クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第042話

Last-modified: 2016-02-16 (火) 00:05:10

第四十二話 『憧れだったから・・・』
 
 
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エアマスターと名乗ったMSは、ふざけたことを始めた
少なくともハイネにはそう見えた
なんと、デスティニーに攻撃したとたん、逃げ出したのだ
しかしそれは巧妙な逃げ方で、追いつこうと思えば追いつけるような逃げ方だった

目論見どおり、デスティニーがエアマスターを追いかけていく

「自分をエサにしているのか? それにしても、なんて機動性だ・・・・」

ハイネは、ストライクノワールのコクピットでうなる。戦ってわかったが、
デスティニーは反則的な機動性をほこっている
セカンドシリーズでは追いつけない機動性だった
しかしエアマスターはその名にふさわしく、デスティニーの攻撃範囲ぎりぎりのところで、
逃げ回っている

瞬間、レーダーに一つの反応が出た。識別は無し。海底からだ

「アビス・・・・・!?」

ハイネはストライクノワールを飛ばした。海から、アビスがその半身を見せ付けている
かと思うと、アビスは両肩の装甲を開き、一斉射撃を行う

「まずい! よけろ、デュエル、バスター!」

ハイネが叫ぶまでも無く、ブルデュエルとヴェルデバスターはアビスの一斉射撃を避ける
アビスの火力は凄まじく、フリーダムを意識してつくられたMSというのは伊達ではないようだ

『やれやれ・・・タイムオーバーですねぇ・・・・・。このままやれば、僕が勝ちますけど・・・・
  ま、この辺にしときましょう・・・・』

『やすやすと逃がすと思うか、ニコル?』

声が聞こえた。かと思った瞬間、超高速でやってきた、赤いMAが姿を見せる
それは変形すると、MSになり、両手両足シールドにある五本のビームサーベルを開放した

「インフィニットジャスティス・・・・! アスラン・ザラか!」

しかしアスランのヤタガラスは、待機を命じられていたはずだ
そう思った瞬間、インフィニットジャスティスはデスティニーに斬りかかっていく

交戦を続ける二機は、少しずつハイネの視界から移動していき、やがて雪の中へ消えた

エアマスターは少し離れた場所で、それを見つめていた

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ヤタガラスの命令は、待機である。正確には、それは命令ではなく、ザフトからの要請であるため、
独立部隊であるタカマガハラはザフトとは別に、自分の判断で攻撃をすることはできる
しかし今回、アスランが取った行動が軍事行動だとは思えなかった

デスティニーの存在が確認された時、アスランは艦長代理をトニヤに任せると、
インフィニットジャスティスで飛び出したのだ。シンやルナマリアが止めることもできない素早さだった

「ったく、なに考えてるんだよ艦長! メイリン、カタパルト出してくれ! アカツキで出る!」
『で、でもシン・・・・艦長の出撃命令が・・・・・』
「いない人の命令にどうやって従うんだよ! 俺が連れ戻す! インフィニットジャスティスの位置データを!」

言いながら、シンはカタパルトへアカツキを移動させる。オオワシパックのアカツキなら、機動力もある
ふと、後ろをついてくる影があった。ガイアだ

『シン・・・・・。ステラも、いく・・・・・』
「ダメ! ステラはお留守番!」

ステラをガイアに乗せるという、テクスの許可は出た。しかしそれは、戦闘中、ヤタガラスに置いていかれるより、
シンのそばで戦った方が精神的に安定するというだけのことで、
テクス本人はステラが戦うことそのものには反対なようだ。相変わらず、ステラの寿命は解決していない

『シン、行くのはいいけど、一人で大丈夫? 私のDインパルスやレイのグフなら空飛べるけど?』
「アカツキは速い。一人の方がいいよ・・・・・・。シン・アスカ! アカツキ! 行きます!」

アカツキがヤタガラスから飛び出す。吹雪がひどく、前が見えない
それでもインフィニットジャスティスの位置データは正確で、それほど遠くには行ってないようだ
しかしヘブンズベースにはまだ十分な戦力があり、単機で突出するのは危険な行為に違いない

