえてバラバラに戦地へと召集したアーク使い達を、手薄になった箇所から一気に突破させて制圧しようという作戦である。しかし、内部の構造がまったく分からない上に、その敷地面積も広大な要塞をどう攻略するか、それが今回の作戦のネックとなっているのだ。


「では全員に通達する。まず前提として内部構造が不明なため指示に従うこと!しかし・・・」


大江戸ハーマイオニーがそこで一旦言葉を切る。
そして高くそびえる修羅の要塞の壁、ひいてはその城門を指さす。


「あの防壁を超えなきゃ話にならん。だから最初の指示はこうだ。」


全国に名を轟かすアーク使いの意識がすべて大江戸ハーマイオニーへと集中する。


「派手に暴れて来い!!」
「「 うおおおおおおぉぉーーーっ!!! 」」


二十人余りの小規模な軍団がその一言をきっかけに森から飛び出す。
その中でも破壊力に特化した二人が先頭を切って反対側の戦場に比べて手薄になっている修羅兵の集団へと突っ込んで行く。


「よっしゃー!いくぞー!スーさんついてこーい!」
「ういさっ!!」


小柄な体格の本人よりも数段大きなバトルアックスをかついだ泥酔萃香と、工事現場の重機に付いているような鉄球二つを鎖でつないだチェーンハンマーを振り回す酒飲みスーさんが修羅兵との戦闘の口火を切ったのだ。


「そぉい!」


この基地の攻略戦で初めて確認された四つ足の修羅兵が泥酔萃香の一撃で何体もバラバラに吹っ飛ぶ。報告では今までの修羅兵と装甲も段違いということだったが、泥酔萃香のアックスの破壊力はそれを圧倒的に上回っていた。


「やりますね!でも・・・っと!」


泥酔萃香のすぐ後から突っ込んで行く酒飲みスーさんが泥酔萃香が蹴散らして作った道を塞ごうと動いた修羅兵を手にしたハンマーでことごとく粉砕する。


「脇が甘いですよ!」
「はっはっはー!よし!頼んだ!」
「頼んだて!!?」


しかし、ブレード装備に紛れていた銃器装備の四つ足の修羅兵が泥酔萃香と酒飲みスーさんの二人の射程外から狙いをつける。


「残念、そこは既に私の射程よ?」


一瞬のうちにして六体もの修羅兵の機関部にナイフが突き刺さり、銃器を構えていた修羅兵が機能停止に陥る。森から出たすぐのところで、瀟洒!がナイフを構えて佇んでいた。続けて他の遠距離攻撃のできるメンバーも攻撃を開始する。


「頼まれたのなら援護は吝かではありませんわ。」
『いーねー!たのもしーねー!』


突進を続ける泥酔萃香のはつらつとした声が通信機越しに全員の耳に届く。


「頼むって瀟洒!さんにですか!」
「そりゃーここは自分ひとりで全部をフォローする必要がないからね!」
「あ、そうか・・・そうですね。なら!」


「「全力で前へ!」」


泥酔萃香と酒飲みスーさんがそれぞれ手にした武器を振りかぶり、二人同時に振り下ろす。その圧倒的な衝撃に何体もの修羅兵が砕け、宙を舞う。これを見て後方から戦場を確認しつつ前進していた大江戸ハーマイオニーから指示が飛ぶ。


「よし、あの二人を先頭にした楔形の陣形で前進!全力であの二人をフォローするんだ!」
『了解!』


大江戸ハーマイオニーが指示した陣形で進軍し、目指す城門まであと500メートルほどまで迫ったとき、突然目的地である城門が開いた。
その開いた城門から姿を見せたのは、今まで見たことのない戦車タイプの兵器であった。


「なんじゃありゃあ!」
『慌てるな、戦車の目撃報告があるとブリーフィングで言っただろう。冷静に対処するんだ。』


大江戸ハーマイオニーにとっては想定していた事態ではあるが、この戦車がどれほどの戦力なのかが測りきれていないため気を抜くことはできない。様子を見つつ前進再開の指示を出そうとした瞬間、戦車の砲門が大江戸ハーマイオニーたちに向けられた。


『第一射来るぞ!回避しろ!』


無線から大江戸ハーマイオニーの声が響いた次の瞬間、戦車から砲弾が放たれる。
大江戸ハーマイオニーの指示と、全員が戦車に注目していたこともあってか全員が回避することに成功する。しかし、先ほどまで陣形を組んでいた場所の中央付近に着弾しており、弾頭に特殊な仕掛けがあるのか広範囲に渡って地面がえぐれてしまっている。


「また厄介なものが出てきましたね・・・!」
「城門が!」


戦車を出すために開いた城門がまたゆっくりと閉じられてゆく。


「閉じる前に辿りつければ・・・!」


酒飲みスーさんが手にしたハンマーを振りかぶって一人で修羅兵へと突撃して行く。


『無茶だ!戻れスーさん!陣形もまだ整えられてないってのに!』
「ここでチャンスを逃す手はないでしょう!せっかく門が開いてるんですよ!」


無線から聞こえる大江戸ハーマイオニーの制止の声も聞かずに酒飲みスーさんはハンマーを振り回して単身敵の集団へと飛び込んで行く。しかし、突出して孤立したところを先ほどの泥酔萃香と同じように射程の外から銃器を装備した修羅兵に囲まれてしまった。


