黒い森

Last-modified: 2022-05-17 (火) 14:40:14

 魔術ギルド“黒い森”は、大陸北方の魔力林に存在する死霊魔術師たちの村落によって成り立っている。正式な名前は“暗靆たる刀樹の墓所”であるが、一般的に黒い森という名称で呼ばれることが多い。
 領域内におよそ100程度の村落を持ち、生存人口は全域を合わせて25万人程度であるが、現時点で少なくとも3000万体以上のゾンビ・スケルトンないしゴーストが存在するとされる。
 国家形式はテクノクラート型の立憲君主的無政府主義。魔術師“昏き闇に浸されし骸”こと十二代目ダルトン・カルネートを中心とした一つの学院のような形式となっており、1人の学長の下に複数の教員(村の管理補佐を行う)と級長(村長に値する)が存在するような感じで、それぞれの学級自治が認められているようなものだと思えばわかりやすいかもしれない。
生活様式は中世の村落そのもの。村はずれで豚を飼い、牧畜を基本として生活し、時折スケルトン粉ひき小屋でパンを作る生活である。ただし衛生面などで生活水準が微妙に高いのは死霊魔術師の特性とも言える(糞尿からもゴーレムは作れるため)
 周辺の森は高濃度の魔力滞留地帯であり、モンスターも多く生息する。そのため主な生活手段は魔術研究や牧畜の他、モンスターを駆除することや森の古い木の枝や葉を刈って売る木こり・炭焼きなどに限られる。これを苦にして、身に着けた武芸と魔術を頼りに身一つで外界に出る者も多い。

魔術ギルド“黒い森”

 “黒い森”は魔力林地帯を中心に広がる小規模な村落の集合体である。その成り立ち上、古い魔術師の一人である四代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”とその血族を中心として一つの権威としているものの、実質的な研究費や研究内容の決定などの実務的権力また村落の内外に対する諸問題へ対処するための政治的権力は各村落が各々ある程度独自に保持しており、村落ごとで独自色が強い。定期的に魔力林の奥に所在する“霊廟”にて開催される学会を以てその連帯を保っているものの、事実上各個に独立しているようなものである。
 そのため、その学術面に特化した成り立ちや死霊魔術師という特異な業種による連合という点などから、一般的に魔術ギルド“黒い森”と呼ばれる。
 ここでは死霊魔術師による同業組合のことを、同名の高濃度魔力林と対比して魔術ギルド“黒い森”と呼称するものとする。

死霊魔術について

 死霊魔術は魂魄魔術とも呼ばれる魔術であり、暗黒属性の魔石を基本として土壌属性の魔石や岩石属性の魔石、また土壌属性と水分属性を複合して骨の魔石ないし人肉の魔石、血の魔石等と呼ばれる特殊な魔石を作成してそこに空気属性や土壌属性、熱気属性などによる動きの魔石を用いることで死体を動かしたり、高度なものになると暗黒属性の魔石や土壌属性、熱気属性や光明属性などを複合した“霊魂”の魔石を運用することで死体に自律的な意識を埋め込んだまま行動させることが可能になる。
 死体を用いて魔術を使う以上一般的なツェスツェリヤやアルケリヤからは忌み嫌われており、死霊魔術師のトレードマークである黒い手斧と短い杖剣は「死を撒き散らす厄介者の象徴」として毛嫌いされる風潮にある。逆に死という逃れようのない物事を相手に術理を編む以上、愛するものを喪った悲しみや家族を不慮の事故で亡くした絶望という日常的に発生する悲劇を対処療法的に解決する手段の一つとして求められることも多い。一家の伝統ではなく死霊魔術を学ぶ奇特な者のなかには、主に「自分の大切な人を蘇らせたい」という欲求から研究を進める者も少なくない。
 “黒い森”の構成員である死霊魔術師たちは傭兵稼業が本職のようなものであるが、一般的な死霊魔術師の副業は恐らく葬儀屋や墓掘人、罪食い人、或いは死体盗掘者や墓守と言った死体の埋葬に関する物事であり、“黒い森”に住まう死霊魔術師たちのように傭兵稼業を行いながら研究を進める者は少ない。事実初代ダルトン・カルネートから四代目ダルトン・カルネートまではツァヴニツ公国で傭兵として動きながらも表向きの本業は葬儀屋として生計を立てていたようである。

死霊語について

  詳細は「死霊語」を参照
 “黒い森”では様々な人種、様々な種族が生活している。そのため“黒い森”結成時点から言語や価値観の差異によってしばしば魔術師同士の乱闘が頻発しており、死者も多数続出していた。これを是正するために五代目ダルトン・カルネートは公用語として死霊語を制定することを決める。これは当時主流であった死霊魔術用の制御言語をそのまま流用したものであり、多少の発音や語彙の差を除けばほとんどすべての種族や人種が用いている共通言語であった。
 結果当時の魔術制御言語であった死霊語が現在でも使用されており、“黒い森”ではいかなる母語であろうとも必ずこの言語を用いて会話することを強いられる。逆に“黒い森”で生まれ育った年若い学徒たちは死霊魔術の運用に特化した魔術言語を思考言語段階から認識することに成功している。
 死霊魔術師は自分自身の本名の他、魔術を使う時に諸々の命令を実行するための所謂ユーザー名、通称「魔術名」を保持しており、学会で研究を発表する際などはこの魔術名を用いて会話する。

位階について

 “黒い森”において、その構成員は八つの位階に分けられる。下は第1位階のニーオファイト(入門者)から上は第8位階のメイガス(教授)までの八位階であり、一般的にネクロマンサーと呼ばれるようになるのは第3位階のセオリカス以上の者のみである。一般的にはセオリカス以上を学士、第6位階のアデプタス以上を修士、第7位階のイグセンプタス以上を博士と呼び、セオリカス未満である第1位階のニーオファイトと第2位階のジーレイターは学徒と呼ばれ新米扱いされる。
 各村落ではメイガスを村長、イグセンプタスを各担当責任者、アデプタスを各現場指揮官とし、学士・学徒20人につき修士以上が1名で指揮する形となっている。下の位階のものは上の位階のものの下働きのような形で術式や技術を学んでいく事となるが、一部のイグセンプタス、或いはアデプタスたちがこの制度を悪用して自らより下のセオリカスやジーレイターを奴隷のように扱っているとして非難が発生している。こういう悪習を嫌い、村を抜け出す学士・学徒たちも多い。
 位階の上昇に関しては定期的に行われる学会を待つ必要があり、村落における貢献や術式改良の進行度、年齢と共に蓄積されていく魔力の具合や魔力操作の度合いなどによって決定されている。基本的に学士は25‐40歳、修士は60‐70歳、博士ともなれば120歳以上のものが大半を占め、魔力に乏しい若い者がその位階にたどり着くためには才能は当然の事として術式の改良や厳しい修練、また自分自身の肉体に対する徹底的な改造手術を必要とする。

