ウルトラマンデスティニー_第17話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 03:57:54

超合成獣ザムザザー、人造潜水獣アビュス、汎用合成兵器ウィンダム 登場





─三日前─



「ネオ・・・ごめんなさい、ステラ失敗しちゃった・・・」

「・・・いや、いいさ。元々我々のロジックとはかけ離れた存在だ。

 それよりステラが無事で良かったよ」

「だけどどうするんだよ?スティングは作画崩壊とかブロックワードがないとかうわ言ばかりでもう駄目だぜ」

「安心しろ。俺は不可能を可能にする男だ、もう次の作戦を考えてある。

 今回はアウル、お前に頑張ってもらうぞ」

「待ってました!へへー、暴れてやるぜ!」



そして、三日後・・・モルゲンレーテ社格納庫

(俺があいつらを守ってやらないとな・・・しっかりしろよ、ネオ)

そう自分に言い聞かせ、ネオは愛用の仮面を頭に被った。







─オーブ沖─



赤が広がる海上では、激しい戦闘が続いていた。

全速で飛び回るインパルス、その後ろをザムザザーはついて回る。

(くっそー!なんなんだよコイツはあーっ!)

徐々に距離を詰められていると気付いたウルトラマンは動きを止め、突っ込んできた敵に後ろ回し蹴りを放つ。

だが、ザムザザーの前足から生えた鉤爪がそれを弾き、力負けしたインパルスは宙を舞うこととなった。

(なんてパワーとスピードだよ、こいつは!?)

