宇宙合成獣ジオモス、汎用合成兵器ウィンダム 登場
気がつくと、そこはミネルバの司令室だった。
周りにはいつもの顔ぶれが揃っている。
「みんな・・・?どうしたんだ一度に集まったりして。艦長?」
「シン・アスカ隊員はこれよりこのミネルバを降りてもらう!」
「!?何言うんだいきなり!」
「シン、あなたの戦績を見てみなさい。これまでの戦いで勝利に貢献したことは何度あった?」
「シン。お前は俺達・・・いやこの艦にとってお荷物以外の何者でもない。今すぐここを去れ」
「なっ・・・ルナ!レイ!どうしてそんなこと・・・俺がいなくなったら」
「安心しろ。お前の代わりは俺がやる。代わりと言ってもお釣りがくるほどだがな」
「アスラン!くそっ、よってたかってどういうつもりだ!第一俺は本当はなあ・・・!」
「ウルトラマンインパルス。それがお前の正体か?」
「どうしてそのことを・・・?」
「自分はウルトラマンとして戦っている。だから他の事はいいのか。それともインパルスが本当の自分だとでも?」
「や、やめろ・・・俺はそんなつもりは・・・」
「お前がいくら変身して頑張ろうと誰もそれを見ちゃいない。ウルトラマンでないシン・アスカに価値はない。」
「やめろーーーっ!!!」
ジリリリリリ
ハッと開いた目に映るのは自分の部屋の天井だった。
口は絶叫の形のまま固まっている。
「なんて夢だよ・・・」
─ミネルバ・ブリーフィングルーム─
「シン・アスカ隊員はこれよりミネルバを降りてもらう」
「そ・・・それってクビですかぁ!?いくら俺の戦績が悪かったからって・・・」
艦長に呼ばれたシンが聞かされた言葉はまさに夢のとおりだった。
正夢だったのかと唖然とするシンだが・・・
「勘違いするな!まだ続きがある。お前には月面基地ガロワでテスト機のパイロットをしてもらうこととなった」
「え、ミネルバのお荷物だから辞めさせられるんじゃないんですか?」
「馬鹿者!その寝惚けた頭を洗ってすぐにガロワへ行け!」
タリアに叱られ急いで部屋を出ていくシン。
ルナマリアはその後ろ姿を寒い目で見送った。
「全く何言ってんだか・・・だいたいシンの戦績でクビならハイネはどうなるのよ、ねえ・・・ってあら?」
「ハイネならいないぞ。被撃墜率があまりにも高い為パイロット養成機関へ逆戻りになったらしい」
「・・・こりゃうかうかしてらんないわね。ま、ハイネは実戦でなけりゃ優秀だから直ぐ戻ってくるだろうけど」
─シンの自室─
「うん、そうなんだ。だからしばらくは連絡も出来ないと思う。ああ、大丈夫さ」
ベッドに寝転がり携帯を耳に当てて親しげに会話しているシン。
しかしその穏やかな顔に少し陰りが見えた。
「・・・なあ、父さんの顔覚えてるか?・・・いや、いいんだ別に。ほんとだって。あ、誰か来たから、じゃあ!」
ノックの音に電話を切るシン。
直後に、ロックを外したドアからアスランが入ってきた。
「なんだ電話してたのか。邪魔したな」
「いいですよもう・・・それより何の用ですか」
シンは携帯をなおし、ベッドの上に座りなおす。
椅子もすすめないところを見るに、立ち話で終わって欲しいようだ。
「落ち着いてるようだな。一ヶ月間も艦を離れてテストするというのに」
「俺がその気になればテストなんて一週間で十分ですよ。あっという間に終わらせてやりますよ」
「自信満々だな。テスト責任者のトダカ一佐は優しいが厳しい人だぞ。頑張れよ」