名称人数使える魔術強さ目安
メイガス(教授)100人程度ほぼ人間やめてる
イグセンプタス(助教授)1100人程度ギリギリ人間をやめていない
――博士――1300人以下多数のスケルトンを運用し、多数の傭兵軍・農民軍や騎士団に対し戦闘が可能めっちゃ強い
アデプタス(論壇階梯)12000人程度多数のスケルトンをそれなりに戦えるレベルまで操りながら戦える日頃会う術師では最強
――修士――およそ13000人スケルトンを数・速度や精度ともにずいぶんなレベルで動かしながら、同時に魔術を用いた武術を使えるとても強い
フィロソファス(哲論階梯)スケルトン50体以上を操れたり20体くらいを操りながら戦える凄腕の魔法戦士
プラクティカス(実践階梯)スケルトン10体くらいを操るか5体くらいを操りながら戦える魔術を用いた武術を使える。魔法戦士
セオリカス(理論階梯)スケルトン5体くらいを操れる熟練の魔術兵士くらい?
――学士――およそ10万7000人スケルトンを操れる数か速さが際立ち、また魔術と合わせた武術が使えるようになる一般的な魔法戦士と類似する強さ
ジーレイター(就学階梯)スケルトン1-2体をある程度ゆっくり動かせるある程度育った魔術兵士と同じくらい
ニーオファイト(入門階梯)スケルトン1-2体を動かせれば上出来新人魔術兵士
――学徒――およそ25万7000人装具を使ってもスケルトンを上手く動かすのが難しい魔術兵士と同レベル

装備について

 死霊魔術師は、死体を主に用いて戦闘するという性質上魔術師自身の戦闘が必須であり、必然的に特徴的な武具を用いることが多い。基本的に誰でも保持しているのは杖剣と腕輪、それに手斧と言ったもの。学徒は短弩や火筒を使い、学士の一部や修士は鎌槍を振るう。肉体改造を施しまくった一部の修士や博士クラスになると自分の肉体が結構変わっていたりするため、鎌槍を振るいながら短弩を撃ったり杖剣で突き刺したりと縦横無尽の戦闘を実行することも多い。

  • 死霊魔術師の手斧/“翳落とす業樹の手斧”
    「手斧」と呼ばれる。魔術ギルド“黒い森”の構成員のうち修士以上の位階のものに与えられる装具であり広義で言えば杖の一種。
     黒い森に生えている120年級の間伐材を柄に、ミスリルで飾られた鋼を刃に使用しており、刃に取り付けられた3つの魔石によってゾンビを作ることが出来る。
     具体的な機序としては殴りつけた時の血を魔力に変換し、これを用いて刃に触れたものの“感覚”を吸い出して魔力に変換させ、それを利用して敵の“意識”を一度分離して敵を殺害したうえで制御術式と合わせて再度死体へ送り返すことでゾンビを作る方式。その高性能さと引き換えに量産には向いておらず、それなりの腕の術士として認められるアデプタス以上でなければ保持が認められない。
     アデプタス以下の学士や学徒の場合は普通の手斧で殴りつけてくる。これは特別な術式があるわけではないが魔導樹の枝を間伐するために強化がなされており、鉢金の上から頭蓋骨を叩き潰すくらいならば造作はない。
  • 死霊魔術師の腕輪/“腐土より出づる腕”
     死霊魔術師にとって極めて重要な魔術装具。骨や肉を中心として大地から骨や肉を移動ないし錬成しアンデッドを作成するために必要であり、これと杖剣は学徒であっても保持している。ただし魔力やその配分によって生成できる数や制御できる数などが全く異なってくるため、基本的に新人(ニーオファイト)の学徒であれば1-2体を作成・制御することが精一杯と言ったところだろう。
  • 死霊魔術師のローブ/“蛆集る紫穢の皮”
     死霊魔術師が着ている毛皮の外套。金属環や古い樹皮を取り付けた一般的な魔術師用ローブであり、身体強化の魔術や矢避けの魔術を機能させたりするところまでは基本的なローブと同じ。ただ死霊魔術師の場合は特に魔導ツタを編み込んだ陸獣の皮を着ていたりすることも多いらしい。これは最悪の場合ローブ自体をゴーレムとして機能させ自分自身が逃げる隙を作るため。ローブに括り付けるようにして骨のつまった袋を保持していることもあり、これを地面に撒くことでスケルトンを作成したりする。
  • 死霊魔術師の杖剣/“邪まへ還す爪牙の杖”
     近接戦闘用の杖。広義の杖に対して短く、長さ40‐60㎝程度のものをさす。魔術を行使すると同時に敵の剣から自らを防御するために作られており、鍔を利用して敵の剣をへし折ることもできる。死霊魔術師の場合、基本的にはアンデッドの制御を司る術式が仕込まれていることが多い。術式制御の都合上自分自身が指揮者のように動きスケルトンやゾンビの攻撃目標を指示する場合や細かな制御をする場合にも用いるため、杖剣の重要性は実のところ物凄く高い。
  • 死霊魔術師の鎌槍/“蝕甚刈り取る指鎌”
     中距離戦闘用の鎌槍。いわゆる短槍、どちらかと言えば打撃部位の着いた斧槍の一種「ルッツエルン」と呼ばれるものであり、1‐2m程度の長さ。ごく普通の片手槍であるが管槍になっていることもある。騎兵相手でも上手くやればひっかけて落馬させることが出来るほか敵の剣や槍を逸らして牽制、鎧ごと叩きのめしたり鎧の隙間を突いたりまた大鎌の如くうなじや肩口から切断することが出来る。死霊魔術師の攻撃の基本を担う武器である。
     近接武器であり、また突く・叩く・ひっかける・斬るなど複数の動作が行える武器であることから運用は比較的難しく、新米に近い学徒は勿論のこと、学士であっても鎌槍を上手く扱えることが出来ない者も実はいる。代わりに鎌槍の妙手は自身に掛けた身体強化の魔術や衝撃波の魔術・加速の魔術などで鎌槍の攻撃をサポートし、硬い鉱物の甲羅で覆われた魔物であったとしても叩きのめすことすらも可能。死体を再利用しやすいところから言っても、強い死霊魔術師は鎌槍をメインウェポンにしている者が多い
  • 死霊魔術師の短弩/“暗夜を裂く骨の石弓”
     遠距離戦闘用の短弩。学徒であれば基本的に短弩を用いているほか、学士や修士程度の場合鎌槍か短弩かのトレードオフで装備していることが多い。ただし一部の修士や博士連中であれば肉体改造の結果両方を装備する等が可能であるらしい。基本的に通常の矢を使うよりも魔石によって骨の矢を作ってから発射するようで、この骨が死霊魔術の起点になることも多く死霊魔術師と戦うときは注意が必要である。
  • 死霊魔術師の火筒/“酷夏に融き尽く腸の火筒”
     遠距離戦闘用の火筒。港湾都市国家プエルト・ブランコで開発されたガス圧を利用した魔導銃であり、短弩に比べて射程距離に優れるものの威力などの面から不足が目立つものの農民兵や一揆軍相手には十分不足なく戦える。また短弩に比べて小さく纏めることが可能で装填に腕力が必要ないという点からスケルトンによる一斉発射や魔術師個人がサブウェポンとして保持する場合も多い。
     前装式の細い矢を装填し、薬室内で死体の腐乱ガスに近い硫化水素を一気に発生させることによって発射する。矢は錬成した骨を用いることが多いが、短弩の放つ矢に比べて細くまた軽いため風の影響を受けやすいし威力も弱かったりする。
  • デュラハン/“晦冥を孕む雄邁の駆骸”
     死せる守護騎士。一定以上のレベルの死霊魔術師は自身の研究やリッチ化するにあたっての素体選定にあたって危険な魔力生物や古い魔女や他の魔術師、また軍隊など公権力と対峙するときがしばしばある。その時自身の守護をさせるために強靭な肉体を持つ冒険者や戦士の死体を引き取り、これを長年にわたって改造することで強力な護衛を作り出す。これが死霊騎士、デュラハン(蹴:デュルヘリヤ-Durh'erija/死:ニウィヲエイェン-niwiwoeyeng)と呼ばれるものの正体である。
     魔石やミスリルの鎧などで武装した死体と言う形が基本的であり、筋肉や腱、また皮や骨など素材の良さを出来るだけ活かせるように厳選を重ねる。魔石によって身体強化の魔術を発動させる他モンスターの器官を繋げることで魔法のようなものを発動させるものも存在し、魔獣ガンダマスの胃など魔導養分を作り出すための器官を保持させることで魔力を作れるようにするほか、血管に魔導プランクトンの多く住む水を流し込むことで魔力を運用したりする。また古いデュラハンにはそれ自体に魔力が籠るため、作られたデュラハンはそのコストの高さも相まって三世代以上に渡り長く使っていく事が前提となる。
  • リッチの証/“魂の痣”
     リッチ、或いはデュラハンとして素体を動かすために必要な物。いわば魔術師自身の魂そのものであり、たとえ死体を乗り換えて生き続ける死霊魔術師と言えどもこれが破壊されると完全に死亡する。魔石によって機能しているため何らかの魔石を有した装飾が核となっていることも多い。
     古い死霊魔術師の家には、核に引きこもって独自の理論や魔術式の理屈を考え続ける祖先の魔術師なんかがいたりする。

