『オーブの海』
バルトフェルドと共にミネルバへ戻ってきたデュランダル。そこでは、コンディションイエローのままMSデッキで待機しているシン達MSパイロットの姿があった。
三人のMSパイロットの中の一人、レイ=ザ=バレルは、帰ってきたデュランダルを見つけると直ぐに近寄ってきた。ブロンドの髪を肩まで伸ばした中性的な雰囲気を醸し出す少年だ。
「お帰りなさいませ、議長」
「うむ。客人をお連れした。例の物を見せてやってくれ」
「客人?」
デュランダルの後ろからついて来る人物に目をやり、レイは目つきが鋭くなる。デュランダルが伴ってやって来たのは、バルトフェルドだったからだ。
「議長、この方は――」
「私達の協力者だ。頼んだぞ、レイ。私はブリッジに上がる。…それではバルトフェルド、よろしく」
簡潔に言うと、デュランダルはその足でMSデッキを後にした。シンやルナマリアがデュランダルに対し、敬礼をして見送る。
「初めまして、アンドリュー=バルトフェルドだ。早速議長の仰っていた例の物を見せてもらいたいんだが」
「ザフト艦ミネルバ所属MSパイロット、レイ=ザ=バレルです。砂漠の虎でいらっしゃいますね」
「ほぉ、君の様な若者が、僕の様なロートルを知っていてくれるなんて感動だな」
努めて冷静に会話をこなすレイに対し、バルトフェルドは余裕を持って応える。自分とて歴戦の勇士である。このような少年兵たちに遅れをとるつもりはない。
「失礼しました。こちらへ」
レイとバルトフェルドは連れ立ってMSデッキの奥へと進んで行く。それを脇で眺めながら、シンとルナマリアは不審な目でバルトフェルドを見ていた。
「砂漠の虎ですって。裏切り者って話じゃない。そんな人を連れてくるなんて――」
「オーブの毒にやられてんなら、俺が追い出してやるさ」
横目でバルトフェルドを見送りながら、シンは指を鳴らす。オーブに深い恨みを持つ彼としては、そこに住んでいたバルトフェルドを信用する気にはなれない。少しでもおかしな事を口走れば、即座に引導を渡してやるつもりでいた。
「止めなさいよ。あんたがそういう考えだってのは知ってるけど、余計ないざこざは増やさないでよね。あたし達にまで迷惑掛るじゃない」
「知ってんなら俺の好きにさせろよ。オーブが胡散臭いのは分かってるだろ?」
「みんなあんたと同じ思考してると思わないでよね。そういうの、独善って言うのよ」
シンの独りよがりな考えに、ルナマリアは難儀を示す。彼は、自分の思考が一番正しいと勘違いしている。だから、場所も弁えずにカガリに対して喧嘩を吹っ掛けたのだろう。地球に降りる前のトラブルの現場を思い出した。
「それにしたって、あんな現役を引退したようなおっさんにあれを動かせるのかよ?」
「さぁね。少なくともあんたよりはまともに動かせるんじゃないの?二つ名で呼ばれてたぐらいだし」
「じゃあ、ルナよりもまともだってことだよな。俺はインパルスのパイロットに抜擢されたわけだし」
意地悪そうな顔でルナマリアに言うシン。バルトフェルドより自分を低く評価するルナマリアを皮肉った言い方だ。
「はいはい。あたしは自分の力量って奴を弁えてるから、別に何だっていいのよ。あんたは一人で愚痴ってなさい」
「いてっ」
手にぶら下げているヘルメットを軽くシンの頭にぶつけながら、ルナマリアは自分の乗機であるザク・ウォーリアの下へ歩いていった。そのルナマリアの行為に、シンは腹を立てたが抑えた。バルトフェルドを前に喧嘩して、見くびられたくなかったからだ。
シンは、そのまま手に持った飲み物を口に含みながら、バルトフェルド達が向かっていった先に目を向ける。
レイがつれてきた場所には、一機のMSが佇んでいた。その威容に、バルトフェルドは見覚えがあった。それは、キラが二年前に乗っていたMS、ZGMF-X10Aフリーダムだ。オーブに入る前にメカニック達が懸念していたコンテナの中身は、これだった。
それを、彼等が徹夜で組み上げたのだ。
バルトフェルドが聞いた話によると、フリーダムはヤキン戦役において大破し、戦後はザフトが回収していたという。それが今、完全な形で目の前にある。
「まだこれが残っていたのか……!」
唾を飲み込み、バルトフェルドは驚嘆する。このMSの性能は、彼の記憶の中に、今でも鮮烈な印象を残している。そして、それに自分が乗ることになるかもしれないという現実が、えらく希薄に思えた。フリーダムは、乗り手を選ぶマシンだからだ。
やはり、これにはキラが相応しいと思う。しかし、そう考えてバルトフェルドは直ぐに首を横に振った。キラを、二度とMSに乗せないようにするのが自分の目的なのだから。