アスランの励ましに、シンはそっぽを向いて答えた。
「誰だろうが関係ありませんよ・・・それより、その頭に乗ってるの、なんです?」
「ハロハロー!シン、ゲンキ!」
「これは・・・頼むから気にしないでくれ・・・俺には何も見えてないし、感じてもいないんだ・・・」
「大変そうッスね、そっちも・・・」
─ディレクションルーム─
「シン隊員、発進しました」
しばらく後、クルー達は宇宙へ上がる光点を見送った。
「これでしばらくは静かになりますね」
「そうとは限らないぞ。先ほど、ファントムペイン包囲作戦が発動した」
OMNIは遂にファントムペイン撃滅を宣言した。
地球軍が追い込み、宇宙で一網打尽にする作戦を立てたのである。
そしてミネルバもドミニオンと共にファントムペイン追撃の為地球に留まっていたのだった。
「これで作戦は最終段階に入ったことになる・・・私達も宇宙へ上がることになるかもしれんな」
─月面基地ガロワ─
基地についたシンは、いの一番にトダカのもとを訪れた。
「シン・アスカ、ただいま到着いたしました!」
「よく来てくれたね。君がシンか。私はアマギ。そしてこちらがトダカ一佐だ」
シンを出迎えたのは恰幅のいい男アマギだった。
そしてアマギが部屋の奥で座っている中年の男性の所へ誘導する。
「初めまして!シン・アスカです!」
少し力み気味に挨拶をするシン。中年の男は椅子を回転させてシンと向き合った。
「・・・君とは以前、会ったことがあるんだがね」
「え?」
キョトンとするシン。その肩にアマギが手をかけた。
「シン君、疲れているだろう今日は休むかい?」
「あ、いや・・・時間がありません。早速テストをさせてください!」
─格納庫─
油と汗の匂いが漂う格納庫。
その中心にそれはあった。金色の塗装をされたその機体には百の文字。
「さあシン君。これが君の乗ることになる、」
「プラズマ百式。三ヶ月前に木星付近で発見された、ネオマキシマを超えるゼロドライブエンジンを搭載した唯一の機体」
「知っていたのか。そう、秒速30万kmつまり光の速度で飛ぶ事のできる、ゼロドライブ計画の要。君の父親の乗機だね」
「そんな顔も覚えてない人のことはいいです・・・それより始めましょう、ゼロドライブ計画を」
アマギが言いかけた言葉を断り、シンはテストの開始を急かす。
アマギはその様子に戸惑いつつも頷いた。
『シン君。これは今まで君が乗ってきたどの機体よりも扱いにくいはずだ。くれぐれも油断しないでくれ』
管制室からの通信に答えながら、シンはコクピットの中を見渡した。
(安全装置の類が見当たらない。どの装置もむき出しにされたままだ・・・まさに速さのみを追求したってわけか)
『プラズマ百式、発進準備完了』
「了解・・・プラズマ百式、発進するっ!」
発射口から勢いよく飛び出すプラズマ百式。
それはすぐに月の引力を振り切って空で黄金色に輝いた。
(・・・発進速度はイーグルと同じか。この分なら)
少しずつ速度を上げていく。だが思ったように加速しない。
これでは臨界速度に達するには時間がかかる。
『よし、いいぞシン君。いい調子d・・・おいっ!よせ!早まるな!』
アマギの声が変わる。
シンが予定よりも早くスロットルを全開にしたのだ。
(こいつに慣れさせる為にゆっくり動かしてんだろうけど、俺はそんな柔じゃない!)