リッチについて

 死霊魔術の極限にはリッチ化という現象がある。これは“霊魂”の魔石に自分の意識を移動させ、或いは別の死体に魂を移動させることで古い身体を捨て自らの作成したアンデッドなどを操作する魔術である。こうして肉体を捨てた魔術師のことをリッチ(蹴:リヘリヤ-Rich'erija/死:)、或いはレイス(蹴:レセリヤ-Rath'erija/死:)と呼ぶ。二つの違いは主に強く視認できる形での肉体を保持するかどうかということであり、術式的な差異はあんまりない。“黒い森”の外部では死体や骨、動く鎧や自律機動する剣のようなものはリッチと、羽虫や寄生虫、或いは液体のようなものを操作するものはレイスと呼ぶが、ここでは合わせてリッチと呼称する。
 リッチになることで外傷や疾病による研究の中断を考慮せずとも永い年月を生き続けることが出来、またアンデッドとして素体を前もって作成しておくことが可能である都合上、万全の状態を以てリッチになるということは即ち極めて強靭な肉体と強力な魔導素材の体内への保持を意味する。この上リッチはたとえ肉体を全て破壊されたとしても“霊魂”の魔石によって別の死体を操り行動することが可能である以上“霊魂”の魔石を破壊されるか魔力切れになる以外に停止する方法がないため、肉体的損傷を一切考慮することなく駆動することが可能となっている。
 70‐80歳を超える魔術師たちはリッチとして生活することが多々あり、100歳を超えることがざらであるイグセンプタス・メイガス位階の魔術師たちは全員が何らかの戦闘用素体を保持している。
 ただし“霊魂”の魔石が破壊されれば即座に生命活動が停止する上、“霊魂”の魔石の内部で演算される自己の精神ないし自己の疑似精神は魔力からの影響を受けやすい。そのため長く生きすぎると自己の存在自体に魔力が蓄積されていき、また“霊魂”の魔石から他の肉体を操作するという都合上自己の同一性に苦しめられることが多く発生するため、長く生きた魔術師は最終的に発狂して自我を維持できなくなってしまう。このようになってしまった魔術師をグール(蹴:グレリヤ-Gohl'erija/死:)と呼び、人類に仇を為す存在であるとして軍などによる討伐が行われる。そのためいかに“霊魂”の魔石だけで生存できる死霊魔術師とは言えど、基本的なリッチは140‐150歳程度が最高年齢であるようだ。ただし死体を操ることも移動することもなく“霊魂”の魔石に閉じこもってしまう場合、その使用魔力量が限られてくる都合上200歳を超える結構な年齢まで生存することが可能であるらしい。
 
