目次
前書き
このSSは用語集のサ行の『ジャギ同盟』の項目を基に製作されています。
まずはそちらをご覧になることをお薦めいたします。
また、このSSはネちょ学の設定を使っていない部分も数多く含まれています。
予めご承知ください。
それではあまり期待せずに先にお進み下さい。
本編
【history】
199X年も過ぎ、この世で一つの大陸は、三つの国が小さな争いを繰り返しながらも絶妙なバランスでそこそこ平和な日常が繰り返されていた。
東の半島での農業が盛んで、南部に広がる温暖な平野を軸に発展してきたサザンクロス。
厳しい気候条件ながらも、三国のうち最も広い領土と人口を有するカサンドラ。
二つの国と険しい山脈によって遮られ、豊富な鉱物資源と発達した技術を持った音知世。
歴史が記録され始めて以来、この三つの国が覇権を争ってきた世界に新たな勢力が突如現れた。
大陸の東の海に突如として未確認の島が海中から出現し空へと浮き上がり、そこから各国へ一斉に宣戦布告が発せられたのである。
当初、サザンクロスとカサンドラはそれがお互いの国の秘密兵器であると考え、国境線の警備に兵を割いた。しかし、それが仇となり東の海岸線へ接岸したその島から圧倒的な兵力で攻めてきた軍団への対処が遅れ、浮上から五日間で両国の海岸線の主要な都市が陥落するという事態に陥ってしまった。
「修羅」と名付けられたその浮遊島の兵隊は人間ではなかった。金属の鎧がひとりでに動いているのである。手に持った武器は剣や槍など前時代的なものであったが、鎧の中にある『核』を破壊する必要があるため遠距離からの銃撃ではなかなか倒れることがない。
また、その圧倒的兵力と昼夜構わず進軍を続けられる持続力に両国は次第に疲弊していき、侵略が開始されてからわずか一ヶ月で首都が陥落、実質的な支配下に置かれてしまった。
こうして人類は国同士の争いなどではなく、存亡をかけての戦争に巻き込まれていくこととなる。
【Ⅰ】
「よお大江戸!まだ生き残ってやがったか!」
「お前もしぶとい奴だな。翁よ。」
音知世の中でも比較的他国との国境沿いに近いところに建てられた十字陵基地の食堂で、大江戸ハーマイオニーと翁が久しぶりの再会を喜んでいた。
二人ともが各小隊を連れて前線での防衛任務から戻ってきたところである。
「ただスーさんが重傷らしい、体の丈夫さが取り柄と言っても小隊の隊長としてはどうかとは思うがな。」
「あの戦い方なら重傷も当然だ・・・。ただそれに見合う戦果は上げてるからな。人手不足もあるだろう。」
音知世はその立地条件的に、修羅に攻められるポイントが限定されていた。
海側からは修羅兵の性質上攻めることができず、また山岳を越えることも出来ないので、山の合間の盆地を突破されない限り音知世本国への侵略は免れていた。
しかしその盆地での戦いも始まってから一ヶ月が経過し、なんとか少ない兵力をやりくりして応戦していた音知世も兵力の消耗が少しずつ目立ってくるようになって来ていた。
「・・・大江戸。このままだと」
「言うな。皆分かってるさ。」
今は持ちこたえているが、持久戦で修羅兵に敵うはずはないのだ。打開策の見えない戦いに士気も下がり始めていた。上層部が何か作戦を立案中だという噂もあるが、陸戦での力の比べ合いで勝つ方法となると厳しくなってくるであろう。
ここで基地の中に放送が流れる。緊急戦闘準備の可能性もあるので全員に緊張が走る。
『召集、大江戸小隊は全員集合して司令室へ。繰り返します・・・』