光線系は全て返され、格闘でもフォースインパルスを凌駕している。

エネルギーの少ない状態ではまともに戦うことも難しかった。

「メイリン!早くオーブに援軍を!」

怪獣に追い掛け回されるインパルスを見てタリアが急かす。

「それが、連絡が取れないんです!これは・・・アビュスのジャミング!?」







─実験機格納庫─



作業員も立ち去った暗い格納庫を歩く音。

口以外を覆い隠すマスクを被ったその顔は間違いなくネオのものだ。

「ふぅ・・・こうも簡単に入れると張り合いがないな」

残念そうに言いつつコンソールに近づいてパネルを操作する。

しかしそのネオに声をかける者がいた。

「そう・・・だったら少しは面白くしてあげようかしら?」

真後ろから銃を構える音。振り向かずにゆっくり手を上げようとするネオ。

格納庫の入り口にはマリューが立っていた。

「おいおい・・・参謀様がこんなところにいていいのか?」

「整備員が心配しててね。えらく気に入られてたわよ、ファントムペインのネオ・ロアノークさん」

「ちっ、人に好かれるってのも大変だ、なっ!」

「うっ!?」

上げかけた手をいきなり下ろしパネルを押すネオ。

それと同時に格納庫のハッチが開き、差し込む夕日がマリューの眼を直撃した。

「これからは夜目に慣れておけよ、子猫ちゃん!」

「!?あ、あなたは・・・!」

聞き覚えのある言葉に耳を疑うマリュー。

しかしその時にはネオは既に実験機に飛び乗っていた。

「さてと・・・ネオ・ロアノーク、発進する!」

格納庫から飛び立つザフトイーグルW。

マリューは慌て、格納庫から脱出した。







─ミネルバ─



『やあミネルバ諸君。久しぶりだな』

出撃した友軍機と回線を開いたミネルバクルーはモニターに出た顔に仰天した。

怒ったタリアが食ってかかる。

「ネオ・ロアノーク!?貴様が何故ここにいる!その機体はなんだ!?」

『元気そうで何より。しかし同じ顔ばかり見るのも飽きてきたところだ。寂しいがそろそろお別れの時だと思ってね』

「艦長!変態仮面の機体に続いて14機のザフトウィングが発進しました!そのどれもが無人機です!」

「何だと!まさかこれもお前たちの仕業か?」

『そのとおり。これはオーブの開発した無人兵器でね、私の乗る機体の指令しか今は聞かないよ』

「なんだと・・・!」

『フフフ、さあそれでは君達にとって最後のパーティの始まりだ。慎ましくいこうじゃないか!』

ネオ率いる無人機の編隊が海に差し掛かった時、海中から飛び出た白い球体が各機体にくっ付いた。

「あれはスフィア!?」







─オーブ海上─



タリア達の見守る中、ザフトマシンとスフィアは融合しその形状を変えていく。

そしてそれは空中で人型に落ち着いた。

「これがウィンダム、君達を葬る為の合成兵器さ。ついでに言うとそのザムザザーも君達の実験機から出来たものだ」

その体色は青と白でかためられ、各部に複数のバーニアを備えており、それぞれの腕先には銃器と盾が付いている。

「これで数ではこちらが有利になったわけだが・・・君達も援軍が欲しいところだろう。だがね』

赤紫が目立つのネオ機が反転した。

他のウィンダムもそれに倣い反転、オノゴロ島へ右腕のライフルを向ける。

「それでは面倒なんだよっ!』

その声が引き金となり、15機のウィンダムは一斉にビームを発射した。それはオノゴロ基地のカタパルトに突き刺さり、戦闘機を焼く。

「さて次は・・・ウルトラマン、君の番だ」

ネオのその言葉が合図となり、今度はウルトラマンに照準を合わせる。

そして、ライフルが火を噴いた。

「ハッ!」

降り注ぐビームの雨から逃れるように上昇するインパルス。その顔に巨大な影が落ちる。ザムザザーがそこにいた。

(し)

まったと思う間もなく左右の爪が襲い来る。

そしてその片方が巨人の右足をしかと捕らえた。

「・・・・・・」

そのまま一気に下降するザムザザー。遠ざかっていく夕焼け、近づいてくる水面。

そして、大きな水音が轟いた。

「さて残りを片付けるとするか・・・仕上げは任せたぞ、アウル」

『おーまかせっ!』

アウルの陽気な声を聞きながら、ネオは勝利を確信していた。



海に叩きつけられた衝撃はシンの想像を超えていた。

体がバラバラになるような痛みに意識が遠のく。

(・・・くらい・・・)

深みに沈むにつれ、周囲から色が消えていくような錯覚に襲われる。

いつの間にか自身の色までも黒に溶けていた。

「ハッハアーッ!もらったぁ!」

海中用に変形したアビュスが泡を吹き上げる音が聞こえる。

闇の中、ビームランスの輝きが増した。







─ミネルバ─



「かかか艦長ーっ!ウィンダムがこちらに!」「お姉ちゃん!逃げて!」

騒ぐアーサー達の後ろで、タリアは一人自分の膝を見ていた。後悔の念が頭に浮かぶ。

(まさかここまでの戦力差があるとは・・・どうする?徹底抗戦か?この数では結果は見えている。しかし、いや・・・)

クルー全員の命が背中に圧し掛かってくる。

だが下手に逃げればオーブが危険に晒される。タリアは顔を上げた。

「皆、よく聞いて欲しい。皆は脱出の用意をしてくれ。私はこの艦で奴らを出来るだけ引き付けようと思う・・・」

その場にいた全員が絶句した。アーサーが何とか声を振り絞って止めようとする。

「そんな・・・だ、」

『駄目です!諦めては!』

ディレクションルームに響き渡る大声。その一瞬後、ミネルバに最も近い位置にいたウィンダムの頭部が爆発した。

「友軍機からの通信です!でもこの声・・・」

困惑するメイリン。そして見覚えのない機体が上空から舞い降りた。

『アスラン・ザラ、イーグルS、これよりミネルバ隊を援護します!』







─オーブ沖・深海─



(負けるのか・・・俺は・・・こんなところで・・・)

守れなかった祖国を想う。

その時、シンの頭に幼い頃の怒りが込み上げてきた。

(また守れないのか?・・・力があれば・・・もっと、もっと俺が・・・強ければ・・・!)

自らへの苛立ちや怪獣への憎しみ。それらがシンの中で膨れ上がり、そして。

何かが、はじけた。

「ウンッ!」

体を立て直し敵を見据える。人型に変形するアビュスの動きがスローに見えた。

頭がクリアになっていくのを感じる。

「終わりぃっ!」

アビュスが突き刺そうと槍を打つ。絶対のタイミング。

しかしインパルスはその柄を掴みぐいと槍ごとアビュスを引き寄せた。

(こんな・・・こんなところで俺はぁーっ!)

