クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第077話

Last-modified: 2016-02-20 (土) 02:27:03

第七十七話 『青き清浄なる世界のために』
 
 
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ヤタガラスのブリッジで、ジャミルはじっとダイダロス基地を見つめた
と言っても、ダイダロス基地が見えているわけではない。目前に広がるのは月面の無骨なクレーターたちである
ダイダロス基地まではまだ遠く、ずっと先になる。だからにらんでいるのはダイダロス基地の方向だった

奇妙だと思った。基地が静か過ぎる。
あちらの思惑はともかく、こちらとしては基地制圧などよりレクイエム破壊が目的なのだ
いくら強いとはいえ、二隻の戦艦ではそれが限界である
だから、基地に篭もられるのは好都合なのだが、あちらもこちらの思惑がわからぬほど間抜けだろうか
むしろ基地に到達できぬよう、ここらあたりで戦力の投入があって当然なはずだ

ティファになにかあるのか聞いてみるかと思ったが、ジャミルはすぐにその考えを捨てた
ムウを死なせたことで、彼女は自信を喪失している。心を閉じ込めていた彼女が、
ようやく誰かの役に立とうとした矢先の出来事で、それだけにティファのダメージも大きいだろう

ならば頼るべきは、正確な情報と軍人としての読みか。

「イアン・リー」
「はっ」

ジャミルは副艦長席に座るイアンを見た。実直な軍人らしい軍人である
ユウナに対して個人的な忠誠を誓っているが、
その奥にはオーブに残してきた連合軍人たちのため、という想いもあるだろう
ラクスがそれらに危害を加えたという情報はないが、連合軍人たちを解放するためにはユウナが政権を取り戻す必要がある

「君はロゴス直属だったな」
「昔のことです。任務である以上、基地攻略に私情は挟まぬつもりです」
「いや、そういうことではない。迎撃が無いのが不信だ」
「はい」
「君ならば、迎撃以外にどういう作戦を取る?」

言われてイアンは、あごに手を当てて前を見た。それから一度うなずき、ほっと息を吐く

「核攻撃」
「戦艦二隻に核を、か?」

いくらか信じられなかった。簡単に核を撃つという思想もそうだし、ここはダイダロス基地に近い
下手をすれば巻き添えを食うし、戦艦二隻に核というのも大げさだと思った

「前大戦でも、この大戦でも、ブルーコスモスは核攻撃を頻繁に行いました
 基本の戦法は簡単に捨てられるものではありません。それに、現在のヤタガラスの戦力値は一国のそれに比肩します
 私がダイダロスの総指揮でも、大量破壊兵器を使ったでしょう
 核は集めて楽しいコレクションではない。私の、上司だった人の言葉です」
「なるほどな。確かに可能性のあることだ。だがどうするかな。
 核ミサイルを、まさかイーゲルシュテルンで落とすというわけにはいかんか」

戦艦に対して発射される核は数発だろうが、問題はそれをどうやって迎撃するかということだ
前大戦でキラ・ヤマトはミーティアを使い、核ミサイルの雨を次々に破壊したという
それに比べれば楽な作業かも知れないが、あいにく自陣にキラ・ヤマトはいない

なら。

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ダイダロス基地から発進する三機の特殊装備をほどこしたウインダム
背負っているのは核ミサイルである。前大戦でも猛威をふるった、核攻撃部隊ピースメーカーである

「敵艦まで距離75000。射撃用意、ミサイルをまとめるなよ。範囲は広く取れ
 3、2、1。発射!」

隊長が号令すると、ウインダムの背から、ミサイルが順々に発射される。
それら一つ一つが、都市を壊滅させるほどの災厄だった

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ディアッカは頬をつたう汗を感じた。両手が震えている。だが、にやりと笑った
愛機のヴェルデバスターが、ミネルバの甲板でがっちりと両足を固定する。
二本の、複合バヨネット装備型ビームライフルを引き抜き、つなぎ合わせる
銃が連結した時のがちゃんという音。これぞ我が愛機バスターだと思って、ディアッカはなんとも楽しくなってくる

『おいディアッカ。無理ならやめておけ。全速回避をやれば間に合うのかもしれんのだからな』

隣にいるブルデュエル、イザークから声がかかってくる

「隊長さん。いや、イザーク。忘れたのかよ、俺はディアッカ・エルスマンだぜ?
 それに引き返しているうちに、態勢整えられたらたまったもんじゃないでしょ」

パネルを叩き、狙撃モードに移行。ノーマルバスターに比べ、段違いの性能を誇るFCS(射撃管制装置)が、目標を探す
いい子だ。いい仕事をしてくれよ、相棒。
見つけた。やってくる数機の核ミサイル。補足