「しまっ・・・・・・!」
「わきがあまーい!!!」


泥酔萃香の一撃が地面を割り、酒飲みスーさんを包囲していた修羅兵の足場が崩れ、大地に飲み込まれていく。
しかし、スーさんの足場も崩れてしまいその場に倒れこむ。


「まだまだだねっ!」
「す、すみません・・・。」
「気にしなーい!それにさっきも言ったよ!」


泥酔萃香が地面に突き刺さったアックスを片手で持ち上げ、担ぎなおす。
そして座り込んでいるスーさんへともう片方の手を差し出す。


「全部一人でやる必要はないってさ。」
「・・・はい!」


スーさんがその手を掴み、立ち上がる。気合を入れ直した二人であったが、そこは敵陣の真ん中である。チャンスとばかりに手の塞がった二人へと周囲に居た修羅兵が一斉に飛びかかる。
しかし二人は微動だにしない。


「やれやれですね。」


飛びかかった修羅兵に一筋の閃光が走った次の瞬間、チン、という刀を鞘に納める硬い音と共に飛びかかった修羅兵がバラバラになって地面へと落ちた。その音の源である酒飲みスーさんと泥酔萃香の傍らには、いつの間にかオワタ☆が腰に据えた刀に手をかけた状態で佇んでいる。


「まったく・・・。泥酔さん、一人でやる必要がないっていうのは無理しても良いってことではありませんよ。」
「あははははー、オワにゃんごめんよー。」
「ちょっ・・・すい姉ぇ!オワにゃんはやめれって言ったでしょ!?」


オワタ☆が斬り拓いた道を基点に、全員が陣形を整えつつ閉じてしまった城門へと前進する。
しかし、その途中には砲門をこちらへと向けている戦車が鎮座している。


「遠距離攻撃班!アレの装甲を貫けるか!?」
『さっきからやってるが無理だ!もっと直接的な攻撃じゃないと・・・!』


大江戸ハーマイオニーがチッ、とひとつ舌打ちをする。


(できればこの距離で倒しておきたかった・・・!どうする・・・!?)


今は戦車と陣形のやや後ろに居る大江戸との距離は300メートルほど開いている。つまり先頭に居る泥酔萃香が250メートルほどだ。大江戸ハーマイオニーの考えではこの距離が先ほど放たれた砲弾を避けることのできるギリギリの距離だ。この距離で破壊できないとなると、あとは接近するしか道はない。しかし、接近している間に次の砲撃が来れば壊滅的な被害を被ることは間違いない。
それだけは絶対に避けねばならない。


『第二射、来ます!』
「! 回避ーッ!!」


第一射と同じようになんとか全員が回避することに成功するが、先ほどよりも正確に陣形の中心を狙ってきている。次も確実に避けられるという保証は全くない。大江戸ハーマイオニーが奥歯をギリ、と噛む。時計を確認してから無線のマイクに向かって口を開く。


「・・・第一射と二射の間隔が約三分間。次が来るまでにアレを何とかしなければならん。」


無線を通して全員に緊張が伝わる。


「遠距離での破壊は不可能。ならば近接で一番破壊力のある攻撃・・・泥酔さん、やってくれるか・・・?」
『・・・・』


無線からは全員の沈黙しか聞こえて来ない。
時間にして数秒ほどの永い沈黙の後、返答の代わりに大江戸ハーマイオニーの50メートル前方でズン、という音とともに修羅兵が宙へと舞い上がる。そして無線から泥酔萃香の声が響いた。


『何をヘタれてるのさ大将!』


続けてズン、ズズン、という音と共に泥酔萃香が前へと進んで行く。


『アンタはあたいたちの指揮官で!そのアンタがあたいにしかできないって結論を出したんだろ!?』


先ほどまで50メートル離れたところで巻き上がっていた衝撃波が段々と前へ進み始める。


『だったら!』


今迄で一番大きな衝撃波がほとばしり、泥酔萃香の周りの修羅兵が一瞬にして粉砕された。


『やってくれるかなんてショボくれた指示じゃなくて「やれ!」って力強く言えってんだ!』


今ではもう70メートルほど前方に見える小柄な泥酔萃香の背中が、大江戸ハーマイオニーの目にはとても大きく写っていた。
無線に届かないほどの声の小ささで、ありがとう、とつぶやいてから無線で力強く指示を飛ばす。


「全員全力で前進!泥酔さんをなんとしてもあのデカブツにまでたどり着かせろ!」
『『 了解!!! 』』


この指示を受けて今まで後ろのフォローを行っていたメンバーすらも前方へと攻撃を集中させる。
そして二分が経ったところで泥酔萃香と戦車との距離が50メートルにまで縮まった。しかしここで戦車の砲塔が旋回をはじめ、泥酔萃香へと照準を合わせる。


