シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント
- 魂魄妖夢
- 「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺す――私の心の奥から生まれた虚像よ。お前は殺仏殺祖と名乗るがいいでしょう」
刃鳴散らせ婀娜花~トラジディ・殺仏殺祖解脱戦
エスカ-地獄にて屍山血河を築くトラジディ、殺仏殺祖の攻略解説。
攻略手順
- まず、エスカ-地獄は複数のエリアで構成された複雑に入り組んだ巨大なダンジョンである。殺仏殺祖はその全域のあらゆる状況にランダムに出没する。
運が悪い――あるいは良いと、地獄の入り口付近で遭遇することもある。最悪の場合、何らかの戦闘中に乱入してくる。
そして最悪中の最悪の場合は――地獄に出現するトラジディとの戦闘中に乱入する。
このトラジディの厄介な特徴は「解放」条件を満たさなくてもHPが変動しないこと――つまり10万近いHPを保有する。トラジディとの戦闘中に出くわしたら目も当てられない。
通常戦闘や普通に遭遇した場合は逃亡可能なので一か八か逃げれる。しかし「解放」条件を満たしたトラジディとの戦闘中はそれも叶わない。
このような特性なので、地獄を本格的に探索したい場合はまず殺仏殺祖の「解放」を目指そう。
- クエスト「殺仏殺祖調査任務」の発生条件は殺仏殺祖と遭遇すること。
この時点では戦う必要はなく、マップ上のシンボルだけでよい。エリアを行ったり来たりしていると何れ出くわす。
「殺仏殺祖調査任務」の進行条件は「殺仏殺祖と戦闘し、勝利する」こと。その上で「PTにさとり、こいし、神子のいずれかが入っている」、「PTに妖夢が入っている」ことで進行状況が進む。
上の進行状況の達成目標は殺仏殺祖に勝利する度に提示されるが、最初から全て満たした状態で殺仏殺祖に勝てば、調査任務を一気にコンプリート出来る。
灼熱地獄エリアに出没する殺仏殺祖はインフェルノの地獄の業火を浴びて消耗しており、HPがかなり減っているので戦うのであれば灼熱地獄エリアがいい。……無論インフェルノがリスポーンするまでの間に、である。
ただし、長い道のりである殺仏殺祖の無差別な跳梁跋扈に巻き込まれる可能性も当然ある。時間短縮を取るか、リスク軽減を取るか。どちらがいいかは好みになるか。 - 余談だが最深部である灼熱地獄エリアに行くには、エメラルドが出現する橋を通る必要があるが、灼熱地獄エリア前にあるポータルに1回アクセスしておけば以降はファストトラベルできるのでスルー可能。
VS.殺仏殺祖(通常)
- BGM:東国生死流転伝
どのENDかは不明だが、妖夢を核としたと思わしきトラジディ。
常時2回行動。HPは10万前後でSTR、DEX、AGIが高い。二刀流なので通常攻撃が2回ヒットする。
戦闘開始と同時に「明鏡止水」を宣言し、最初のターンでラストスペル『人鬼「未来永劫斬」』と『空観剣「六根清浄斬」』を立て続けに使用してくる。
流石にダメージ倍率は控えめになっているが効果はプレイアブルの時と据え置きなので単体のリレイズ除去+全体ディスペルのダメージという苛烈なご挨拶をいきなり叩き込んでくるのだ。
以降は低威力だが先制効果のある範囲攻撃『光符「冥府光芒一閃」』やランダム多段攻撃『彼岸剣「地獄極楽滅多斬り」』などを使用。
まず、最初のターンの攻撃を盾役がカバーするのが最優先。以降も先制攻撃を多用するが、これは回復タイミングが測りやすいということでもある。
MNDが低く、魔法に非常に弱いのでダメージソースとして有用。
さとりたちをPTに入れていると、殺仏殺祖に対するある事実が発覚する。
- 古明地さとり
- 「あのトラジディは妖夢さんのもの、であるのは間違いないのですが…………見えないんです」
- 古明地さとり
- 「……今までのトラジディの心中から伺えた凄惨な過去や失敗が」
さとりたちが読み取ったのは、大切な人を護り、愛する人と結ばれ、競技としての剣技を極めた女性剣士の栄光の記憶。未練や無念とは縁のない幸せな結末。
そして、妖夢をPTに入れている場合、戦闘勝利後に殺仏殺祖が恨み節のように語る。
