シナリオ/竜騎士は蒼天に翔ぶ

Last-modified: 2021-08-19 (木) 19:23:21

イベント名

竜騎士は蒼天に翔ぶ

概要

シナリオ傾向:シリアス[有] コミカル[有] ほのぼの[有] 恋愛[有] 欝、人死に[有] 百合、大統領ネタ[?]

登場人物関係:登場人物の制限[有] キーキャラクター[リューサンハイウィンドの旦那さんエスティニアン] 敵対キャラクター[ニーズヘッグ?]

攻略関係:イベント発生時期[] 総所要日数[半年] 他シナリオとの平行[可能] 戦闘難易度[高] 攻略中ヒロインの関与[GSの場合有り]


リューサンの父親、ハイウィンドの旦那さん。
かつて当代最高の竜騎士の称号、「蒼の竜騎士」と呼ばれた男。
そして現在、彼の後を継いで「蒼の竜騎士」と呼ばれし男、エスティニアン。
かつて、この師弟の間に何があったのか?
なぜ、エスティニアンは龍を憎み、滅ぼそうとするのか?
エスティニアンの仇敵である「邪竜ニーズヘッグ」は、なぜ人間を憎んでいるのか?
全ての謎は、竜騎士の聖地「魔導院ペリシティリウム蒼龍」で眠っている…。

発生条件

PCはリューサンヒロシのどちらか。
リューサンとヒロシの友好度がMAXで、親密度が「かなり高い」以上のキャラが3人以上いる。ヒロシの場合、この内1人はアルフィノである必要がある。
その上で限界突破して2人ともレベルが75以上で、NM討伐数が20体以上。
条件を満たした上でリューサンとヒロシが食事処「ハイウィンド」を訪れると、最初のイベント「不穏なる客」が発生する。

攻略

大体の流れはどちらのPCでも共通しているが、リューサンの場合は旦那さん、ヒロシの場合はエスティニアンとの絡みが多く、途中で話を聞ける相手が異なるため、シナリオ中の印象が変わるだろう(特にこのシナリオが初登場のエスティニアン側は)。
なお、忍びの道を往く者と異なり、イベント期間の半年を過ぎても、ゲームオーバーになったりはしないので、そこは安心して良い。
ただし、食事処「ハイウィンド」は利用できなくなり(リューサンの自宅としては使用可能)、エスティニアンとも会えなくなる上、後味が悪い。

不穏なる客

ある日、いつものように食事処「ハイウィンド」で食事や会話を楽しんでいたリューサンとヒロシたち。
そこへ、全身を竜騎士AFで固めた男が現れ、しーんと店が静まり返る。
異様な雰囲気を漂わせつつも、男はずかずかとハイウィンドに踏み入り、どかっと椅子に腰を下ろした。

竜騎士の男
「族長専用山の幸串焼」
リューサン
「え?」
竜騎士の男
「……俺は客だぞ」
旦那さん
「……族長専用山の幸串焼、承知しました」

図々しい態度に威圧されリューサンが怯むが、旦那さんはなにか言いたげにしつつも注文を受け入れた。
他の客は自分の食事に戻り、男は静かに串焼を食べ始めた。

竜騎士の男
「……旨いな」
旦那さん
「ありがとうございます」

最初の雰囲気とは裏腹に、男は素直に旦那さんの料理を称賛していた。
やがて食べ終わると男はやおら立ち上がり、旦那さんに金を支払うと、何事かを告げた。

竜騎士の男
「ニーズヘッグが吠えた」
旦那さん
「!」
竜騎士の男
「俺は行くが……あんたは?」
旦那さん
「……私には、もう」
竜騎士の男
「だろうな。最初から期待はしていない。あんたのかつての弟子として、最低限の礼儀を通しただけだ。……じゃあな」