ただの召集放送であったことで基地の中を安心したような空気が流れる、だがしかし大江戸ハーマイオニーの隊に招集がかかっていた。任務から戻ってきたばかりの小隊が呼び出されるということは与えられる任務の変更か何かなのだろう。
だがしかし今回は少し毛色が違っていた。
「司令室に直接召集だと・・・?」
「ふむ・・・。」
ブリーフィングルーム以外での召集に疑問を持った二人であったが、召集に応じないわけにもいかない。
大江戸ハーマイオニーと翁は再会を約束して別れた。
大江戸ハーマイオニーは食堂を出てロビーへと向かう。小隊各員が離れている時に招集がかかった場合はロビーに一度集合してから行動する決まりとなっているのだ。
しかし、食堂は少しロビーから離れた位置にあるため大江戸ハーマイオニーがロビーへ到着した時には既に小隊のメンバー全員が集まっていた。
「あ、来ましたよ。」
「おせーぞハニー!・・・じゃなくて今は大江戸隊長か。」
「召集の用件はご存知で?」
隊員であり、軍に入る前からの仲間であるAAA、B.B.、ばんじろうがそれぞれ口を開く。
昔からの友人ということもあり組まされているチームであるが、サポートの的確なAAA、切り込み隊長のB.B.、諜報活動に長けたばんじろう、そして全員の能力を正確に把握してその能力を最大限発揮させられる大江戸ハーマイオニーという非常にバランスのいいチームとなっていた。
「用件は俺にも分からん。ただ一応覚悟はしておいてくれ。」
簡潔にそれだけを言うと、大江戸が司令室に向かって歩き出す。
三人は何も言わずにそれに続く。全員何かいつもの指令通達とは違う雰囲気を感じ取っているのだろう。
階段を上り、最上階の司令室のドアをノックする。
「大江戸小隊、集合しました。」
「よし、入ってくれ。」
司令室のドアをくぐると、部屋の主であるてんこあいしてぬと補佐の和鬼藹々が四人を迎えた。
てんこぬは気さくと言えば聞こえは良いが、実はちゃらんぽらんなところもある十字陵基地の最高責任者である。そしてそれを的確に補佐するのが和鬼藹々である。今は備え付けの給湯器でお茶を沸かしている。
呼びつけたてんこあいしてぬ本人はなにやらデスクに備えられたPCとにらめっこしながら難しい顔をしている。
「司令、直接召集と言うことは何か特別なことが?」
「まぁそう慌てるねい。もうちょっとでマインスイーパの上級をクリアできそうなんだよ・・・。」
なぜか二杯分のお茶を汲み終えた和鬼藹々がデスクに湯呑みを置き、もう一杯をてんこあいしてぬの頭にダーっと垂れ流す。
「っちょああ熱っつ!熱っつ!何をするんだね!?」
「申し訳ありません。手が滑りました。」
「滑ったなら仕方ないな。しかしドジっ子萌え!」
和鬼藹々は今度は空になった湯呑みそのものをてんこあいしてぬの顔の中心へと投げつけた。
「申し訳ありません以下略。」
「・・・さて、ハニー。今日呼んだのは他でもない、君たちにやってもらいたいことがあるんだ。」
「鼻血出てますけど。」
大江戸ハーマイオニーのツッコミも無視してティッシュを鼻に詰めたてんこあいしてぬが書類を差し出す。
表紙には『J計画』と書かれており、極秘の印も押されている。
「キミ達にはその作戦の遂行を担当してもらう。」
「古代遺跡への潜入調査・・・?これがどういう戦果をもたらすのですか?」
「それは作戦立案者から説明してもらおう。」
てんこあいしてぬがそう言うと、奥のドアが開き白衣を着た技術局長のらいぶらり~が司令室へと入ってきた。
その手にはなにやら古めかしい書物が抱えられている。
「やぁ、よろしくね。早速だけど説明させてもらうよ。」
