◆fNI.xrav.L8B 氏 氏_機動戦士ガンダムSEED EVOLVER_PHASE-01

Last-modified: 2012-05-27 (日) 04:59:35
 

「なんだよ……なんなんだよ、あんなのって……!」

 

灰色の巨塔が立ち並ぶ繁華街の路地。 本来ならば煌びやかな装飾や照明に照らされた看板が躍り、
窓から白い室内灯の明かりが漏れ出ているはずのその場所は、
まるでゴーストタウンに成り果てたかのように暗く、生気を失っていた。

 

「父さん……母さん……ミユ……」

 

その一角に蹲り、家族の名を呟く一人の少年。
あまりに衝撃的すぎる現実を前に、彼は何もすることができなかった。

 

“せめて自分に、家族を守れるだけの力があれば”

 

それは後に“ミネルバの鬼神”と畏れられる男とまったく同じ考えであることを、少年は知らない。

 
 
 

コズミック・イラ70、4月11日。
歴史上では、エイプリルフール・クライシスの10日後、カーペンタリア制圧戦の9日後、
そしてマルコ・モラシムがジンフェムウスに搭乗し多大な戦果を挙げた珊瑚海海戦の翌日であるが、
もうひとつこの日には歴史上に残る大きな出来事があった。

 

東アジア共和国国会議員、ユウヤ・イズミ殺害事件である。

 

親プラント的思想を持ち、後にヤキン・ドゥーエ戦役と呼ばれるこの戦いの
平和的・早期終結を求めていた彼は、エイプリルフール・クライシスによって
甚大な被害を受け暴徒と化した民衆によって襲撃され殺害されたのだ。
それと同時に彼の自宅にも暴徒が侵入し、当時在宅中だった彼の妻と娘に暴行を行った上で殺害した。
後に容疑者らは警察によって逮捕されたが、エイプリルフール・クライシスによる被害によって
心神喪失状態であったと判断され、その罪は不問となった。
また唯一生き残ったとされる彼の息子が行方をくらましたことで、
この事件はコズミック・イラにおけるミステリーのひとつとしてしばらくの間世を賑わすことになった。

 
 

そしてコズミック・イラ74、二度にわたる地球連合とプラントの戦いは終わりを迎え、
プラントにおいては「歌姫」ラクス・クラインが新評議会議長となった。
自らの信念に則った彼女の政策は歓迎する者もいる反面、逆に異を唱える者も少なくなかった。
それに対しプラントの国防組織たるザフトは英雄キラ・ヤマトを隊長、
アスラン・ザラを副隊長とした特務隊「ヘルヴォル」をコズミック・イラ75年に結成。
武力を以ってこれを弾圧した。

 

かつての核エンジンの発展系であるハイパーデュートリオン搭載機のうち、
稼働しているのがストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに限られる今、
二機に対抗できる機体、あるいはパイロットは存在せず、
プラント内における反クライン派は次々と姿を消していった。

 
 

機動戦士ガンダムSEED EVOLVER
PHASE-01「紅と黒」

 
 

それから3年後、コズミック・イラ77。

 

「……運動ルーチン接続、FCS起動、OS最適化完了、システム・オンライン」
多数のモビルスーツが並ぶ格納庫の中、一機のモビルスーツが低い駆動音を響かせ始め、
双眸に光が灯らせる。
固定アームから解放され、ゆっくりと開いていくシャッターの先へと巨人は一歩一歩進んでいく。
「ノワールストライカー、接続状態良好、電源供給及び武装認識正常」
その背には鋭角的な翼を模した形状のバックパックが装着されており、
機体のシルエットは見る者にどこか悪魔のような印象を与えるものだった。

 