そう言い捨てると、男は店を出ていった。
旦那さんはその背中を黙って見送っていた……。

竜騎士の師弟

後日、竜騎士の男のことが気になったリューサンとヒロシは、旦那さんに話を聞いてみた。
旦那さんが言うには、男の名は「エスティニアン」。
ハイウィンドの旦那さんがまだ現役の冒険者だった頃、一時期弟子として育てていたという人物である。
かつて、とある邪竜が現れては人里を襲うという事態が起きていた。
その邪竜「ニーズヘッグ」によって、ある村が襲われていた。
旦那さんが駆けつけ、どうにかニーズヘッグを追い払ったのだが、助けられたのは1人の少年だけだった。
それこそがエスティニアンであり、以来、エスティニアンの身柄を引き取り、竜騎士として弟子入りさせたのである。
しかし、エスティニアンの龍に対する憎しみは深く、旦那さんが小竜と共に戦うスタイルであるのを拒絶し、自分だけの力を磨き続けていた。
それからしばらくの月日が経ち、いつしか旦那さんは当時の相棒(今の女将さん)と共に食事処「ハイウィンド」を経営する傍ら、竜騎士として最高の称号「蒼の竜騎士」で称えられるほどの高名な竜騎士となっていた。
その頃もエスティニアンとの師弟関係は続いていたものの、立派な青年になったエスティニアンは独り立ちしつつあり、別行動を取ることも多くなっていた。
ニーズヘッグの咆哮を……再び人を襲うという邪竜の意思表示を察知した旦那さんは、女将さんに幼いリューサンを預け、小竜と共にニーズヘッグ討伐の依頼を引き受けた。
蒼の竜騎士として、人々に害なす邪竜を討つこともまた、己の使命と考えていたからである。
そしてこのことはエスティニアンには秘密にしていた。
エスティニアンの強い憎しみは、彼を破滅の道へ至らせると考え、連れて行くのは危険だと判断したためだった。
結果は……痛み分け。
ニーズヘッグに深い傷を負わせ、撃退させることには成功するが、旦那さんと小竜も傷つき、全盛期の活躍を維持することはできなくなってしまった。
後になってこの事を知ったエスティニアンは、旦那さんの気遣いを理解しつつも、自分をニーズヘッグとの戦いから置いていったことを恨んだ。
そしてエスティニアンは旦那さんの竜騎士の技を全て継承した、もう師は必要ないと一方的に言いつけ、俺がニーズヘッグを討つとだけ言い残して、旦那さんの元を去ったのだと言う。
またしばらくの月日が経ち、店の合間に、全盛期ほどではないにせよ冒険者としての活動も続けていた旦那さんは、度々エスティニアンの噂を聞くようになっていた。
人々が、エスティニアンこそ旦那さんを越える程の竜騎士であると……次なる「蒼の竜騎士」だと言うのを。

旦那さん
「エスティニアンがウチに来たのは別れてからは初めてだったよ。彼は見違えた。私に別れを告げたあの日よりも、更に強くなっている。今のエスティニアンならば……ひょっとすると、ニーズヘッグを討ち取れるかもしれないな……」

旦那さんはそう言うが、どこか不安げであった。

蒼を訪ねて

このイベントはPCに応じて派生する。

PCリューサン

リューサンはエスティニアンのことを思い出していた。
父の弟子であれば、リューサンから見れば兄弟子にも等しい。どうしても他人とは思えなかった。
そしてもう一つ、気になっていたことがある。
「蒼の竜騎士」についてである。
父に尋ねると、「本当は学生を卒業してから話そうと思っていたのだが……」と前置きしつつ、教えてくれた。
「蒼の竜騎士」とは、「魔導院ペリシティリウム蒼龍」が認定している称号である。
最高の竜騎士にのみ与えられるそれは単なる名誉というだけではない。
蒼の竜騎士は、蒼龍に代々伝わる秘宝「竜の眼」を扱う許可が降りるのである。
「竜の眼」とは、伝説によれば初代蒼の竜騎士である「征竜将ハルドラス」が、ニーズヘッグから奪い取った片目であるという。
竜の眼は高位の龍族にとって魔力の源であり、それを持つものに絶大な力を与える。
しかしそれに比例して竜の眼に宿る、元々の持ち主である龍の怨念に精神を乗っ取られるリスクも高まってしまうという危険な代物なのだ。
故に、蒼龍では、極まった竜騎士、即ち蒼の竜騎士が大災に挑む際にのみ、貸し与えると定められているのである。
リューサンは、ニーズヘッグと戦う時に竜の眼を使わなかったのか、と父に尋ねた。
父は答える、怖かったと。
竜の眼の力を使えば、ニーズヘッグを確実に倒せただろう。
だがもし、竜の眼に心を奪われたとしたら、愛する家族はどうなるというのか。
ニーズヘッグを倒したとしても、自分がニーズヘッグの怨念に囚われて、人々に仇なす新たなる邪竜と化してしまったら?
それを恐れて竜の眼を使うことができず、ニーズヘッグも倒せず逃してしまったのだと。
その言葉を聞いて、リューサンは父が何やら思い詰めているのを悟った。
リューサンは、エスティニアンが現在の蒼の竜騎士であるなら、その認定を行った蒼龍に行けば手がかりが見つかるかも知れないと言うと、父は同意し、かつて蒼の竜騎士だった自分であれば、蒼龍の責任者と面会できるはずだと、同行を申し出た。