ニコル・アマルフィとアスラン・ザラの因縁は、シンも聞いたことがある
デスティニーにニコルが乗っていたというのも、黒海戦の後、聞いた

(復讐か・・・・・)

アスランの、その感情が理解できないわけではない。事故と言えるものだが、
シンも家族を殺したフリーダムを憎みに憎んだ。しかしキラを殺そうとまで思わなかったあたり、
自分とアスランの感情は大きく違うのだろう。もしもフリーダムが、
事故ではなく故意に家族を殺したのだとしたら、自分はキラを殺していたと思う

全速力で向かうアカツキ。いた。吹雪の中で戦う、赤と青

「艦長! なにやってるんですか! ヤタガラスは攻撃に参加しろって言われてないんですよ!」
『邪魔をするな、シン! ニコルはここで殺す・・・・・! ええい!』

デスティニーが逃げようとしている。シンにもそれがわかった。しかしアスランが次々と叩き込むサーベルで、
逃げ切ることができない。そう思った瞬間、海面からビームが出た

ドォォン!

インフィニットジャスティスがリフターに被弾する。アビスが海面から顔を出している
とんでもない油断だ。アスランは明らかに冷静さを失っている

「艦長!」
『この程度! 待て、ニコル・・・・!』

体勢を崩したインフィニットジャスティスから、デスティニーは背を向ける。アビスも撤退していく
しかしインフィニットジャスティスは、それでも追おうとしていた

ガシャン!

アカツキがインフィニットジャスティスに組みつく

「なにやってるんですか、あんたは!」
『どけ、シン!』

デスティニーが離脱する。みるみる姿が見えなくなる。それでも、アカツキはジャスティスから手を離さなかった

「こんなこと・・・・アスラン・ザラのやることじゃないでしょ! 冷静になってくださいよ!」
『黙れ・・・・シン! 俺は・・・・俺はカガリの・・・・・!』
「落ち着けッ! ラクスが死にかけてるのは、あんたのせいじゃない!」
『—————ッ!?』

やがてデスティニーが、レーダーの範囲からも完全にロストする。アカツキの手の中で、
インフィニットジャスティスの力が抜けた。

「・・・・・すいません、艦長。生意気言いました」
『・・・・・・・・シン、俺はラクスの暗殺を気にしているのか?』
「カガリさんは暗殺でしたから・・・・」
『情けないな、俺は。冷徹になれ、冷静になれと言い聞かせても、こんな簡単に冷静さを失ってしまう・・・・
  挙句の果てに、部下に止められる始末か・・・・』
「そんなこと言わないでくださいよ・・・・・。俺、艦長にはいろいろ感謝してます。ステラのこととか、ネオのこととか・・・・ 
  シン・アスカは、アスラン・ザラの下で働けてよかったと思ってます」
『・・・・・・帰るか、シン』
「はい!」

インフィニットジャスティスが旋回し、ヤタガラスの方へゆっくりと帰艦する。アカツキもその後ろに続いた

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ストライクノワールの前に、エアマスターと名乗ったMSが着陸する
中から一人のパイロットが姿を見せた。その男は、ぴかぴかとなにか電灯を明滅させている

(モールス信号・・・・?)

かなり古い伝達手段である。しかし士官学校で、教わることだった
通信が使えないことや、話すことができない場合を想定して、だ
だからハイネは、内容を理解できた

 ハ・イ・ネ  オ・リ・テ・コ・イ  ハ・ナ・シ・ガ・ア・ル

一瞬、ハイネはその申し出に戸惑った。こんな回りくどい方法を使うということは、
盗聴が怖いか、あるいは通信ログに残っては困る話があるということだ
回りまわって罠の可能性もあるが、ハイネを殺したり、人質にしたりする可能性は低い
いくらなんでも回りくどすぎる

ノワールのカメラをズームアップさせて、ハイネは男をよく見てみた

そこには金髪の、アウトローな雰囲気を漂わせている青年がいる
地味な茶色のジャンバーを着ていて、その胸には、なんと『F』の紋章があった

(『FAITH』・・・・? 誰だ・・・・?)