「これは外見こそフリーダムですが、NJC(ニュートロン・ジャマー・キャンセラー)は積んでいません」
レイの説明に、バルトフェルドは疑問に思う。これがキラの乗っていたフリーダムを回収したものならば、NJCは積んであるはずである。
「NJCを積んでいない?なら、これは二年前のものとは別物って事か?」
「そうです。これはフリーダムの量産を前提とした試作機です。動力源には、あちらのインパルスと同じ、新型のバッテリーを積んであります」
「フリーダムを量産ねぇ…プラントは世界を滅ぼす算段かい?」
「新型とは言え、バッテリーです。ヤキンの時のように圧倒的な火力を実現する事は出来ません」
「それを聞いて安心したよ。僕には過ぎた力になるかもしれないからね」
視線をレイからフリーダムに移し、口元に笑みを浮かべる。
下から見上げるフリーダムは、やはり圧倒的だ。これがキラの乗っていたフリーダムと同じでないとは分かっていても、見た目が同じだから安易に割り切れない。
「それでは、バルトフェルドさんは指示があるまでここでお待ちください。私は自分のMSの準備がありますので」
そう告げると、レイはその場を去って行った。
「レイ=ザ=バレルか……どこかで会ったような気もするが、ああいう奴はどうにもな――」
レイの後姿を見つめ、バルトフェルドは不思議な既視感を抱いていた。彼とは何となく顔見知りのような気がしたのだ。しかし、その意味を知ることは決してないだろう。彼の秘密は、今はまだデュランダルしか知らないことだ。
(しかし、指示があるまで待機か…まさかミネルバはオーブの中から大西洋連邦を迎え撃つつもりなのか?このコンディション・イエローは出国する際に備えてだと思いたいが――)
そのままバルトフェルドは思考を始める。嫌な予感はびんびんしている。その予感が外れて欲しいが、そうは行かないのが世の常である。そうなった場合を想定して、先に対策を考えておくのが建設的な行動だろう。そう思い、一人フリーダムの前で佇んでいた。
「オーブ政府からの通信は入っているか?」
ブリッジに入ってくるなり、デュランダルは即座にタリアに訊ねた。先に行政府へ戻ったカガリから、この状況に対しての何らかのアクションがあったのではないかと考えたからだ。
「いえ、何もありませんが」
タリアの答に落胆するデュランダル。こうまで決断が遅いとなると、カガリの気持ちは大西洋連邦に傾いている可能性がある。純粋に迷っているだけならいいが、ウナトという参謀も付いている。彼が居るならば、カガリに何か入れ知恵を仕込んでいるかもしれない。
そうなると、オーブが大西洋連邦と組む可能性が濃くなってくる。デュランダルとしては、それはなるべく避けたい所だ。
「オーブはこのまま大西洋連邦と組むつもりかな?」
「政治の事は私には分かりかねます」
同調を求めるデュランダルに対し、タリアは冷たく返す。どうやら、ここ最近の自分は些かしつこかったようだ。これ以上嫌われたくはないので、それ以上は絡まない事にした。
「オーブに留まる限り、大西洋連邦はミネルバに手出しはしてこんだろうが、オーブは大西洋連邦と組みたがっている…と仮定するとなると、今やミネルバは四面楚歌か」
「どうなさるおつもりですか?」
デュランダルの呟きを聞いていたアーサーが不安げに訊ねてくる。それに気付いて、デュランダルはブリッジクルーの顔を見渡した。皆、一様にアーサーと同様の顔つきをしている。いくらミネルバがザフトの新造艦とはいえ、不安なのだ。
ならば、不安を取り除くためにする事は一つしかない。この四面楚歌の状況を打破する為には、どちらかを味方にすればいいのだ。大西洋連邦は敵対国なので説得は不可能だ。となると、残るのはオーブである。
「既成事実を作ってしまえば、オーブも我等と同盟を組むしかあるまい。…艦長、戦闘配置だ」
「戦闘配置?」
デュランダルの言葉に、タリアは驚愕の表情を浮かべる。前門には虎、そして後門にはいつ狼なるかもしれないオーブが控えている。この状況で戦闘行為を犯したなら、オーブは間違いなく狼になるだろう。
「それでは――!」
「部隊配置はオーブの領海内だ。交戦も、相手が仕掛けてくるまではするなと伝えておけ」
「それでは、まるで私達がオーブと――」
そこまで声に出してタリアは気付いた。デュランダルは、既成事実を作るといっていた。オーブの領海内で部隊を展開させ、戦う意思を見せれば、大西洋連邦艦隊はオーブがプラントに与したと勘違いするかもしれない。
それが最上だが、そこまでいかないにしても、少なくともこちらが剣を交えるつもりである事は伝わるはずである。