事の始まりは今らいぶらり~が持っている一冊の本から始まった。
とある教育施設の蔵書に埋もれていたそれは未知の言語で書かれており、超古代の言語と似たところがあったので照らし合わせて解読を進めていったところ、『機械の兵隊』や『浮いた島』などの記述が見つかったため本格的に解読が進められていった。
するとあの修羅と呼ばれる島は古代に滅亡した文明の遺物であることが発覚したのだ。
「それでその文明が滅んだ経緯を調べた結果、他にも私たちでも利用できる古代の遺物が眠っている可能性に至ったと言うわけさ。」
「しかし都合よく見つかるものなのでしょうか?未踏地の調査に可能性をかけるのは得策ではない気がするのですが・・・。」
「修羅の兵たちはあの浮遊島から送られているエネルギーで動いているんだ。つまりアレが現れたことで新たに確認された遺跡ならばその可能性は低くはないでしょう?」
「確かにそうですが・・・。」
「何よりの証拠はそこが修羅兵によって固められているということです。」
計画書を何枚かめくると目的地の遺跡の写真が挟まっていた。
入り口は一見ただの遺跡に見えるが、修羅兵らしきロボットが木の影などに隠れている。
「これでは我々ではとても調査になど行けないからね。しかし少人数で目立たずにやらねばならないので君たちに白羽の矢が立ったというわけさ。」
「確かにこれは・・・。調査してみる価値はありそうですね。」
「学者としては遺跡を荒らすのはタブーですがそうも言ってられませんからね・・・。」
どこか寂しそうにらいぶらり~が言う、頭では分かっていてもやはり諦められないのだろう。
伝えることは伝えたのかてんこあいしてぬが最終的な命を下す。
「では大江戸ハーマイオニー及び小隊員三名!この作戦を極秘裏に遂行してくれたまえ!」
「了解!」
四人がビシッと敬礼。そのままドアを開けて部屋から出て行った。
こうして古くはジャギ同盟と名乗った四人に世界の命運が託されたのである。
「和鬼くん、ところでお茶をもう一杯もらえるかね?」
「下の自販機にどうぞ。」
「・・・・・・・。」
【Ⅱ】
任務を受けてから三日後、大江戸小隊の四人は遺跡の入り口に立っていた。
遺跡の入り口付近にいた修羅兵はすべて片付けたが、中にはまだ残っているようである。
「で、ここに古代文明の遺産があるのか?」
「こんなでかい遺跡が今まで見つかってなかったのは不思議ですね・・・。」
「このあたりは調査されてたはずなんだがな、修羅が見つかってから発見されたらしい。」
「あとはばんさんが中の偵察から戻ってくれば・・・。」
「お、戻ってきたぜ。」
遺跡の入り口からばんじろうが姿を見せる。
「中にも結構な数が居る。強行突破は得策ではないな。」
「広さは?」
「なかなか広かった。忍び込むとまではいかないだろうが姿を隠して移動ぐらいは出来そうだ。」
「ふむ、ばんさんを先頭に俺、びびさん、AAAの順で潜入する。戦闘準備を怠るなよ。」
「はいはい。左右の警戒は任せてください。」
「りょーかい。接近戦の装備だな!」
「危険なトラップは見当たらなかったけど、ないと決まったわけじゃないので各自注意を。」
大江戸ハーマイオニーの指示した隊列で遺跡へと侵入する。入り口の兵を破壊したことで侵入したことは知られているようで、兵が慌しく走り回っているようだが隠れたりしてやり過ごした結果未だ戦闘は起きていない。
しかし、最大の目的である文明の遺産については手がかりすらも掴めずに居た。
「っだぁ!こんな狭いとこに数が多すぎるだろ!」
「この分だと目的のものがあっても固められてるんじゃないですか?」