「(速すぎる・・・・!)回ッ・・・・・!」
『すい姉ぇええええーーー!!』


大江戸が回避の指示を出そうとした瞬間、無線から響くオワタ☆の叫びとほぼ同時に戦車から砲弾が放たれる。しかし、それが泥酔萃香に直撃することはなかった。砲弾は縦に細長くなった陣形の左右に分かれて着弾しており、泥酔萃香の前には刀を抜き放ったオワタ☆が何かを斬り捨てた後の残心を続けていた。


「音速を超えた程度で・・・笑わせる!」
「カッコつけやがって・・・後は任せろ!」


続いて酒飲みスーさんがハンマーを振り回してから前方へと全力で投擲する。そのハンマーの重量に遠心力をプラスされた一撃は戦車との間に居た修羅兵を悉く吹き飛ばす。
これで泥酔萃香と戦車の間を阻むものは何もなくなった。


「泥酔さん!」「すい姉ぇ!」
「よぉくやった!あとはお姉さんに任せんしゃい!」


泥酔萃香がアックスをかついで全速力で戦車との間合いを詰める。


「かわいい弟分どもがここまでやってくれたんだ・・・ここでやらなきゃ女が廃るってもんだ!」


間合いに入ると同時に左足を斜めに踏み込み、アックスを握った右手を後ろに回して体をねじり、力を溜める。


「全っ開ッ・・・!」


体をねじって全身の筋肉からかき集めたパワーをこの一撃に込める。


「破壊力ゥうううーーーッ!!!」


泥酔萃香が渾身の力を込めた一撃を戦車を打ち上げるように戦車の前部装甲板の下部に喰らわせる。メキィ、という鈍い音と共に戦車が縦に回転して周囲の修羅兵を巻き込みつつ吹き飛び、そのまま自らが出てきた城門へと激突した。


閉じられていた城門はその衝撃で歪んだが、まだ開いていると言える状態ではない。
そこへ振りぬいたアックスをそのままかつぎ直した泥酔萃香が、先ほどと全く同じ体勢で城門に激突して落下してくる戦車に対して左足を踏み込む。


「もう一丁ぉおおおっ!!!」


アックスの切っ先が落下してきた戦車へとめり込み、戦車もろともその勢いのまま城門へと叩きつける。
バキッ、という何かが壊れる音と共に戦車と門が一緒に吹き飛ばされた。


「開通だぁああーっ!」


泥酔萃香の勝どきがあがり、周囲からうおおおおおおおおおおおっ、という歓声が沸き起こる。
そして全員が泥酔萃香に続いて打ち壊された城門から内部へと侵入する。外に残っている兵力は微々たる物だ。


「やったな、すい姉ぇ!」
「オワちゃん・・・正直助かったわー。」
「ボクだけじゃなくてスーさんが道を拓いてくれたから・・・ってあれ?」
「スーさん?いないよ?」


吹き飛ばされた戦車と城門が激突したために崩れた壁の下の瓦礫の中から、ガラガラと音を立てて酒飲みスーさんが姿を現した。実は、戦車の前を一掃した際のハンマーの回収が間に合わず、泥酔萃香の一撃で戦車と共にハンマーも吹き飛ばされ、それに繋がった鎖を握っていた酒飲みスーさんも一緒に吹き飛ばされていたのである。


「す、スーさん!」
「へ、へへ・・・。なんとか、致命傷で・・・済ん、だ・・・ぜ・・・。」


口からゴパァッと盛大に血を吐き出し、酒飲みスーさんが前のめりに倒れる。


「スーさぁああああああああああんん!!!」


音知世軍アーク連隊、残存兵力:二十三名(一名脱落)






【Ⅲ】


「さて、ここからだ・・・。」


大江戸ハーマイオニーが冷静に思考を巡らせる。
このメンバーで電撃戦を仕掛けるのは有効な手ではあるが、既に相手に見せた手札である。慎重に行動しなければならない。城門から中に入ってから、通信機からノイズが聞こえてくることを考えれば、通信が妨害されていることは明白だ。
そうなると、全てを自分で指示して攻略することは不可能である。


「・・・脱出ルート確保のために残る人員以外は各々元の小隊規模で行動するように!通信が使えないから必ず複数で行動すること!」
『了解!』


不慮の事故によって酒飲みスーさんを介抱しつつ、退路となる先ほど破壊した城門を確保する組とこの要塞を攻略する組、攻略組の中でも外側から攻める者たちと内部に突入する者に別れる。


大江戸小隊は内部を攻略する組と共に要塞へと侵入していた。その組も内部の分かれ道で小隊規模に別れ、大江戸小隊も今はいつもの四人で行動しており、広大な要塞の中枢部に繋がっていると推測した通路を走っていた。


「なんでえ。結局いつものメンバーじゃねえか。」
「まあまあ、やりやすいに越したことはないですよ。」
「下手に俺が指示をするより良いだろうよ。」
「・・・じゃあ、これはどうするんだ?」