そう思わせられれば、ユニウス・セブン落下事件で頭に血が昇っているであろう大西洋連邦は、憤って攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。そして、もしそうなった時はデュランダルの思う壺である。海の上とはいえ、戦場はオーブだ。
オーブとしては、国土に危害を及ぼさない為にも直ちに軍を出動させるしかないが、ザフトと大西洋連邦の二軍を排除するだけのスタミナを持っていない。
そうなった場合のオーブの選択肢は一つしか残されていないだろう。大西洋連邦は不可侵を主張するオーブ国土に武力侵攻した形となり、自然とオーブとの同盟締結交渉は消滅。
オーブ軍はオーブを守る形となったミネルバの味方に廻り、これをザフトと共同で排除する事で、大西洋連邦はオーブを敵性国家と認定する。
こうしてめでたく共通の敵が出来たプラントとオーブは、事が終わった後にゆっくりと同盟を締結して、共同声明なり何なり出せばいい。共に馬を並べて戦えば、多少なりとも信頼を得られるだろう。オーブが同盟を断る確率は確実に減少するはずである。
これが、デュランダルの頭の中のシナリオだった。
「ギル…あなたは――!」
「プラントの為だよ。ブルーコスモスの過激思想で、あの美しい砂時計を狂わせるわけには行かない」
目を見開くタリアに対し、デュランダルはじっと前方を見つめたまま笑みを浮かべていた。
その頃、オーブ行政府では、未だにカガリが難儀を示したまま会議が膠着していた。懸念していた通り、大西洋連邦は同盟に応じない場合はオーブを敵性国家と認定すると通告してきたのだ。
会議室は騒然としていた。議員がそれぞれに議論し、まとまりが欠けている。急な事態に、皆混乱しているのだ。そんな彼等と同様に戸惑っているカガリの傍らには、いつもと同じ様にセイラン親子がついていた。
「プラントの申し出はありがたいが、現状で即決するのは危険すぎる…」
「その通りです代表。デュランダルの言葉を信じるのは危険でございます。彼等がオーブから流出した技術を軍事に転用していた事実をお忘れなきよう」
悩めるカガリに、ウナトが忠言を与える。
「分かっている。しかし、大西洋連邦と同盟を結べば、ミネルバがどう動くか――」
「あれにはデュランダルが乗っているはずです。例え我等が大西洋連邦と同盟を組もうとも、無理はしないでしょう。脱出を優先させるはずです」
「ならば――」
大西洋連邦と組むのが現状での一番の選択肢か。少なくとも、プラントと同盟を結ぶよりは国への被害は小さく済むかもしれない。しかし、そうなれば中立の理念は崩れ去る事になるだろう。同盟を結んだ大西洋連邦は、オーブにも戦争の参加を迫ってくるはずである。
(くそぉ!駄目だ私は!何が正しいのか全く分からない!)
両手で頭を抱え、髪を掻き毟る。カガリの頭の中は沸騰しかけていた。
「お気持ちは分かりますが、オーブを焼かない事が一番大事です。ここは一つ心を鬼にして、大西洋連邦と同盟を結ぶべきです」
「そうです、代表。早くお決めにならなければ、大西洋連邦が痺れを切らすかもしれませんよ」
ウナトに続いてユウナもカガリに決断を促す。先程から、ずっとこの調子である。
と、その時観音開きの扉を激しく突き開いて、一人の兵士が飛び込んできた。その扉を開く音に、何事かと議員全員が議論を止め、その方向を見た。
「た、大変です!オーブ領海内で、ザフトと大西洋連邦軍が戦闘を開始しました!」
「な、何だと!?」
兵士の言葉に議場内は紛糾する。ザフトと大西洋連邦軍の勝手な行いに罵声を浴びせるものも居る。
「どうしてそんな勝手な事を――こちらに通告はあったのか!?」
カガリは立ち上がり、険しい表情で兵士に言う。それに対して兵士は手に持った紙を見やり、応える。
「いえ、どうやらミネルバが部隊を展開し、それに対して大西洋連邦軍が攻撃を仕掛けたようなのです。息つく間も無く、戦闘が開始されました」
「大西洋連邦もザフトもどういうつもりだ!」
拳を強く握り、机に激しく叩きつける。連合の宣戦布告から、よもやこんな速い展開で戦いに巻き込まれる事になろうとは、予想だにしてなかった。
「大西洋連邦はザフトの挑発に乗ってしまったようですな。ユニウスの悲劇からまだ日も浅い」
ウナトがカガリの肩に手を置き、慰めるように言う。しかし、カガリには納得できない。
「だからってオーブで戦わなくても――!」
「彼等にとって、我等の中立の理念などどうでも良いものだっただけの事です。同盟を求めてきた時点でそんな事は分かりきった事でした」