プライドを傷つけられたと思ったシン。
だがその行動は軽率だった。
「くっ、こんなもんなのか?これじゃあ・・・・・・っ!?」
シンが異常を感じた時には遅かった。
一定の速度を越えた瞬間、百式は急加速を開始、圧倒的なGがシンに加わったのだ。
『うっ・・・・ぐ!がああーーっ!!あ・・・・・・』
「シン!シン!しっかりするんだ!」
「速度臨界まであと5・・・4・・」
管制室にシンの絶叫が響く。
それが一瞬止んだ時、トダカが初めて口を開いた。
「・・・パイロットの状態は?」
「・・・気絶したようです」
「オートパイロットに切り替えろ。プラズマ百式を帰投させる」
─医務室─
「・・・んぅ・・・」
機体から下ろされた後、シンはすぐに医務室に運ばれた。
白いシーツの敷かれたベッドから小さな呻き声が漏れる。
『ねえ父さん!どうして行っちゃうんだよ!明日は俺の誕生日じゃないか!』
『シン。父さんが行かないと困る人がたくさんいるんだ。わかるだろう?』
『わかんないよ・・・父さんがいないと俺やマユが困るよ!父さんは俺達が大事じゃないの!?』
『シン、父さんは必ず帰ってくる。そしたら母さんの分も遊んでやるから・・・』
それが、シンが父を見た最後となった。
そして父が行方不明になったという実験こそが・・・
「ゼロドライブ計画・・・なんて無茶苦茶なんだよ・・・こんなものに父さんは命を・・・」
─宇宙─
宇宙では、上がってくるボギーワンをボルテール率いる艦隊が待ち構えていた。
先頭にいるのはイザークの乗るイーグルだ。
「イザーク、奴ら地球でウィンダムを全て吐き出しちまったらしい。裸同然だぜ」
「よし、降伏勧告に応じない場合、攻撃を開始する。奴らも今日で終わりだ!」
号令をかけるイザーク。
しかし、後方で待機している旗艦ボルテールから通信が入った。
『た、隊長!大変です!エンジンが急に利かなく・・・!』
「どうした!状況を説明しろ!?」
『何者かが我が艦のエンジンに取り付いた模様です!このままでは艦全体が!』
「くっそうこんな時に・・・!撃ち落せ!無理なら・・・総員脱出しろ!」
「イザーク!ボギーワンが大気圏を突破したぞ!どうやら降伏する気はないみたいだ!」
「こうなったら我々だけでも・・・!」
イザーク達が攻撃を仕掛けようとした時、ボルテールの乗組員からまたもや通信が。
『隊長!今すぐその場から撤退してください!奴はボルテールのエンジンを取り込んで・・・!』
イザーク達が後方に目を向けると、ボルテールのあった場所には見慣れぬ黒い塊がいた。
「なんだ、あれは・・・!?」
「ガシャアアア!」
一瞬見つめていると、黒い塊の上部分が光り、幾条もの雷のようなものが溢れ出た。
「!まずい、他の艦隊をここから退避させろ!」
その雷は何隻もの艦のエンジンを直撃、行動不能に陥らせていく。
それを尻目にボギーワンは前進を始めた。
「ボギーワンが!」
「させるか!・・・うわ!?」
黒い塊が全身に光を溜めたかと思うと、体中から電撃を放った。
それはイーグルの電子機器すら麻痺させてゆく。
「くそ動かん!おのれ、おのれええぇ!!」
イザークが吼える。
エンジンを失ったボルテールの残骸と、動けない艦隊を残し、黒い塊とボギーワンは消えていった。
─月面基地ガロワ─
あれから二週間以上が経った。
シンは連日テストを続け、そしてその度に気絶を繰り返した。
「はあ・・・はあ・・・」
体力失っていくだけの毎日。
溜まった疲れは一晩寝た程度ではとても癒えないほどになっていた。
「シン君!今日はもうやめるんだ!これ以上やっても体を壊すだけだ!」
ゼロドライブに突入するには、臨界速度を15秒以上保つ必要がある。
シンはまだ一度もそれに成功していない。
「はあ・・・父さんなんかに負けて、たまるか・・・!」
そしてそのゼロドライブを突入したただ一人の人物、それこそがシンの父親、カズマ・アスカだったのだ。
「君が悪いわけじゃない、カズマが特別だっただけさ。それよりまず体力をつけるんだ。何か食べれるかい?」
