10勝しても10敗する投手はいらない

Last-modified: 2023-09-08 (金) 18:09:24

2006年オフに門倉健(当時横浜ベイスターズ)が年俸アップと複数年契約を主張した際、球団側がそれを拒否する理由として使った論理。

概要

同年の門倉は投球回154.1回、10勝9敗*1、114奪三振、防御率4.84でチームの勝ち頭となる成績を残した。更にFA権の行使を交渉材料にしたが、球団は「10勝しても10敗する投手はいらない」「あと2、3年で終わる投手」などと拒んだ。

当時の報道

『スポーツニッポン』2006年12月3日付紙面記事

横浜 門倉との残留交渉打ち切り

横浜が、FA宣言している門倉との残留交渉を打ち切ることがこの日までに決まった。球団フロントの1人は「せいぜいあと2年の選手だし、10勝しても10敗するピッチャーはいらない。誰か代わりに1人新しく獲ればいいだけの話」と発言。先月23日に残留を再度要請した佐々木球団社長も「条件を上げてくれという交渉には今後一切応じるつもりはない。それなら彼はもっと自分の商品価値を高めてからFAを行使すればよかったんだ」と激怒しているという。これで門倉の進路は巨人への移籍以外に選択肢がなくなった。

その後

このように啖呵を切った横浜は2007年こそ人的補償で獲得した工藤公康*2やソフトバンクからトレードで加入した寺原隼人*3らの活躍もあって4位に滑り込むも、2008年以降は3勝しても15敗する投手2勝しても11敗する投手3勝しても12敗する投手5勝しても15敗する投手10勝しても11敗する防御率5.40の投手が最前線を務める、暗黒時代でも最も悲惨な時期を迎える事になる。

一方の門倉も「あと2年で終わる投手」という横浜フロントの予見通り、巨人移籍後には1勝しても5敗する投手と化しわずか2年で自由契約。巨人ファンを大きく失望させてしまった

結果論だが)門倉と横浜そして巨人の三方が得をしなかった、甚だ不幸な移籍劇だったと言えよう。

なんJでの扱い

成績が散々な投手に対して「〇勝しても〇敗する投手はいらない」と揶揄する際に使われる。
また「本当に10勝しても10敗する投手は必要なのか」という議論にもなるが、巨人入団直前に野球少年に向かって門倉が「横浜だけはやめとけよ」と発言したことが問題とされたこともあり、大抵は「借金を作らずローテを守れるので10勝しても10敗する投手は要るが、門倉は要らない」と結論づけられる
また、2019年より就任した中日ドラゴンズ二軍投手コーチの役職では福谷浩司の先発での覚醒に一役買うなどの功績を残しているが、それでも「10勝しても10敗する投手を作る門倉は要るが、10勝しても10敗する門倉は要らない」などと言われている。

「10勝10敗投手」の例

2013年オフに大竹寛(広島→巨人)、2018年オフに西勇輝(オリックス→阪神)がそれぞれFA宣言した際に「10勝10敗投手」として話題になった。なお、FA宣言の直近のシーズンでは大竹は「10勝10敗」、西は「10勝13敗」の成績であった。
尤も、投手の勝利数は打線の援護に多くを依存するので、必ずしも投球内容と勝利数が比例しないことに留意する必要がある。特に西の場合はこれが顕著で、WHIPは「1.20前後」、FIPは「3点台中盤~3点台後半」で安定して推移しており、投球内容に比して勝利数に恵まれていないといえる。なお阪神移籍1年目でも「WHIP1.13、FIP3.34、QS19試合(QS数はリーグ1位)」の投球内容に対して「10勝8敗」に終わり、投球内容に比して勝利数に恵まれない傾向が継続する結果になってしまったが2020年もこの傾向にある。

なお、「勝率5割投手」の例としては、

  • 1956年の秋山登(大洋)25勝25敗(n勝n敗投手の中では最多)
  • 1984年の遠藤一彦(大洋)17勝17敗(他にも5回達成している)
  • 2001年の松坂大輔(西武)15勝15敗
  • 2012年の澤村拓一(巨人)10勝10敗
  • 2013年の大野雄大(中日)10勝10敗
    などが挙げられる。


関連項目


*1 勘違いされやすいが10勝10敗ではない。そもそも門倉が「10勝10敗」丁度の成績を残したシーズンはない。
*2 当時43歳ながら7勝をマーク。
*3 一軍ローテを守り抜きチーム最多の12勝をマークしたが、一方で勝ち数と同数の黒星も喫しており、こちらも下記の「勝率5割投手」の一例と言える。