「それは…そうだが、じゃあデュランダル議長はどうなんだ!何のつもりで大西洋連邦を挑発なんかしたんだ!?こうなるって事、分かってるはずだろ!」
髪を振り乱し、詰め寄るようにウナトに聞く。傍から見れば、冷静なウナトの方が国家元首に見えるかもしれない。
「シナリオ通りでしょう。我等がどちらと同盟を組むかで議論を紛糾させている間に、先手を打たれたのです。大西洋連邦とザフトが戦闘を開始した時点で、彼の思惑は殆ど成就されたことでしょう」
「それで国を焼く訳には行かない私達は軍を出撃させる!しかし大西洋連邦とザフトを同時に相手する力をオーブは持っていない――くっ!踊らされているのか、私は!」
状況は緊迫の色合を強めていく。このままオーブ領海内で戦闘が続けば、いずれ本土にも戦火が拡大するだろう。それは、つまり二年前の再現を意味している。
「双方に呼びかけは行っているのか!?」
「どちらも戦闘中でこちらの呼びかけには応えられない、とのことです」
「進退窮まったね、カガリ」
狼狽するカガリをなだめるようにユウナは言う。
「理念上、他国の争いに介入できないけど、この戦いが我が国への侵略に繋がるとも考えられる。防衛目的なら、軍を出動させるしかないよね。戦力で言えば大西洋連邦につくのがいいと思うけど、カガリの理想の為にはザフトかな」
「しかし、戦いを前提にしていたのでは――!」
「もう話し合いで何とかできる状況ではなくなっているんだよ、カガリ。ちゃんと目を開いて現実を見つめてごらん?」
いつもはへらへらした顔をしているのに、今のユウナは真剣そのものだ。不意に現れた意外な表情に、カガリの頭の中が一瞬空っぽになる。
「ここで全てが決まるわけじゃない。今は最良と思える選択をする時なんだ。君は、この国の国家元首だろう?」
「ユウナ…」
「君はこんな所でまごついてちゃいけないんだ。ウズミ様から託されたオーブは、君だけのものじゃないんだよ。こんな所で無駄に時間を浪費しちゃいけない。国は君の玩具ではないんだから」
ユウナの言葉の一つ一つがカガリの心の中に染み渡る。
確かにユウナの言うとおりだ。自分は、迷っていた。今もこうして優柔不断な態度を見せるばかりで、国家元首としての毅然とした態度を忘れていた。頭がこんな有様では、他の者達にまで動揺が拡がってしまう。
そんな軟弱な人間には、国家元首は相応しくない。先程のキラは、その事を言いたかったのかも知れない。
「分かった。軍に出動要請、ミネルバと協力して大西洋連邦軍を排除させろ!このオーブ、二度も焼かせはしないぞ!」
「かしこまりました。民の避難誘導は私どもにお任せください」
手を掲げ、凛とした声で兵士に告げる。ウナトとユウナは一礼すると、直ぐに部屋を後にした。
「こいつ等、勝手に攻撃してきやがって!」
「オーブの中じゃ戦っちゃいけないんじゃないの!?」
「構うな!敵は仕掛けてきている!」
大西洋連邦からの攻撃に、シン達ミネルバのMS隊は苦戦を強いられていた。こちらがミネルバ一隻に対し、相手は空母や巡洋艦など五隻ほどの戦力を投入してきているのだ。ミネルバの戦力も単一艦としては並々ならぬ力を保持してはいるが、流石に多勢に無勢だ。
オーブに配慮して海上で戦闘を行ってはいるが、戦線は徐々に後退していた。
「オーブ軍は出てこないの!?」
ミネルバの甲板の上で砲撃を繰り返しながら、ルナマリアは叫ぶ。目をチラチラとオーブ本土に向け、オーブからの救援を期待していた。
『オーブは出てこない!奴等は理念を守る為なら、俺達がどうなったって構わないのさ!』
「でも、これって他国の侵略を許さずってのに抵触してんじゃないの!」
回線からシンの声が聞こえてきた。彼の言い分も分かるが、ミネルバとたった三機の防衛線では直ぐにも崩されてしまうだろう。
『なら、俺が手伝ってやろうか?』
「この声は――!」
その時、三人の内の誰でもない声が聞こえた。その声は先程聞いたバルトフェルドのものだ。
『確かに、大西洋連邦の行いはオーブへの侵略行為にも見れる。が、挑発をしたのはミネルバだ』
「こんな時に何を!」
『分かっているかい?お前達は、彼等に余計な刺激を与えて災いを引き起こしたんだ』
「でも、出撃は命令で――それに先に仕掛けてきたのは大西洋連邦です!私達は何もしてないじゃないですか!」
こんな時に講釈をしてくるバルトフェルドに、ルナマリアは抗議する。唯でさえ必死に砲撃をしなければ危ないのに、話しかけて集中力を乱そうとする彼の心根が気に入らなかった。
『ルナマリア、相手にするな!』
「レイ!」