先頭を走っていたばんじろうが急に立ち止まり、通路の端にしゃがみこんで壁を触って何かを確かめている。
他の三人も足を止め、ばんじろうの元へと駆け寄り、その手元へ視線を向ける。


「ばんさん、どうした?」
「アレだけの兵力が限りなく沸いてくるのに外から見た限りでは修羅兵を生産する場所らしき所は見られなかった。」
「・・・地下に何かある、と?」
「同じ造りの通路が続くなかでここが少し様式が違うんだ。もしかすると・・・。」


ばんじろうが床をバン、と叩くとはめ込まれていた鉄板が浮いた。
それを外すと長い梯子が地下へと続いていた。


「・・・機械が動く音がするな。」
「ハニー、どうする?」
「ここで別れていいものか・・・。」
「でも応援は呼べませんし、難しいところですよ。」


大江戸ハーマイオニーが顎に手を当ててしばらく考える。
十秒にも満たない思考の後、一つの結論を出す。


「二手に分かれよう、入り口が隠されていたとなるとこの下に重要なものがある可能性がある。」
「通信を妨害する装置がある可能性も高いってことだな。」
「このまままっすぐ行けば中央部分ですからね、通信さえ復活すればどうとでもなるでしょう。」
「ばんさん、AAAは下へ。オレはびびさんとこのまま進む。」


大江戸ハーマイオニーの指示の通り、大江戸小隊の四人は二手に別れる。
走っていた道をそのまま進む大江戸ハーマイオニーとB.B.がしばらく走ると、地下のほうから、ズン、という鈍い音とともに振動が伝わってくる。


「通信は・・・まだみたいだな。」
「なぁに、あの二人なら大丈夫さ。・・・っと、なんか見えてきたぜ。」


まっすぐと続いた通路の先の階段を上がると、二人の前に大きな扉が現れた。


「いかにもラスボスです、って感じだな・・・。」
「気は抜くなよ。・・・っと開くぞ。」


高さ3メートルほどはありそうな扉がズズズ、と重い音を立てつつ両側へと開いていく。薄暗い通路へ扉から光が漏れ出す。眩しさに目が眩みそうな二人であったが、不意打ちを警戒して扉の先を注視する。


その扉の先は陽の光に満ち溢れた空間が広がっていた。
ガラスのはめ込まれた天井から差し込む光が照らす大広間の中央に、椅子の上に鎮座する修羅兵の姿があった。


『来たか。』
「・・・サイ、だったか。」
『貴様が来るのを待っていた。その杖を渡してもらおう。』
「おいおい、何を意味のわからねえことを言って」
『黙れ、貴様と話す事はない。』
「なっ・・・!」


サイが有無を言わさない態度でB.B.の言葉を遮る。頭に血が上って咄嗟に言い返そうとするB.B.を大江戸ハーマイオニーが手で制して少しでも多くの情報を得ようと問いを返す。


「このアマテラスがそんなに重要なものなのか?他にもアークはあるのにこれだけが特別なものか?」
『特別さ。私にとってはな。』
「お前にとっては?それはどういう・・・」
『ここまでだ、始めようか。』


サイが椅子から立ち上がり、右手に愛用の銃を構える。これ以上は何を言っても得られる情報はないと判断した大江戸ハーマイオニーがアマテラスを構える。制止されていたB.B.も今にも襲い掛からんと目をギラギラとさせて黒鉄丸を構える。


「よくもコケにしてくれやがったな・・・!バラバラにしてやるよ!」
『なかなかに鋭い殺気だ。相手に不足はない。』
「ほざけ!」


要塞の中心部、最上階の広間にてこの戦争で始めての指揮官クラスの修羅兵との戦闘が始まろうとしていた。




                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




発見した下へと通じる長い梯子を降りたAAAとばんじろうは、光の少ない狭い通路へと降り立った。
パイプがむき出しになっており、いかにも地下といったというイメージを抱かせる場所である。


「音は・・・こっちからだな。」
「こうも狭い通路だと、挟まれたらと考えると恐ろしいですね。」


梯子を降りる前に聞こえた機械の作動音が聞こえる方へと向かい、つきあたった扉をそっと開くと、そこにはだだっ広いドーム状の空間に工場のような光景が広がっていた。さまざまな機械が駆動しており、ベルトコンベアを修羅兵のパーツと思しきものが流れている。


「ばんさんがにらんだ通りみたいですね。ここを壊せば外の人達も楽になるでしょう。」
「あぁ、爆弾を持ってきたのは正解だったようだな。」


扉から音を立てずに中へと侵入したAAAとばんじろうは、そのまま広大な面積に所狭しと並べられた機械の合間を縫うように進み、効果的に破壊できるよう距離をあけて、ばんじろうが持ってきていた爆弾を仕掛け、タイマーをセットして行く。
大体の位置に爆弾を仕掛け終え、この広い空間の中央ほどへたどり着くと、そのフロアにある生産する機械とは趣の異なる機械を発見した。


「これは・・・?」
「どうやら通信妨害の原因はこれのようだな。妙な電波を出しているようだ。」


ばんじろうが小さな装置をその機械に近づけて針の振れ具合で妨害電波の具合を確かめる。


「問題はこれをどうやって止めるかだが・・・。罠も仕掛けられているだろうし迂闊に手は出せんな。」
「え。」


ばんじろうが素っ頓狂な声を上げたAAAの方へ振り返ると、AAAがその機械についていたいかにも怪しげなボタンに人差し指を向けたまま固まっていた。


「・・・押すなよ?」
「ハハハマサカソンナコトヲコノワガハイガ」


ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!