PCヒロシ

ヒロシは旦那さんの話を聞く中で、異能の力「超える力」によって過去視をしていた。
それは旦那さんが思い浮かべていたであろう様々な場面。
焼き払われた村、独りの少年、そして過去の旦那さん。
旦那さんの視点を通じてエスティニアンを垣間見たヒロシは、どうしてもエスティニアンが気になり、アルフィノら友人達と手分けして行方を探すことにした。
合計で6時間分を捜索に費やすと手がかりが見つかるが、親密度が「高い」以上のキャラクターの中にスキル「情報収集」を持つ者がいれば、3時間で済む。ジタン等がいれば楽になるだろう。
幸い、竜騎士AFの格好の人物などそう多くはない。エスティニアンは見つかった。

エスティニアン
「ハイウィンドで先代の息子と一緒にいた奴だな。
一目で坊ちゃんにしちゃ只者じゃないとおもったぜ。
それで、俺に何か用か?」
アルフィノ
「あなたは邪竜を倒すつもりだと聞いた。
しかし、あのハイウィンドの旦那さんでさえ倒しきれなかった相手だ。
高名な蒼の竜騎士と言えど、簡単にはいかないのではないか?」
エスティニアン
「俺の実力は、既に全盛期の先代と並ぶ程度にはある。
自惚れではなく、10年以上そばで見てきた俺が言うんだ、間違いない。
その上で、『これ』を使えば、確実だ」

そう言ってエスティニアンは、何やら大きな眼球のようなものを見せてきた。
エスティニアンが説明するには、それは「竜の眼」。
持つものに絶大な力を与える、「魔導院ペリシティリウム蒼龍」の秘宝であるらしい。
蒼龍に認められた蒼の竜騎士たる自分に貸し出されたもので、今の自分の実力に竜の眼の力を加えれば、確実にニーズヘッグを倒せるはずだと言う。
アルフィノは類似した魔法のアイテムを思い浮かべて、竜の眼に危険性はないのかと指摘した。
エスティニアンは、竜の眼の元の持ち主……邪竜ニーズヘッグの怨念に囚われる可能性がある、しかし蒼の竜騎士であれば力だけを引き出す術を知っており、安全に扱えると説明。アルフィノは訝しつつもその場は納得した。
エスティニアンはヒロシたちに、竜狩りに興味があるのなら、蒼龍に来いと誘うのだった。

蒼龍に集う竜狩りたち

「蒼を訪ねて」以降にペリシティリウム蒼龍を訪れると発生。
リューサンとヒロシは、魔導院ペリシティリウム蒼龍を訪れていた。
普段なら近づきもしない場所だが、その日は多くの人が集まっていた。

アルフィノ
「すごいな……名うてのドラゴンスレイヤーばかりじゃないか」

周囲には物々しい武装をした者たちで溢れかえっていた。
多くはモンスターハンターと見え、それ以外の者たちも思い思いの武器を背負っている。
アルフィノが言うには、名の知れたドラゴンスレイヤーが大勢集まっているらしい。
ちなみに、虹龍洞パッチを導入していると、百々世も混じっている。
そこへエスティニアンが現れた。

エスティニアン
「来たか坊ちゃんたち。
……先代もいるじゃないか。気が変わったか?」

エスティニアンは旦那さんを見て、若干嘲るような、挑発するような口振りで言ったが、旦那さんは余裕の態度で軽く受け流した。

ヒロシ
「まるで戦争でも起きるみたいだ」
エスティニアン
「そのとおり、人と竜との戦争が始まるのさ」

エスティニアンが言うには、このドラゴンスレイヤーたちは、竜との戦争に備えて集められた傭兵たちらしい。
そこへ小柄な女性が現れ、自分を蒼龍の教師「ホシヒメ」だと名乗り、蒼龍の客室へと案内された。
ホシヒメは説明する。
ニーズヘッグが吠えた時、それに合わせて、他の竜も大勢目覚めた。
ニーズヘッグの眷属及び配下たる雑多な魔物たち、そして眷属ではないがニーズヘッグと同調して人間と戦おうとする竜族もいるのだという。
それに備えて、竜狩りを蒼龍へと集めているのである。