「だが一旦引けば運び出される可能性もあるからな・・・。俺らだけでどうにかするしか・・・ってばんさん?」
急にばんじろうが立ち止まり、しゃがんで床を触って何かを確かめ始めたのだ。
床をコンコンと叩いて何かを確信したように立ち上がる。
「床の下に空洞があるな。足音の反響音がびみょんに違う。」
「さすがだな!じゃあぶち抜いて降りてみようぜ。」
「え!?さすがにそれは無謀ですよびびさん!」
「逃げ道の確保が出来ない。それにここをぶち抜くとなるとどうしても見つかってしまうだろう。」
「でもよお、ここ以外にあるって保証もないんだぜ?ここなら奴らも気付いてないんじゃねえの?」
ばんじろうの言うことも、B.B.の言うことのどちらにも理がある。
進むか引くか、その決断は大江戸ハーマイオニーに託されることとなった。
「・・・行こう!ばんさんは爆薬を、AAAとびびさんは通路の警備を頼む。」
「了解!面白くなってきたぜ!」
「こんな切迫した状況も久しぶりですねぇ・・・。」
「設置完了した。全員離れろ!」
ばんじろうの合図と共にドムッという音と共に砂煙が舞い上がる。
砂煙が晴れると爆薬を仕掛けた箇所の床がガラガラ崩れ、地下へと続く階段が現れていた。
「さぁ盛り上がってまいりました!」
「虎穴に入らずんばって事ですかね・・・。」
「よし行くぞ!隊列は維持して行けよ!」
「足音が近付いて来てる。少し急ぐか。」
階段を駆け下りると、道は一本だけが奥に伸びており灯りもないので先を確認することが出来ない。
四人が先へと急ぐとなにやら少し広い場所へと辿りついた。
「何だこりゃあ・・・?」
「広間、にしては物が多いですね。」
「宝物庫みたいだな。奥へ進むぞ。」
「埃の積もり具合を見ると長年誰も入ってないようだ。」
四人は無造作に積まれた物をかき分け奥へと進んで行く。
黄金やなにかの像など価値のありそうなものも沢山あったが、今はそれが目的ではないため奥へと進んで行く。そして倉庫の一番奥へとたどり着くと、そこはホールのように空間が広がっていた。天井は高く、壁画と細かい細工を施された像が荘厳な雰囲気を漂わせている。
そして部屋の中央には祭壇のようなものが置かれていた。
「おお・・・これはすごいですね!」
「あの祭壇に安置されてる槍とか怪しいな。」
「うかつに触るなよ?ここは慎重にだな・・・」
「敵襲!散開!」
後ろを警戒していたばんじろうの声に後ろからの奇襲を全員が前に飛んで避けることができた。
立っていた場所の床は石畳がえぐれてしまっている。まともにもらっていればタダではすまない威力である。
『外したか・・・。なかなかの反応だ。』
暗闇から現れたのは他の修羅兵とは装いの違う、装飾を施されたごつい鎧のような修羅兵が佇んでいた。
手にした武器はじゃばらのようになった鞭という他の修羅兵には見られない武器である。
そして何よりも違うところは・・・
「喋った!?」
『お前ら人間に喋れて私達が喋れないとでも思っていたのか?』
「少なくとも指揮官クラスって事か・・・。」
「喋れたとは驚きだな。しかし鞭で岩をえぐるとは・・・。」
鞭を巻きとり、指揮官と思しき修羅兵が一礼する。
『初めまして。キミたちが修羅と呼んでいる島の指揮官の一人、ハクと申します。』
「ご丁寧にどうも。そんなのがここに居るって事はあんたらにとってここにはやばいもんがあるのかな?」
『それを調査しに来てるのさ。ここを見つけてくれたキミたちには感謝する、よっ!』
そう言うと同時に、ハクが右手の鞭をさらに一薙ぎする。
