イベント/月兎之悪夢(エンドオブペイン)

Last-modified: 2023-05-08 (月) 01:10:23

シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント



古明地さとり
「……あのトラジディの思念が読み取れました」
「恐怖……拒絶……自己嫌悪……」
「あれの正体は……鈴仙さんの心……です」


射命丸文
「壊れた自分の心を守るために、逃げるのではなく狩猟する側に回った兎……」
「名付けるなら――"ハンツマン"、でしょうか」


ニャルラトホテプ
「喝采せよ! 喝采せよ! 何の意味もない努力の果てを! 未来に飛んだ兎が堕ちて穢れたその果てを!」
「挙げ句、手を差し伸べたものすら穢れが移り――嗚呼無情(レ・ミゼラブル)!!
「だが、これぞ真理と知るがいい、飛んだ兎は、落ちるが定め――救いも赦しもありはしない!」
???
「落ちた後は、歩くだけよ」
「私のミリエル司教、私を赦し続けてくれた人」
「いつか、二人で歩く日まで」
「亀のように緩やかに、けれども止まらずに、約束されたゴールまで」


月兎之悪夢(エンドオブペイン)~トラジディ・ハンツマン覚醒戦

エスカ-ゴールドソーサーの各所を封鎖するトラジディ、ハンツマンの攻略解説。

攻略手順

  • ハンツマンはエスカ-ゴールドソーサーで活動していると、姿を隠しながら高所から狙撃を行なって行動を妨害してくる。
    ハンツマンに狙われている最中はPCにレティクルが重なり、10秒後に銃弾が襲い掛かる。
    銃弾を受けると残りHPの25%分のダメージを受けてそのエリアの最初からやり直しになるが、それまでに物陰や遮蔽物の後ろに隠れたり、別エリアに移動するとカウントはリセットされる。
    ラブコールの心の破片を集める障害となるため、なんとしてもハンツマンを撃破したいところ。
  • ハンツマンは「調査任務」を発生させずとも手順さえ知っていれば戦闘でき、条件さえ満たせばそのまま「解放」が可能。
    それでも達成しておかないとハンツマンを追いづらくなるしイベントの過程がやや味気なくなるので、やっておいた方が楽だろう。
    クエスト「ハンツマン調査任務」はPTに鈴仙、永琳がいることが発生条件。
    銃撃の癖から狙撃手の正体に勘付く下りからスタートし、さとり、こいし、神子が入ったPTを同じエリアに滞在させた状態でハンツマンの銃撃を避け続けばその正体と未練が発覚する。
    加えて、狙撃もインビジやスニークで緩和可能なことがわかる。
  • ハンツマンと直接戦闘するには狙撃を避けながらハンツマンが隠れている遮蔽物に近づけばよいのだが、ハンツマンは波長を操って自身の周囲を隠蔽している。
    この隠蔽は鈴仙、さとり、こいし、影狼のうち一人以上がPTに入れば解除可能。また、「ハンツマン調査任務」を達成すれば、ハンツマンの姿がぼんやりとわかる。
  • ハンツマンに接触すると、ハンツマンは狂乱の呻きをあげながら閃光弾を投擲。目くらましの隙にエスカ-ゴールドソーサー内の別エリアへ逃走する。
    PTに影狼がいるなら逃走した方角=エリアへの入り口を教えてくれるのでそのまま追走しよう。
    これを3回繰り返せば我慢の限界を迎えたハンツマンが襲い掛かってくる。
    ただしハンツマンの脅威を完全に取り除くには鈴仙がPTにいることが絶対条件。
    もし鈴仙がいないままハンツマンを倒すと、芋砂うどんげとのだるまさんがころんだwithかくれんぼをやり直す羽目にぬる。

VS.ハンツマン

  • BGM:セレーネに呼応する月兎Type Lunar
    攻略√におけるSADEND後の鈴仙を核としたトラジディ。
    常時2回行動。HPは10万前後で、DEXと命中率が高い反面、回避率とMNDが極めて低い。
    回避の低さをカバーするためか軍用装備によって物理攻撃にいくばくか耐性があり、ガスマスクを装備しているため毒などの状態異常を無効化する。
  • 開幕でSPアビリティ「イーグルアイ」を使用し、大ダメージを狙ってくる他、EMPという名の空蝉を展開して撹乱してくる。
    基本行動として状態異常を含んだ範囲攻撃を多用する。アムネジア・混乱・狂戦士あたりは精神スキルや耐火を高めておけばレジスト可能なので対処しやすいだろう。
    少量の固定ダメージに加えてフラッシュと暗闇を同時に与える『投擲「特殊閃光榴弾(フラッシュグレネード)」』とHPが50%以下の対象に向けて高確率で使用する『凶弾「絶対致命狙撃(オーバークリティカルスナイプ)」』には注意。
    後者は基本ダメージに変化はないが防御無視、必中、クリティカルのプロパティを持ち、空蝉を貫通する厄介な攻撃である。
    HPが減ってくると鉄属性のスパイクアーマーを付与する『迎撃「反射装甲(リアクティブアーマー)」』を宣言し、近接攻撃へのカウンターを狙ってくる。