 初代ダルトン・カルネートはリッチ化した“霊魂”の魔石に対する「外部調律」を可能とする術式を編み出し、一族の秘伝としている。

村落

 黒い森においては大きく2つの地域に分けられる。1つは南部と西部の海沿いの地域、もう1つは東部と北部を占める高濃度魔力林地域である。南部と西部は海に面しており、特に南西部には港湾も存在する。
“霊廟”:
 魔術ギルド“黒い森”の本部が所在する。管理者は代々ダルトン・カルネートが務めており、現在の管理者は十二代目ダルトン・カルネート。黒い森の概ね中心部に存在するためモンスターなどが多く出没する場所であった。人口は最も多く4000人程度。
“塚屋”:
 黒い森の南部、魔力林地域の入り口に広がる。死霊魔術師ナージャが設置した新しい村落であり、住人の殆どはセオリカスやジーレイター、或いはニーオファイト位階の者たち。“霊廟”で定期的に開かれる学会にセオリカスなど低位階の死霊魔術師たちが行きやすいよう、また新人死霊魔術師の教育拠点となるよう設計された。その功も奏してか人口は3600人程度と急増している。管理者はナージャ。
“唐櫃”:
 黒い森の南東部に存在する。“霊廟”にも近く、“霊廟”の補助的役割を担う重要拠点である。人口はおよそ3500人程度。管理者はエメリッヒ・ローシェ。
“墓誌”:
 黒い森の北部側に存在する村落。大図書館とかある。“塚屋”のそれが商業的な図書館なら、“墓誌”のそれはアカデミックなそれ。そのため対象としている位階も大きく異なり、また住み着いている魔術師たちもそれなりの腕利きばかりである。人口はおよそ1600人程度。
“花立”:
 巨大な魔導樹が立っている南西部の村落。管理者は《遍歴の》サイード・ノルヒェ。
“骨壺”:
 “霊廟”の更に東側にある村落。結構大事な場所であるらしく、代々カルネート家の分家筋が管理している。その歴史の古さに対し人口は少なく、およそ800人程度と小規模。
“香炉”:
 黒い森の中央部付近に存在する村落。“霊廟”の南西部に位置する場所であり、“火葬場”と“霊廟”の間辺りにある連絡地点。
“火葬場”:
 黒い森の西部に存在する村落。比較的大きい村落であり、人口はおよそ2600人程度。“黒い森”のギルド支部も存在し外来の魔術師たちはここで構成員として登録することが多い。
“湯灌桶”:
 黒い森の西部に存在する村落。結構古い村落。
“竿石”:
 黒い森の北側に存在する村落。
“奥城”:
 黒い森の北側に存在する村落。
“水鉢”:
 黒い森の北側の海岸線にある漁村。血を操る死霊魔術師が多く暮らしている、管理者は《擬人》エッダ。
“手水台”:
 海岸線にある漁村。
“経机”:
 北側に存在する村落。
“擬宝珠”:
 森の中に存在する村落。
“納骨堂”:
 “塚屋”を除く西部最大の村落。古い都市であり、学会が開かれなかったときはここで集まることもある。管理人はエメリッヒ・ローシェ。
“供養塔”:
 新興の魔術師の家系が治める村落。“納骨堂”よりも若干東側、黒い森北部の非魔力林地帯に存在し、“竿石”・“奥城”両集落や“納骨堂”との連絡地点となっている。
“塔婆”:
 黒い森の南東部に存在する。“唐櫃”よりも更に東部寄りの森の中に存在する最前線都市であり、極めて武闘派の死霊魔術師たちが多く住み着いている。人口はおよそ2300人程度。管理者はフェルトーヴェン・シュラウドリンク。
“玉垣”:
 黒い森の南西部に存在する。海沿いではあるが漁村と言うわけではなく、むしろ貿易港としての立ち位置が強い。無秩序の群勢のはぐれた個体や魔獣アングィラキエスなどの襲撃が時折発生することから、ここにも武闘派の死霊魔術師たちが多く住み着いている。
“貴名受”:
 黒い森の南西部に存在する村落。商業が盛ん。 
“供物台”:
“上下蓮華”:
“芝台”:
“燈篭”:
“提灯立”:
“拝石”:
“袖石”:
 土から骨を作り出すことが得意な死霊術師が住む。
“物置台”:
“勾欄”:
“板石”:
“鏡柱”:
“巻石”:
“御城”:

有名な死霊魔術師一覧

ダルトン・カルネート

  • 四代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”
  • 六代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”
     “黒い森”を抜け、今もまだどこかを彷徨い続けている死霊魔術師。もし生きているならば少なく見積もってもn百歳を超えており、ほぼ完全にグールに成り果てていると予測される。
     自らの身体を乗り換えて生きることに執心し、確認されている142年間だけで200名以上のエルフ・ドワーフ・人間など問わない様々な種族を殺害した。
     実は「手斧」の開発者。死霊魔術師たちが使っている今使っている手斧は六代目ダルトン・カルネートが残した研究資料を基に再度作り直したものに過ぎず、オリジナルの手斧の強さは未知数
  • 十一代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”
     先代学長。伝説的な尸解仙《死神》と交戦し、“涅槃の淵にて佇む駆骸”と共にこれを撃退するも死亡する。
  • 十二代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”
     現在の学長。位階はメイガス。128歳と言うメイガスにしては比較的若い年齢ながらも、多数の生体部品で鍛えた素体による戦闘能力はピカイチ。n年前に父親である十一代目ダルトン・カルネートから名前を襲名した。
     複数の魔石とミスリル製の大鎧を組み合わせたリッチ型と小型の魔石を中核に無数の魔導蠅を用いたレイス型の2体のデュラハンを同時に運用することで完成するカルネート家最強のデュラハン“涅槃の淵にて佇む駆骸”を有する。
  • デュラハン/“涅槃の淵にて佇む駆骸”
     身長2mを越える巨大なフルアーマープレート型のデュラハン。ミスリルと魔石によって装飾がなされている。中は空洞で、身体のようなものは見えない。どうやら“霊魂”の魔石がどこかにあるらしいが、それもあまり見当たらないという不親切設計。実際には右肩の付け根の背中側にある。武器は木刀、大剣、弓、長弓、右篭手に仕込まれた短弩など様々。ナックルや脚部の暴発を前提とした小型魔石を含めれば全身が武器庫と言っても過言ではない。
     また同時に、魔導気生プランクトンの対流と合わせたごく小さな羽虫型魔石細工のレイス型デュラハンも存在する。こちらは空気と闇の魔術が極めて得意。本体たる“霊魂”の魔石は羽虫ゾンビたちの何処かに紛れている。本体の物理攻撃力が皆無である代わり、魔術行使に特化したものであるらしい。これら2つのデュラハン/“涅槃の淵に佇む駆骸”に搭載された魔石が実行可能な魔術は、「魔石に指定された番号の術式を入力し、実行する」こと。この魔術で導き出される術式は「対象の状態を完璧に直す」というもので……鎧が完膚なきまでに損傷すれば、レイスが魔石を持ってきて術式をぶち込みその他金属も継ぎ足して鎧を再生させるし、レイスが燃やし尽くされれば、鎧が魔石を叩き割って術式をぶち込み復活させる。
     故に、“涅槃の淵にて佇む駆骸”は最強のデュラハンである。
  • レイン・カルネート/“水底を射し徹す鏡”
     十二代目ダルトン・カルネートの曾孫。現在の位階はプラクティカス。数年前した失踪したセリーナ・ノルヴとは友人だった。
  • 《怪物》▮▮/“――――”
     デュラハン。死霊魔術師ヴィクトール・シェリルクロウ/“朗々と唄う稲妻”によって作成されたデュラハンであり、「必ずしも魔石を必要とすることなく、また生殖能力を保持したまま動くデュラハン」を目指して作成された最初にして最後のデュラハン。生きながらにして脳を取り出し、心臓を生きたまま切除して接続するなどなかなかの事をやり遂げた結果完成した最初の成功例。右腕だけが異様に長く、エルフの耳にドワーフの目、リザードマンの肌とゴブリンの脚にハルピュイアの翼など中核として複数の種族が組み込まれている。なんでも「すべての狭間に位置する完璧な知的種族=人間」を目指して作成されたのだとか。
     素体となったのはカルネート家の分家筋の魔術師チェルシー・カルネート/“芽吹く狂騒”。ヴィクトールはフィロソファス位階だった彼を生きながらに解剖し、その研究成果とその身に蓄積されてきた魔力燃料を全て奪っていった
     作成した当人である魔術師ヴィクトールが直後“黒い森”に追われて逃亡したため、現在彼は独自に魔導国家サンドルを目指し旅を続けている。