――群れながら袋叩きする狩りがお前の目指した剣の涯てなのか、魂魄妖夢。
さながら、妖夢への挑戦状の如きその怨嗟に、妖夢は何かを悟ったような表情を浮かべるのだった。
- 魂魄妖夢
- 「確かにあれは私のトラジディのようです。今ここにいる私自身の……」
- 西行寺幽々子
- 「今のあなた……? 今の妖夢に悔悟があるというの?」
- 魂魄妖夢
- 「……ええ。一瞬、よぎる程度の悩みでした。ですが、煩悩の犬は追えども去らずというのも事実のようです」
――伴侶を得て、妖夢は伴侶と共に互いを磨きあげ、そして先代に並ぶとまで謳われるほどの達人となった。
剣道、居合――"刀"を扱う技術、競技の頂点。地位と名誉を得てなお、彼女の心は曇ることはない。
僅かに心残りはあった。
剣道は、剣道だ。居合も技術の披露にすぎず、何れも実戦ではない。
競技において、異能はスポーツの一部として扱えるのだろうか? 少なくとも剣道では否だった。半霊の分身は剣道のルールに反している。弾幕など以ての外。
学生のみぎり、心を尽くした幽々子を護るために剣を振ったのが、剣士としての妖夢の最盛期だった。
未熟ながらもその心は死地に立って命を張る武士だった。
――今はどうだろうか。剣の冴えは先代である祖父に迫るとまで言われるようになった。
だが、その冴えを実戦で披露する機会はあるのだろうか? 未熟な剣士だった学生で垣間見た――肌がひりつくような戦いの場で振るう機会は?
そういう未練が一瞬だけ、一度だけ足を引いたことはある。
だが、妖夢はそれを気にすることはなかった。
伴侶と共に歩み続ける日々に、貴方と共に歩んでいるんだと胸を張って言える幸せに嘘はないのだから。
- 魂魄妖夢
- 「――捨て去った虚像が、忘八となって肉を得たのがあのトラジディなのでしょう」
調査任務コンプリート後、殺仏殺祖の無差別の乱入は止まり、エスカ-地獄の辻にて殺仏殺祖が待ち受けるようになる。
妖夢をPTに入れ、話しかけることでイベントが進行する。
地獄の辻にて、"それ"は妖夢を待ち受けていた。
仲間に見送られ、剣士はただひとり逢魔が辻を迷いなく進む。
相対するは、色のない野太刀と錆びついた脇差しを手にした剣鬼。その表情は、赤黒く染まった編み笠に隠され伺えない。
剣鬼はゆらありと歩を進め、呻くように語る。
- ????
- 「来た、か……独りで挑むこと、すなわち……我が渇望を……認めたな……」
- 魂魄妖夢
- 「真人たらんとするならば、己の中の仏を斬り、己の中の祖を斬るべし」
- ????
- 「――何?」
- 魂魄妖夢
- 「仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺す――私の心の奥から生まれた虚像よ。お前は殺仏殺祖と名乗るがいいでしょう」
- 殺仏殺祖
- 「……"己れこそ、己れの寄る辺己れを措きて、誰に寄る辺ぞ、よく調えし己れにこそ、まこと得難き……寄る辺をぞ得ん"。私を、貴様自身の煩悩と切り捨てるか」
解脱のために切り捨てるべき虚像――そう受け取ったのか。
殺仏殺祖と名を与えられた妖夢のトラジディは、殺意を纏いながら刀の鯉口を切る。
それを目の当たりにしても、妖夢の気配は乱れることはない。
- 魂魄妖夢
- 「いいえ、お前も私の一部であることは否めません。
――真剣とは鞘から引き抜かれぬからこそ泰平。"その時"まで闇雲に引き抜くべきものではない」
妖夢は困ったように――しかし、不敵に口の端をあげる。
- 魂魄妖夢
- 「お前の気持ちもわかる、殺仏殺祖。私は剣士としての畢竟をのたまうには未だ若輩だが……」
――魂魄妖夢が、音もなく刀を引き抜いた。
- 魂魄妖夢
- 「――今の私の全てを出し尽くす戦いは、今ここにしかない」
相対するは剣の涯てを屍山血河の中から見出した修羅。
気付きすらしなかった己の未練を果たすため、剣鬼となった半身。
今この瞬間は、剣刃が鳴り散らす剣戟こそが全て。
――編み笠の下から殺仏殺祖が笑う気配がした。
見届け人のもと、両者が構える。
- 殺仏殺祖
- 「名付けられた名を敢えて名乗るッ!
