4位赤星、ハア?

Last-modified: 2023-12-24 (日) 23:15:55

2000年度ドラフトで阪神タイガースが指名した選手に対するある個人サイトの考察中に出た一文。代表的な正岡民ネタとして知られている。


概要

元々は、「びば」と名乗る人物が運営していた個人サイトで、同年のドラフトで阪神が赤星憲広を4位指名した事を批判する記事が掲載されたことが由来。同サイトでは、赤星以外の指名選手についても強烈な意見が並んでおり、「赤星>藤本>沖原>狩野>伊達>藤田>梶原」の順に酷評していた。ところが、この批評はことごとく外れ、実際の活躍度は赤星や藤本らが高かったのに対し、梶原は碌に使い物にならないという完璧な逆順になってしまった。

 

なお、現在当該のサイトは閉鎖されているが、後述のウェブアーカイブでその内容が確認出来る。


本文(原文ママ)

2000年ドラフト会議を振り返る

1位 藤田 太陽 投手  右投右打 21歳 川崎製鉄千葉

2位 伊達 昌司 投手  右投右打 25歳 プリンスホテル

3位 狩野 恵輔 捕手  右投右打 17歳 群馬前橋工高

4位 赤星 憲広 外野手 右投左打 24歳 JR東日本

5位 加藤 隆行 投手  右投右打 17歳 長崎工高

6位 沖原 佳典 内野手 右投右打 28歳 NTT東日本

7位 藤本 敦士 内野手 右投左打 23歳 デュプロ

8位 梶原 康司 内野手 右投左打 22歳 九州東海大

 ∬総評∬

 ☆評価できる指名  藤田 梶原

 ☆評価できない指名 伊達

 ☆最低の指名    赤星 藤本 沖原

 1位藤田に関しては2位指名で獲ってこその選手。確かに巨人に競り込まれ、
厳しかったが、素材買いの選手でもあり、できれば2位でいってほしかった
 ただ、3年後の20勝投手を確保できたのでよしとしておこう。

 2位伊達は、個人的に評価しているし、藤田と違って1年目から先発で回せて
10勝を期待できるのでいい指名ではあるのだが、4位でも残っていた選手
何故ここで根市を指名しなかったのか。「今年は挑戦する」と野崎*1の言葉だが、
こういう繰り上げは「敵前逃亡」と言うのをご存じか?

 3位狩野、捕手としての能力は近鉄3位の近沢*2より上と見るが、だったら
北照上村*3、いや、遡れば去年の米野を指名しておけばよかった。巨人4位指名を
恐れたのかもしれないが、4位でも充分残っていた可能性はかなり高い

 4位赤星、ハア? 何故この程度の選手*4を4位指名なのかが理解できない。
ノムラが強く押し込んだのかもしれないが、どうせ来年の春にはアンタの愚痴の対象に成り下がってることだろうよ。ここで土谷を指名しておけばと死ぬまで後悔しろ!

 5位加藤は、見たことがないので、何とも言えない。コメントパス。

 6位沖原は阪神以外はどこも指名予定に入っていない*5選手。こういう選手は
普通最下位指名にするものなのだが、オリンピック代表って名前にでも敬意を
払ったってか? テメーらフロントは所詮温室サラリーマンだな。氏ね。

 7位藤本沖原を指名しておいてほとんど年齢の変わらない、しかも
似たようなタイプの藤本の指名は私のような凡人には到底理解できない
おそらくノムラの遠大な計画の一旦なのだろう(アザワラ

 8位の梶原はロッテ5位の噂もあり、正直ここまで残っているとは思わなかった。
ただ、ダイエー1位山村*6の150kの速球に力負けすることもなくスタンドへ
弾き返すそのパワー、スイングの鋭さは特筆すべき。今年最高の指名


総評の評価

「4位赤星、ハア?」の一文については、後の赤星の活躍を評価の代わりとする。

なお、この文章は他にも

  • 大抵の選手はもっと下位で獲得できるという楽観的・ご都合主義的な思考に立っており、特に2位指名の「1年目から先発で10勝*7」の伊達を「4位でも取れる」と豪語。
  • 他球団に指名された選手も含めて、やたらと高卒選手を高評価し、大学・社会人出身選手を酷評している。
  • 若さに拘りがあるのかと思いきや、23歳の藤本を28歳の沖原とほとんど年齢が変わらないと発言。
  • 終始アンチ野村克也的視点に偏っている
  • 根市寛貴(公式戦出場なしで引退)、上村和裕(現役通算4安打で引退)など「指名すべきだった」と主張している選手にも全く活躍しなかったケースが多い。
  • 唯一活躍の予言に成功したのが4位・赤星の代わりに指名すべきとしていた土谷鉄平であるが、入団した中日では出場機会の少なさもあって*8通算5安打と全く芽が出ず、皮肉にも野村の監督就任直後の楽天に移籍してから頭角を現した。
  • 「『敵前逃亡』」と言うのをご存じか?」「ノムラの遠大な計画の一旦なのだろう(アザワラ」など見る者の笑いを誘う煽り文句。
  • なぜか指名についての評価の一覧に狩野の名前がない*9