しかし『F』の紋章をつけているということで、敵の可能性は低くなった

『どうするんですか、ハイネ?』
「イザーク、ディアッカ、シホ。先にミネルバへ戻れ。もう戦闘も終わりが近いだろう」
『え・・・・?』                     ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いいから戻れ。デスティニーは撃退した。もうM S は い な い。エアマスターとかいうのもどこかへ消えた
  ストライクノワールは高機動だ。俺は周辺を偵察してから戻る」
『・・・・・はい』

ハイネは、暗に、エアマスターとの接触をミネルバに隠せと命じた
イザークもディアッカも、即座にその意味を理解したようだ。優秀な部下で助かる

ブルデュエルとヴェルデバスターが去って行く。それを尻目に、ハイネはストライクノワールから降りた
金髪の青年は寒そうに、両腕をさすっている

「俺がご指名の、ハイネ・ヴェステンフルスだ」

しっかりと名乗ると、エアマスターのパイロットはじっとこちらを見つめてきた。強い、意志の力を感じる

「ウィッツ・スーってんだ。で、こいつはガンダムエアマスターバースト」
「『FAITH』なのか? ウィッツなんて名前、聞いたことがないんだが」

ハイネが、ウィッツと名乗った青年の胸を見つける。雪に隠されながらも、『F』の紋章はその存在を見せ付けていた

「あー、この勲章か? いや、なんか付けといたほうがいろいろ言い訳がきくって言われたからよ
  俺は別にザフトじゃねぇ。ただのジャンク屋さ」
「ジャンク屋・・・・・?」
「おう。宇宙で主に活動している。ジャンク屋『フリーデン』。ジャンクの回収が専門だけどな」
「フリーデン・・・・ウィッツ・・・・・ガロードの仲間か!」

ぽんっと、ハイネは手を叩いた。ガロードに探してくれと言われていたクルーの名前に、ウィッツというのがあった
ガンダムエアマスターという名前も、フリーデンという名前も聞き覚えがある

「ああ。そうだ。ガロードの仲間だよ」
「探していたみたいだぜ、ガロード? 早く顔を見せてやれよ」
「いや、そうもいかねぇんだ、これが。ガロードにはまだ、俺のこと黙っててくれ」
「・・・・・わかったよ。で、用はなんだ?」
「ミネルバにいるギルバート・デュランダルは偽者だ」
「は・・・・・?」

一瞬、ハイネはなにを言われたのかわからなかった
いや、冷静に振り返って考えてみる。ギルバート・デュランダルが偽者・・・・やはりわけがわからない

「ハイネさんよ。あんた、デュランダルの護衛やってたんだろ? 
  で、本物さんはあんたのことずいぶん信頼してるんだ」
「ちょっと待て、ウィッツ。いったいなんの話だ」
「俺にもよくわからねぇ。でも、デュランダルは入れ替わったんだよ。ロゴス糾弾の直前に、本物から偽者に」
「そんなバカな話、俺が信用するとでも・・・・・?」
「ハイネ・ヴェステンフルスは、しっかりした目を持っている。本物さんはそう言ってたよ」

それだけを言い残し、ウィッツはハイネから背を向けた

「待て、ウィッツ! 詳しく話せ!」
「今はこれだけで十分だろ。後はあんたがじっと、デュランダルを見つめるんだな
  そうすればちゃんと真実が理解できる男だって、言われてんだよ、あんたは」
「バカな・・・・・」
「いつか必ず姿を見せるよ、デュランダルは。今はそれができねぇんだ。しばらく待ってくれ」

そう言い残し、ウィッツはエアマスターに乗り込む。そしてゆっくりと浮遊し、一定の高度まで来ると、
MAに変形して消えていった。かなりの速度だった

「言いたいこと・・・・言って・・・・!」

かすかに口元を引きつらせながら、ハイネは足下の雪を蹴飛ばした
胸の中に、黒い雲のような疑念が、じわじわと広がっていく

ハイネは、自分にとんでもない役割が与えられたことを、その時感じた

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音が、あふれている。オーブの広場で、野外コンサートが行われていた