「・・・・」
「・・・・」
「・・・おい。」
「もう二秒早く言って欲しかった。」


ばんじろうが何とも言えないような表情を見せたところで、天井から3メートルはありそうな警備の修羅兵と思しき物体が落下してきた。
足が六本生えた胴体から体が上へと延び、腕が二本生えている変わった形をしている。その両腕の先端には細長く湾曲した刃が付いており、まるでカマキリのような風体である。


「あら、これは・・・まずった?」
「これが友好的に見えるのならば医者に掛かることをお勧めするね。」


カマキリのような形をした修羅兵の頭についている二つのカメラがAAAとばんじろうの姿を補足する。どうやら昆虫の複眼と同じように全方位を見ることができるらしい。
二人がやって来た方向へと駆け出すと同時に、その修羅兵は六本の足を器用に動かして人がすれ違えるぐらいの狭さの通路を高速で追いかけ始めた。


「うっわ気持ち悪い!オレああいうのダメなんですよ!」
「こちらとしては自分の責任なんだから何とかしろと言いたいんだがな!」


走りながら口論を続ける二人と、鋭い鎌を持った修羅兵との差は段々と縮まっていく。
もう少しで追いつかれそうになったところで、ばんじろうがスモークグレネードとチャフグレネードを前を向いて走ったままピンを抜き、後ろへと放り投げる。そして放り投げた二つのグレネードが後ろから迫る修羅兵の眼前で炸裂した。
二つのグレネードの効果で修羅兵が二人を見失った隙に、AAAとばんじろうは足を止めずに走り続け、大型の機械の床との隙間に滑り込むように隠れた。


「ハァ・・・ハァ・・・!何なんですかアレ!?」
「ふぅ・・・。ガードの修羅兵、だろうか。」
『う・・・くぁー。よく寝た・・・。』


息を切らせて状況を整理する二人の間に気の抜けた声が割って入る。
ばんじろうの懐から聞こえてきたその声の主はばんじろうのアークの一つであるガンフリードだ。


「ガンフリード、お前はアークや修羅兵について知識があるんだったな。」
『あぁおはよう旦那。まぁ・・・それなりにだが。』
「アレがなんだか分かるか?」


スモークも晴れ、二人の姿を探す修羅兵をばんじろうが指差す。


『ありゃあ・・・「ケンタウロス」だな。』
「ケンタウロス?」
『あれは修羅兵じゃねえ。アレは俺様と同じ自律型のアークだ。』


アークという言葉にばんじろうが眉をひそめる。


『自律型といっても俺様みたいに意思があるわけじゃあない。ただ命令されたことをこなすだけだ。』
「だが単純な分その性能は・・・。」
『高い。しかもアレは数少ない自律型の中でも装甲が一番厚いタイプだ。アークでも破壊は難しいだろうな。』


ガンフリードの言葉にばんじろうが押し黙る。


「俺は・・・無理だろうな。だがAAAなら破れる可能性もある。」
『その通り。装甲が厚い箇所ばかりだと高速で動けねえからな。そこを狙えば、あるいは。』
「ふむ・・・。」


ばんじろうがガンフリードが収まっているのとは反対側のホルスターから黒光りするアーク、銃工を取り出す。


「ならばあの大げさな名前の付いたモノを破壊するとしようか。」
『旦那ぁ、俺様が居るとはいえあの鎌は危険ですからね。気をつけてくださいよ!』
「AAA、話は聞いていたな。作戦を立てて・・・・・どうした?」
「ああ、いや・・・。」


なにやら考え事をしていたAAAが手に嵌めたアークをギュッと嵌めなおす。


「アークって・・・寝るんだ・・・。」






ばんじろうとAAAが一斉に隠れていた隙間から飛び出し、ケンタウロスの脇を駆け抜ける。
瞬時に二人の姿を捉えたケンタウロスが両手の鎌を振りかぶる。


「っと!」


ケンタウロスの鎌の射程の中でAAAが左右から繰り出される斬撃を紙一重にかわし、まとわりくようにフットワークを使う。あえて射程の中に居ることで無防備な背中を攻撃されることを防ぎつつ、ばんじろうの先導で戦いやすい場所へと機械の合間を縫うように走り、目指す場所へとひた走る。


そして目的地である幅が広く、直線が長く続く通路へとたどり着いたところでばんじろうが合図を出す。


「AAA!」
「おっけーね!」


合図とほぼ同時にばんじろうがスモークグレネードをケンタウロスに向かって投げる。自らに向かって飛んでくる物体を感知し、それが先ほどと同じ物体なのを確認したケンタウロスが一息で宙へと飛び上がる。


