クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第007話

Last-modified: 2016-02-14 (日) 01:21:39

第七話 『あんな地球はもうたくさんだ』
 
 
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フォースインパルスの機動力は、少なくともガイア、アビス、カオスを上回るものだった
それでもガイアを振り切るのになかなかてこずってしまう

「やっと振り切ったか・・・・」

シンはレーダーで、ガイアのロストを確認した。数分前まで激戦を繰り広げていたのだが、
ミネルバから緊急指令が来て、DXと合流するように命じられたのだ
そのため戦闘を放棄してスラスターを吹かしたが、かなりガイアはしつこく、さっきまで追いすがってきていた

「にしてもオルバのヤロー・・・・!」

シンは苦虫を噛み潰した顔になって、アシュタロンの動きを思い出す
アシュタロンはカオスをいともたやすくあしらっていたが、それはどこかとどめをささずに遊んでいるようで、
必死にガイアと戦っていたシンにしてみれば腹の立つこと極まりない動きだった

「とにかく任務だ任務! ほとんどのザフト軍はユニウスセブンから退避してて・・・
  DXの位置は・・・・ユニウスセブンからだいぶ離れてるな・・・・
  なんだこりゃ? ユニウスセブンの進路上で、しかも地球までギリギリの位置じゃないか!
  下手すりゃ引力に飲まれるぞ・・・・」

自殺行為としか思えない布陣だった。DXは、ユニウスセブンと地球の中間地点にいるのである

シンは出撃前、ガロードとの休憩室でのやり取りを思い出す。腹の立つ話だった

(地球で家族を失ったやつの気持ちがわかるかよ! オーブの理想に付き合って、俺の家族は死んだんだッ!
  理想だけの綺麗事は人を殺すんだぞ! なんでそれがわからないッ!)

一発ぐらい、帰ったら殴り返してやろうか。そういう気分になったが、今は任務に集中すべきだった

とにかくミネルバ出航以後、気に入らないことばかりが続いている
活躍はほとんどオルバの独り占めだし、オーブの人間がアビスに乗ったりするし、
挙句の果てに自分より年下の人間が、新型ガンダム、DXのパイロットになったりしていた

「地球はふるさと、か・・・・・」

しかしその言葉が、なぜか苛立ちとともに思い出される

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地球が大きく見える。ガロードはその蒼さに思わず息を呑んだ
「キレーだな・・・・・。あんなに綺麗だったんだ、地球って。まるで吸い込まれそうだ・・・・」
つぶやきつつ、DXの位置を大気圏ギリギリの地点に固定し、目前に迫る巨大なユニウスセブンを見た

『ジュール隊、バッテリーの配置完了しました。接続します!』
バッテリーを持ってきたジュール隊から通信が入る
バッテリーはだいたい五×五×五メートルほどの正方形で、それが連結して七個ある
「ありがとさん! 背中のシステム開くから、そこに繋げてくれ!」
言いつつ、ガロードはサテライトシステムを起動し、マイクロウェーブ受信操作のみをキャンセル、
DXは背中のリフレクターを展開し、両肩に二門のサテライトキャノンを背負った

ガシャン。背中に、バッテリー群とつながったの巨大ケーブルが接続される
ミネルバ乗艦の時に確認したが、ケーブルの接続や通信は、元いた世界とこの世界は規格の差が無かった

『しかしこんなものをなにに使うおつもりで? 量産機ならば、このバッテリー一つで、10体まで電源供給が可能ですが』
「ユニウスセブンをぶっ壊すんだよ。それに、これだけじゃまったく足りねぇ・・・」

バッテリーから供給される電源量を確認したが、通常のマイクロウェーブ受信の、10パーセント程度しかなかった

(サテライトキャノンをフルで撃つには、この世界のMS700機分のエネルギーが要るのか・・・・・)