ミーアが踊り、歌う。そのたびに民衆が熱狂する
今回はMSの上で歌うという離れ業はせずに、普通のライブが行われていた

ガロードは熱狂する観衆を尻目に、会場の隅でりんごをかじった
少しすっぱい

ミーアがやってきたのは今日である。彼女は到着するとすぐに、オーブでライブコンサートを始めた
元々それが目的で来たらしいのだが、ミーアはアスランにも会いたがったらしく、
ヤタガラスと入れ違いになったと聞くと、肩を落としていた

「せっかくですから、見て行ってくださいね、ガロードさん」

ミーアはそう言って、ガロードにチケットを渡してきた。あまりガロードはライブに興味はなかったが、
一応参加してみた。初めてライブを見るが、凄い迫力である
熱気で、自分の体が浮きそうな感じがあった

やがてライブが終わると、ガロードは警備員に声をかけられた。なんでも、ミーアが呼んでいるらしい

「俺に用? なんだよ・・・・」 

つぶやきながら、控え室に向かう

『FAITH』権限で、ザフトの基地から一隻の高速船を回してもらった。小型の万能戦艦をオーブに送ることはできないらしく、
もしも受領するなら一旦ザフトの基地へむかわねばならないらしい

控え室に入ると、ミーアが花束やプレゼントに囲まれていた
彼女はガロードを見ると、にこっと微笑んでくる

「どうもー、ガロードさん! 私のライブ、見てくれましたぁ?」
「あ・・・・うん。すげぇと思ったよ」
「よかったぁ!」

言って、ミーアはガロードの腕を取り、ぶんぶんと振ってくる。それに合わせて、豊満な胸も揺れる
ガロードは顔を赤くして目をそらした。どうも、このミーアという女性は、ラクスとは別の意味で苦手だ

「と、ところで俺になんの用だ? アスランなら、ヘブンズベース行って、いねぇぞ?」
「そうですよ、まったく! アスランったら恋人の私をほっておいて、これはないですよねぇ?
  まぁ、私も驚かせようと思って、内緒で来たのが悪いんですけど・・・・
  だいたいひどいんですよ、アスランってば・・・・私は毎日メールしてるのに、ろくに返してくれないんですから
  この前もですね・・・・・」
「あー! そういう愚痴は本人に言ってくれ! で、なんだよ!?」
「あ、すいません・・・・。あの・・・・ラクスさんが、暗殺されかけたって、本当なんですか?」

急に神妙な面持ちになって、ミーアが聞いてくる

「ああ。本当だよ。まぁ、死んじゃいねぇけどよ」
「そんな・・・・・・」

ミーアががっくりと肩を落としている。顔色も少しだけ、悪くなった

「あれ? ミーアさん。あんた、ラクスのこと嫌いなんじゃねぇのか?」

確か、アスランの説明によると、ミーアは無理矢理ラクスの身代わりをされていた、という話だったはずだ
それに憤りを感じたミーアが、ラクスを裏切ったとも聞いている

「そんな、とんでもないですよ! 私、元々ラクス様のファンなんで・・・・・あ・・・・」

不意にきょろきょろとミーアが周囲を見回す。人影は無い

「・・・・・?」
「ごめんなさい、今の、ナシで。内緒にしててくださいね?」
「あ・・・・おう」
「でも、どうなんですか、ラクス様?」
「毒にやられたみてぇだからな。ひとまず一命は取り留めたらしいけどよ・・・・
  かなりあぶねぇ状態らしいな」
「・・・・・・・・。」

ガロードが言うと、ミーアの顔色がみるみる青くなっていった
ちょっと尋常じゃない雰囲気だ

「ミーアさん。あんた、ラクスの知り合いなのかよ?」
「ううん・・・・・会ったことないです・・・。でも、憧れだったから・・・・ラクス様。知ってますか?
  歌ってるラクス様ってね、きらきら光ってて、本当に美しくて・・・でもどこか悲しそうで・・・・・
  なんでラクス様って、あんな悲しそうなのかなぁって・・・・私、
  いっつもそう思いながら、ラクス様に惹かれてたんですよ」
「そうなのか・・・・」