さらに床がえぐれ、四人は祭壇の裏に回りこんでなんとかやり過ごした。
「どうするよ?遠距離で仕留められる装備なんて持ってないぞ?」
「接近・・・も難しそうですね。」
「一般兵より硬いと見た方がいいだろう。打つ手がないな・・・。」
「じゃあこれを使おう。」
ばんじろうが取り出したのは祭壇に安置されていた武器の一つである。祭壇の裏に回りこむ際に咄嗟に掴んでいたのだ。
黒光りする拳銃のような形をしているが、ただの拳銃のようにしか見えない。
「・・・それ使えるんですか?」
「手に取った瞬間頭に使い方が流れ込んできた。だが倒せるかどうかは分からない・・・。」
「なら気を逸らせた隙に他の武器を手に取ればいいんじゃないか?」
「やるしかなさそうだぜ。ばんさん頼む!」
言い終わると同時にばんじろうが祭壇から飛び出し、手にした銃を構えハクに狙いをつける。
『そんなもので倒せるとでも思ったか!』
ハクが構わずに鞭のリーチにまで前進しようと足を踏み出す。
しかし、その歩みは二歩目を出さずに止まることとなる。
『・・・厄介な!』
ばんじろうがトリガーに指をかけた瞬間に銃が光りだし、光が収まるとばんじろうの右手には拳銃の面影など欠片もないグレネードランチャーが握られていた。そのままトリガーを引くと、シュポンっという音と共に弾が発射され、爆発と共にハクの後ろに居た修羅兵を吹き飛ばした。
続けて二発、三発と装填されている弾を使いきると、グレネードランチャーが拳銃へと戻る。
ハクが警戒して後ずさりしたのを確認してからばんじろうは祭壇の裏へと姿を隠す。
「おいおいすげぇな!?」
「僕らも取ってきましたが・・・これは反則ですねぇ。」
「使い道を間違える事はできないな・・・。」
先ほどの隙に各々祭壇から武器を取ってきており、AAAは手甲、B.B.は槍、大江戸ハーマイオニーは杖のようなものをそれぞれ手にしていた。
「とりあえずここを脱出する!AAAとびびさんは接近戦できるな?」
「おうよ!慣らしがてら道を切り開いてやるよ!」
「大江戸さんはどうなんですか?」
「・・・俺のはここじゃ使えない。AAAを先頭にばんさん、俺、びびさんで行く!一気に突破するぞ!」
合図と共に四人が一斉に駆け出す。
まずAAAが敵の集団に向かって全速力で走っていき、手甲をつけた右手で拳を握り高く振りかぶる。そして、「発!」と叫びながら拳を振り下ろすと先頭に居た修羅兵が巨大なハンマーでぶん殴られたかのように後ろに居た修羅兵を巻き込みつつ吹っ飛んだ。
「これなら行けそうだ!」
「あの司令官っぽい奴がいねーぞ?」
「構うな!一気に突破するぞ!」
包囲を突破し、下りてきた階段を駆け上がると通路も修羅兵で溢れていた。
ここでB.B.が一歩前に出る。
「任せろ!ぬぅうううりゃああ!!」
B.B.が手にした槍を勢いよく前に突き出すと、1.5mほどと槍にしては短かったはずの切っ先が伸び、普通の武器ではなかなか破壊できない修羅兵の装甲をその一突きでまるで紙か何かのように簡単に貫いた。
「伸びる槍ってのも便利だな!」
その後も順調にもと来た道を辿り、ついに入り口へと辿りつく。しかし、そこではハクが仁王立ちをして待ち構えていた。
四人が戦闘態勢に入るが、ハクは動こうとはしない。
「なんだ・・・?」
『今の仕様では貴様らを倒しきれるか分からんのでな、一旦引かせてもらう。』
ハクはそう言うと、向きを変えてその場を去っていった。
姿が見えなくなってしばらくしてから四人の緊張が解かれる。ふぅ、と一息ついたところでAAAが口を開いた。