アルフィノ
「しかし、どうにも疑問があるのだが。
ニーズヘッグは、なぜそうまでして人間を憎むのだろうか?」
エスティニアン
「フン。大方、人間が我が物顔で支配者気取りなのが気に入らないんじゃないのか?」
ホシヒメ
「多くの者はニーズヘッグのことを知らない。
しかし、我が蒼龍のルシ・「ソウリュウ」はその眼で真実を見てきた。
ソウリュウが知るニーズヘッグを、お教えしよう」

ホシヒメを通じて、蒼龍のルシ(クリスタルに選ばれた戦士のことだ)・ソウリュウが、ニーズヘッグの真実を語る。
800年前、当時「魔導院ペリシティリウム蒼龍」はまだなく、「青龍」と呼ばれていた国があった。
青龍は人と竜が手を取り合い、共に繁栄している国だった。
ニーズヘッグは孤高の竜であり、人間と馴れ合うことはなかったが、その妹・「ラタトスク」は好奇心旺盛な性格で、率先して人間と親交を深めていた。
ところが、青龍の王は、竜の眼こそが竜の力の源であり、竜の眼を手にした者は絶大な力を得られる、ということを知った。
青龍王は部下と共謀し、人を疑うことを知らないラタトスクを闇討ちして殺し、竜の眼を手に入れてしまった。
ニーズヘッグは怒り狂い、青龍人との戦いを始めた。
人間たちの裏切りに怒りを覚えたのはニーズヘッグだけではない。
多くの竜はニーズヘッグと共に人間と戦い始めたか、そうでなくとも人間を見限って青龍を去った。
それでもソウリュウは心を通わせた「聖女」のため、青龍人と共に他の竜と戦うようになった。
戦いは熾烈を極め、やがて青龍王は無残に死んだが、青龍王の息子はラタトスクの竜の眼の力を借りてニーズヘッグを倒し、その眼を奪った。
それこそが初代蒼の竜騎士「征竜将ハルドラス」である。
青龍人たちはハルドラスを次なる王へと推薦したが、ハルドラスはそれを拒否した。
「父・青龍王は許されぬ罪を犯した。その息子たる自分は父の罪を背負っていかなければならない」
そう言ってハルドラスは、終わることなき竜族との戦いに人生を捧げ、戦いの内に死したという。
やがて竜族との戦いに荒廃しきった青龍は国としては滅び、ソウリュウに選ばれた「聖女」が生き残りの人々を率いて新天地を目指して旅立ち、自分たちを大罪持つ青龍とは違う「蒼龍」を名乗るようになり、竜族との戦いを続けながらも移動していった。
ハルドラスに倒されたはずのニーズヘッグは生きており、その後も何度も蒼龍を襲っては当時の蒼の竜騎士に倒され、そして蘇ってはまた蒼龍を襲い続けた。
全ては妹・ラタトスクの仇を取るために……。

アルフィノ
「……それが人と竜の戦争の真相というわけか……」
エスティニアン
「……復讐か。ハッ、お互い様というわけだな……」

自嘲気味に呟くエスティニアンは、「だとしてもやることは変わらない」と続けた。

エスティニアン
「結局、ニーズヘッグとその配下は攻めてくるんだろう?
だったら、俺たちは戦うしか無い。
これは俺たちとニーズヘッグの生存闘争だ……そうだろう?」
ホシヒメ
「否定はしない。私たちもそのために戦力を集めたのだから。
蒼の竜騎士には、任務を依頼したい。
先代蒼の竜騎士も来ていたとは、蒼龍にとっては僥倖だ」

ホシヒメは特別なクエストを用意していた。
本来ならそれは蒼の竜騎士たるエスティニアンに与えられるものだが、先代蒼の竜騎士である旦那さんも来ていたことは、蒼龍にとっては嬉しい誤算であり、旦那さんにも依頼が与えられた。
エスティニアンと旦那さんは共にこれを受領し、リューサンとヒロシたちは、危険を承知でこれに付いて行くと頼み込んだ。
依頼内容は、「竜の巣の制圧」である。
ニーズヘッグの軍勢が蒼龍に攻め込んでくるのを、雇い集めたドラゴンスレイヤーたちに防衛してもらう。
軍勢が出払っている間、ニーズヘッグの本拠地である「竜の巣」の守りは薄くなるはずである。
そこを蒼の竜騎士たちが潜入し、首魁たるニーズヘッグを討つ。
これが蒼龍の作戦であった。