『フリーダムの出撃命令は出ていない!出られん戦力を当てにするな!』
ルナマリアの集中力が落ちていると判断したレイが、彼女に注意を与えて再び集中力を取り戻させた。
ミネルバの甲板の上には赤いガナー・ザク・ウォーリアと、白いブレイズ・ザク・ファントムが陣取っている。そして、シンのフォース・インパルスが空中で遊撃戦を行っている。
ミネルバのMSデッキの中のフリーダムのコックピットで、その様子を観戦しながらバルトフェルドは苦虫を噛み潰した表情をしていた。これは、恐らくデュランダルが仕組んだ茶番だろう。わざと大西洋連邦を怒らせるように、敢えてMS隊の出撃を許可したと思われる。
「ちっ!自分の思い通りにするには、何でもするって事か!…キラを置いてきて正解だったな」
こんな状況なら、キラなら間違いなく飛び出していただろう。自分ですらちょっとだけ飛び出したい衝動に駆られているのだから、彼なら尚更だろう。
「さて、どうしたもんか。オーブ軍はお嬢ちゃんの様子を鑑みるに余り期待できない。しかし、このまま大西洋連邦の行為を見逃しておく事は出来ない」
ここに連れられてきた時点で、デュランダルの思惑に乗ってしまっていたということか。しかし、キラを守れただけでもよしとする事にした。自分が身代わりになる分には構わない。
『バルトフェルド、君に協力をお願いしたいのだが』
バルトフェルドが思考を廻らせていると、まるでこちらの心の内を読んでいたかのように、モニターからデュランダルが話し掛けてきた。
「私が出るしかないと踏んだ上で仰っているのなら、一言お礼の言葉がほしいものですな。こちらは、タダであなたのキャスティングに加わっているのですから」
『君は代役だがね』
デュランダルとしてはキラを連れて来たい所だったのだろう。しかし、実際にやって来たのはバルトフェルドである。これはデュランダルの構想の範囲外の人選だ。
そんな不満を押し出すデュランダルに、バルトフェルドは不快感を顔に顕す。
『なら、君がやって見せればいい。そうすれば、君を主役に取り立ててやることも出来る』
「何事も、あなたの筋書き通りになると思わないで頂きたい」
『しかし、君はそのフリーダムで出撃する。ミネルバのカタパルトハッチからな』
「くぅ……!」
覚悟を決めるしかない。オーブで戦いが行われている以上、キラ達にも危害が及ぶのは目に見えている。ならば、彼が執る行動は一つ。
「了解しました。フリーダムを出します」
『期待しているぞ、砂漠の虎』
苦渋に満ちた表情で決断するバルトフェルドに対し、デュランダルは顔色一つ変えずに言う。それが、バルトフェルドには悔しかった。今は、彼の思惑通りに動くしかない。
フリーダムをカタパルトに移動させ、ハッチの解放を待つ。前方の暗闇から徐々に光が拡がっていき、美しいオーブの海が視界の中に入ってきた。そこで行われる醜い争いも同時に。
「フリーダム、カタパルト設置完了」
固くスロットルレバーを握り締め、各種設定を確認する。後は発進のサインを待つだけだ。
『進路クリア、フリーダム発進どうぞ!』
「アンドリュー=バルトフェルド、フリーダム出るぞ!」
掛け声と同時に猛烈な加速が掛る。舌を噛まないように口元を食いしばり、体を硬直させる。ハッチの出口の光があっという間に大きくなり、フリーダムは空に開放された。灰銀の装甲がフェイズシフトを展開し、鮮やかな色に染まっていく。
背中の六翼を大きく開き、その威容を見せ付けた。
「あれはフリーダム!ミネルバは砂漠の虎を出したのか!?」
その姿を見て、シンは驚く。元はザフトのエースだったとは言え、今はオーブに魂を売ったバルトフェルドなんかに助けられたくはなかったからだ。そして、それを信用してフリーダムを預けたデュランダルの思惑が、分からなかった。
『フリーダムはインパルスと共同で敵部隊の各個撃破をお願いします』
「了解した。よろしく頼むぞ、少年!」
メイリンからの通信内容に頷き、バルトフェルドはシンに呼びかける。
『俺はあんたを認めないからな!』
「結構、それでこそ若者だ。その情熱で、俺を驚かせてくれたまえ」
バルトフェルドからの思いがけない言葉に、シンは何て奴だ、と思った。そして、その口調は紛れもなく二年前に活躍した砂漠の虎である。人を食ったような会話こそが、彼の真骨頂なのだ。
「この感じ…懐かしいねぇ。俺はやはり、根っからの軍人らしいな!」
いきなり目の前に現れたダガーLを、ビームサーベルで薙ぎ飛ばす。胴体を両断されたダガーLはそのまま落下しながら爆散する。流石はフリーダムである。いい動きをする。