「とりあえず任務完了、ですね。」
「これがあれば盆地から打って出る事も出来るかもしれねえな。」
「今の状況の打開策にはなるだろう。ばんさん、本部に連絡を頼む。」
「了解。」
こうして戦うための手札は揃い、この四人は戦いの軸となる存在になった。
それは同時に、この四人の周囲に渦巻く奇妙な運命を指し示していたのかもしれない。
【Ⅲ】
遺跡での攻防戦から一週間、盆地では未だに防衛戦が続けられていた。
だがしかし、今日でそれも終わりとなる。
最前線で戦いを続ける翁の小隊に新たに命令が送られてきた。
銃声の鳴り響く中、通信機を持った隊員が翁に報告を開始する。
「翁隊長!司令部から戦線を下げろとの命令です!」
「なにィ!何考えてやがんだあの司令は!」
「指令文には大江戸隊が新兵器を試すと・・・。」
「大江戸が?・・・わかった!全隊に伝令!総員退却!」
翁の指示と共に盆地の兵がジリジリと後退を始める。
盆地の端にある高台の崖の上から大江戸ハーマイオニーが戦線の後退する様を眺めていた。
大江戸小隊が遺跡で持ち帰った古代文明の遺産は総称して『アーク』と名づけられた。
その後の調査で他の遺跡からもアークが発見され、他の兵士の適正を見て順次支給されていく予定となっている。現在下の戦場で奮闘している翁にも支給される予定だ。
そして今大江戸ハーマイオニーが携えたアークはアマテラスという名がつけられていた。
「もう、よさそうだな・・・。」
大江戸ハーマイオニーがアマテラスを前に構え、眼を閉じて気を集中させ始めた。
すると辺り一体がが異様な静けさに包まれ、アマテラスから発せられた淡い光が大江戸ハーマイオニーの体を包み込んでいく。
「・・・シュート!」
大江戸ハーマイオニーが掛け声と共にアマテラスの先端についた宝玉から光が一閃、戦場を薙いだ。
一瞬の静寂の後、轟音と共に圧倒的な熱量と破壊が修羅兵を襲った。
これを見ていた大江戸小隊のメンバーもこの威力には驚きを隠せない。
「・・・これは確かにあの遺跡では使えませんね。」
「これは一歩間違えたらやべえな・・・。」
「やってることは単純なんだがな。もっと小規模な攻撃も出来るが加減が難しい・・・。」
「司令部から帰還命令が来た。戻ろう。」
大江戸ハーマイオニーがばんじろうの報告を受け、修羅兵がほぼ壊滅した戦場に背を向けて歩き出す。
「さぁ、これからだぞ。ジャギ同盟の名を世界に轟かせようじゃないか。」
「懐かしい話を持ち出してきますね・・・。」
「面白そうじゃねーか!俺は乗るぜ!」
「ふむ・・・悪くない。」
とある遺跡から発掘された文明の欠片がもたらした戦果は絶大であった。
人類の存亡をかけた戦争はいっそう激しさを増し、大江戸小隊の名前は広く知れ渡ってゆく。
この戦争の真意に至らないまま、四人は戦いへと身を投じてゆくのであった。
あとがき
さて、お気づきの人は気付かれていたであろうジャギ同盟SSでございます。
十三話のあとがきの白文字に気付いた方はどれくらいいらしたのでしょうか。
まぁ、ニヤニヤしてくださっていたのかは分かりませんが!
今回は以前突発駄文としてスレに上げたジャギ同盟の文の本編とも言うべき内容となっております。
ただ本文中に説明できなかったことが多すぎるので、用語解説など脳内設定を放出しようと思います。
下に記しておきますのでよろしければご覧下さい。
正直なところ、四話構成予定なので揃ってから上げたかったのですがそのままお蔵入りする可能性も否定できなかったので上げさせていただきましたw
Q:おいィ?じゃあきちんと完結できるんだろうな?