翼持つ嵐の前に

ニーズヘッグはすぐに襲撃するわけではない。
そもそも、その気があるなら咆哮せずに突然に攻めてくることもできたはずだ。
そうしなかったのは、ニーズヘッグの狙いにある。
ニーズヘッグはあえて、人間側に準備を整えさせる時間を与えているのである。
なぜか?
一方的に蹂躙することは出来る、だがそれでは一度の攻撃で終わりだ。
人間の一生は短いが、ドラゴンの寿命は長い。
復讐したい相手を討ったところで、憎しみが消えてなくなるわけではない。
むしろ、命が尽きるまで、復讐すべき相手をなくしたまま過ごすことになるだけだ。
ニーズヘッグは、滅ぼしたいほど憎んでいる相手を、むしろ生かす。
生かして恐怖を与えていれば、子々孫々までニーズヘッグとの戦いが続く。
人間たちがニーズヘッグを恐れ、戦いの悲しみと苦しみを背負わせ続ける……それこそが、ニーズヘッグの復讐なのである。
作戦決行までの間、レベルアップや装備の更新に努めよう。

 

作戦決行の日が訪れた。
「竜の巣」まで高速移動できる乗り物はあるが、それではドラゴンたちに気づかれ、迎撃される。
そのため、竜の巣の最寄りのテレポイントで移動した後は、徒歩で近づいていくことになる。
竜の巣からドラゴンの軍勢が飛び立つまで、気づかれない場所でしばし潜伏の時を過ごすことになった。
その間、エスティニアンが竜騎士のジャンプを活かして果物狩りさせられたり、アルフィノが意気揚々と薪拾いを申し出て疲れ果てながらやっと帰ってきたり、手に入れた食べ物で旦那さんが鍋料理を作り一同で舌鼓を打ったりして親交を深めた。
リューサンとヒロシとアルフィノが眠りについた後、エスティニアンと旦那さんが見張りに立っていた。
エスティニアンは旦那さんの態度を見て、声をかけた。

エスティニアン
「……死ぬ気じゃないだろうな」
旦那さん
「……エスティニアンはお見通しか」

旦那さんは、家族のために竜の眼を使わず、そのためにニーズヘッグを仕留めきれなかったことを、深く後悔していた。
あの時、自分がニーズヘッグを倒していれば、今こうして人々がニーズヘッグに怯えるような事態にはならなかったと考えていたからだ。
エスティニアンはそれを見抜いていた。

エスティニアン
「ハッ……大した覚悟だが、肩透かしで終わるな。
良かったな、あんたが竜の眼を使う必要はない。
俺が竜の眼を使ってニーズヘッグを倒すからな」
旦那さん
「エスティニアン……恐ろしくはないのか?」
エスティニアン
「俺はあんたと違って、”守るべき家族”なんていないからな」
旦那さん
「エスティニアン……」

リューサンやヒロシ、アルフィノから見れば、頼れる兄貴のようなエスティニアン。
だが旦那さんから見れば、今でもエスティニアンは、拗ねた子どものように映るのだった……。

竜の巣

翌日。
遂に竜の巣からニーズヘッグの軍勢が飛び立ち始めた。
空を覆わんばかりの数のドラゴンが、翼を広げてジュノに向けて空を飛んでいく。
一行はドラゴンの群れが途切れたのを見計らって、竜の巣へ侵入した。

  • ダンジョン「竜の巣」
    主力はいなくなったはずだが、それでも竜の巣にはおびただしい数のドラゴンの眷属が残っている。
    道中は迷うような構造にはなっていないが、しぶといドラゴン類の魔物が多い。
    ウィルム族のような大物も中ボス感覚で出てくる。
    ドラゴンキラー持ちの旦那さんやエスティニアンは純粋に強く、頼りになるだろう。
    ただし、強制参加するメンバーだけだと竜騎士が3人という非常にバランスの悪いパーティになってしまうので、他のメンバー構成は重要。
    ヒロシはタンク向けの戦士にジョブチェンジさせておこう。
    アルフィノはメインジョブは召喚士だが、実際の役割としてはヒーラーの適正の方が高い。
    雷属性の攻撃をしてくる相手が多いので、雷属性への耐性がある味方を連れてくると心強い。