など、非常に突っ込みどころが多い。
結局、2001年には赤星が新人王・盗塁王のダブル受賞を果たすなど大活躍したことで懲りたかと思われたが、実はこの筆者、2001年のドラフト指名についても批評を行っている(後述)。なおこの中で赤星を酷評したことに対する弁明はなかったものの、8人中3人を「評価保留」とするなど2000年と比べてかなり慎重な論調となっている。

 

背景

一応筆者の擁護をしておくと、当時の阪神ファンは

  • 10年近くにわたる低迷
  • 「高卒選手がチームの主力になる」と主張する小関順二の影響
  • アトランタ五輪の影響で有力な即戦力選手が指名凍結されていたにも関わらず社会人4人だけを指名し、全員が不振に終わった1995年のドラフトへのトラウマ

などの原因もあり、ドラフトに対して歪んだ見解を持っている者は決して少なくはなかった。特に「アンチ野村・大艦巨砲主義者・高卒信者」などは相当数おり、彼らが赤星・藤本・沖原といった野村の獲得した俊足タイプの社会人選手を叩くのは自然な流れであった。
実際に2chなどにおいても筆者と大同小異の主張は数多く見受けられ、この筆者のみが常軌を逸したドラフト観を有していたとは到底言えない。結果的にこの評ばかりが一人歩きしてしまっているが、一連の顛末は当時の阪神ファンの歪み具合を反映した結果と捉えることもできる。

 

ネット上のドラフト評論家である蔵建て男のサイト「迷スカウト」内のページ「ドラフト千里眼」でも、2000年の阪神のドラフトに対する批判が阪神ファンの間では少なくなかった事が記載されている。
以下「ドラフト千里眼」より当時の空気感についてわかる部分を抜粋。

「2000年阪神4位 赤星 憲広(JR東日本)外野手」より

『赤星が指名された年の阪神のドラフトは、後の常勝阪神の礎を築いた年だと云えよう。ただドラフト直後のファンの評判は、けして芳しくなかった。特に当時の阪神ファンは、極端な高卒待望論が強く、社会人中心のこの年の指名には否定的な意見が多かった。特に非力な打撃をする、この赤星への風当たりは強かった』

『(赤星について)私は、4位で使える長距離砲など、何処にいるのだ*10。4位でも特徴のある選手を取れた阪神の指名は間違ってはいないと、何度も反論したものだった。むしろ当時の反響では、8位で指名された強打者候補・梶原(九州東海大)の方が、期待が高かったぐらいだ』

「2000年 阪神のドラフトを考える!」より

『(赤星や藤本について)この選手達に共通するのは、当時の阪神ファンが極端に嫌っていた高齢の社会人出身の選手だったことである』


おまけ

筆者による指名

この批評の筆者は自分ならどのような指名を行うかについても述べている。
赤星と藤本の2人を除外し高卒の根市・玉山・土谷・大卒の前嶋を追加、他の選手の指名順位は軒並み下がるが「狩野以外は間違いなく全員獲れる」という楽観思考に立っており、総評本文の傾向そのままのラインナップである。
ちなみに根市は公式戦出場なし*11、玉山は現役通算1勝で引退しており、この中で活躍したのは土谷鉄平だけであった。
また、狩野に代わる捕手として挙げた小川将俊・小川正博・北野良栄*12・飯田庸介の4名のうち、公式戦に出場したのは小川将俊のみで通算5安打に終わっている。それどころか、前嶋・小川正・飯田はプロ入りすらしていない。なお、根市寛樹(正しくは寛貴)、前嶋宏和(正しくは広和)の2名は誤字である。

 ちなみに、ドラフトから1日置いて冷静になった私ならの指名
1位 藤田太陽 投手
2位 根市寛樹 投手
3位 玉山健太 投手
4位 伊達昌司 投手
5位 土谷鉄平 内野手
6位 狩野恵輔 捕手
7位 加藤隆行 投手
8位 梶原康司 内野手
9位 前嶋宏和 投手
10位 沖原佳典 内野手

 狩野以外は間違いなく全員獲れる。狩野がどこかに獲られるだろうが、
別に獲られて困る選手でもない。どうしても捕手を指名したければどちらかの小川を
指名すればいいだけ。それか、来年の北野(星陵高)、再来年の飯田(東洋大)を
獲得すればいいだけの話なので。
 しかし、左腕はどうする?