胃がきりりと痛くなる。それでもディアッカは笑った

「核ミサイルを狙撃するってな。楽しいぜ。最高のゲームだ。なぁ、ヴェルデ!」

叫ぶ。同時にヴェルデバスターの大型キャノンから放たれる赤いビーム。それは月の空に吸い込まれ、消えた

『弾着確認不能! 外れました』
「そんなのわかってんだよアビーちゃん」

パネルを叩く。誤差データがすぐに送られてくる。右に0.0044、上に0.17。修正
それからミネルバの飛行スピードに3.47の誤差。巡航スピードはオートに固定と伝令
核ミサイルのスピードは765.023と予測。再発射

ヴェルデの咆哮。同時にはるかかなたで核ミサイルが爆発する
舌打ち。範囲を広く取られてるせいで、誘爆しない

『やったか!?』
「まだだ、イザーク! 一本落としただけ!」

再装填の時間が異様に長く感じる。4、3、2、1、装填完了
再びヴェルデが叫び、二度、三度、四度とミサイルが爆発する。だが核の爆風
その衝撃波がミネルバを襲い、態勢を崩しかける。瞬時に態勢のデータを再入力、よろめいた格好で大型キャノンを発射する
また爆発。これであと一つ・・・・いや!

『ディアッカ、ライフルが!』

無理な体勢で撃った反動で、ヴェルデの両手から大型キャノンがこぼれ落ちた
ディアッカは舌打ちと同時に、ブルデュエルの右肩シールドに手を伸ばす

「イザーク! 機動レールガン!」

長年のコンビネーションである。すぐにイザークは意図を知り、ブルデュエルの右肩をヴェルデに貸す
ヴェルデバスターはその右肩を抱えると、FCSにデータを入力。照準を合わせる

「今だ! 撃て、イザーク!」
『—————ッ!』

レールガンが白い軌跡を描き、遠くへ飛び去っていく

ドォォォォン・・・・

遠い爆発が起こり、最後の核ミサイルが撃墜された
ディアッカはほっと息を吐き、コクピットシートにもたれかかる。どっと疲れた
短時間の狙撃だったにも関わらず、全身は汗で濡れている。

「グゥレイトォ、核ミサイル六基迎撃完了。俺ってすごくない?」

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核ミサイルの迎撃が終了したというアナウンスが、MSデッキに鳴り響いた
ガロードはほっと息を吐く。とりあえずこれで第一の危機は去った

「あと十分で作戦開始位置に到達する。準備はいいか、ガロード?」

パイロットスーツに着替えたアスランが話しかけてきた
インフィニットジャスティスは今回、単機でレクイエムの破壊に向かうのだという
それを聞いたシンは自分がやると言いだしたが、テンメイアカツキは施設破壊に向かないという一言で退けられた

「準備はいいけどよ・・・・」
「どうした。なにか気になることでもあるのか?」

アスランに言われ、思い出すのはプラントを撃ったレクイエムの巨光である。あれで150万もの人間が死んだ
150万である。信じられない数だ。その死体を積み上げれば、どれだけの山になるのか

「ブルーコスモスだっけか? なんであいつら、コーディネイターってだけであんなに人を殺せるんだ?
 ありゃ、ただ追い詰められたってだけじゃやれない虐殺だぜ」
「・・・・そうだな。おまえにはわからないことだろう
 なぜコーディネイターがナチュラルを憎み、ナチュラルがコーディネイターを憎むのか
 両者の溝は嫌というほど深い。お互いに、殺しすぎたんだ、俺たちは
 過激派は目の前にいるのがなにも知らぬ幼い子供だとしても、それがコーディネイターなら殺せるんだ」

遠い目でつぶやくアスラン。大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドの言葉を思い出す
エイプリル・フール・クライシス。コーディネイターの手により、地球総人口の一割が死んだ。
それは億を超える数で、死体を積みあげたら多分、天まで届く