竜の巣を踏破し、最奥まで足を踏み入れた一行を、隻眼の巨大な黒竜が迎える。……ニーズヘッグである。

ニーズヘッグ
「わざわざ屠られに来おったか、人間ども……。
覚えておるぞ、蒼き竜騎士よ!
貴様に与えられし傷が未だに疼くわ……!」
旦那さん
「ニーズヘッグ……悪いが、今度は引き分けという訳にはいかないぞ」
エスティニアン
「屠られるのはお前だ、邪竜……!」

そう言うとエスティニアンは竜の眼を取り出し、それを頭上にかかげる。

エスティニアン
「俺が竜の眼を使って、ヤツの力を抑え込む!
その間に攻撃するんだ!」
ニーズヘッグ
「我が眼の力を用いるとは、小賢しい真似を……!
なれば、この眼の力を解き放つのみ!
我が力にひれ伏せ……!」

エスティニアンの持つ竜の眼が、その本来の持ち主であるニーズヘッグと反応し、彼に残されたもうひとつの竜の眼の力と反発する。
それでもニーズヘッグは怯むことなく咆哮をあげた。

  • ボス戦「ニーズヘッグ」
    エスティニアンと旦那さんの因縁の相手、ニーズヘッグとの戦い。
    直線火属性攻撃「真紅の珠」、範囲火属性ブレス攻撃「真紅の吐息」、音属性全体攻撃「竜の咆哮」といった技の他、ヘイト1位以外の敵一体を行動不能にした後、2ターン後に即死させる「漆黒の珠」を使用する。「漆黒の珠」を使われた場合はすぐに攻撃して破壊しよう。
    ラストスペルの「マサカーインフェルノ」は火属性耐性を下げた上で大ダメージを与える技。火属性耐性が無効か吸収であったとしても耐性を下げてダメージを与えてくるため注意。
ニーズヘッグ
「我が眼の力にて、我自身を縛るなど……どこまでも薄汚い真似をッ!」
エスティニアン
「この俺が、逃がすと思うのかッ!!」

ニーズヘッグが飛翔しようとした時、エスティニアンはそれよりも素早く高く翔ぶ。竜騎士特有の戦技・ジャンプだ。
エスティニアンの槍がニーズヘッグの頭に刺さるが、ニーズヘッグは暴れながらも空を飛び、エスティニアンを振り落とそうとする。
しかしエスティニアンはしがみつき、ニーズヘッグの眼に槍を突き立て、残されたもうひとつの眼をえぐり取ると、ニーズヘッグの頭上から飛び立つ。
両眼……即ち、高位の竜族にとって魔力の源を失ったニーズヘッグは、もはや空洞となった奪われた瞳から血を流しながら墜落し、その肉体は黒霧となって霧散した。
そしてエスティニアンは、一行の元へ戻ってくると、槍に突き刺さっていたニーズヘッグの眼を手に取った。

エスティニアン
「何百年もの間、人が味わった絶望だ……。
光見えぬ死の底で、永遠に苦しむがいい!」

そう言い放つエスティニアンの鎧は、ニーズヘッグの返り血で真っ赤に染まっていた……。

百竜夜行

ニーズヘッグは倒れたが、ニーズヘッグの軍勢が消えてなくなった訳ではない。
感傷に浸っている時間はなく、一行は急いで蒼龍まで戻らなければならなかった。

 

蒼龍。
おびただしい数のドラゴンや、それに従う多種多様な魔物が、ドラゴンスレイヤーたちとの戦いを繰り広げていた。
一行が蒼龍に戻った時、上空をガブリエルが巡航形態で飛行し、ドラゴンとの空中戦を繰り広げていた。
更に軍神バハムートが急降下し、一体のドラゴンを地面に叩きつけていた。
ガブリエルはペリシティリウム白虎の、バハムートはペリシティリウム朱雀の戦力だ。
おそらくはペリシティリウム玄武も……いや、ひょっとするとジュノ全体で襲撃に対応しているのかもしれない。
戦況は、明らかに魔導院側が優勢だった。
首魁たるニーズヘッグを失ったことで、多かれ少なかれ配下の軍勢にも影響が出ているのかもしれない。
とはいえ、敵はドラゴンの群れだ。決して油断していい相手ではない。
ニーズヘッグとの戦いで疲弊しているはずだが、エスティニアンは一気に飛び出していった。