残った力を集中し、それを手刀に乗せてアビュスの胴を一刀両断。

爆発の光が、太陽のように深海を照らした。







─海辺の孤児院─



アカツキ島では、マルキオが海に向かって佇んでいた。

その顔は、遠く離れた戦場を向いている。

「まさか・・・もうSEEDが・・・!?いやこれは・・・」







─オーブ沖─



「アスラン・ザラですって!?どうして貴方がここに・・・それにその機体は」

「話は後だ、ルナマリア。それより今は協力してこの状況を切り抜けよう!」

冷静に返すアスランに、レイが疑うような声で言う。

「たった一体敵が減ったとはいえ、この数だけで勝てると思うのか?ウルトラマンももういないというのに」

言い終えた時、海中が光ったかと思うと大きな水柱が天高く昇り立った。

その中には大きな影が見える。

「まさか・・・!」

「ウルトラマン・・・?それとも」

その場にいる全員が、敵味方を忘れたかのように視線を水柱に集中していた。

そして水に隠れた巨体が動く。

ガッ!

音がして、最も水柱の近くにいたウィンダムがよろめき水に落ちる。

その胸を、アビュスのビームランスが貫いていた。

「あれは・・・!」

即座にミネルバからデュートリオンビームが放たれる。

その先にいたのは、全身を血のように赤く染めたインパルス。

「ウルトラメタモルフォーゼ・・・アンビデクストラスフォームッ!」

両手から生まれる光の剣。

ウルトラマンはそれの柄部分を合体させて一本の長剣に変えた。



「くそ、全機もう一度奴を沈めろ!・・・おいアウル!無事か!?」

ウルトラマンの相手をウィンダムに任せてアウルに呼び掛けるネオ。

返事の代わりに水面に白い球体がプカリと浮かんだ。



「デヤアアアーッ!!」

剣を回転させてウィンダムの群れに自ら飛び込むインパルス。

旋風が巻き起こり、三機のウィンダムがバラバラになった。

「ッ、ク!」

上方のウィンダムから掃射を食らい、下降するウルトラマン。

二機のウィンダムが全速でそれを追う。

しかしウルトラマンは更にスピードを上げた。

音速を超える速度。眼前には海が広がっている。

「海に飛び込む気!?」

メイリンは本気でそう思った。それほど猛烈なスピードだった。

もう体を持ち上げても間に合わない。

「ヅェアーッ!」

その時、ウルトラマンがバリアを展開した。それも海面スレスレのところでだ。

バリアは海と反発し、スピードを殺す。

インパルスはそれを利用し上空へ舞い上がり、ウィンダムはそのまま海に衝突し爆発していった。



「俺たちも行こう!二人とも力を貸してくれ!」

「しょうがないわね!」「このチャンスを逃す手はないな」

アスランの掛け声で一気呵成に出るイーグル三機。イ

ンパルスを囲むウィンダムを背後から攻撃する。



「お前たち!ウルトラマンはもういい!ミネルバを沈めろ!」

ウィンダムに指示を出すと、ネオは自ら機体を飛ばしてウルトラマンに挑みかかった。

「これ以上の負けは許されないんだよ!」

「ダアアアーッ!!」

インパルスも剣を両手で振り回しながらネオ機の懐へ突っ込む。

だがそこへ巨大な鉤爪が。ザムザザーだ。

「ウアアーッ!」

構わず斬りつけるウルトラマンだがザムザザーはバリアを展開しエクスカリバーすらも弾き返した。



その様子を見たアスランはあることに気付いた。

「あれは亜空間バリアじゃないな・・・?まるで光波防御帯のようだ」

「そう言えば、ネオがあの怪獣も実験機から作ったと言っていたな・・・メイリン何か情報はないか!」

メイリンに解析を願うレイ。程なくして答えが返ってきた。

『先日モルゲンレーテの陽電子リフレクター実験機が海で消失した事件があったようです』

「それを怪獣化させたのか・・・?怪獣がリフレクターを発生させている部分は分かるか」

今度はアスランの言葉を聞いたメイリンが、すぐにデータを分析する。

『前面にある三本角から展開されているようです!』

「よしわかった!隙を見てそこさえ潰せれば勝機はある」