2001年ドラフト評価

2001年ドラフト会議を振り返る

自由獲得枠

 安藤 優也 投手  右投右打 23歳 トヨタ自動車

 浅井 良  捕手  右投右打 22歳 法政大学

 以上2名は自由獲得枠。以下はドラフト指名選手。

4位 桜井 広大 外野手 右投右打 18歳 PL学園

5位 中林 祐介 投手  左投左打 18歳 金沢高校

6位 藤原 通  内野手 右投右打 22歳 立命館大学

7位 喜田 剛  捕手  右投左打 22歳 福岡大学

8位 梶原 和隆 投手  右投右打 22歳 愛知工業大学

9位 東 辰弥  捕手  右投右打 22歳 早稲田大学

 ∬総評∬

 ☆評価できる指名  安藤 中林 藤原

 ☆評価できない指名 東 喜田

 ☆評価保留の指名  浅井 桜井 梶原

 自由獲得枠の2名だが、安藤はかなり評価してもいいだろう。
もし、今年寺原がいなかったら各球団の争奪戦にもなっただろうし、
その意味ではラッキーなのかな? と思える。ただ、変化球に甘さがあり、
高めのストレートにもまだまだ甘さが目立つ。この辺がちょっとね。

 浅井の方は、捕手としてのリードはいいものを持っているが*13
打撃の方がね。センター中心のミートバッティングを心がければ
そこそこはやれるだろうが、変に欲が出るとすぐに沈むだろう。
和田にでも弟子入りした方がいいだろうね。

 こっからはドラフト指名選手で。
 4位の桜井は、確かに長距離砲ではあるんだが、どうもパワーだけで
打っているようにしか思えない。もう少し上手に身体を使えればいいんだが。
そうなれば全日本の4番でも打てるんだが・・・ねえ・・・。

 5位中林は1年でクビ候補か3年後のエースかだろう。まだまだストレートの
速さもないが、入団以後どうなるか、だな。問題は。現状では、井川を目指すと
いいかもね。

 6位藤原は、この順位まで残っててありがたかった。6位ならまあいいかな、
と思えるし。と言うのも、どう見てもこいつには打撃の基本がない。
いかにも無理矢理打ちましたって感じなのに、軽くホームラン打つし。
ただ、金属バットならそれでも打てるが、木製では・・・ね。
ー100か+100かって選手でしょう。守備力はまるでないが。

 7位喜田はどうやら桧山2世とか言われてるが・・・う~ん・・・。
わしには来年クビ*14だと言われる選手にしか思えなかったんですが。
まあ、大化けしてくれる可能性はあるが・・・う~ん・・・。

 8位梶原は、阪神が唯一指名した即戦力投手。ただ、阪神相手に投げるなら、
としか言えない即戦力投手。それ以外には言葉すらない。

 9位東は、守備力、打撃力とも、浅井以下。なんでこんな指名するのかが
さっぱり理解できない。また、フロントの悪癖かな・・・。
もしくは、鳥谷狙ってのことかな?

 っつーことで、私ならの指名。

 4位 国木剛太*15 投手

 5位 肥田高志*16 外野手

 6位 藤原通  内野手

 7位 中林祐介 投手

 8位 桜井広大 外野手

 9位 梶原和隆 投手

10位 喜田剛  捕手

 ホントなら自由枠も変えたかったが、これだけはね。
しゃーないのでドラフトだけ変えてみましたが、
捕手がそんなに欲しければなんで2年前に米野を指名しないんだ?
どうせ来年も飯田がいるだろうに。ったく、阪神はこれだから・・・。
 今年で一番大きかったのは、国木が6位まで残ってたってこと。
中林より国木獲れよ。って思うんだが、これではねえ。


筆者の日記

鳥谷一考
岡田が、もう鳥谷の遊撃手スタメンを確約発言して、そのことに
マスコミを始めうだうだと言い続けてますが、
今更何を?
二軍時代から阪神の悪しき伝統である派閥野球しかやってこなかった岡田ですよ?
昨年、開幕スタメンに鳥谷を入れたことでも明らかでしょ?
 だから、岡田派閥じゃないジョージ*17片岡は掃き溜めに追いやられるし。
わけのわからん継投継投また継投で投手の志気をくじくし。
兵の士気を煽るのは将の務めであるはずなんだが……。

新人合同自主トレ
ドラフト7位。高橋*18曰く「高校のときより楽。済美では倍以上やっていた 」
……ふふ、ふふふ。そうですか。高校時代より筋力が落ちたと言っていた
桜井(新井*19だったか?)の二の舞の悪寒……。


小関順二さんもドラフトを酷評

http://web.archive.org/web/20050309190925/http://www.byakuya-shobo.co.jp/kozo/2000list/00draft/00t.lisuto.html