途方も無い話だった。同時に、サテライトキャノンがどれだけふざけた兵器なのかを改めて感じてしまう
『ガロード・ラン。ユニウスセブンで生きていたエネルギーを、DXにまわす』
新たにバッテリーを引いてきた、白いザクから通信が入る。レイだ
「おう、頼むぜ。そのままバッテリーに連結してくれ」
『ああ。ガロード、すぐにシンも来る。インパルスの特性はわかってるか?」
「インパルスの特性?」
『デュートリオンビーム送電システムだ。詳しく説明している暇がないので、手短に言うが、
  インパルスはある程度離れた状態でも、戦艦ミネルバからエネルギーを直接受け取れる
  ミネルバから莫大なエネルギーが、インパルスを介してDXに送られるはずだ』
「へー、すげぇな」
『そこでこれはシンにも言っておくことだが、くれぐれも喧嘩はするなよ
  危険なミッションでそんなことをやれば、命取りになる』
「ちぇっ。そこまで子供じゃねぇよ、俺も。信用ねーな」
『念を押しただけだ・・・・・。では俺はミネルバに帰艦する。ミネルバは大気圏突入を行うので、
  時間の余裕も少しあるだろう。次に会うのは地球でだな、健闘を祈る』
「地球に降りるのか・・・・。わかった、了解だ」

レイのザクがバッテリーとの連結作業を終え、場を離れていく
ガロードは周辺のザフト軍に退避するようミネルバに伝えておいたので、ザフト艦も離脱していくのが見えた

(これだけ集めて、まだ32パーセントか・・・・)
エネルギーを確認する。フル状態なら跡形もなくユニウスセブンを消滅させられるが、
この状態で撃った場合どうなるのか、予想できなかった

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大気圏が近づいてきたので、ミネルバから帰艦命令が届いた
オルバは目前にある、右腕と左足を失い、半壊状態となったカオスを見て嘲笑する

「今、僕が目立ちすぎるのは得策じゃないんでね・・・・・。
  君を捕まえるのは簡単だけど、手柄は立てすぎないようにするよ
  じゃあね」

アシュタロンはけん制のビームを、一撃だけ放つと、MA形態に変形して反転。
そのままミネルバへ向かう。例えカオスが追ってきたくとも、半壊状態のMSでは
とうていMA形態アシュタロンの速度には追いつけないだろう

「ユニウスセブンはそのまま落下するみたいだね・・・。フン、ここの地球も壊滅か」

オルバがアシュタロンのコクピットから地球を見つめながら、つぶやく

ミネルバに戻り、誘導に従ってMSデッキに戻る 
アシュタロンをハンガーに固定すると、ハッチを開けて外に出た

「あ、オルバ。待ってたのよ」
先に帰艦していたルナマリアが、ノーマルスーツ姿で壁を蹴り、こちらにやってくる
「・・・・なんだい?」
いくらかそれをうとましく考えながらもオルバは、ルナマリアを見つめた
「オルバってさ、ガロードと同じデュランダル議長の直属でしょ? 
  DXについてわかる?」
「少しならね」
「じゃあ、ガロードがエネルギー集めてる理由、教えてよ」
「ガロードが・・・・・念を押してこれか!」
オルバが思わず吐き捨てる。エネルギーをDXに集めてやることは、もう一つしかない
サテライトキャノン発射である

(なにが起きるかわかっているのか、本当に!)

人がなにかに恐怖を感じたとき、反射的に考えるのはその対象を排除することである
ゆえに、恐怖と怒りはぴたりと鏡合わせになっているのだ
ユニウスセブンの破壊というこの上ない舞台で披露されるサテライトキャノンは、
人々から恐れ、忌まれるのにそう時間はかからないだろう

「ねぇ、だから教えてってば。知ってるんでしょ?」
ルナマリアがさらに聞いてくる
「・・・・・君たちがやった、失敗の後始末だよ」
「は・・・?」
「君たちがきちんと破砕作業をやっていれば、こんなことにはならなかった
  ガロードもバカな考えを持たずにすんだはずだよ
  よかったね、ユニウスセブンの落下はこれで阻止された」
「ちょ・・・!」
「もっと嬉しそうな顔をしたらどうだい。地球はこれで無事だよ」
さらになにか言おうとしたルナマリアを無視して、オルバは壁を蹴って廊下に向かう

(救世主にでもなりたいのか!)

オルバの中で、苦い感情が立ち込めていく

ミネルバクルーは、極めて地球が危うい状態にあるにも関わらず、
作戦開始の時から、どこか他人事のようにユニウスセブンを見ているような感じだった
それはコーディネイターと呼ばれる宇宙の民が、地球に対してあまりよい感情を持っていないせいだということを、
オルバは知っている。だからルナマリアも地球の危機に対し、どこかのんびりした感じだった

ただ、一つだけおかしなことがある。これだけの危機にも関わらず、地球側の軍がほとんど動きを見せていないことだ

(まさか・・・・・地球の誰かが、ユニウスセブンの落下を望んでいるのか・・・・・?)