出撃前の鬱屈した気持ちが嘘のように晴れやかだ。フリーダムに乗ってカタパルトを発進し、戦場に躍り出た瞬間、バルトフェルドの中のスイッチが入った。今フリーダムのコックピットに居るのは、ザフトのエースであった頃の砂漠の虎である。
「次ぃ!」
続けざまに切りかかるフリーダム。二機で襲ってきたダガーLも、ビームサーベルの一振りでまとめて撃墜する。
「もう一丁!」
更に続けるフリーダムは、今度は自分から躍り掛かる。駆け抜けざまにビームサーベルを抜き、またもや二機まとめて切り落す。そんな高速の攻撃に、フリーダムの後方で爆炎が起こった。
「す、凄い!」
「フリーダムの性能を使い切っているのか」
ミネルバの甲板で砲撃を繰り返すルナマリアとレイは、バルトフェルドの操るフリーダムの動きに感心していた。その様な余裕が出来たのも、フリーダムの出現により、敵の攻撃頻度がミネルバからそちらに移ったからだ。
「フリーダムだからって…俺だってあの位!」
シンの目にも、フリーダムの凄まじい動きが見えていた。しかし、シンはその活躍を認めたくなかった。赤服として、インパルスのパイロットとしてのプライドがある。
「てぇぇい!」
ビームライフルを抜き、ビームを連射して一機、二機と落としていく。
『やるじゃないか、少年』
インパルスの獅子奮迅の動きを見て、バルトフェルドが話し掛けてきた。その口調に、何処までも人を馬鹿にした人だと思う。
「うるさい!俺はシン=アスカだ、少年じゃない!」
『失礼。じゃあ、俺がトップを張るぞ』
と、唐突にフリーダムが敵陣の中に向かっていく。
「お、おい!?」
『大丈夫だ。フリーダムの後ろは任せる』
敵陣をある程度の距離に据え、フリーダムは空中で制止して全砲門を前方に展開する。右のマニピュレーターにはビームライフル。両肩からせり出しているのはバラエーナ。両腰から伸びているのはクスィフィアス。
「俺はキラのように急所を外してやる事は出来んからな。死にたくない奴は自分で避けろよ!」
フリーダムのメインカメラが煌き、全ての砲門から一斉に攻撃が開始される。五つの砲撃を何発も撃ち、相手に回避させる余裕を与えずに次々と撃墜していく。二年前にキラが得意としていたマルチロックによる一斉射撃である。
ただし、バルトフェルドとキラが違うのは、その精度である。キラは極力急所を狙わずに攻撃できていたのに対し、バルトフェルドにはそこまでの精度を調節できない。ある意味、この攻撃はキラだからこそ完璧な形で実行できるといえる。
しかし、だからといって威力が変わるわけでもない。故にバルトフェルドが操るフリーダムの一斉射撃は、敵MSを次々と撃墜していく。
「NJC無しでも、武装に差があるわけじゃないが…チィ!やはりガス欠か!」
ある程度の敵を撃墜する事は出来たが、早くも警告音が響く。バッテリーの残量が尽きかけているのだ。
「アスカ君、こちらは一時後退する!戦線の維持を頼むぞ!」
『な!?』
シンにそう告げると、バルトフェルドはフリーダムをミネルバへと向けて、一目散に後退していく。そして、シンの目の前には大西洋連邦軍の後続が現れた。
「あのおっさん!偉そうな事をほざいておきながら!」
自分はバルトフェルドに振り回されていると思った。確かにフリーダムの攻撃で一時的に敵の攻撃を減衰させることが出来たが、それも直ぐに盛り返してくるだろう。凄まじいまでの攻撃力を見せ付けたフリーダムだが、倒した敵の数はそう多くない。
「ミネルバ、援護が薄いんじゃないか!?俺だけじゃ、戦線を維持できないぞ!」
やや、やけくそ気味にシンはマイクに向かって怒鳴る。その向こうで、メイリンが何か文句を言っていたような気もしたが、そんなことに構っている余裕がシンにはない。ひたすら目の前の敵に向かってビームライフルを撃ち続けた。
「フリーダム、戻ってきます!」
「デュートリオンビーム照射準備」
「了解、デュートリオンビーム照射準備!」
ミネルバのブリッジで、タリアの命令を復唱するメイリン。
フリーダムに積まれているバッテリーエンジンは、シンのインパルスと同じものである。それは、ミネルバから照射されるデュートリオンビームによって瞬時にエネルギーを回復できるという優れものである。
基本的に無限動力である核分裂エンジンであった二年前のフリーダムほどの継戦能力はないが、エネルギーを回復できる分、無限動力に近い性能を誇っているのが、このフリーダムである。
ただし、エネルギー回復の為に逐一ミネルバの近くに戻らねばならないのが唯一のネックだった。
『直ぐにビームを発射してくれ!アスカ君一人では、あの数は持ち堪えられない!』
「了解です!デュートリオンビーム、発射!」
