ファミコンミュージック

Last-modified: 2021-07-11 (日) 08:52:16
 

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同じアルファレコード内のYENレーベルから、ゲーム音楽事業を受け継いだのがG.M.O.レーベル。(アルファはレーベルに「~レコード」と名付ける慣習があり、厳密にはG.M.O.Records。同様にYENも正確にはYEN Recordsである。) 任天堂ブランドからリリースされたファミコンゲーム音源を中心に、国本佳宏がシンセサイザーを用いて演奏しなおしたアレンジバージョンを2曲新録している。国本はG.M.O.に於いて独占的にアレンジ版を手がけていくことになるが、プロデューサー小尾一介との縁はYEN時代に遡る。上野耕路が在籍したバンド「8 1/2」の追っかけの後、逆に見初められてゲルニカのボーカルとなった戸川純の1stソロ「玉姫様」(1984)のディレクターを務めていたのが小尾で、国本はそこでアレンジやシンセシストとして少曲ながら参加。翌1985年の「ザ・リターン・オブ・ビデオゲーム・ミュージック」でも上野と共に小尾に呼ばれ、今作へ繋がっていく。

少し逸れるが、小尾はゲルニカではエグゼクティブPに留まり、ディレクションは有賀恒夫の助手をしていた篠崎恵子が行なっている。篠崎は細野晴臣ソロ、細野プロデュースでコシミハル、YMOプロデュースの新人・小池玉緒などYMO周辺事業を手がけたのち、YMOのマネージメントを務めていた大蔵博のミディレコードへ移籍。そこでは矢野顕子やEPO、劇場アニメ「オネアミスの翼」劇伴を、EPICソニーに移籍して鈴木祥子、Qlairのディレクターを務めたのち、株式会社バシリカを設立。映画音楽の世界で活躍している。同じ映像音楽でも小尾とは道を分けたが、ミディ時代の1986年に坂本龍一のラジオ番組「サウンド・ ストリート」内の音源投稿企画を取りまとめたアルバム「デモテープ1」をリリース。このアルバムにアマチュア時代の岡元清郎(SEGA) 佐々木朋子(現表記:ササキトモコ/SEGA)の作品が収録されており、(半ば無理やりだが)かろうじてゲームと接触している。

国本アレンジの根幹はニューウェーブにある。機械音楽であるゲーム音楽と相性が良く、独善的な味付けをしない原音コンセプト重視の手法は、好意を持って迎えられた。ゲーム音楽レコードの黎明期はアレンジ版への目が厳しく、「ゲームのイメージから離れた装飾は必要無い」という意見が支配的で、「素材をいかに面白く調理したか」という観点に評価の目が向けられてゆくのは、後年のリミックス文化(若しくはもっとそれ以降)を待たねばならない。

作曲者のクレジットはおろか、解説やゲーム画面すらまともに掲載されていないライナーノーツは「不親切」とネガティヴに決めつけることも出来るが、セル画満載のアニメサントラ装丁とは一線を画しており、記号化されたジャケット含めスタイリッシュを堅持。こういった小尾のクールなパッケージングセンスは、ゲーム音楽レコードの1つの指標として波及してゆく。(rps7575)

 

 

ゲームミュージックの専門レーベルとしてアルファレコードから設立されたGMO(ゲームミュージック・オーガニゼーションの略)の記念すべき第一弾がこれ。初期任天堂のファミコンゲームのBGMが収録されている。

さて、この手のゲーム群はいわゆるファミコン世代と呼ばれる20代前半の人間にとっては涙が出るほど懐かしいといった懐古主義的な印象になりがちなのだが、ドッコイBGMは今聴いても面白味のあるものばかりが揃っている。特に「レッキングクルー」と「バルーンファイト」は逸品で、前者はグルーヴ感溢れたベースラインがたまらなく心地よく、後者はノイズ+音源を巧く活用しパーカッシブな音色を作ることに早くから成功している。

ところでこのCDの最終トラックは「ゼルダの伝説」で、オープニングのFM音源の音が原曲とかなり違っているのだが、これは音を勝手に後から足したからこういう音になってしまっているのだろうか?(文:鷹丸氏)

 

 

01 スーパーマリオブラザーズ 作曲/近藤浩治  
02 バルーンファイト 作曲/田中宏和  
03 バルーントリップ(バルーンファイトArrange Version) 作曲/田中宏和 編曲/国本佳宏
04 ドンキーコング 作曲/兼岡行男  
05 ベースボール 作曲/兼岡行男
~ サッカー 作曲/近藤浩治
~ ゴルフ 作曲/田中宏和
~ テニス 作曲/兼岡行男
06 レッキングクルー 作曲/田中宏和  
07 スーパーマリオブラザーズ(Arrange Version) 作曲/近藤浩治 編曲/国本佳宏
08 ドンキーコングジュニア 作曲/兼岡行男
09 エキサイトバイク 作曲/中塚章人
10 マリオブラザーズ 作曲/兼岡行男  
11 ゼルダの伝説 作曲/近藤浩治

 

 

型番:28XA-69
発売:1986-5-25
録音:寺田康彦、野島英明(助手)
レコーディングスタジオ:LDK Studio、ALFA Studio A
プロデュース:大野木宣幸(デジタル・エンターテイメント)、小尾一介(アルファ/G.M.O.)
開発:任天堂
機種:ファミコン

 

 

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