一つ、思うことがある。レイは大げさに地球が壊滅するなどと言ったが、
ユニウスセブン落下ぐらいで地球が終わりになるとも考えにくい
オルバの世界の地球は、数十基ものコロニー落としを受けて悲惨なこととなったが、
生き残っている動物もいるし、植物もある。たくましく人々も、生きていた

ユニウスセブンが直接落下してのダメージは、確かに過小評価できるものではないし、
地球にも大きな影響を与える。かなりの人が死ぬだろう
それでも、国家や文明、軍は死なない
しかし地球で、宇宙に対する恨みは生まれる

(戦争がやりたいのかもな、地球の支配層は)

また考える。すべて推測だが、これがもし事実ならば、DXがユニウスセブンを壊滅させた場合、
そういった連中にも狙われるかもしれないのだ

「まったく・・・・・!」

そういうことも考えられない。陰謀という言葉も知らない。ガロードという人間の浅はかさに、
オルバは苛立ちを抑えきれなかった

これでDXはこの世界に狙われるだろう。同じ世界出身の、
オルバとアシュタロンも、そのとばっちりを受ける可能性は少なくなかった

(だが・・・・・)

一つだけ、思う。ひょっとしたら地球にも自分と同じように飛ばされた兄、シャギア・フロストがいて、
ユニウスセブンを破壊することでその命が救われることになるかもしれないのだ

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ゆっくりとサテライトキャノンの照準を調整する
どこを狙えば、効果的にユニウスセブンを破壊できるか、コンピューターでシュミレーションを行い、探す
すでにユニウスセブンは目前に迫り、DXの前に威容をさらしていた

『ガロード!』
「シンか?」

バーニアの光で帯を作りながら、フォースインパルスがこちらにやってくる
インパルスはDXの背後に回ると、胸から送電用のケーブルを引き出し、
連結しているバッテリーとは別に、DXの背中へとそれを差し込む

『ガロード、俺は感情を腹にためておくのが苦手だから、言っておく。
  正直、俺はおまえが気に入らない』
「へっ、そいつはどうも・・・!」
『でも一つだけ、言っておきたい。俺が地球出身って知ってるな?』
「ああ・・・・」

ピピピッ・・・・・インパルスが受け取ったエネルギーが、DXに送電される
同時にガロードは、バッテリーからのエネルギー供給も開始して、
サテライトキャノンの発射準備を開始した

『地球で俺の家族は死んだ、俺は・・・・生きている人間は、
  死んだ人間には、なにもしてやれないけど、せめて墓が安らかであってほしいと思ってる』
「・・・・・・・・。」
『破砕作業は失敗した。でも、デュランダル議長がおまえを投入したってことは、
  まだカードが残ってるんだろ?』
「ああ」
実際はデュランダルも知らないことだが、あえてそこには触れず、ガロードはうなづく

『おまえに頼みたくなんて無いけど・・・それでも頼む、ガロード。墓を護ってくれ』
「・・・・・悪かったな、殴っちまって」
『後で殴り返してやるよ。だから生き残ろうぜ、ガロード!』
「へへっ、返り討ちにしてやらぁ!」

インパルスの手が、DXの肩に添えられる
シンの思わぬ励ましに、ガロードの迷いが少し消えた
それでも両手は震えている
サテライトキャノンを放てば、ガロードはオルバの言うとおり、間違いなく危険な状態になるだろう
ティファと会う前にそんなことにはなりたくない。ガロードだって、それぐらいはわかっていた

「だからって、俺の目の前で、過ちは繰りかえさせねぇよ!」
確かに第7次宇宙戦争において、サテライトキャノンで地球は荒廃した
それも含めて、引き金を引くのは怖い
だが・・・・・・

「大切なのは撃たないことじゃない・・・・あんな地球はもうたくさんだ。そうだろ、カトック、ジャミル!!」

恐怖と不安を抑えつける。手動でチャージが完了していく
ゆっくり、ゆっくり迫るユニウスセブン。その災厄を打ち砕くべく、照準を定めていく

フォォォォン・・・・

リフレクターが排熱を始めた。DXの背が光を放つ

『ガロード、ミネルバはもうこれ以上エネルギーを出せない。どうだ!?』
インパルスがケーブルを外す。バッテリーからも外す。もうどちらもエネルギーが空だ
「46%しか集まってねぇ・・・・・いや、でもこれで撃つッ!」

ギュォン!