ミネルバからフリーダムの頭部アンテナの中央部へ向かって細いビームが照射される。それを受け、コックピット内のバルトフェルドはエネルギーの回復を確認する。
「エネルギー回復確認!再び前線の援護に出る!」
『こちらでも確認しました。ご健闘を祈ります!』
このフリーダムの弱点は、搭載火器の燃費の悪さだ。威力は現時点での最高クラスを誇っているが、何分エネルギーの消耗が激しい。
バルトフェルドが最初、ビームサーベルでの攻撃しか行わなかったのは、一斉射撃を使えば直ぐにエネルギーが尽きてしまう事が分かっていたからだった。
しかし、思った以上の敵の数に、バルトフェルドは一斉射撃を使わざるを得なかった。それに、もう一つ気付いた点がある。
(おかしい…フリーダムの動きはこんなものではないはずだ。キラのフリーダムは、もっと動きが鋭かった)
初めは気分が高揚していて上機嫌だったが、徐々にフリーダムの動きの鈍さに気付いてきた。それでも十分な性能を誇ってはいるが、本来の動きが出来るならば、この程度の数はもっとエネルギー効率を考えて戦ったとしても十分お釣りが来るはずである。
なのに一斉射撃を使うしかなかったのは、このフリーダムがキラの操っていたフリーダムよりもデチューンされているということか。
「こんなのがオーブ防衛の切り札になるものか!デュランダルの言っている事は出鱈目だ!」
デュランダルに対して不満を口にするバルトフェルド。しかし、彼は勘違いをしていた。この新たなフリーダムは、キラの手が入っていないのだ。OSの最適化をしなければ、二年前のような真価を発揮する事ができない。
だからこそ、デュランダルはフリーダムにキラを乗せたかった。
「だが、やるしかない!俺がやらんで、誰がやると言うのだ!」
意を決し、バルトフェルドはシンが持ち堪えていてくれるだろう前線へ向かう。
と、その時レーダーに新たな複数の機影が表示される。それはオーブの本土から迫ってくる。
「M1アストレイ!オーブ軍が出たのか!」
それはようやく出撃してきたオーブ軍だった。一瞬、オーブ軍がザフトの敵に回るのかと懸念したが、それは杞憂に終わった。オーブ軍は、大西洋連邦に対してのみ攻撃を仕掛けている。
オーブの対応はかなり遅かったが、助かったのは事実である。数で劣るミネルバにとっては、オーブの救援は実にありがたい。バルトフェルドはフリーダムに乗っていても、キラのような活躍が出来ない故に、余計にそう思えた。
「これで、少しは何とかなるが…デュランダルの目論んだ図式が完成した事にもなるか。ザフト・オーブ軍対大西洋連邦軍…一気に世界の縮図になっちまったな……」
溜息混じりに呟く。こうなってしまえば、もうオーブも無関係を装えない。この状況を見て、大西洋連邦もオーブがプラントの味方についたと認識しただろう。
助かったと思いつつも、やるせない気持ちのまま、バルトフェルドはフリーダムを加速させた。
オーブ本土、軍施設の周辺は慌ただしさを増していた。政府が大西洋連邦と戦う事を決めたのなら、オーブ軍はこれから本格的に防衛戦力の整備を始めなければならない。次世代主力MSであるムラサメの実戦配備も急ピッチで進められていた。
「M1アストレイを出せ!ムラサメは出撃できる機体だけでいい!」
「数が足りん!戦場が本土に移っちまうぞ!」
「この二年、何も無かっただけに、いきなりのこの状況では平静を保てないか…」
喧騒の中、アスランも自分に何かできると思い、空いているMSを捜していた。ここでカガリを守る為には、彼も二年前のMSパイロットとしての自分に戻るしかない。
その裏で、カガリがプラントの味方をすると分かった時、アスランは純粋に嬉しかった。袂を分かったとはいえ、プラントは彼の出身地である。そことオーブが敵対関係になるのは、正直避けたかった。
アスランは手近に居る整備兵に話しかける。
「何か空いているMSは無いんですか?」
「あ、あんたはカガリ様のボディーガードの…お仕事はいいんですかい?」
「こんな状況では、敵を追い払う方が正しいものの見方です。私もMSに乗って少しでも戦力の足しになればと」
「それは助かるな。じゃあ、あんたにはこの――」
「私たちにもMSを貸してもらえませんか?」
アスランにムラサメを貸与しようかと思っていたところに、駆けつけてきたエマとカツが会話に割り込んできた。彼女達も、オーブの為に何か出来ないかと思ってここへやってきたのだ。
「誰だ、あんた達は?」
訝しげに整備兵がエマ達に言う。当然だが、彼女達を怪しんでいた。しかし、それを遮ってアスランが前に出た。