「チェックメイト。」


瞬時に飛び上がったケンタウロスであったが、いつまでスモークグレネードから煙が発せられることはなかった。それもそのはず、スモークグレネードのピンは抜かれてはいなかったのだ。


「装甲が薄いのは六本の足の関節が集中した場所、つまり。」
「腹だ!」


足を曲げ、体制を低くしたAAAがそのまま飛び上がるような形で全身のバネを使い、拳を打ち上げる。
落下してくるケンタウロスの腹を見事にその拳が捉えたが、その装甲がひしゃげただけだ。


(浅い・・・!)
「ねじ込む!」


AAAが空中でひしゃげた装甲に触れている拳から、腕を砲台に見立ててそのまま気を放出する。
ひしゃげた装甲ごと、ケンタウロスの体内にAAAの拳がめり込む。


AAAの拳によって弾き飛ばされたケンタウロスがAAAの着地と共に通路に背中から落下する。
ケンタウロスはそのまま虫がひっくり返ったように機能を停止する。


「ふぅ・・・。」
「よし、戻るぞ。」


お疲れ様の一言もなく、ばんじろうがこの追いかけっこのスタート地点へと歩き出す。


「ハァ、ハァ、ばんさん・・・。回避しつつ走ったから、ハァ、ちょっと、休ませ・・・!」
「置いてくぞ。」
「うぁ、怒ってる・・・。」


スタスタと先を歩くばんじろうをAAAが息を切らせながら追いかける。




                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「おぉっ!」


B.B.がサイに向かって槍を連続で突き出す。しかし、サイはその素早い槍捌きを必要最小限の動きで紙一重で避けていく。槍を避けながらも、サイは大江戸ハーマイオニーへの警戒も怠らない。


「こいつ・・・!」
(強い・・・!)


いつでもアマテラスで攻撃できるようにエネルギーを溜める大江戸ハーマイオニーであるが、B.B.を巻き込まないように攻撃する機会を見出すことができない。相手の強さを認識したB.B.が冷静になり大江戸ハーマイオニーの近くへとバックステップを踏む。


「ハニー・・・。」
「距離を。」
「OK。」


単語だけで意思を交わした二人が弾けるように走り出す。
それぞれ反対へと別れた二人が悠然と佇むサイを挟むように円を描くように動く。


『正しい判断だ。二人で戦う手段として最も有効だ。だが・・・』


サイが腰に装備していたダガーを抜き、呼び動作もなしに一瞬でB.B.へと踏み込む。
かろうじて黒鉄丸でガードしたB.B.だが、みかけの人数の利で押せる相手ではないことをこの一撃の打ち合いで悟る。


『前衛と後衛の役割が極端すぎる。ここで撃てば仲間も巻き込むだろう?』


サイが後ろに居る大江戸ハーマイオニーを見ずに問いかける。
そしてそれは見事に的中していた。今の位置関係ではB.B.まで巻き込んでしまう。


『もっとも、撃ったところで私に通用するかは分からんがな・・・。』
「なんだと・・・!」
「ハニー!」


サイが少しB.B.への意識をそらした隙に、B.B.がサイを蹴り飛ばす。
体勢を崩したサイと距離を取ったB.B.が全力でサイに重力をかける。


『む・・・。』
「もらった!」


アマテラスから光が溢れ、圧倒的な熱量がサイを襲う。


「やった、か・・・?」
重力をかけていたB.B.が大江戸ハーマイオニーの元へと戻る。壁が吹き飛ばされた際に舞い上がった砂埃がおさまる。しかし、圧倒的な破壊力が放出された先にはサイが手を前に出した状態で立っていた。


「な・・・・・・!」
『驚くことはない。広範囲のエネルギー放射ならば自分に当たる範囲を受け流してやればいい。』
「そんな簡単に・・・。」
『範囲攻撃にしては威力が桁違いではあるがな。』


重力をかけられているにもかかわらず、サイが平然と二人に向かって歩き出す。
信じられないものを見る目でB.B.が黒鉄丸を構え直す。


「・・・ハニー、応援を呼びに行け。」
「俺がそれを善しとすると思うか?」


チッと舌打ちをしたB.B.が足に力をこめる。一足飛びで攻撃できる距離にまでサイが近づいたところで一息にサイの間合いへと踏み込む。攻撃といっても黒鉄丸を前に構えた特攻である。これを避けることはサイにも不可能だ。


