長戸大幸 グループ 5

Last-modified: 2016-03-18 (金) 17:52:48

1stシングルは4週目にトップ10に入るという好調なスタートを切りました。
同年3月27日にリリースされた1stアルバムもZARDの特徴を知らしめる上で十分な効果がありました。
既に進行していた次の作品内容は1stを踏襲した物になりました。
プロデューサーの方針は“新人アーティストが一度世の中に出て、ある程度認知された後は、浸透するまではしばらく同じ方向性で行く”という物でした。
デビュー時から坂井さんの歌声は非常に声量があり、録音時に工夫をする必要がある程でしたが、制作していく過程でさらに力強さと透明感がアップしました。
サウンドはアップテンポのロック・チューン「素直に言えなくて」「lonely Soldier Boy」はノイジーでさらに研ぎすまされて印象でした。
歌詞は「もう探さない」や3rdシングルのC/W曲「こんなに愛しても」等、1stアルバム以上に大人っぽい世界が描かれていた曲もありました。

そして、2ndアルバム『もう探さない』には、長戸プロデューサーから手ほどきを受けた結果として、「素直に言えなくて」「いつかは…」と2曲の坂井泉水作曲作品が収録されています。
「素直に言えなくて」には2つの特徴があります。
まず1つ目は構成です。
今のJ-POPシーンではAメロ~A’メロ~Bメロ~Cメロ~C’メロになっていますが、この曲はAメロ~A’メロ~Bメロ~B’メロ~A’’メロとなっています。
これはソナタ形式といって、18世紀には音楽シーンに登場しており、クラシック音楽に多いスタイルです。
そして2つ目の特徴は、コード進行です。
キーはAmで、Aメロ、A’メロはそのキーで進行します。
ところがBメロではいきなりFに転調します。
そしてBメロの1小節目のコードがGm7なので、予定調和ではなくドキドキしながら聴く事になります。
さらにB’メロではEに転調します。
しかもB’メロの1小節目はF#m7なので、いきなり回転するジェットコースターみたいなスリルがあります。
そしてA”メロでは何事も無かったかのようにAmに戻ります。
実はこの転調の源流はLeon Russellの大ヒット曲「This Masquerade」にあります。
この曲は多くのアーティストにカバーされており、The Carpentersのバージョンはお馴染みです。
またGeorge Bensonが歌ったバージョンは76年にグラミー賞を受賞しており、日本では坂井泉水名義(Izumi Sakai)でカバーしたバージョンが『Royal Straight Soul Ⅲ Vol.2』(92年リリース)に収録されています。
多くの方に指示されてきた曲の良い所をリスペクトしている事で、新たな作品が生まれたのです。