「ちょっと待って下さい。――あなた方はここを何処だと思っているんです?ここは民間人が入って来ていい場所ではない。直ぐに避難を――」
「MSの心得ならあります。今は少しでも戦力が欲しい時ではないんですか?」
「MSの操縦が出来るって――何者なんです、あなた達は?」
アスランは当然エマ達を信用しない。エマとしては、それは分かりきっていた事だったが、バルトフェルドが戦場に出た以上、何かをしなければと思っていた。
「私達の知り合いの方がザフトの味方をしているんです。彼を少しでも助けたいと思って――」
「バルトフェルドさんがフリーダムで出ているんです!僕たちは、あの人にお世話になったんです!だから――!」
「バルトフェルドだって!?それに、フリーダムって――本当なんですか?」
状況が上手く飲み込めないアスラン。エマ達の言っている事が本当かどうか、整備兵にオーブの監視班からの報告を訊ねる。
「あ、あぁ。本当らしい。テレビでも映ってる」
それを聞き、アスランは再び顔をエマ達の方に向けた。
「バルトフェルドが乗っているなら…じゃあキラやラクスは?」
「彼等は安全な場所へ避難しています。私達は、彼等と別れてここに来たんです」
「キラを知っているって事は、あなた方が最近オーブに越して来たって言う――」
「は、はぁ…そうです。エマ=シーンとカツ=コバヤシです」
別にエマとカツはオーブに引っ越してきたわけではない。偶然ここに流れ着いただけで、住み込むつもりは無かった。しかし、バルトフェルドはそれでは不便だろうと思って、勝手にオーブの住民票に登録していたのだ。
勿論、本来エマ達はこの世界に存在するはずの無い人物なので、経歴やその他諸々を詐称してあるが、カガリの知り合いであるバルトフェルドのすることなので、役人もそれ程厳しく咎めなかった。
「でも、MSの操縦が出来るって事は、以前のバルトフェルドと知り合いで?」
「そうです。部下を――やっていました」
「そうか、それなら話は早い。お力添えをお願いします」
「任せてください」
バルトフェルドの知り合いということで、アスランはエマ達に協力を申し出た。それに対し、整備兵は何処か不満げだ。彼女たちのMSの手配を他の整備兵に任せた後、アスランの耳元に話しかける。
「本当にあんな女子供に任せていいのか?どう考えたって怪しいだろ」
「大丈夫です。もし、彼女達が嘘をついていたとしても、私が好きにさせません」
「そりゃあ、あんたのMSパイロットとしての腕は認めるよ?けどな、それとこれとは話が別だ。折角造り上げたムラサメを壊す羽目になるのだけは勘弁してくれよ」
「分かっています。彼女達の言葉が真実なら万々歳、もし違っていたとしても、情報を引き出すこと位は出来るはずです」
「頼むぜ、ヤキンの英雄さんよ!」
整備兵はアスランの背中を叩いて乾いた音を響かせた。それに反応する事無く、アスランは目の前のムラサメに乗り込む。
エマとカツも、直ぐにムラサメのところに連れて来られた。整備兵から簡単な説明を受けた後、彼女達も臨戦状態のムラサメに乗り込んだ。
『エマさん、カツ君、準備は宜しいか?』
コックピットシートに腰を埋め、シートベルトを締めると直ぐにアスランからの通信が入ってきた。
「大丈夫です。…えっと――」
『アレックス=ディノです。このムラサメはオーブの最新型なので最初は戸惑うかもしれませんが、何とか私についてきて下さい』
「了解です」
アスランからの通信が切れ、それと同時に彼のムラサメが飛び立つ。そして、今度はカツが通信を繋げてきた。
『エマ中尉は可変機は初めてじゃないですか?僕にちゃんとついて来て下さいね』
「カツ!」
エマがヒステリックな声を上げると、カツは即座に通信回線を切り、アスラン機の後を追っていった。
カツはエマよりも可変機の操縦に自身があった。エマはリックディアスやガンダムMk-ⅡといったスタンダードなMSしか乗っていなかったが、カツは支援機型MAであるGディフェンサーや、ムラサメ同様の可変型MSであるメタスに乗った経験もあった。
故に、最初は間違いなくエマは戸惑うだろうと踏んで、日頃叱られている恨みを言葉に託したのだ。
「変形アーマーだって、基本は同じでしょ!エマ=シーン、行きます!」
カツの暴言に頭に来たエマは、声を荒げてムラサメを発進させる。好都合な事に、操縦系統は自分の世界のMSとそれ程変わらない。後はMAに変形した時の操縦感覚次第だが、カツにあんな生意気な口を利かれたのでは、上司としての自分の立場が無い。
この怒りを力に変え、エマは気合を入れてムラサメをMAに変形させた。