今回の指名選手は3つに分けられる。
 1:日本代表候補の合宿に参加した選手。
 2:日本選手権に出場した選手。
 3:高校生2人。
1と2はまとめて見られるわけだから、スカウトは1人で充分。高校生は関東と九州なので2人必要としても、3人のスカウトで指名選手が決定できたということになる。情熱の感じられない指名には、12球団中11位の評価を差し上げたい。
最下位(西武)との差は、1位の藤田(川崎製鉄千葉)の獲得。球に速さと角度があり、フォークもいい。1年目からのローテーション入りが濃厚だ。
日本代表の沖原(NTT東日本)は安心して見ていられるショート。28歳という年齢を考えて、スタメンで使うかの結論は早めに出すべきだろう。

先にも挙げたように、小関氏は伝統的に高校生主体で獲得したドラフトを高く評価し、即戦力主体で固めたドラフトを低く評価する論者であり、2003年に刊行された『阪神タイガース1985~2003 泣き笑いデータ』内においても、当時のドラフトについて次のようにコメントしている。

猛虎復活の期待を一身に背負った野村政権だが、2年連続の最下位。結果が欲しい名将にとってこの順位は我慢できなかったはずだ。その焦りがドラフトにモロに出た。
前年に続き8人の大量指名。このうち大学、社会人は6人。高校生を獲得して4,5年後に備えるという長期的視野は、実績のある監督を招聘したことで完全に消滅した。
 (中略)
チームの順位を上げたい、Bクラスを脱出したい、そういう思いが強く伝わってくる指名だが、5年先の展望が見えてこない。これは星野政権下の現在まで続いている阪神のアキレス腱である*20

また、小関氏は同書の最後で「ファームで育成するなら高校生」とまで言い切っている。


関連項目

外部リンク



Tag: ドラフト 阪神 コピペ


*1 野崎勝義専務(当時)。
*2 近澤昌志。元大阪近鉄→東北楽天。通算5年で4試合2打数1安打。
*3 上村和裕。元オリックス→広島。通算5年で26試合23打数4安打。
*4 赤星はシドニー五輪代表ではあったが、正中堅手はNTT東日本の飯塚智広(現役引退後は2021年までNTT東日本の監督を勤めていた)であり、赤星は代走要員であった。なお、後述の沖原は正遊撃手であった。
*5 小笠原道大らのNTT時代の同僚だったが注目されておらず情報をあまり持っていなかったという。全日本のショートだがらいいだろうという理由で指名したことを野村が明かしている。
*6 山村路直。福岡ダイエー・福岡ソフトバンク→引退。通算8年で2勝。
*7 なお実際には1年目に4勝をあげたものの2年目からは通用せず、のち日本ハム→巨人と渡り歩き通算12勝で引退しており過大評価であった。
*8 鉄平が所属していた時期の中日は、福留孝介関川浩一井上一樹など一軍外野陣が特に盤石である上に守備固め要員についても大西崇之や英智がいた事も大きい。
*9 もし入れるならば、解説を見る限り恐らく「評価できない指名」であろう。ただし、この時の指名で最後まで現役であったのは2017年引退の狩野である。
*10 2000年以降の本塁打王で4位以下の指名だったのは2000年の中村紀洋(1991年に近鉄から4位指名)、2005年の新井貴浩(1998年に広島から6位指名)、2021年の杉本裕太郎(2015年にオリックスから10位指名)の3人しかいない。また、新井はどちらかと言えば中距離打者である。それ以前となると1995年の江藤智(1988年に広島から5位指名)まで遡る。
*11 根市は「3位帆足だぁ!!ふざけんなゴルァ!!!!!!」でも高評価だった。
*12 福岡ダイエー・福岡ソフトバンク→引退。通算5年で一軍出場なし、引退後は競輪選手に転身。
*13 実際にはリードに問題があった上に矢野燿大や野口寿浩らの存在もあり捕手としてはほとんど活躍できず、打撃と足を活かすために2008年以降外野手に転向して活躍。2013年引退。
*14 実際にクビになったのは2011年、広島・オリックスを経て3度目のトレードで入団した横浜でのことである。
*15 広島→引退。通算4年で一軍出場なし。なお、元々故障持ちだった。
*16 オリックス→引退。通算4年で14打数2安打。俊足だが極度のスペ体質でテーピングや痛み止めが欠かせなかったという。
*17 ジョージ・アリアス。
*18 高橋勇丞。阪神→引退。通算5年で一軍出場なし。
*19 新井亮司。阪神→引退。通算5年で一軍出場なし。当たれば飛ぶが当たる確率が低いスラガガータイプの選手だった。
*20 阪神の即戦力主体のドラフトについては、第一次岡田彰布監督時代以降もあまり変わっておらず、指名選手中高校生が過半数以上を占めたのは2004年・2010年・2019年・2022年の4例のみである。