ここ、地球連合軍キルギス基地においては、前大戦時からモビルスーツ向けの
新型駆動コンピューターを開発していた。
現在はアクタイオン・プロジェクトにおいて再生産されたストライクの強化機、
ストライクEにその駆動コンピューターを組み込み、稼働実験を行っている最中であった。
「GAT-X105EA+AQM/E-X09S ストライクノワール・アドバンスド、各部正常に稼働」
機体が完全に格納庫の外に出ると同時に、パイロットはVPS(ヴァリアブルフェイズシフト)装甲を展開、
フランス語で「黒」を意味する「ノワール」の名の通り、
ダークグレーだった装甲の色は漆黒をベースに、明灰と深紅を加えたトリコロールへと
瞬く間に染め上げられる。
「ヴァリアブルフェイズシフト、展開完了。 管制塔へ、こちらシリウス1、フェイズ1完了」
ストライクノワールのパイロットは報告を終えると緊張の糸がほどけ、大きく深呼吸をした。
口調こそ冷静に装っていたが、かつてこの基地を救った機体と同じ姿を持ち、
なおかつこの基地の研究成果を搭載した機体を壊すわけにはいかないと、内心は穏やかなものではなかった。
それを証明するかのように、彼の頬に一筋の汗が流れる。

 

「……しかし、あの時の“黒騎士”に乗れるとはな」

 

“黒騎士”というのは、かつてこの基地がザフトに襲撃された際、
それを撃退した第81独立機動群ファントムペイン所属のストライクノワールの事である。
ノワールは寮機のヴェルデバスター、ブルデュエルとともにザフト軍MS隊と交戦、そして殲滅したのだ。
そのような経験から、当時からこの基地にいた人間はストライクノワールを尊敬を込め
「黒騎士」と呼称する。
今回のストライカーパック接続状況での稼働実験においてわざわざノワールストライカーを準備したのも
それが理由である。

 

『おーい、ノーチェ、調子はどうだ?』
不意に通信ウィンドウが開き、そこには快活そうな若い男性の姿が映し出される。
地球連合軍の制服を着崩しており、どこか陽気な雰囲気を感じさせるその人物の名は、“ユキ・イズミ”。
今ストライクノワールに搭乗しているパイロット、ノーチェ・ノイモントの同僚であり、
彼自身もロッソイージスをベースにした「GAT-X303AAE ロッソイージス・エクシード」の
テストパイロットであった。
「問題はないけど、やっぱり緊張するよ。 なんといってもあのストライクノワールだからな」
『いいよなノーチェは、俺なんか“テトラパス”だぜ? テトラパスー』
ユキは栗色の毛髪に覆われた頭を掻き毟り、モニターの向こう側のノーチェを
羨望と嫉妬の入り混じった目つきで見つめる。

 

「テトラパス」とは彼がロッソイージスにつけた通称である。
VPS装甲展開時の色が茹蛸のように赤く、かつ手足がほぼ同形状なため
変形時は足が4本あるように見える事、その状態で放つビーム砲「スキュラ」を蛸墨に例えて
「4」を意味する「テトラ」と、「タコ」を意味する「オクトパス」を組み合わせて
「テトラパス」としたのだ。

 

「そういうこと言うなよ、イージスだって良い機体じゃないか」
『じゃ、変わってみるか?』「断る」
『うぉいっ!』
間髪入れないノーチェの返答にユキはわざとらしく転げる真似をしてみた後、ノーチェに突っ込みを入れる。
『なんなんだよオマエー、いくらなんでも答えるの早過ぎだろ!?』
「搭乗機は上が決めてるんだから、俺たちがどうこうできるわけないだろ」
口を尖らせ文句を漏らすユキを相手に、ノーチェは厳しく現実を告げるのであった。

 

しかし、この後に信じられないような“現実”が襲い掛かることを、この二人はまだ知らない。

 
 