その他死霊魔術師

  • エメリッヒ・ローシェ/“凍てつ山にて荒ぶ雲”
     “唐櫃”の管理者。位階はメイガス。結構高名な魔術師であり、ケルツァス王国から購入した特注品の大型魔石を加工して“霊魂”の魔石に変えたうえで自分自身の精神に極めて酷似した疑似精神を導入・運用している。こうして生まれたほうのエメリッヒ・ローシェもまたメイガスクラスの死霊魔術師としての術式行使や事務仕事ができるため、“納骨堂”の管理者を行っている。
  • ナージャ/“朧に揺らめく蟹”
     “塚屋”の管理者。位階はメイガス。外来の死霊魔術師であり、同じく外来魔術師たちの教官として黒い森への入り口に“塚屋”を建設した。
  • フェルトーヴェン・シュラウドリンク/“燈る沼沢”
     “塔婆”の管理者。位階はメイガス。「自分自身の肉体を外部からゴーレムとして制御する魔術」を行使することに長けており、普通のリッチよりも無茶苦茶な形で加速したり打撃の軌道を変えたりする。つまり言えばカラテがとても強い。リッチとしての戦闘用素体を更に様々な外部パーツで強化しており、魔術で動く腕が複数本あったり足にサブとしての目があったりする。
  • 《擬人》エッダ/“星宿乱す稲穂の駆骸”
     “水鉢”の管理者。位階はメイガス。7人の魔術師の死体を用いて作られたデュラハンであり、7つの腕と7対ずつの手足を持つ。元々“黒い森”の構成員ではなかったために生前の魔法名は存在しなかったものの、だいたいプラクティカス位階に相当していたらしい。契約を反故にされてこんな酷い姿にした魔術師を探して復讐しようと思っている。
     水や風を操る魔術師がベースになっていることもあって血を用いる魔術が得意。身体の都合でほぼ動けない代わりに“水鉢”の中央部にある監視塔から血のゴーレムを用い各地域の監視を行っている。
  • エーリク・シュテイフェル/“赫灼たる鋼”
     大海獣ウォーテリスの心臓を求めてケルツァス王国の輸送隊を襲撃した死霊魔術師。位階はアデプタス。48歳という若さでありながら修士の手斧を手渡された天才的魔術師であり、ドネルツンの魔女の森に潜む《魔女》ニワ・アヴネラや陸獣と戦って尽く生き延びてきた凄腕の傭兵。スケルトンの大量錬成・並行運用の腕前は戦場で磨いたモノであり、骨の槍と盾を同時に作成しながら400体程度のスケルトンを並行して動かすほどの集団戦闘が出来、この上で魔術戦闘が可能である。
     リッチ化はしていないが自らの肉体を大きく作り変えており、大猿の骨へミスリルのボルトと魔石のメッキを施して作られた特製の魔術義手を2つ両肩甲骨あたりに装着している他足に空気と熱気を混合した“爆風”の魔石からなる足環を嵌め高速機動を可能としている。
     武器は管槍に改造した鎌槍、短弩、杖剣、それに魔術を使用するため骨の魔石を埋め込んだ腕輪と修士の手斧。スケルトンを作成するために骨のつまった袋と骨の投げ矢も保持しているが、事実上暗器のようなもので主力武器ではない。
     本来は海獣の骨と魔導ツタを用い、身体や強度を強化する魔術で補強しながら作成した大型スケルトン――自分で作った試作素体の“咽び泣く錫の駆骸”をデュラハンとして保持しているが《魔女》ニワ・アヴネラによって破壊されており、ケルツァスの輸送隊を襲った時にはギルド“マタドーレス”に雇われていたがウォーテリスとの戦いで死亡したリザードマンの戦士ドネツクの死体を中核に海獣の鱗や骨を組み合わせたうえで疑似意識を演算するための術式と“霊魂”の魔石を埋め込み作成した“寒空を泳ぐ鱗の駆骸”をデュラハンとして使役していた。
  • 殯部耶比古(モガリベノヤヒコ)/“黄昏に啼く風”
     王覓裳千足国から逃れてきたゴルヴェリヤの死霊魔術師。位階はジーレイターであるが、実際の術式行使能力はプラクティカスと同レベルにまで練り上げられている。
  • ロメオ/“燃え盛る水”
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  • ?/“墜ちる綿毛”
     帝国を襲撃した死霊魔術師。位階はイグセンプタス。血液を操る魔術を使う魔術師であり、その門下生たちも概ね同様の魔術を用いる。
     “水鉢”所属の魔術師の中でも武闘派の派閥を率いる古参のネクロマンサーであったらしい。とはいえ年齢の割に位階が低めであり、武闘派ネクロマンサーの復権やメイガスへの昇格も含めて帝国襲撃を実行した。血液を操る魔術の中でも特に血液の超臨界流体化によって血液循環を超高速化させる魔術を用いており、リッチとしての戦闘用素体の品質も上々。カラテ自体が無茶苦茶強い他、掌の真ん中に空いた穴から超高圧血流を噴出して超遠距離攻撃を行ったりする。
     デュラハン複数体を保持しており、その中には現在の自分の戦闘スタイルに合わせて改造した旧型戦闘用素体“吹き荒ぶ花弁の駆骸”なんかもある。
  • ?/“溶解する霜”
     帝国を襲撃した死霊魔術師。位階はアデプタス。血液を用いた奏術(ラーセシェマ)を用いる。
  • ?/“燦めく黒土”
     帝国を襲撃した死霊魔術師。位階はアデプタス。血液を体内にぶち込んで破裂させる術を用いる。血液をスライムじみて動かすことが出来、これによって複数の武器を同時に操りながら戦闘することが出来る。
  • ?/“重い霧”
     帝国を襲撃した死霊魔術師。位階はアデプタス。血液を気化させて相手の体内に入れ、幻覚を見せたり発狂させたりする魔術を用いる。血中の酸素濃度や諸々の成分を弄繰り回すことで強酸の血から神経毒の血、また低酸素血症を引き起こさせる血まで複数の血液を操作している。
  • 《穢れ腹の》ノルド・ハモン/“巡天する鏡”
     ドネルツン王国の元ワミシ。“水鉢”所属の死霊魔術師であり、位階はフィロソファス。バードラ教のワミシとしてゴーレムを操る魔術や大剣を用いた武術を用いるが、これに血液を操る魔術を混ぜ合わせることで更にネクロマンサーとして発展的な能力を発揮できるようになった
  • 《遍歴の》サイード・ノルヒェ/“濃墨に染まる霜”