魂魄流剣士、殺仏殺祖――! 血潮の滾りの儘に!」
- 魂魄妖夢
- 「是非もなし……!
斯くやあらん! 魂魄流剣士……魂魄妖夢!」
いざ参る――ッ
VS.殺仏殺祖
- BGM:桜花散華
トゥルーエンディングを迎えた妖夢の僅かな未練を核としたとトラジディ。
凄絶な殺し合いだった調査任務での戦闘とは異なり、妖夢と殺仏殺祖、両者だけの果たし合いのイベント戦闘となる。
殺仏殺祖とのイベント戦闘は概略だけで言えばじゃんけん勝負。
イベント戦闘で妖夢と殺仏殺祖がコマンドで使用できるのは「通常攻撃」「WS」「防御」のみ。
この時、殺仏殺祖が通常攻撃を使用した際にWSを選んだなら"剣舞"が、殺仏殺祖がWSを使用した際に防御を選んだなら"撃剣"が、殺仏殺祖が防御を使用した際に通常攻撃を選んだなら"鍔迫り合い"が発生。この時、更に追加でスペルカードを1つ選び、使用することができる。それ以外の組み合わせはハズレ。妖夢がダメージを受け、あいこならお互いがダメージを受ける。
そして勝利条件は己の力を出し尽くす――用意されたスペルカードを全て使用すること。
殺仏殺祖との会話、言動から次に行なう行動はある程度予測が可能。そしてHPが尽きるまでにスペルカードを全て使用するとコマンドからラストワードが直接使用できるようになる。ラストワードを殺仏殺祖に打ち込めば勝利だ。
真剣の果し合いにおいて、何が違いか何が事実か。
それは勝敗のみが知る――
――錆びだらけの脇差が根元から砕けた。殺仏殺祖が崩れ落ちる。
互いに無傷ではない。荒い息を吐き、死力を尽くしたのは明白。
- 殺仏殺祖
- 「……我は、妖夢は……悔しかった、恐ろしかった……。心技体、ともに今が絶頂……。
それを活かせぬまま、老いて、衰えることが……」
- 殺仏殺祖
- 「……剣士としての絶頂は、あの青き春の彼方に置き去りにしたまま、であることが……。
だというのに、私は、それを見ぬふりをすることが……憎かった……」
――回顧するように未練を吐露する殺仏殺祖に、妖夢は静かに伝える。
- 魂魄妖夢
- 「――真実は眼では見えない、耳では聞こえない、真実は斬って知るもの」
- 殺仏殺祖
- 「先代、魂魄妖忌……お師匠の、言葉……か」
- 魂魄妖夢
- 「――然り」
- 殺仏殺祖
- 「魂魄、妖夢……未練という半身を斬った先に、お前は……どのような真実を知った?」
妖夢は、迷いなく答える。
仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺す。心の奥に眠っていた渇望と向き合い、見出したもの。
魂魄妖夢にとっての真実は。
- 魂魄妖夢
- 「――私にとっての幸いは、今も昔もただひとつ。
修羅となった私を斬り、剣士として仕上がった鏡像を斬り、未練を斬り……」
- 魂魄妖夢
- 「――最後に残ったものは、彼の姿と私の姿よ」
――最初から変わることなく、彼女にとっての心底唯一はそれだった。
彼女に寄り添う半霊の如く、互いに添い、共に歩み合うもの。
当たり前のように思っていたものを、妖夢は再び見つめ直した。
- 殺仏殺祖
- 「ふ、ふふふ。過去しか見れぬ未練では見据えられぬ先……それが……あたり、まえ、か……」
可笑しそうに笑みを零しながら、殺仏殺祖は野太刀――灰色の両手刀を差し出す。
頷き、妖夢はそれを両手で受け取る。
- 殺仏殺祖
- 「お美事……!」
――殺仏殺祖は称賛と共に、赤みがかった桜吹雪となって散った。
遠くで健闘を称賛しつつも心配する幽々子の声に笑みを浮かべて、妖夢は残心した。
- 魂魄妖夢
- 「――剣士としての絶頂、か」
――人生はまだまだ長い。まだ麓に立っているかすら怪しい。
- 魂魄妖夢
- 「生きている限り、道は遠く長い。
それでも幸せを噛み締めながら進むことはできる。
――一緒に歩いてくれる人たちがいるなら、猶更」
去らば、我が未練よ。我が渇望よ。