『こちら管制塔、シリウス1、聞こえますか?』
「こちらシリウス1、通信状態は良好だ。 どうぞ」
ノーチェの乗るストライクノワールのコクピットに今度はキルギス基地の管制塔から通信が入る。
彼はまだ気づかなかったが、通信を送るオペレーターの声色にはどこか焦りが含まれていた。
予定通り、武装の試験を行うセカンドフェイズに移行せよという指示が入ると考えていたノーチェは
この後のオペレーターの言葉に驚愕することとなる。
『熱紋センサーが所属不明モビルスーツの反応を捉えました。
 基地はこれより第一種戦闘配備に移行します。
 これに伴い貴官のストライクノワール・アドバンスドも戦列に参加せよ、との命令です』
「何を言っているんだ、この機体はまだ――――」
稼動試験中で、と言う前に眼前にあった第2格納庫が紅い閃光に薙がれ吹き飛んだ。
その閃光は明らかにMS(モビルスーツ)あるいはMA(モビルアーマー)の火器のものであると、
ノーチェはとっさに判断した。
(アグニ、あるいはザフトのオルトロスか……!?)
「ッ……管制塔、敵の情報を!」
『敵は105ダガー、及びダガーLで構成された部隊のようですが、
 Nジャマーが濃いため詳細は不明です。 南西方向より接近中』
「了解した!」

 

ダガーで構成されているということは、恐らくその中にランチャーストライカーを装備した機体がおり、
かつナチュラルを見下す傾向のあるコーディネイター至上主義の狂ったテロリストではないという事だ。
だとすれば目的は何か? ―――考えうるのはこの基地で開発している駆動コンピューターぐらいだ。
MSそのものはコーディネイターが作り出したものとはいえ、PS装甲や小型ビーム兵器など
ナチュラル陣営の開発した武装や装備の一部にはコーディネイターの作り出した物を
上回る性能を持つものがいくつかある。
この基地で開発している駆動コンピューターも、もしかしてあちら側の技術を上回るものだったのだろうか。
そう冷静に敵を分析しつつ、ノーチェは再びオペレーターに問い質した。
「シリウス2から5は?」
『各員搭乗機に向かいましたが、メカニックによるとシリウス5のネロブリッツの起動に難航していると』
その報告を聞き、彼は心の中で「だろうな」と相槌を打った。
この基地で新型駆動コンピューターの組み込みなどを行った5機の機体のうち、
ネロブリッツの改造機「GAT-X207SRS ネロブリッツ・サーパス」はまだ改造を終えたばかりで
駆動実験を一切行っていないのだ。
さらに言えば、パイロットの人間性に若干の問題がある――――というのは機体の状態には関係がないので
ここでは割愛する。

 

ノーチェがノワールを南西方向へと進軍させると、霞む地平線の向こう側から
何機かのモビルスーツの姿を視認できた。
「報告通り、105ダガーとダガーL……しかし、あの塗装は……?」
オペレーターの報告に違わず、確かに敵機はダガーを中心に構成されているが、
塗装や装備が連合の制式仕様のものとは異なっていた。
先陣を切る隊長機と思われる機体の色は、白をベースに胸部や肩などを赤に、
脇腹や爪先、踵などを黒く染めたトリコロールだ。
バックパックにはエールストライカーを装備しているが、マニピュレーターにはソードストライカーの
対艦刀「シュベルトゲベール」らしき武装を携行している。
それ以外の機体は胸部と肩部を黒に、脇腹と爪先、踵を青に染めた、これまたトリコロールだった。
ノーチェの頭の中に、同じような塗装をした機体のシルエットがよぎったが、
臨戦状態であるこの状況下ではそんなことに思考のリソースを振ってはいられない。
生きるために、そして仲間のために、ここから先へ行かせるわけにはいかない。
「シリウス1、交戦《エンゲージ》!!」
フットペダルを踏み込み、ノーチェはノワールを滑らせるように敵部隊へと突貫させた。

 
 
 