     今からおよそ400年程度前にサンバグルア朝ドネルツン王国で暮らしていた死霊魔術師。位階はメイガス。半島の付け根あたりの海沿いの道にポツンと咲く魔導樹の桜に埋められるように融合しており、テンションが上がると勝手に花が咲く。
     ぱっと見愉快なおじいさんだが実際はグールに足を踏み入れたような死霊魔術師であり、その身に蓄えた魔力と幾重にも広がる樹冠で指示句を折り重ねた術式はバカにならない。
     彼自身はもともと武芸者であったが、戦闘で親友に助けを乞う敵を殺し、また同じ戦いで自らの親友を喪った時生命を殺すことに苦悩を覚え聖職者の道に入っていった。ただしどちらかと言えば修行者としての趣が強く、各地を歩いて回りながら様々な詩歌を作ったという。
     術は主に武芸者としての「樹木から武具を作る魔術」を用いており、“黒い森”式の口頭詠唱の他バードラ教における聖句を用いた口頭詠唱を使用したりする。“花立”で教えを受けた魔術師は大なり小なり彼の「樹木から武具を作る魔術」の基礎を学んでいることも多い。
  • ?/“泥土を往く轍”
     ■■王国を襲ったアンデッドの大群を率いていた死霊魔術師。位階は不明だが、少なくとも150年以上生きた戦闘用素体のリッチであるためどれだけ低く見積もってもイグセンプタス以上。ゾンビの運用に長けた魔術師で、自身の作り出したゾンビに死の呪い(いわゆるペスト菌や天然痘ウイルス、グラム陰性球菌など)を付与して攻撃するため、ゾンビに攻撃された人間もまた死体となって制御下に置かれるという最悪のループを行っていた。
     既に発狂してグール認定されており、討伐されている。
  • ?/“宵闇に惑う月”
     ドネルツンの沖合やサンデルの沖合の海域を廻遊する呪われし海賊船の船長を務める死霊魔術師。本名は不明だが、使用される魔術や一時“黒い森”に所属し70年かけてアデプタスまで上り詰めた後どこかへ出奔した死霊魔術師、ダーヴィット・デッケンバウアー/“宵闇に惑う月”ではないかとの予測がある。
     船は40mサイズのガレオン船であり、2層の砲甲板に38門、上甲板に8門の魔導砲と、艦首に6門2基の大型魔導砲を装備している。一応帆船らしいが推進機がわりとしてか船体下部の竜骨と融合させる形でイカやタコに似た大型海獣の死体を装着し、水面下で海獣の水属性の生体機関による魔法を発動させ発生した高圧水流を利用したハイドロジェット推進で移動している様子もある。このように極めて大型の艦船であるが、少なくともここ100年は港に入港した形跡がなく、海獣を撃退しながら無補給で大海原を彷徨い続ける事が出来ているらしい。
  • セリーナ・ノルヴ/“混凝に烟る灰”
     ラルミエスタ地域へと向かった死霊魔術師。位階はセオリカス。本来ならば20代までかかる学士認定を14歳で突破した天才魔法少女で、ゴルヴェリヤ特有の“石を高速で飛ばす魔術”を練り上げた相伝の「発射後に軌道が変わる矢尻」と「狙い通りの場所へ概ね届くスリング」を用いた遠距離戦が得意であった。そのため基本的には杖剣の他短弩を用いていたという(当時はまだムエールテセグラがなかったため、装填速度を除けば短弩のみでも充分であった)
     自らの魔術研究とゆくゆくの素体確保のため、魔力を受けて飛翔する翼を持つと言われる有翼人の身体を欲し、ノルヴ家に伝わるデュラハン“燦燦と煌き擾ぐ玻璃の駆骸”と共にラルミエスタ地域へ旅立ちそのまま消息を絶つ。
  • 《馘斬り役人》シャネア/“燦燦と煌き擾ぐ玻璃の駆骸”
     ノルヴ家に仕えるデュラハンの一体。古い時代のドネルツンにいた武芸者上がりの官僚の魂を保存し、デュラハンとして運用している。武芸を重んじるオグネリヤらしく大柄な肉体を好むため、如何に巨大な猿のような陸獣の筋肉と言えどもそのまま使うのではなく、更にその上に魔導ツタなど魔導樹の樹皮を重た上でゴムじみた肉の伸縮運動を用いる方式の外皮を用いた二層構造の四肢を作成することによって諸々の身体能力を強化している。
     魔法を使うような機能は保持していないらしいが、ドネルツンの古い鎧に似た金属製の鎧を身に纏い、馬をも断つほどの巨大な剣を軽々と扱って攻撃する。彼自身もデュラハンにはよくある粗暴な反逆者というよりは武と義を重んじる武官という趣が強く、「宮仕えから家仕えに変わっただけでやることは同じ」だと精神状態も良好。
     ノルヴ家の保有するデュラハンの中でも成功作に近い素体と魂であり、これを護衛として付けられたセリーナが家の中でも随分と期待されていたのがわかる。
  • 庭師のグェン/“極彩に輝ける塵”
     ラルミエスタ地域の麓、鉱石の森付近に潜んでいる死霊魔術師。位階はフィロソファスであったが、ここ数十年学会に顔を出していない。年齢はおよそ100歳程度であるがリッチ化しており、小型の魔石を核にして魔力を帯びた水や魔力を帯びた酸を用いた素体を用いる所謂レイス(レセリヤ)として活動している。
     ラルミエスタに居住する有翼人を研究素材にするためにやってきたものの、酸の池という環境的特性や生息するモンスターを研究素材にすることに価値を見出した結果自らの肉体を捨ててリッチ化しそのまま麓や中腹部にある酸の池などで活動するようになった。魔力生物エリミギアを水ごと育成させることで独自に養殖している。
     酸の池の水質調査目的で訪れた魔導学者や有翼人ないしモンスターの素材を確保するための冒険者たちを襲い、モンスターの素材を逆に奪ってハルミテ辺境伯や他の国家に密売するようなことをやっている。
  • 《括り獄門》ケイト・ライーザ/“泥炭湿す銅”
     プエルト・ブランコの植民市を1つ相手取って荒らしまわった死霊魔術師。位階はフィロソファス。十数年前にドネルツン王国で絞首刑に掛けられそうになっていた魔術師だったが、隠し持っていた魔石で脱獄し流れていくうちにマタドーレスへ所属することとなった。冒険者同士で発生した痴情のもつれによって殺人を犯してしまったため、ついでとばかりに目撃者全員消そうと決意。たまたま同日に暴れていた“嗤う紅葉”と協力する。