A:・・・・・がんばる。
・・・さぁてどうしようかな。
あんまり叩かれるとへこみますが、感想などあれば頂けると嬉しいです。
それでは第二話でお会いしましょう。
人物設定、用語解説
『大江戸ハーマイオニー』
ジャギ同盟の盟主にして大江戸小隊隊長。戦場でも冷静さを失わない精神とその視野の広さで確実に与えられた作戦をこなす。上層部からの信頼も厚いが、今のメンバー以外ではその指揮力を存分に発揮することが出来ない。戦場では指揮に専念することが多いが、戦闘が不得手というわけではない。
・アーク【 アマテラス 】
杖の形をした大規模破壊に特化したアーク。膨大なエネルギーを収束して発射するという兵器ゆえに扱いが難しい。大規模破壊特化型ゆえに発射までに時間が必要なことが多い。
『B.B.』
ジャギ同盟の兄貴ポジションにして切り込み隊長。あまり考えなしに特攻して、主にAAAがそのサポートに回ることが多い。銃などの遠距離武器を使わずに近距離戦を挑んで派手な戦い方をする。「喧嘩も強くて男前」が座右の銘らしい。
・アーク【 黒鉄丸(くろがねまる) 】
普段は1.5mほど長さと、槍としては短めであるが、伸縮自在の槍。さらに極小範囲ではあるが重力を操る能力が付随されている。物理的な障害であれば大体のものを貫くことが出来るが、一度伸ばしたら一度元の長さに戻さなくてはならないという制約が存在する。ちなみに名前は他に存在していたがB.B.が勝手に改名した。
『AAA』
ジャギ同盟の女房役にしてB.B.とのツートップの片割れ。豪快な戦い方をするB,B.に対して臨機応変な戦い方を得意とする。修羅兵に対しては装甲の隙間を抜けて核を破壊する戦法を得意とする。消極的な発言をすることも多いが、一歩引いた目線から物を見ての発言である。
・アーク【 刹牙掌(せつがしょう) 】
手甲の形をしたアーク。人体に元々流れていたエネルギー、いわゆる気、オーラと呼ばれるものを超増幅、自在に利用できるようにする能力を持つ。オーラ自体は指向性のないエネルギーであるため、使用する際のイメージによって様々な能力を持った攻撃が出来る。
『ばんじろう』
大江戸小隊の戦闘以外のことを幅広くこなす。諜報活動から破壊工作まで大抵のことはこなすが接近戦に難がある。そのため銃を主な武器としており、遠距離からも狙いを外すことがないが敵兵の装甲を貫く銃が存在しないために戦闘ではあまり活躍できない。常に全方位を警戒しているために口数が少ないが、気を抜ける状況の時は口数も増えるらしい。
・アーク【 銃工(ガンスミス) 】
普段は拳銃の形をしているが、「実体のある弾」を「撃ち出す機構」のついたものであれば、使い手のイメージ次第でどんなものにも形を変える。弾が切れると元に戻るが、同じものはしばらく使えなくなる。また、使用者への負担は考えられていないので注意が必要。
『翁』
音知世の軍の小隊長にしてジャギ同盟の四人とも古い仲である。士官学校は成績をトップで卒業したが、無能な上官をこき下ろしたことでエリートコースを外れてしまった。だがその分一般兵からの信望はかなり厚い。
『酒飲みスーさん』
大江戸ハーマイオニー、翁と同じく小隊を率いる音知世の軍人。勇猛果敢に突撃して行く小隊として名を馳せている。しかし隊員に欠員を出したことはなく、結果だけを見れば優秀な隊長。口癖は「ふぅ、今日もなんとか致命傷で済んだぜ。」
『てんこあいしてぬ』
十字陵基地の最高責任者。やることは確実にこなしているのだが、なぜかちゃらんぽらんに見えてしまう。尊敬されることはないが一目置かれているのは確実。軍の統制だけでなく政治にも精通しており、基地周辺の住民への対応の良さは評判となっている。
『和鬼藹々』
てんこあいしてぬを補佐する役割を担っている。冷たい印象を受けることが多いが、オフタイムで覗かせる笑顔には基地内でもファンが多い。ファンクラブの会報にはなぜか仕事中の写真が良く使われている。謎である。