シンが食堂に着いた時、ちょうどトダカも食事の最中だった。
「・・・・・・」
トダカはシンを一瞥すると、また食事に戻る。
シンはアマギの支えを断り料理を取ってテーブルに座った。
「・・・ご馳走様・・・じゃあ俺はプラズマ百式に乗らせてもらいます」
フラフラとした足取りで食堂を後にするシン。
それを見届けたトダカがアマギに言った。
「アマギ、すぐに看護兵を向かわせろ。直に薬が回って倒れるはずだ」
「ま、まさかシンの食べ物に眠り薬を!?その為にシンに食事をさせたのですか!」
「・・・・・・」
黙って席を立ち、廊下に出るトダカ。
その足で格納庫へ向かった彼が見たのは、よろめく足で機体へ歩くシンだった。
「シン・・・!お前、何故休まない」
シンに駆け寄り、肩を掴む。
シンはそれを振り払おうとするが、トダカは強引に自分の方に体を向かせる。
「・・・はー・・・ー・・・俺は・・・まだ・・・」
眠り薬は効いている。
その証拠に目の焦点があっていない。少し揺さぶられただけで頭がガクガクと揺れる。
「馬鹿な奴め!いいか!体力が限界の状態では精神力が物をいう!だがなんだその様は!自殺したいのか!?」
シンの目を見て叱るトダカ。
それはシンが初めて見たトダカの怒る姿だった。
「離せ、よっ・・・!ふざけんな、俺はこいつに、乗るんだ・・・父さんを、越えてやる・・・!」
「貴様はまだそんなことを言うのか!そんなちっぽけなことで、こいつを乗りこなせるものか!」
暴れるシンを突き放す。
シンは踏ん張ることも出来ずに尻餅を着いた。しかしゆっくり立ち上がると歩き始める。
「俺はカズマの実験の時もいた。あいつは、お前のような馬鹿じゃなかった!今のお前は死ににいくようなもんだ!」
「父さんのことは、関係ないって言ってるだろっ!」
血走った眼でトダカを睨むシン。
殺気すら感じるその眼のまま、シンはプラズマ百式に乗り込んだ。
「いいさ・・・じゃああんたと勝負だ・・・こいつを乗りこなせばいいんだろ!?やってやるってんだよ!」
「プラズマ百式、発進っ!」
発進と同時に加速を始める。月を離れて、スロットルを一気に開く。
もうすぐあのGが来るはずだ。
『父さん。父さんはどうしてそんなに頑張るの?』
『シンもいつかわかるさ。男には命を賭けてもやるべきことがあるものなんだ』
ドン!
一瞬で速度が臨界付近まで上がる。
Gがシンを真正面からぶちのめしに来る。
「死んでたまるか・・・!こんな、こんなものに命を賭けてやるもんかああーーっ!!うわあああああーーーっ!!」
魂を振り絞るような絶叫。それは止むことなく続く。
速度は既に臨界だった。
「速度臨界・・・7・・・8・・・9・・・10・・・」
「・・・もう十分だ。速度を落とし、基地へ帰投しろ」
「へへ・・・ざまあみろ・・・」
プラズマ百式がカタパルトに戻ると同時に、シンは深い眠りの底へ落ちていった。
─医務室─
シンは夢の中にいた。
幼い頃何度も見た夢。空はシグーの大群で埋め尽くされ、黒い雲が光を奪い去った。
『母さん・・・マユ・・・誰か・・・誰か助けて・・・父さん・・・』
爆風で吹き飛ばされた体が上手く動かず、蚊の泣くような声で助けを呼ぶ小さな自分。
何とか元いた場所へ戻ったシンが見たものは、無残に変わり果てた母親の欠片だった。
『うっ、うわあああーーーっ!!わあーーっ!わああああーーっ!!』
いつもここで夢は終わる。
だが今日はそれで終わらなかった。放心したまま時間だけが過ぎていく。
『おい!君!しっかりするんだ!おい!こちらトダカだ!早く来てくれ!』
不意に、肩を揺さぶられて後ろを振り向く。
オーブの軍服を着た男が、自分を見下ろしていた。
『よかった・・・無事だったか・・・もう大丈夫だ、もう大丈夫だからな・・・』
そう言って男は自分の手を優しく握った。程なくして担架に乗ったマユが目の前を通り過ぎていく。
シンの目に、光が戻った。
「・・・そうか・・・あの時、俺を助けてくれた人だったんだ・・・」
─格納庫─