「シックザール1よりアルバへ、進行状況の報告を」
『アルバよりシックザール1、順調に進んでる。 どうやら敵は気づいていないようだ』
「了解、引き続き作戦の続行を」
『了解』
白・赤・黒のトリコロールに染め上げられたダガーLのコクピットの中で、
若い男が仲間と通信を行っていた。
所々跳ねた黒髪に、まるで血で染め上げたかのような深紅の瞳。
知っている人が見ればすぐに誰か分かりそうなものだが、
MS同士の戦いというのは顔を突き合わせて戦うようなものではない。
「シックザール1より各機、俺たちの仕事は時間稼ぎだ。 無理だと思ったら離脱しろ」
『『『了解』』』
寮機に通信を送ると、彼は機体のマニピュレーターに保持させたシュベルトゲベールを振りかぶらせ、
ストライクノワールに切りかかった。
無論相手もバックパックからフラガラッハ3 ビームソードを抜き取り対抗、
二つの剣の実体部分同士が衝突し鍔迫り合いの状態となった。
するとすぐさま男はノワールに対し、ダガーLの膝蹴りをお見舞いした。

 

PS装甲あるいはその発展系を利用した機体はその特性上非常に硬いが、
反面衝撃が伝わりやすいという欠点を持つ。
即ちPS装甲にほとんど対抗できないジンやシグー、ディンにおいても
パイロットを衝撃で気絶あるいは殺害することで敵戦力を無力化することが可能であり、
この戦術は前大戦末期においてそれこそPS装甲の発展系を採用していた
フォビドゥンヴォーテクスやストライクノワール、ブルデュエルやヴェルデバスターなどに対し
ザフト軍が採用したといわれる戦術である。
なお「不殺」で知られるキラ・ヤマトがザフトのVPS装甲搭載機に対しレールガンを撃ち込み
無力化を図ろうとした例もあるが、コーディネイターゆえに身体が丈夫だったのか、
その機体のパイロットに大したダメージはなかったという。

 

体勢を崩したノワールにダガーLは再びシュベルトゲベールで切りかかるが、
ノワールに刀身が触れる寸前に刀を返し、峰打ちでコクピット部分に打撃を加えた。
「もう一度ッ!」
一瞬の暇も与えず、今度はシュベルトゲベールの切っ先をノワールの胴体に突き立てようとするが、
流石にこれ以上好きにさせてはくれないようで、ノワールはスラスターを吹かして
一旦後方へと下がっていく。
さらに基地の方からは応援と思われる2機のモビルスーツの反応が見受けられる。
このまま戦闘を続ければ、どんどん戦況はジリ貧となっていき、敗色濃厚になっていくのは
確実といえた。 しかしダガーLに乗るパイロットは紅い目を細め、
誰にも聞こえないような声で「計画通り」と呟いた。

 

「応援……ダガーLとウィンダム?」
二度にわたって敵ダガーLの物理攻撃を食らったノーチェは乱れた息を整えつつ、
敵と距離をとりレーダーに映し出された2機の味方機に目を向けた。
『おい、聞こえるかノーチェ!? 助けに来てやったんだから感謝しろよ!』
すると不意にウィンダムから通信が入り、耳障りな声が彼の耳を衝く。
今ウィンダムに搭乗しているやけに恰幅のいい黒髪の男、バッカス・ブーン・ドラブルは
本来ネロブリッツ・サーパスのパイロットとなる予定だったのだが、
如何せん機体の調整がうまくいかず、臨時にドッペルホルン装備のウィンダムで出撃したのだ。
もう1機の味方機、エールダガーLについては通信を送ってこなかったため誰がパイロットなのかは
判断できないが、連合の信号を発している以上は味方の誰かなのだろう。
「2機とも、俺の援護を――――!?」
ノーチェが通信回線を通じて指示を出そうとした瞬間、警報音と共にノワールのコクピットを衝撃が襲う。
しかし敵ダガー部隊はこちらに対し攻撃をしていない。 だとすれば。

 

「まさか……?」
『そうよ、そのまさかよ!!』

 