 

全ての竜族と魔物を倒すと、ホシヒメが現れ、どうやらこれで襲撃は終わったようだと告げ、感謝する。
ようやくこれで解決した……と思いきや、突然エスティニアンが苦しみ出す。
どうすることもできずに見ていると、やがてエスティニアンは赤いオーラを纏いながら宙に浮き出し、口を開く。

エスティニアン?
我が名はニーズヘッグ。人族を滅ぼす者なり

百竜の怨源

恐れていた事態が起きてしまった。
「竜の眼」を持つものは、竜の怨念にとらわれて精神を乗っ取られる危険に晒される。
今正に、エスティニアンはニーズヘッグに精神を乗っ取られてしまったのだ。
よりにもよってこの時に……いや、この時だからこそであった。
ニーズヘッグは語る。
「全てが終わった」という安堵こそが、付け入る隙であったと。
自分とエスティニアンは、鏡写しの存在であったと。
人に家族を殺されたニーズヘッグ。
竜に家族を殺されたエスティニアン。
怨念に取り憑かれ、復讐に生きるもの同士、その精神はすぐに理解できた。
エスティニアンはこれまで、その強靭な精神をもって、竜の眼から絶え間なく注ぎ込まれるニーズヘッグの怨念を御していた。
だが、「これでようやく重荷が降りた」という安堵を抱くと同時に、復讐という目的を失い、今後の生きる目的に対する迷いが生じ、それが一瞬の油断を生み、人と竜の精神のせめぎあいに破れ、今こうして、肉体を乗っ取られたのだ。

 

倒れた竜族や魔物たちから赤いオーラが立ち上り、エスティニアン、否、ニーズヘッグに注ぎ込まれる。
倒れた竜と魔の怨念を、ニーズヘッグが吸収して己の力と化しているのである。
呆気にとられる一同を尻目に、ホシヒメが巨龍へと姿を変え、素早くニーズヘッグへ飛びかかった。
2体の巨龍は空中で激しくぶつかり合い、その内の1体……ホシヒメが落下してきた。
変身が解け人の姿に戻ったホシヒメは一同に言う。
エスティニアンの魂はまだ生きていると。
エスティニアンの魂は今、ニーズヘッグの怨念に繭のように包まれている状態であり、ニーズヘッグの怨念を引き剥がせば、エスティニアンを取り戻すことができるかもしれないという。
旦那さんは槍を強く握りしめる。

旦那さん
「……戦おう。エスティニアンを取り戻すんだ!」

その言葉を聞き、一同は各々の武器を手にし、ニーズヘッグへ構えた。

  • ボス戦「百竜の怨源ニーズヘッグ」
    エスティニアンの肉体を乗っ取ったニーズヘッグとの最終決戦。
    最初は竜の翼が生え変化した赤い鎧のエスティニアンとの戦いとなる。
    通常攻撃に織り交ぜて使ってくる強攻撃「ドラッケンランス」、単体大ダメージの物理攻撃「アラモーン」、直線攻撃の「ゲイルスコグル」、1ターン無敵になり次のターンに全体攻撃をしてくる「スーパージャンプ」といった技を使用する。
    ラストスペル「終焉の竜詩」は強烈な全体攻撃。詠唱1ターンなので、構えを確認したら全力で下段ガードを固めよう。
    HPを半分にすると、エスティニアンの肉体を元に怨念の力を結集させて、赤黒いニーズヘッグの肉体を構成する。
    全体雷属性攻撃の「怨嗟の雷」、後衛範囲攻撃の「アク・モーン」、全体火属性攻撃の「ヒートウィング」を使用するようになる。
    しかし、確実に体力は弱っているので、恐れずに戦おう。
    エスティニアンがいない分、意外とHPはそれほど多くない。

怨念の力によって作り出されたニーズヘッグの肉体が霧散し、その場にエスティニアンが取り残される。
2つの「竜の眼」が、エスティニアンの真紅の鎧と一体化している。

ニーズヘッグ
「ハァ、ハァ、ハァ……。
我が……敗れると……言うのか……。
いいや……そんなことが……あってなるものか……。
我は最も暗く、最も猛々しき竜……ニーズヘッグなるぞ!
殺してやる……殺してやるッ!」