『甘い。』


逆手に構えたダガーで黒鉄丸の先端を受け流し、B.B.の至近距離にまで接近する。
そのままB.B.を組み敷き、B.B.の首に刃を突きつける。


「ぐっ・・・・!」
「びびさん!」
『動くな。』


裂帛の殺気が辺りに満ちる。少しでも動けばこの刃を容赦なく突き立てる、言葉にせずともそう伝わってくるほどの殺気である。ピリピリとした空気が肌を刺す。


『さぁ、そのアークを渡してもらおう。』
「ハニー・・・!」
「・・・・。」


大江戸ハーマイオニーがサイに向かって歩き始める。
B.B.が抵抗しようとするが、突きつけられた刃が肌を刺し、動くことができない。


彼我の距離が数メートルまで縮まったところで大江戸ハーマイオニーが右手に握ったアマテラスにエネルギーを集中させ始める。それを抵抗とみなし、サイがB.B.の首を掻っ切ろうとしたところで大江戸が一気に踏み込む。
まさか接近戦を挑んでくるとは思わなかったサイの身体が一瞬だけ硬直する。


次の瞬間、






サイの右腕が、宙を舞っていた。






【Ⅳ】


『な・・・!』


右腕を刎ね飛ばされた影響で、サイのB.B.への拘束が緩む。その瞬間B.B.が拘束の手から逃れ、距離を取る。
大江戸ハーマイオニーは右腕を跳ね飛ばした体勢のまま佇んでいた。


「ハニー、それは。」
「分の悪い賭けではあった、が。」
『エネルギーの物質化だと・・・!』


大江戸ハーマイオニーの手に握られたアマテラスから浅葱色のエネルギーが迸っており、それが剣の形を成していた。形だけでなく、その切れ味は先ほど実証されたばかりである。


「これで形勢逆転、といった所か。」
『なるほど・・・。』


右腕を失ったサイがダガーを鞘に収める。
そして戦闘態勢を解き、背中にたたまれていた翼を展開させる。


『悪いがここまでだ。時間も頃合だ。』
「逃げる気か?」
『何とでも言え。やるべきことをするまではこの身は朽ちるわけにはいかん。』


サイが先ほどの大江戸ハーマイオニーの広範囲攻撃で破壊された天井へと飛び上がる。
一瞬で天井を抜け、上空に浮遊する修羅本島へと向かって飛翔する。


「逃がさん!」


B.B.がサイに向かって黒鉄丸を伸ばす。
サイの飛翔する速度よりも速く、捕らえたかと思われた瞬間、攻撃を見もせずに横へと身体をずらし、紙一重で黒鉄丸の穂先を避ける。


『予測済みだ。』
「避けられることも予測済みだ。」


他人の声など聞こえるはずもない上空で響いた声に驚いてサイが振り向くと、片手で黒鉄丸の柄に捕まってサイに肉薄する大江戸ハーマイオニーの姿があった。
もう片方の手には刃状にエネルギーを展開させたアマテラスを握っている。


「ああああああああ!」


大江戸ハーマイオニーが黒鉄丸の伸びる速度のままアマテラスを振りぬく。
その一撃はサイの胴体を下半身と上半身に分かつ。


『っぐぅ!』
「!? まだ動けるのか!」


サイの上半身はそのまま修羅の本島へと飛び去り、下半身はそのまま地上へと落下していった。
絶好の機会を逃した大江戸ハーマイオニーではあるが、この戦闘の勝利は確固たるものとすることができたのである。


地上で見るよりも大きく見える浮遊する島を見ながら、大江戸ハーマイオニーが一つため息をついた。


「任務、完了っと。」






B.B.が黒鉄丸を元の長さへと縮ませ、大江戸ハーマイオニーが地上へと戻る。
フロアーに足をつけると、無線機からばんじろうの声が響く。


『ザ・・・ザザ・・・大江戸、聞こえるか?』
「ばんさん、通信妨害は解除できたか。」
『ああ。地下にあった修羅兵の生産施設には爆弾を仕掛けておいた、一息に破壊できる量を仕掛けてあるから全軍に撤収を指示してくれ。』
「了解。」


通信を切ると、大江戸ハーマイオニーが撤収の指示を的確に出す。
一時間後には、要塞の内部に散らばっていたアーク使いたちは前線の基地へと戻ってきていた。


「ばんさん、爆破まではあと何分だ?」
「もうすぐだ。3・・・2・・・1・・・。」


ばんじろうのカウントダウンが0になると同時にズズン、という音と地響きが前線基地にまで届く。
要塞からは煙が上がり、高くそびえていた塔が崩れていくことが確認できる。


「よし、あとは・・・。」
「あの浮いているデカブツだけだな。」


煙が晴れ、テントの窓から次の目標を見定めていた大江戸ハーマイオニーの目が驚愕に見開かれる。
座っていた椅子から立ち上がり、テントの外へと飛び出す。


「消え、た・・・!?」


大江戸ハーマイオニーの視線の先には青空しか広がっておらず、修羅の本島が忽然と消え失せていた。


「一体どこへ・・・!」
「大江戸隊長!本国から緊急入電です!」


大江戸ハーマイオニーがその声に振り向くと、通信を担当している兵士が信じられないといった表情で今受けた通信を報告する。


「首都上空に修羅本島が出現した、と・・・!」





あとがき



さて、なんというところで終わってるんでしょうね。ばんじろうです。


次回で一応完結予定です。元々が突発駄文シリーズから始まったシリーズなのでここまで長くなるとは思ってもみなかったというのが本当のところです。
なるべく早く上げるよう努力します・・・。一ページで収まる長さでで終わるかなーw