正直、ラクスには、洗脳能力のあるニュータイプという先入観しかない
ただ、ガロードのこの意見はごく少数だろうと思った

「お見舞い、行けませんか?」
「は・・・? お見舞い?」

ミーアがいきなりそんなことを言ってくる

「そう、ラクス様へのお見舞い。実は私、本物のラクス様にお会いしたこと無いんですよー」
「無理だよ。ラクスの病室は完全に隔離されてて、がっちがちにMSや警備兵で固められてんだ
  しかもラクスは重体で、面会謝絶だぜ?」
「えー・・・・そんなぁ・・・・・」

言いながら、ラクスはガロードの腕にしがみついた。
むにっと、柔らかいものが押し付けられた

(む、胸が・・・・・)

ガロードのサテライトキャノンが、リフレクターを開放する。さすがにマイクロウェーブの受信はされないが、
このままではディフェンスプレートが破壊されるだろう

「わ、わかった! わかったって! ラクスは無理だけど・・・・キラとかなら会えるからよ!」

思わず、そう叫んでいた

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キラは独房の中にいた。独房と言うが、待遇は悪くない
パソコンは無いが、テレビや雑誌があって、時間はつぶせる
望めばゲームもできた。食事も一日三度、出される

ラクスはなにをしているのか。脱走したロアビィやシャギア、バルトフェルドは無事だろうか
ストライクフリーダムはどうなったのか。そして、世界はどうなっているのか
気になることは多かった。

(真面目に働け、か・・・・)

キラは自分の手のひらを見つめる。シンと名乗った少年の、声が思い出される
ならば自分の仕事とはなんだろうか。自分のやるべきこととはなんだろうか

わかってる。戦争を止める。平和を作る。この二つだ。そのためにフリーダムに乗り、戦ってきた
しかし行き着いた果ては、この自由なき独房である

「面会だ」

独房がノックされ、警備兵が告げる。面会とは、奇妙なことだった
ラクスほど厳重な監視下にあるわけではないが、それでも自分は一般人がやすやすと会える囚人ではない

両手に手錠がかけられる。両足には、脱走防止用の爆薬がついていた
施設から一定範囲はなれると、爆発するという物だ

面会室に通される。中にはいると、強化ガラス越しに一人の女性がいた
ピンク色の髪・・・・

「ラクス・・・・・!? いや・・・・・」
「ミーア・キャンベルです。えっと・・・・その・・・・始めまして」
「そうか・・・・君が、ラクスを罠にはめた人だね。僕に何の用? 負け犬だって、笑いに来たの?」
「そ・・・そんな・・・・・。そんなつもりは、ぜんぜん・・・・」

ちょっと泣きそうな顔で、ミーアが手を振る。邪気のある姿ではなかったが、
それが余計にキラの心をいらだたせた。特にラクスの顔をしているのが、気に障る

「じゃあ、なに?」
「その・・・・ごめんなさいって、一言、謝りたくて・・・・。私・・・・・」
「・・・・・・・・」
「こんなことになるなんて、思わなくて・・・・ラクス様に・・・・」
「帰ってくれ」

いくらか、いらだっている自分を、キラは感じていた。やはり、目の前のミーアは、ひどく気に障る
負けたせいでいらだっているのか、捕まってるからいらだっているのか、それはわからないが、
キラはいらだつ自分を止められなかった

「でもラクス様が・・・・暗殺されるそうになるなんて・・・しかも意識不明の重体って・・・・」

席を立とうとしたキラは、その言葉を聞いた瞬間、凍りついた

バンッ

いきなりドアが開き、少年が一人飛び込んでくる。DXのパイロット、ガロード・ランだった

「バカ! なにやってんだよ! そいつは黙っとけって言っただろ!」
「でも・・・・キラさんには教えてあげないと・・・・」
「なに考えてんだ・・・・始めっからそのつもりだったのかよ、あんた!」
「そんなこと言っても・・・・恋人同士じゃない! 恋人って、お互いのこと、
  なんでも知っておかなきゃいけないんじゃないの! なのに・・・アスラン・・・・」

いきなり、ミーアが泣き出した。ガロードは戸惑ったようにそれを見つめている

「か、関係ねぇだろ! アスランは! とにかく出ろよ・・・・!」

ガロードはしかめっ面を作って、外にミーアを連れ出していった

残されたキラは、呆然とその場に立ち竦んだ

「ラクスが・・・・意識不明の重体・・・・?」