『らいぶらり~』
音知世の技術局の局長。本を読んで過ごしたかったらしいが、その知識を見込まれて技術局へ入り、そのまま昇進を続けついには局長となった。戦争に対して技術を使うことがあまり好きではない。
『修羅兵』
修羅の一般兵。人の形を模した芯に装甲が固定されており、受けた命令に従って動く。修羅兵自体に意思はなく、細かい作業はこなすことが出来ない。剣、槍、弓の三タイプが確認されている。
『ハク』
修羅の司令官。機械であるが自らの意思を持って行動している。修羅の幹部の一人で、意思を持ったものは他には十体も居ない。鞭を武器として使用するが、その鞭には黒鉄丸と同じように重力制御の能力が備わっている。
【アーク】
古代文明の遺産の総称。戦闘用のものからそうでないものまで全てを指すが、ただ単に「アーク」と言った場合は武器のことを指している場合が多い。個人で使用するタイプの武器などは一度持ち主が決まるとその持ち主が生きている間は他人が使用することは出来ない。
『世界観』
技術的には現代とそう違いはありませんが、空を飛ぶ技術が全くありません。これは古来から空を飛ぶことが最大の禁忌とされていたためです。
地名などには様々なところから名前を持ってきました。
元ネタが分かる人も結構いらっしゃるかとは思いますが・・・
また、「~の説明が欲しい」、「~がもうちょっと具体的に知りたい」などありましたら、下のコメント欄かハマチにておっしゃってください。
見逃すといけないのでスレではご質問などはなさらないようにお願い致します。
コメント欄
- ジャギ全然関係無ぇ!そしてほのかに世紀末の香りが!!w -- 当身達の宴? 2009-02-17 (火) 18:53:00
- おお!ついに始まりましたかwによによしていた甲斐がありましたw今回はバトル物ですね~学園記のまったりした感じから打って変わった作風!何でも書ける文才にぱるぱるしながら続きをまったりと待っています~。どうでもいいですが槍ってかっこいいですよねw -- B.B.? 2009-02-18 (水) 21:59:42
- しかし、何時の間にジャギ同盟が出来上がっていたのか謎である。逃げ場潰しに上げてしまいましたか……。その先は地獄だぜ。てんこぬさんとスーさんさんは……まぁ、うん、そうだよね、と納得してしまったw スーさんさんの説明が欲しいです。名前も出ましたしね。それにしても、中々に壮大っぽい話ですねぇ。無事完結を迎えられるのか楽しみにしつつ、応援してます! 頑張ってくださいねー。そして、音知世はネちょか……。 -- ドックンドール? 2009-02-18 (水) 22:21:04
- 音知世=ネちょ なん・・・だと・・・って感じです。いや、正直こういう世界観とか設定とかラブです。好物です。ショタ以上に← 続き楽しみにしてますのぜ!!w -- きつね? 2009-02-19 (木) 22:42:52
- これは・・・普通にカッコイイじゃないかww 非常に熱いです!そして私の武器「アマテラス」 てんぬさんを巻き込むフラグですね、分かります -- 大江戸ハーマイオニー? 2009-02-21 (土) 00:36:24
- このSS読むまでジャギ同盟知らなかったのは内緒… てんぬさんの扱いがヒドクて吹いてしまったww それにしても色々とスゴイ世界観。 続きに期待してますね
-- オワタ☆残骸? 2009-02-28 (土) 14:11:06 - こういうSSでの自分を見ると自分がもっと好きになれる俺はドM、そしてハニーかっこいいよ!! 学園記の白字に埋もれた方も期待しておりますがこちらの続きも期待してますよ! -- てんこあいしてぬ? 2009-03-04 (水) 21:51:19
- 私の口癖なんなんだwww てんこぬさんが相変わらずのキャラで吹きましたw いい世界観だなぁ・・・w -- 酒飲みスーさん? 2009-04-10 (金) 15:47:00