「簡単に言うが、フォースインパルスと同じかそれ以上の速さで動き回るあいつの隙を突くのは難しいぞ」

勢いに乗るアスランに、レイが反論する。

だがアスランは自信を持って言う。

「大丈夫だ。この機体は市街地戦を考慮された為命中精度がずば抜けて高い。三人で力を合わせればあいつにも勝てる!」

「三人で力を・・・どういうことなの?」

「このセイバーはイーグルWの代わりに他の機体と合体することができる。出力もこれまでより上がるはずだ」

「それで俺たちの力を貸せということか・・・だが・・・」

ちらりとミネルバを見るレイ。それに気付いたかのようにタリアが通信を開いた。

『レイ、ルナマリア。私達のことは構うな。この程度の数なら何とか持ちこたえてみせる』

「・・・わかりました。アスラン・ザラ、今だけは協力して敵を討つぞ!」

「ありがとう・・・ザフトイーグル合体する!」

合体し大型戦闘機となったイーグルはミネルバを残しインパルスの元へ向かう。

その後ろでは爆音が響いていた。



「くそっ、化け物かお前は!?」

目の前の相手に向かって毒づくネオ。ウルトラマンは依然として健在だった。

「ビームを何発も命中させているのに全く倒れる気配がないとは!・・・うっ!?」

インパルスへの不意打ちが、後方からの熱線で中断される。イーグルが高速で迫っていた。

「くそっ・・・潮時かっ!」

ネオは舌打ちをすると海面に浮かぶ白い球体の元へ急いだ。

インパルスはそれに気付かず戦い続けていた。





「どうする、レイ?」

「ここで奴を逃がすわけにはいかない。もちろんネオを・・・なにっ!?」

インパルスが剣を二つに分け、頭上に掲げた。

そしてそれをクロスさせるとザムザザーへ振り下ろす!

「デヤアアーーッ!!」

渾身の力を込めた一撃をザムザザーも全力で弾くが、その力は想像を超えていた。

ザムザザーのバリアも一瞬消えてしまったのだ。

(チャンスは今しかない!)

全力の一刀を止められ体勢を崩すウルトラマンの肩越しに、狙いを定めるアスラン。

先頭のセイバーにエネルギーが集束する。

「ハイパートルネードサンダー、発射!」

イーグルの先端部から発した雷の矢は、ザムザザーのオレンジ色の角を破壊した。

「・・・!!」

「・・・ハアッ!」

思わずのけぞるザムザザー。その顔面に、二つの光が突き立てられた。

ザムザザーの眼から光が消える。

「ザムザザーが・・・!?そんな馬鹿な!」

アウルを拾い上げたネオはザムザザーの敗北を見て驚愕していた。

そこへ多数の機影が近づいてくる。

「オーブ軍か・・・!くそっ何故だ・・・何故勝てない・・・!」

ウィンダムの数はもう半分を切っている。

ネオは、奥歯をギリリと噛み鳴らして最後の指令を出した。





─その夜・オノゴロ戦艦ドック─



戦いから数時間後・・・ミネルバはオノゴロ島へ戻ってきていた。

幸いにも死者は出なかったが船体は激しく傷ついたからだ。

ザムザザーに撃破された機体のパイロットも全て回収され無事だった。

もちろんその中にはシンも含まれている。

「シン、体はもう大丈夫なのか?」

体を引き摺りブリーフィングルームへ来たシンにレイが耳打ちする。

「艦長が集合しろって言ったんだ、これぐらいの傷は言い訳にならないさ」

そう、ミネルバのクルー達は艦長の命でここに集まっていた。

その時、皆の中心に立ったタリアが口を開いた。

「皆、今日はよく頑張ってくれた。今回の戦いはミネルバにとってかつてない危機だッたと思う」

「シンは早々に海に落ちたけどね」

ルナマリアの小声にムッとするシン。

タリアの言葉は続く。

「そこで今回の勝利に最も貢献してくれた者を紹介したいと思う・・・入りたまえ」

え?という顔をするシン達。その後ろでドアが開き、一人の人物が部屋に入ってきた。

「今日付けでこのミネルバに配属が決定した、アスラン・ザラです、よろしくお願いします!」

そう言って、アスランは目を丸くしているクルー達に小さく頭を下げた・・・







全員揃ったミネルバ隊。

その頃クリオモス島のサミット会場では新たな計画が発足していた。



次回「戦士の条件」