瞬間、黒い機体が目の端をかすめる。
最初、ガロードはブリッツかと思ったが、シンの叫びが事実を証明した

『ガイア・・・・! 追ってきていたのか、この野郎ォォォォ!』
「シン!?」

インパルスが、DXの前へかばうように立った。しかし、インパルスの動きが止まる
ガイアがその隙を見逃すわけもなく、ビームサーベルを抜くと、それをインパルスの肩に叩き込んだ!

ザシュゥゥゥゥ!

インパルスの肩から激しい火花が散る。切り口はかなり深く、かなりのダメージだ

『エネルギーが・・・DXへの供給で・・・!? だからって、ちょっと動けないからって! 
  そんな好き勝手ェェェェッ!」
インパルスは残ったエネルギーをすべて振り絞るように、ビームサーベル抜き、ガイアの右腰へと叩き込む

ザシュ・・・・・ブシュゥゥゥウ・・・・・

ガイアとインパルスの相打ちだった。両者はお互いにサーベルを突き刺した状態で、火花を散らせている

「シン!」
『構うな、ガロードッ! やれぇッ!』
もみあうガイアとインパルスが、DXの射線から離れる

「ええいッ 射線上の友軍退避確認!  マイクロウェーブ受信キャンセル、エネルギー手動操作解禁! 
  ロック! 目標ユニウスセブン! 知らない世界の人間だからって、死なせるもんかぁぁぁぁッ!」

ギュォォォォォォォオォ!

サテライトキャノン、二門の砲身が光を放つ・・・!

「ツインサテライトキャノンッ! いっけぇぇぇぇぇッ!」

バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

凄まじい光の奔流。ビームライフルなど、比べることすらおこがましいエネルギー量
わずか17メートルのDXから放たれるそれは、直径8キロのユニウスセブンを貫いていく

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ガイアと刺し違いながらも、目の前の巨光を見たシンは、思わず声を漏らす
「あ・・・・ああ・・・・・。これが、DXの・・・・・本当の・・・・力かよ・・・・・」
『ひ・・・・・・ひ、光が・・・・・光が・・・・・たくさん・・・・死ぬの・・・・・・あ・・・イヤァァァァァ!!!』
同時に、耳をつんざくような女の叫び声が、ガイアから聞こえた

ミネルバのブリッジは、目前の光景に、誰も言葉を発することができなかった
「凄い・・・・ユニウスセブンを破壊してる・・・・」
かろうじてメイリンが声をあげた。それぐらいしか声が出なかった

ミネルバに帰艦するレイのザクが、振り返る
「な・・・なんだ、一体・・・・。これは」
サテライトキャノンを見たレイの膝は、不覚にも震えていた

モニターに映し出される光景を見たルナマリアとアスランは、ただ目を丸くしていた
「あれ・・・・本当にMSなの・・・・!?」
「たった一機で・・・ミーティアどころじゃない・・・・。あれじゃ、ジェネシスじゃないか・・・・・」
アスランの脳裏に、前の戦争で使われた大量破壊兵器がよみがえった

オルバは部屋でノーマルスーツを脱ぎながら、つぶやく
「・・・・・・・バカめ」

脱出艇に乗っているデュランダルは、ユニウスセブンを見て声をあげた
「DX・・・・・・・・か・・・・」
ふと、カガリとのやり取りを思い出し、デュランダルはつぶやく
「力は戦いを呼ぶ・・・それは一面の事実だが・・・・あれほどの、圧倒的な力なら・・・・」

吹き飛ばされた自分の首を片手に持ったブリッツは、
今にも爆発しそうなアビスの腕を引っ張りながらユニウスセブンから離れていく
「チィッ、気に入らないですね・・・・。
  ユニウスセブンが落ちれば、人がいっぱい! たくさん! 死んで、さぞ楽しかったと思うんですけどねぇ!」
包帯で全身を包んだミイラ男、ニコルがコクピットで叫ぶ
「まぁいいや、フフッ、お土産もできましたしね。爆発しそうだからって、最新鋭機置いていくなんて、
  馬鹿ですねぇ・・・。爆発するかどうかのスリルがいいんじゃないですか・・・・・」

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光が巨大な宇宙の島を貫いていく。爆発が起こり、ユニウスセブンは崩壊を始めた

(ダメだ・・・・エネルギーが足りねぇ!)