     リッチ化していないが、オグネリヤ特有のガタイの良さを生かしドネルツン製の大剣と杖剣を用いた二刀流の戦闘を行う……が、その特質は「ゾンビを偽装する魔術」を用いること。疑似精神を演算するための“霊魂”の魔石を用いる場合は当然として、自らの視界内であれば30体程度のゾンビに対して人体の重心移動を教科書通り正しく実行させることが可能である。またその他の魔石と魔力を用いるものの体温や瞳孔反射、発話の可否まで偽装することが可能であり、ガタイの良さに寄らない予想以上のテクニックを発揮する。
     化粧でごまかしているようだがフィロソファスとしての位階を保持していることからそれなりの年齢になっていることは確かであり、どうやらトラブルもそこで発生したらしい
     植民市を荒らしてゾンビを増やす係。
  • フィウム・サフェ・スカリャコフ/“嗤う紅葉”
     プエルト・ブランコの植民市を1つ相手取って荒らしまわった死霊魔術師。位階はアデプタス。有翼人の生体組織を確保するため同市におけるプエルト・ブランコの貴族の子息を誘拐し、たまたま同日に暴れ回っていた“泥炭湿す銅”と協力する。
     既にリッチ化しているもののデュラハンは保持しておらず、魔獣アングィラキエスの脚の筋肉などを用いた戦闘用素体と自らのゾンビを作る魔術によって作り出した強化外筋肉、それに鍛え上げた自身のカラテのみで戦う。その膂力はたとえ硬い鉱物の甲殻に覆われた魔獣であったとしても叩き潰せるものであり、身を包む死肉は分厚く衝撃を殺す。ゾンビ作成よりもゾンビ操作の方が得意であるらしく、ネクロマンサーのくせにゾンビやスケルトンを用いた集団戦術を行うことなく単独での強襲や単独での魔獣討伐を好んでいる。
     沢山作った死体を元手に超巨大ゾンビを作り出す係。
  • 来蒼名(ラオ・リュンチー)/“神気喰らいし迦陵”
     東方に位置する浄国からやってきた死霊魔術師。位階はイグセンプタス。いわゆる尸解仙であると同時に自らも戦闘用素体を操るリッチであり、“霊魂”の魔石を折り重ねることで作られた特製のナイフを用いて「相手の精神を破壊し、空いた位置に自己の精神を移す」という魔術を用いる。
  • ドミトリー・クラソートキン/“欄楯焼べる莢蒾の駆骸”
     元“黒い森”の死霊魔術師。当時の位階はプラクティカス。手先は器用だったが術士としての才能が無く、また魔力への耐性が弱かったため病気がちだった。親友のサルコフ・ラヴロチェンコ/“暁に白む笛”が自分を遥かに通り越して修士認定された日、ついに精神を魔力に犯されて発狂。このまま無為に魂が消えるよりはラヴロチェンコのデュラハンとして運用してくれと懇願し、彼の手斧によって死亡。魔力に弱かった部位を全て入れ替える形で素体を組み替えデュラハン“欄楯焼べる莢蒾の駆骸”として運用される事となる。
     その後“暁に白む笛”は浄国にて死亡。“欄楯焼べる莢蒾の駆骸”はその制御魔術が機能を喪い自由の身となる。しかし魔力を確保できない状況下では完全に機能を喪失するのも時間の問題であった。ここで“魔術師自らが死体の魂になって死体を動かしている”というもの珍しさから尸解仙の一人姚太白(ヤン・ダーバオ)に見いだされ、尸解仙としての修行を積むこととなる。
     得意な魔術は「ゾンビ作成と運用」……だが、その才能は正直ないに等しい。しかも素体が多少強めとはいえ、彼は近接格闘が極めて弱く、杖剣術も正直そこらのジーレイターに負ける程度。魔力を溜め込みやすい体質だが魔力への耐久値が低いので魔力量も微妙。護身用のムエールテセグラと短弩がメインウェポンで、ついでにゾンビやスケルトンを5体程度操りながら戦闘をするくらいしか能が無い。これの欠点を改良するため、尸解仙として修業している彼は魔術のお札を用いている、これミスリル墨汁で記された術式により、ペタッと貼って動かすことにより高い機動性と操作魔力量の減少を実行することに成功している。簡単なゾンビをbot式で自律操作するとき、古い木の枝と“霊魂”の魔石をぶっさしてから動かすというタイプがあるがこれの類型であると言える。
     これらのように実のところ術式の編纂に関しては中々の才能を有しており、ほぼ外に出ていなかったと言える彼が、辛うじてであったとしてもプラクティカスというそれなりの位階を得ることが出来た理由はまさしく骨の魔石や“霊魂”の魔石の小型化、そうして術式改良の点においてのこと。骨の短弩やムエールテセグラに小さな骨の魔石製の鏃をねじ込むことで、突き刺さった相手の体内に対して骨を突き出す事が出来る。とても痛く、また致命的。ただし弾丸が刺さらなければそれまでなので、基本は目や口腔を狙って撃っている。
  • ジャミル・ツェスマン/“碧藍へ潜る鰓”
     死霊魔術師。位階はフィロソファス。結構な位階の高さであるものの“霊魂”の魔石を作成し術式を織り込むことが結構苦手な術者だったため、リッチ化が困難であったと同時に魂入りアンデッドはおろかbot式アンデッドすらも用いることが難しかった。そこで彼は自律型ゾンビが基本な他のデュラハン達と比べると直接戦闘が多少困難になるが、その分デュラハンに魔術師と同等の機能をつければ良いという発想に至り、その手法としてケルツァス王国に伝わる奏術に目を付ける。
     彼自身は魔導研究者であるが、同時にマタドーレス第三軍に所属する冒険者でもあった。そこでそれなりに荒稼ぎをしていたのだが、奇しくも“泥炭湿す銅”と“嗤う紅葉”による△△事件が発生。完全な外部犯行者である“嗤う紅葉”はともかく、“泥炭湿す銅”という仮にも冒険者の一員であった者が引き起こした大事件によってネクロマンサー不信を引き起こしたマタドーレスによりリストラを喰らう。折しもオークションで財産をスッていた彼は生活が立ちゆかなくなり、買い込んだ研究資材と共に貧民層へ転落。
     偶然出会った梅毒持ちの夜鷹(いわゆる娼婦)にして脱走奴隷の少女と共にケルツァスを目指して旅をすることになる。
     ケルツァス国内で死亡。
  • シェリア/“凍える湖面に這い臥す駆骸”
     内臓を全て摘出し、代わりに水力仕掛けの奏術用オルゴールを埋め込んでいるデュラハン。死霊魔術師ジャミル・ツェスマン/“碧藍へ潜る鰓”の手で「機械仕掛けの魔術行使人形」の技術を利用することによって作られた特製のデュラハン。
     シェリア、ケルツァス語で隷属を意味する言葉で呼ばれるこのデュラハンは、何事にも恵まれなかった死霊魔術師“碧藍へ潜る鰓”が作り出した、粗悪で粗雑、最低品質の“傑作”である。