追い詰められてなおも、ニーズヘッグの殺意は微塵も衰えない。
鬼気迫る様子でニーズヘッグが槍を持ち上げ、投げつけようとする……が、途中でその腕は止まる。
ニーズヘッグは驚いたような表情になり、腕は震え、槍を取りこぼしてしまう。

エスティニアン
「殺らせるかよ!」
アルフィノ
「エスティニアン殿!?」

ニーズヘッグではなく、エスティニアンの声だ。
ニーズヘッグに肉体を奪われたエスティニアンが、激しく抵抗しているのだ。
エスティニアンの腕は、己の肉体の首を締め上げた。

ニーズヘッグ
「クッ……貴様……!」
エスティニアン
「よう、坊っちゃんたち、先代……!
最期の頼みだ……俺が邪竜の意思を抑え込んでいる隙に……
トドメを……トドメを刺してくれッ!」

その言葉を聞いた一同は顔を見合わせ、武器を構えるのではなく、エスティニアンに駆け寄り、2つの「竜の眼」を取り外そうと試みた。
触れた瞬間、「竜の眼」からは赤い稲妻が迸り、激痛が襲う。
だが、誰も手を離しはしなかった。

エスティニアン
「やめろ……無駄なことは……。
お、俺を……殺してくれ……。
蒼の竜騎士としての……最期の務め……果たさせてくれ!」
アルフィノ
「や、やめるものか!
やめるものか、絶対に……絶対に貴方を救ってみせるんだ!」

痛みで絶叫しながらも、アルフィノは決して手を離さない。
リューサンも、ヒロシも、旦那さんも同じだった。

リューサン
「まだまだたくさん、貴方のことを知りたいんだ!
俺は貴方のことを……兄さんのように思っているんだ!
死んで欲しくないんだ!」
ヒロシ
「仲間だから……死なせたくない!」
旦那さん
「エスティニアン……私はお前を……。
お前も、息子だと!
「家族」だと思っているんだ!」
エスティニアン
「……!!」

「竜の眼」が徐々に鎧から離れ始める。
そして完全に「竜の眼」が取り外されると、周囲を青い光が包み込む。
それは邪竜と呼ばれしニーズヘッグの魂であった。

ニーズヘッグ
「これがヒトの意思……我は……。
……ラタトスク……」

ニーズヘッグの魂が天に昇り、やがて霧散し、消えてなくなった。
今度こそ、完全に。

旦那さん
「これで本当にさよならだ、ニーズヘッグ……」

エンディング

後日。
食事処「ハイウィンド」にて、祝賀会のために一同が集まっていた。
今回の活躍を祝して、ホシヒメは蒼龍の宝物である名槍「竜の髭」を旦那さんに渡したが、旦那さんはそれを受け取るべきは未来ある若者たちだと言い、リューサンとヒロシに手渡したのだった。
しかし、その場にエスティニアンはいなかった。
旦那さんが言うには、蒼龍で治療されていたのだが、ある日病室から失踪してしまったのだという。
愛槍も共になくなっていたが、彼が身につけていた血に染まった鎧は置き去りにされていた。
旦那さんはこれを前向きに捉えていた。
エスティニアンは血に染まった過去を乗り越えて、槍と共に未来を進んでいくのだろうと。

旦那さん
「ニーズヘッグの最期の言葉を覚えているかい?
ラタトスクと……妹の、家族の名前を最期に呼んでいたんだ。
人も竜も、家族を想う気持ちは変わらないんじゃないかな……」

邪竜と呼ばれし竜、ニーズヘッグ。
旦那さんもアルフィノもホシヒメも、ニーズヘッグが本当に邪悪な存在だったとは考えていなかった。
大切な家族を無惨に殺されたとあれば、復讐の鬼となるのも無理はないだろう。
きっとエスティニアンも同じように考えているはずだ。
ニーズヘッグはエスティニアンは自分と鏡写しの存在であり、そのため彼の精神を理解できたと語っていた。
ならばエスティニアンもニーズヘッグの精神を理解しているはずなのだ。
エスティニアンはもう、竜と見れば無差別に襲うようなことはしないだろう。
血が繋がっていなくとも、自分を想ってくれている”家族”がいると、気づけたのだから。

報酬/称号

  • 槍「竜の髭」
  • 称号「蒼の竜騎士を継ぐ者」(リューサン)
  • 称号「蒼の竜騎士の相棒」(ヒロシ)