サテライトキャノンの威力は、始めこそ凄まじかったが、やがて弱くなり、光も細くなっていく
ついにはエネルギーが切れ、残ったのは細かい隕石群となったユニウスセブンだった

「畜生! 破片がッ!」

サテライトキャノンの衝撃で、砕かれた隕石たちが、引力に負けて次々と地球に落ちていく
赤い尾を引き、一種幻想的な光景をDXの前に展開していた

『うぁ・・・・! インパルスの動力系がやられたのか!?』

不意にシンの叫び声が聞こえた。ガロードが地球を見ると、
そこにはガイアと抱き合うような格好で地球に落ちていくフォースインパルスがいた

「シン! どうしたんだ!」
『ガロード・・・・ヤバイ、インパルスが動かない・・・・!』
「畜生! 待ってろ!」

DXが落下するインパルスめざし、地球に近づく。すると・・・・

ガクン!

急にDXの動きが重くなった。モニタを確認すると、外面温度がどんどん上がっていっている

(やばい・・・・・大気圏に入っちまった!)

「こんのぉぉぉ!!」

摩擦で機体が赤くなっていく。それでも無理矢理DXを動かし、インパルスの手を握った

『ガロード!』
「シン! 機体はまったく動かせないのか!? せめて姿勢制御しないと、燃え尽きちまうぞ!』
『今やってる・・・・けどっ! ダメだ・・・・ここまでかよッ!』
「くそッ、ガイアとかいうガンダムのパイロットはなにやってるんだよッ!
  一緒に燃え尽きるつもりか!」
『そいつならさっきから、意味不明なことばかり叫んでる! ・・・・チッ! 
  せめてシールドを展開して負担を減らしたいけど・・・・!』
ガロードはDXのパネルを叩き、大気圏突入用の装備を検索した
「DXは新連邦の切り札だったんだろ! 大気圏突入用の装備ぐらいは・・・・あった!
  バリュートか!」
モニタに、バリュートの使い方と展開時の映像が出る。大気圏突入用のパラシュートみたいなもので、
それを背中に展開したまま、後ろ向きに突入することで、安全に地球へ降りるというものだ

DXのバックパックから、パラシュートみたいな感じのふわふわしたものが出てくる
これがバリュートで、まず正面に広げると、インパルスの手を引っ張って乗せた
『ガロード、これは!?』
「大気圏突入用の装備だよ。おとなしくしてりゃ、燃え尽きることはねぇ・・・・もういっちょっと!」
またDXがバリュートを展開し、インパルスを右手に握ったまま、今度はガイアを左手でそこから引き離し、
同じようにバリュートへ乗せた
『ガロード、なにやって・・・・!』
「見殺しにできねぇだろうが! それに、こいつは生きたまま捕まえなくちゃいけないんだろ!?」
『そうだけどさ!』

DXは右手にインパルスの手を握り、ガイアを左手に握ると、地球に背中を向け、
今度こそ自分のバリュートを展開した

『まずい、ミネルバがあんなに遠く・・・・!』
シンの声。もう自分で動くことのできない三機は、ミネルバからだいぶ離れた場所で大気圏突入を開始していた
「もう仕方ねぇよ・・・・それより、おまえのインパルスが、地面に激突しねぇか心配だ 
  なんとかDXで抱き止めるけどよ!」
『せめて落ちる場所が、水面なら・・・』

シンがこぼした、その時、ガロードの心に懐かしい声が響いた
いや、懐かしくは無い。それほど長いほど離れていたわけではない
それでもその声は、ガロードの心を深く揺り動かした

(ガロード、大丈夫です。私が導きます)

少女の声。世界のなにより護るべき存在だと、少年が信じた少女の声

「ティファ!?」
(・・・・運命が求める、新しい場所へ・・・・)