スーパーソニックチーム

この時期SSTバンドに注目された活動に「旧作のアレンジ化」というのが有った。セガはコナミ等と違い、GMO時代に1曲たりともアレンジものを送り出していないだけに、新作リリースの度に既発音源のアレンジ化を期待された訳である。今回収録された「アフターバーナー/Final Take Off」「アウトラン/Splash Wave」は、当時掲げていた「デジタル世代のバンド」という惹句が災いしたのかピコピコしたシーケンスが耳に付く。バンド演奏に拘る代りにオリジナルから遠ざかってしまっても仕方がないとするのか、シンセの打ち込みで代用してもいいからオリジナルのテンポや雰囲気を再現するのか。アレンジバージョンの宿命に後者が選択されたのだろう。

一方「テーマフロム・スーパーモナコGP」は上記の2曲で諦めた「バンド」という形を突き詰めた楽曲になっている。レーサーに捧げる鎮魂歌か、口笛にも似たメロウな楽曲はSSTらしからぬ作風だが、国本佳宏の指定だという途中の激しいアドリブバトルへの移行や、音の隙間を生かしたアレンジメントはバンドとしての一つの結論を見せたように思う。尚、メガドライブ版の発売時にCMで使用されたが、詠い文句の高速3Dスクロールには全く不似合いであったことを付け加えておく。

「ターボアウトラン/Rush A Difficulty」は殆ど野呂一生のソロ作。アレンジ/ギター/プログラムと全て野呂仕事でSSTは無関係。「テトリミックス」は、権利争いの果てに苦肉の策で付けられたレコード用のタイトル。題材は勿論「テトリス」で、アレンジは田中モンチ率いるDJ集団M-I-Dが担当している。ヒップホップを敷いて女性ボーカルなどのサンプルを挿入しただけで、目新しい感じも無ければお色直しをした印象もあまり無い。後にクラブ/ヒップホップカルチャーとゲーム音楽が接近し、やれリミックスだテクノだイベントだと盛りあがりを見せるが、この時期このリミックス作業はあまりに先を行きすぎていて、生理的に受け付けない部分もあったかも知れない。が、それ以上にリミックス素材として敷居が高いように思う。M-I-D側も随分戸惑ったのではないだろうか。

「効果音がメインで作曲の仕事がなかなか回ってこない」と言う高木保浩のターボアウトランは「名作の続編」というプレッシャーをはねのけるハードロックの会心作。セガにしては珍しく骨太な演奏で、高木氏のプログラム技術の程が伺える。師弟関係では「Hiro→高木→光吉猛修」という流れだそうだが、氏だけが蚊帳の外の印象。他にはタイコを軸としたばた臭い編成で土俗的な雰囲気を醸し出した「ゴールデンアックス」が面白い。くるくる回転しながら出てくるオープニングタイトルとキラキラしたシーケンスパターンのリンクぶりは見事。中林亨は地味ながら職人的な仕事ぶり。

この後、何枚も発表されるSSTのアルバムは主軸タイトルがは弱体化し、アレンジばかりに注目が集まるようになる。決して悪い出来ではないのだが、俯瞰して見るとこの「スーパーソニックチーム」が最もアレンジ/オリジナル/新旧作のバランスが取れており、名盤と呼ぶに相応しい。

01 Final Take Off/アフターバーナー(Arrange Version) 作曲/Hiro(川口博史/Hiro師匠) 編曲/SST.BAND
02 Splash Wave/アウトラン(Arrange Version) 作曲/Hiro 編曲/SST.BAND
03 Theme from スーパーモナコGP(Arrange Version) 作曲/Hiro 編曲/国本佳宏
04 Rush a Difficulty/ターボアウトラン(Arrange Version) 作曲/高木保浩 編曲/野呂一生
05 テトリミックス/テトリス(Arrange Version) 作曲/川上泰弘 編曲/MID(山田国夫＋島田ゆきお)
06 テトリス(Original BGM) 作曲/川上泰弘 (PN:Y.K) 　
07 スーパーモナコGP(Original BGM) 作曲/並木晃一
08 ターボアウトラン(Original BGM) 作曲/高木保浩＋Hiro(Who are you/Checker Flag) 　
09 ゴールデンアックス(Original BGM) 作曲/中林亨　

表記：Super Sonic Team -GSM SEGA3-
型番：PCCB-00009
補足：高木保浩(PN:ケロタンYAS＝テニ子テニ夫＝DC.HAMMER。他にもある模様)
発売：1998-10-21
開発：セガ
機種：アーケード

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