  • ツァン/“払暁を祓う露”
     位階はプラクティカス。死体の運用を専門とした術師であり、近場の死体を操って魔石を埋め込み、自身の肉体を魔力源にして単一の魔術を使えるほどの性能を誇る即席のデュラハンを作成する腕に長けていた。
     即席デュラハン10体に数十体のゾンビの総力戦で村を荒らしていた超魔戦士を討伐するものの、回収してその場で解体しようとしたとたん爆死。
  • ?/“酩酊を浚う蟒蛇”
     サンドルを襲ったネクロマンサー。位階はプラクティカス。サンドル国内のとある派閥に雇われ、これを襲撃した。その後適当に臨時のデュラハン代わりであるゾンビを倒され撤退。報酬を得て○○王国へ逃れていった。 
  • ラノエ・ファーツフリーデ/“険峻なる望楼”
     位階はセオリカス。寄生虫を用いる死霊魔術師の家系であり、魔力生物エリミギアの成虫をゾンビへと変えたデュラハン/“満天を編み込む筐の駆骸”を継承している。これによって魔力量が多く、多少カラテが強い。
  • ?/“響胴の夢”
     死霊魔術師。位階はフィロソファス。
  • ?/“轟く陰霖”
     死霊魔術師。位階はセオリカス。自らの力量のなさをカバーするために「スケルトンを用いた魔導砲」と言うなかなかのアイデア商品を作り出してきた。熱と土壌などの魔石で肉骨粉の発酵を促進させて発射する方式であり、一発撃てば任意の方向に骨が破砕・破裂して爆散するが、代わりに巨大な頭蓋骨の砲弾を撃ちだし直接押しつぶしたりエナメル質の散弾をばらまいたりすることが出来る。
  • ?/“聳える星”
     死霊魔術師。位階はプラクティカスだが、それは学会に顔を出していないため。特にゾンビに関する研究を行っている。そこだけなら普通のネクロマンサーなのだが死体の死後硬直を嫌うのか一々なんか一般人を犠牲にしていく事に躊躇いがない魔術師であり、「どこまで人の形を失ったゾンビを作れるのか」や「どこまで一つの肉体に精神が宿ることが出来るのか」などを研究する事が多いという性格の悪さも含めて、一般常識に当てはめればとても悪い魔術師に含まれる。
  • デュラハン/“薄曇に陰る汞の駆骸”
     死霊魔術師?/“聳える星”が作り出した実験的デュラハン。誘拐した○○王国の兵士たちから魂を抜き取り、“霊魂”の魔石に内包した後特製の巨人型デュラハンに埋め込んだ物。脚部や腰部には大量の人の脚や腕のようなものが補助脚として存在する。
     「軍の一部隊で魔物にすらも勝てる」と豪語した○○王国の兵をその家族や郎党ごと無残な姿に変えたことで、一躍有名になる。
  • デュラハン/“紫煙燻る梹榔の駆骸”
     死霊魔術師?/“聳える星”が作り出した試製デュラハン。男女二人の魂を抜き取り、腕を2本と頭を2つ持つゾンビに詰め込んだ。
    「一人で銃の発射と弾込めが出来るゾンビが欲しい」とのことで作られたが、毎度毎度精神が崩壊するので諦め適当なbot形式の疑似精神を詰めてお茶を濁している。
     この素体単体での犠牲者数は2+2*n名。実にn回もの再結合を繰り返しており、これが殺害した人数は更に多く数百人単位であると見積もられている
  • デュラハン/“幽玄を伝う絹糸の駆骸”
     死霊魔術師?/“聳える星”が作り出した実験的デュラハン。これは人間の形をどこまで捨てたデュラハンが作れるのか――という実験的な作品であり、火やら光やらを混ぜた魔石と置換した骨を持つデュラハンで足の先から頭――そして腕の先に到るまで2本の骨が貫いているという恰も一本の矢や槍にも似た形をとる。これは人間のアレやコレやを魔力にしてロケット噴射しながら音速を超えて飛翔し、城壁などに直撃することが出来る。
     “聳える星”としては魂魄の魔石を用いて誘導性能を持たせることも考慮していたようであり、改良型の“幽明引き裂く絹糸の駆骸”は数百人規模の犠牲者と引き換えに魔術兵器として○○王国へ提供された。
  • デュラハン/“雷鳴轟く盃の駆骸”
     死霊魔術師?/“聳える星”が作り出した試製デュラハン。これは実戦的な使用を求められて作成した作品であり、それなりに強度もある。骨密度を鋼鉄を超えるレベルにまで高めた超高密度の骨を持ち、生体電流を増幅させたり圧電効果を使ったりすることで帯電しこれを身体に放つことが出来るほか伝導率の高い髪の毛を使うことで周囲を感電させることも可能。
     水分の魔石と合わせて使用されたときは大被害を出した。
  • デュラハン/“愁眉焼き尽く明星の駆骸”
     死霊魔術師?/“聳える星”が作成した実験的デュラハン。髪の毛や体内の脂肪を燃焼させて燃えることが出来る。本来の内臓部分を摘出し専用の貯蔵庫があったようで、体内で爆薬を作れないかと試行錯誤したらしい。とはいえ結局人ひとり分使っても少量の黒色火薬くらいしかできなかったので失敗作扱いされ廃棄された。
  • プィスブクェ(pYs4bqe-!!$%!$)/“頑健な革”
     ホムンクルスの死霊魔術師。位階はセオリカス。第二身分出身。自分自身のルーツを探るために出奔し、サンドルや帝国を巡った末に黒い森へたどり着いた。自らも人造生命体であるがゆえにスケルトン作成は得意だがゴーレム使いとしての経験が多すぎるせいでより軽く繊細さを要求されるスケルトン操作は苦手。まだ寿命に達してはいないが、いずれ自らの子孫なども含めてホムンクルスにしてリッチである全く別種の生物種を作り出そうと頑張っている。
黒い森/暗靆たる刀樹の墓所
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国旗
[添付]
国章
国の標語:なんか書く;(知識は常に死と共にある/“痴愚の裡に隠れし叡智は、凌遅の肉もて千々の骨食み、地に満つ血潮に埋もれる。知は力なり”)
地図
[添付]
使用される言語死霊語,各種族・国家の言語
首都“霊廟”
最大の都市“霊廟”
総人口n人
政治体制立憲君主的無政府主義/封建領主化した学閥による緩やかな連合制
国家元首12代目ダルトン・カルネート/“昏き闇に浸されし骸”
国家元首の称号学長/“仄暗き知を覆う墓守”
国教魔術師優遇