眠りすぎた所為か、脳味噌が転がるような感覚を覚えながらシンは格納庫へ向かった。
プラズマ百式が心配だったのだ。
(無茶な運転したからな~。もしかしてどっか壊れたりしてたら・・・あれは)
証明の少ない格納庫へ入った時、プラズマ百式の前に二人の人影が見えた。
正体を確かめようと近寄っていくシン。
「シンはよく耐えています。この調子なら、きっとゼロドライブも成功するでしょう」
アマギの声だ。
言葉遣いからして話している相手はトダカで間違いない。
「アマギ・・・俺はシンをプラズマ百式から降ろそうと思っている」
「ど・・・」「どうしてですかっ!!」
シンの登場に、慌てて振り向く二人。
シンは爆発寸前だ。
「いたのかシン・・・聞いたとおりだ。お前はパイロットを辞めてもらう。いや、この計画自体中止する!」
「どうして!俺はちゃんとやったじゃないですか!」
「俺は、お前がプラズマ百式に耐え抜いた時恐怖したよ。またあのような事故が起きるのかとな」
「俺が父さんのようになることが怖いんですか!あなたは臆病者だ!!」
トダカの弱気な発言を罵倒するシン。
トダカは臆せずに言う。
「プラズマ百式は人を殺す!カズマは俺の親友だった。今度はその息子に死を覚悟させるなど俺には許せん・・・」
「・・・!」
「ミネルバには連絡をしておいた・・・休んだら、帰るがいい」
くるりと背を向けて格納庫を出ようとするトダカ。
その背中に、シンの声がぶちあたった。
「トダカさん!俺は、あんたと勝負するって言いましたよね。なら、決着をつけませんか」
「プラズマ百式、発進しました」
『最後のテストで俺がゼロドライブに成功すればこの計画は続ける。もし失敗すれば・・・』
(シン・・・お前は何の為に空を飛ぶ?劣等感や見栄だけでは、光は応えてはくれんぞ・・・)
─ミネルバ─
「あーあ。まったくもう、ジュール隊がヘマしてからというもの余計な仕事増えちゃったわ」
ミネルバは宇宙にいた。
消えたファントムペインと謎の怪獣の捜索が目下の任務だ。
「・・・・・・はあ・・・あいつしかいないと思ったんだが」
「どうしたんですか艦長。シンもいないのに溜息なんかついちゃって」
「さっき連絡が来た・・・もうすぐ、シンが帰って来るそうだ」
「期限はまだ一週間ぐらい残ってるはずですが」
「シンは見込みがないと判断したそうだ。それどころか計画の凍結要請も来ているらしい」
「そんな、シンさんが可哀想じゃないですか!」
「フッ、高速機の操縦では一番のアイツが無理となると、他の誰がやっても駄目かもな」
抗議するメイリン。
戻ってきたハイネがガラにもなくシンを褒める。ルナマリアは同情するように言った。
「きっと落ち込んでるわね。行く前は一週間で帰るとか言ってたのに・・・そろそろ時間ですね」
宇宙パトロールの時間はもうすぐだ。
今日はイーグルだけでなくミネルバも出る予定になっている。
「・・・待てルナマリア。今日は少し遠方まで捜索エリアを広げてみよう」
「え、どこまでですか艦長?」
「勿論、月の方までだ。ついでにシンを迎えに行ってやろう!いいな?」
一斉に頷きグッと親指を立てるクルー達。
皆心は決まっていた。
「・・・ラジャーッ!」
─宇宙─
ゼロドライブには長い距離が必要になる。
その為の安全ルートまでシンはプラズマ百式を飛ばしていた。
「・・・なんか最初は憎らしかったけど、一緒にいると愛着が沸くもんだな」
コンソールをそっと撫でるシン。もうすぐ指定位置に着く。と、久しぶりのアラームがシンの耳を打った。
「なんだ!?障害物はないはずだぞ!」
レーダーには高速で接近する物体が映っていた。
連絡を取ろうと回線を開くと、謎の声が割り込んで来た。
『聞こえるかい?こちらはファントムペインのネオ・ロアノークだ。悪いがその機体は我らがもらう!』
驚くシンの前に現れたものは、オーブの海で見た赤いウィンダムだった。
最強のスフィアに襲われるミネルバ。
シンはテストを成功させて仲間を救えるのか?
次回「運命の衝撃(後編)」