そう、ウィンダムと共に現れたエールダガーLがノワールを羽交い絞めにしていたのだ。
制式塗装を施されていたので思わず油断していたが、よく見れば発信している信号もキルギス基地ではなく
約3年前に陥落し、既に存在しないヘブンズベース基地のものであったのだ。
「おい、シリウス5ッ! 何故気づかなかった!?」
『い、いや、その……』
声を荒げるノーチェに気迫に押され、先程までの勢いはどこかへ行ってしまったのか
バッカスはまごついてまともな返答をすることができない。
「クソッ、使えない奴だ……ッ!!」
いつも態度だけは大きいくせに実力がそれに伴わない。
それがノーチェの中でのバッカスという人物の評価だった。
実際のところ、ノーチェやユキらが所属するシリウス小隊の中で一番のお荷物と言われても過言ではない。
「ここまでか……?」
ノワールが羽交い絞めにされている以上、錯乱状態のバッカスごときにこの状況を打開できるとは思えない。
事実、敵部隊のエール105ダガーのビームサーベルによってウィンダムの足を切断され、
彼はこの時点で戦力外になってしまった。
そしてシュベルトゲベールを持ったダガーLが接近してきた瞬間、ノーチェは死を覚悟した。
しかし、それと同時に制式塗装ダガーLが離れ、突撃してきた方のダガーLに蹴り飛ばされたノワールは
仰向けに倒れてしまった。
「なっ!?」
シュベルトゲベールを持ったダガーLはビームサーベルを抜き取り、刀身を発生させぬまま
ノワールのコクピットハッチギリギリのところにそれを突きつける。

 

『アンタに恨みはないが、ここで機体を捨てなければコクピットを焼く』

 

通信回線が開き、ダガーLのパイロットと思しき男がノーチェへ投降を促す。
「…………。 仕方ないか、クソッ」
悔しいが、ここでつまらない意地を張って命諸共ノワールを喪失するよりも、
一度退いて再び万全の体制で再戦を挑んだほうが懸命であるとノーチェは考えた。
コクピットハッチを開くと足早にノワールから離れ、彼は様子を伺う。
するとダガーLのコクピットハッチが開き、そこから出てきた若い黒髪の男がノワールに乗り移ったのだ。
そしてノーチェはその男の姿が自分の中のある記憶とリンクするのを感じた。
「あの男は……まさか」
前の大戦におけるザフトのプロバガンダ放送に映し出された、一人のエースパイロット。
プラント前議長ギルバート・デュランダルが提唱した計画、
それと同じ「運命」の名を冠す機体に搭乗していた男。
「赤服」を纏い「ミネルバの鬼神」と畏れられ、
一度はあの“キラ・ヤマト”のフリーダムすら撃墜した、その人物の名は――――――。

 
 

「―――――シン・アスカ」

 
 

ノーチェがノワールを放棄したのと同時刻、基地では次々とモビルスーツの発進作業が行われていた。
慌しく動き回るメカニック達に、基地中に響き渡る警報音。
管制塔もNジャマーが濃い中で状況把握に追われている。
「全兵装アクティヴ、オールウェポンズ・フリー、システム戦闘ステータスで起動……。
 おやっさん! そっちはどうだ!?」
『なんとか動けるようにしたが、無理はするんじゃないぞ!』
「了解!」
パイロットスーツを着込み、シートに座るユキはこの状況下において一種の興奮状態を感じていた。
訓練は何度もこなしてきたが、実戦に参加するのはこれが初めてだ。
3年前にこの基地へパイロット候補生として配属されて以来、彼はどこか心の中でこういう状況を
期待していたのかもしれない。 否、期待していたのだろう。
メンテナンスベッドから機体が解放され、頭部に大型のセンサーマストを装備した
「盾」の名を持つ巨人がゆっくりと歩み始める。

 

『にしても、あの子を先に出して大丈夫だったの?』
『誰も出さんよりはマシだろう、弾除けぐらいにはなる』

 

通信機から流れる声は、それぞれGAT-X1022R リインフォース・ブルデュエルと
GAT-X103APS ヴェルデバスター・ストレングスのパイロットだ。
先行して出撃したバッガスについて話しているようだが、ユキの耳にその声は届かなかった。
これから始まる戦いへの興奮はもはや抑えきれない。
深紅のVPS装甲を展開したロッソイージス・エクシードの中で、彼は自信満々に発言する。

 

「ユキ・イズミ、ロッソイージス・エクシード、行きますッ!!」

 
 

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