    それ以外で注意点はない。そも狙撃手が接近されている時点で、既にハンツマンは死に物狂いで余力がほとんど残っていない。







割れた眼鏡から零れる赤い光が明滅すると、ボロボロのガスマスクが(かんばせ)から零れ落ちる。
――激しい兎追いの果て、ハンツマンが頽れた。
その素顔は、生気を失い窶れてはいるものの鈴仙その人だった。
鈴仙……幸せな結末を迎えたもう一人の自分を睨みながらハンツマンは、恨みがましく呻く。

ハンツマン
「ナン……でよ」

鈴仙
「……」

ハンツマン
「なンで、あんたは……そんなに強いノ……?」
「なンで、あんたは……真っすぐナのよ……?」

……ハンツマンは頭を抱えて、嗚咽交じりに叫んだ。

ハンツマン
「どうシテ、私はこんナニも弱いノ……っ!?」
「どうシテ、私はこんナニもダメダメなのヨぉ……っ!」
「私も……同じ鈴仙……なのニ……!!」

鈴仙
「別にいいでしょ、弱くたって……ダメだって」

ハンツマン
「ハ……?」

鈴仙が静かに呟く。ハンツマンは、目を見開いて鈴仙を凝視した。

鈴仙
「……そんな弱いやつなりに頑張ってたから、だからあいつもみんなも応援してくれてたのよ」

ハンツマン
「何、を……言っていルのよ、さッキからァ!」

鈴仙
「答えてるだけよ」
「あなたと私、何が違うのか」

鈴仙
「特別なことじゃない。ただ、一連のゴタゴタが終わって……そこで気付けたの」
「私がどれだけ周りに恵まれてたのか」

ハンツマン
「恵まレ……? あ、あアっ、で、でも」
「デモ、でも……みんなに迷惑かけるだけかけて……私、はっ」

頭を抱えるハンツマンに、鈴仙は腰を落としてしゃがむと目線を合わせた。
狂気と自己嫌悪と絶望と。様々な感情で綯交ぜになって揺れ動く真紅の瞳を鈴仙はまっすぐ見つめる。

鈴仙
「……迷惑をかけて、それで周りの連中はあなたに幻滅した? 突き放したの?」

鈴仙
「……忘れたとは言わせないわよ、鈴仙・優曇華院・イナバ」
「弱くてダメダメな私だけど、最後まで付き添ってくれる人間がいたはずよ」

ハンツマンは、耳を塞いで首を振った。
鈴仙はそれを許さない。塞ぐ手を握って、だけど優しく、ゆっくりと握りこぶしを解く。

鈴仙
「どんな状況でも……あいつは、鈴仙()を見捨てないって、私は知ってる」

ハンツマン
「あぁ、ァぁあぁっぁああッ……――」

ハンツマンの涙腺が決壊する。
顔を覆って、背中を丸くして、みっともなく嗚咽するハンツマンの背中を、鈴仙は静かに摩った。

ハンツマン
「だ、けどっ。だげどッ、私、私の我儘の、ぜい"でッあ"の"人も、
 私み"だい"に"、ボロ"ボロ"に……ッ!」

ハンツマンがぶちまける。心を壊した"鈴仙"に尽くしたせいで、道連れのように精神を病んだあの人のことを。
それを黙って聞いた鈴仙は深い溜息を吐いて、そして苦笑した。

鈴仙
「あはは。あいつらしい……真面目よね」

そして、ハンツマンの口元に指を添えて、微笑んだ。

鈴仙
「なら、今度はあなたがあいつのこと、助けてくれる?」
「あの時、あいつが私に手を差し出してくれたように」

ハンツマン
「たす、ける……?」
「できる、のかな。こんな……わたし、なんかに……」

鈴仙
「あなたに説教しているのも、こんな私と同じ(鈴仙・優曇華院・イナバ)なの。できるったらできる……それに」
「失敗したって、別にいいじゃない。
 生きてる限り、取り返しはつくわよ!
 ……少しだけでいいの。ちょっとずつやり直しましょ?」



鈴仙
「だって、1回躓いたところから始めたんじゃない。陰陽鉄学園の……私たち(鈴仙)の話は」



その言葉に呆然としていたハンツマンは、少しの間を経て微笑んだ。
泣き叫んだ直後で疲弊の色はあったけど、その時の彼女はトラジディではなく鈴仙・優曇華院・イナバだった。




ハンツマンが消滅し、彼女が持っていた灰色の銃が乾いた音を立てて落ちる。
鈴仙はそれを拾って肩に担ぐと、仲間たちに振り向いてウィンクした。
キメ顔ではあったものの、若干照れながら。


鈴仙
「……ごめん、待たせちゃった」













その日、どこかの世界線で。
心を壊し、長い間狂気に呑まれていた一組の男女がいた。
ある時、そのうちの女性の方がカウンセリング中、急にぼうっとしたかと思うと……
――正気を取り戻した。





……
………
自分を見捨てず、共にいてくれた女医。
感極まって口元を覆う彼女への謝罪は、後からいくらでもしよう。
頭を下げる勢いをさいわいに、女性は駆けだす。


夢の中でああ言われたけど……やっぱり、やり直すにはロスタイムが長すぎたように思う。
だけど、諦めるもんか。
今度は、私があなたを救い出す番。




さっきまで私が呑まれていた、あの狂気の檻の中から――!