前回定評を頂いたラブコメ脳ですが今回ラブ皆無です。
いや、消えてませんよ?むしろネタとか溜まって(ry


また用語集を設けさせていただきましたので何か追加して欲しいことがあれば遠慮なくどうぞ。
今回は用語集でないと分からないこともあったりします。


あんまり叩かれるとへこみますが、感想などあれば頂けると嬉しいです。


人物設定、用語解説



『泥酔萃香』
本来は指揮を執る立場にあるほどの階級だが、本人がそれを嫌うため常に最前線に立ち続けている。
前線で戦う兵士からは尊敬の念で見られており、この軍で単に姐さんと言えばこの人の事を指す。
オワタ☆とは幼馴染。
・アーク【 巌(ガン) 】
柄の長い斧の形をした巨大なアーク。巨大な質量を誇るがそれを軽々と振り回すことのできる膂力を使用者に付与するため、圧倒的な破壊力を誇る。刃は付いているが切れ味は良くない。
直接的にダメージを与える兵器としてはもっとも高い破壊力を誇る。


『酒飲みスーさん』
アークを得てから泥酔萃香と瀟洒!、オワタ☆の四人で隊を組まされ、隊長である自分がその扱いに手を焼いている。しかし本人はこの雰囲気が気に入ってきているのでさらに困っている。
・アーク【 厳(ゲン) 】
泥酔萃香のアークの型違いのアークであり、巨大な鉄球を鎖でつないだ形をしているが同等の能力を誇る。
巌よりも手数と攻撃範囲が増えた分、破壊力は低くなっているが破壊力が高いことには変わりない。


『瀟洒!』
泥酔萃香の同期生でナイフの達人。しかしナイフ以外の銃や車の運転などがてんでダメなため、上層部が扱いに困っていたところをアークを持たせることで解決した。
見かけの完璧さとは逆にうっかりしているところもあるが、本人は自分がしっかり者であることを信じて疑わない。
・アーク【 無限カチューシャ 】
装備したものが持つ何かを消費するタイプの武器の弾数を無限に供給するカチューシャ。しかし本人以外に譲渡することは不可能。銃弾や砲弾の供給目的で作られたものであるが、今回はナイフを供給している。
軍服とフリルつきのカチューシャとのミスマッチ感が逆に良いと評判。



『オワタ☆』
大江戸小隊や酒飲みスーさんの一年後輩で、その年の士官学校の主席を務めるほどの成績で軍に入隊した。少し澄ましたところもあるが、心は誰よりもアツいものを持っている。
泥酔萃香とは幼馴染であるが、昔のように子ども扱いされることを極端に嫌う。
・アーク【 響 】
日本刀のアークで、鞘から抜き放つ居合いの時に限り音速を超える速度で知覚、行動ができる。
それ以外の時はただの丈夫な日本刀でしかない。しかし断続的に高速で動けるため能力は高い。


【 アマテラス 】
大江戸ハーマイオニーが自分の弱点を自覚していながら克服できなかった弱点を、仲間の窮地という極限状況がエネルギーを物質化して近接武器としての運用を可能にするという離れ業を可能にさせた。
ぶっちゃけビームサーベル。



コメント欄

  • 何時もながら熱い展開ですね~、見てるこっちもワクワクします。次はラストバトル+ラブコメですか、これって両立難しそうですが頑張って下さい。最後に疑問、泥酔さんのアークって本編では斧ですが、設定ではハンマー、これは斧刃の逆側がハンマーってことなんでしょうか?気になります。 -- ファンネル@漏斗? 2009-04-25 (土) 03:58:12
     ―ただのコピペと置換のミスでしたorz
  • なんとか、致命傷で・・・済ん、だ・・・ぜ・・・。なんと言う迷言w オチ役立つと言われた私ヽ( ´∀`)ノ ある意味おいしいけど、死んでないよね・・・w 次回も楽しみにしていますw -- 酒飲みスーさん? 2009-04-26 (日) 23:54:13
  • 三話読みました ビームサーベルに俺のテンションがマッハ。 流石ハニー(〃▽〃)キャー♪ あと序盤の泥酔さんがおいしすぎカッコよすぎですw -- てんぬ? 2009-05-05 (火) 02:40:02
  • すううううさああああああん!! …でもなんか心配なさそうなのはなんでだろう?w そして自分が出てる、、何気に強い…だと…?(゜∀゜) 書いてくれてありがとうですよ。 設定も色々細かいですね、たっぷりと世界観に浸れそうですb 楽しく読ませてもらいましたよぉ -- オワタ☆残骸? 2009-05-20 (水) 22:10:46
  • ちょ、スーさんさん。致命傷は駄目だ……。そして、熱い展開が繰り広げられすぎてる! 出し惜しみも何もない! 押して押して押しまくる! 読んでいて熱くならざるを得ない! で、この終り。続きが待ち遠しい……。 -- ドックンドール? 2009-07-30 (木) 19:38:02