「・・・・・・」
「あまり考えすぎるな、ガロード。コーディネイターもナチュラルも、基本的に平和を望んでいる
 過激派などいつの時代もごく一部だ。すべての人間が過激派だと思うから、錯覚してしまう」
「俺には難しい話はよくわかんねぇけどよ、ただ嫌な話ってのはわかるぜ」
「そうだな。開戦時、親を殺されたコーディネイターの子供がジンに乗り、
 ナチュラルを多数殺した後、コクピットを蒸し焼きにされて死んだという嫌な事件もある
 だが努力はなされているんだ。議長も偽者も、ロゴスを悪役にしてしまうことでナチュラルからの支持を得たし、
 大西洋連邦大統領もプラントとの付き合いを考え始めている
 引き合いに出して悪いが、それこそこのままならおまえたちの世界みたいになってしまうからな」
「だよな。誰も、あんな世界は嫌だよな」
「・・・・・そろそろMSに乗り込め。作戦開始だ。とにかく今は、レクイエムを破壊する」

アスランと別れ、ガロードはDXのコクピットに乗り込んだ
例のジャーナリストはまだヤタガラスに張り付いているらしく、どこからかこの模様を中継しているのだろう
そんなことを考えながらMSを起動させる

ブリッジにいるジャミルから、全MSへの回線が開かれ、作戦の確認が行われる

『ヤタガラスのジャミル・ニートだ。作戦の確認を行う
 敵第一波を切り抜けるまでは、総員で戦闘。敵の攻勢が弱まれば、MS隊を三つに分けるぞ
 一つはミネルバ、ヤタガラスの護衛部隊
 二つ目は基地攻撃部隊。これは連合最強の、デストロイ部隊との戦いを覚悟しておけ
 三つ目はレクイエム破壊任務を負った隊だ。おおまかな編成だが』

戦艦の護衛には、ブルデュエル、ヴェルデバスター、カオス、エアマスター。指揮は戦艦からジャミルが
基地攻撃隊は、アカツキ、DX、ガイア、Dインパルス、ストライクノワール、指揮はハイネ
レクイエム破壊任務は、インフィニットジャスティスが単独で行う

確認を終えると、メイリンの声に切り替わった

『コンディションレッド発令。各員、総力戦用意。敵ダイダロス基地より接近する機影確認
 第一波、MS70、MA5。 ヤタガラス、ならびにミネルバ所属MSは作戦行動の開始を願います
 ガロード・ラン、ガンダムDX発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します』

MS隊が各自発進準備に入る。最初に出て行く、『ユニウスの悪魔』と呼ばれたMS、ガンダムDXがカタパルトに固定される
その振動が、己が鼓動のようだ。ガロードは軽く息を吸った。敵はナチュラル。しかし人間

『ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認しました。カタパルトオンライン。射出推力正常。
 針路クリアー。GX-9901-DX、ガンダムDX、発進どうぞ!』
「ガロード・ラン、ガンダムDX、出るぜ!」

ガンダムDX、閃光とともに射出される。すぐにヤタガラスの近くへついた
遠くに迫り来る連合艦隊が見える。オーブ防衛戦ほどではない。だが、この戦力がすべてではない

『GW-9800-B、ガンダムエアマスターバースト、発進どうぞ!』
『こんだけの戦力で基地落とせって、どー考えても無茶だけどよ。こーいうのが燃えンだよな! 
 ウィッツ・スー。ガンダムエアマスターバースト、行くぜ!』
『だいじょうぶ。行ってくるね? ステラ・ルーシェ、ガイア、出るよ』
『ステラ。あんまり私やシンから離れるんじゃないわよ。ルナマリア・ホーク、Dインパルス、行くわよ!』
『俺たちは、俺たちにできることを精一杯やるんだ! シン・アスカ、テンメイアカツキガンダム、行きます!』

四機のMSがさらに出てきて、DXの横に展開する

『ZGMF-X23S-X19A、インフィニットジャスティス、艦長・・・発進どうぞ!』
『アスラン・ザラ、インフィニットジャスティス、発進する!』

インフィニットジャスティスを最後に、ヤタガラスのハッチは閉じられた

『続きまして、ミネルバ所属MS、発進どうぞ』
オペレーターの声が切り替わる。ミネルバのハッチが開き、カタパルトがあらわになる
『議長の期待、応えてみせる。ハイネ・ヴェステンフルス、ストライクノワール、行くぜ!』

ストライクノワールに続き、ブルデュエル、ヴェルデバスター、カオスが発進してくる
計10機の精鋭たちが配置に付いた。押し寄せてくる、津波のような数の敵機。
これをしのぎきって始めて、レクイエムがどうだと言える

『タンホイザー、砲門開け』
『ローエングリン、三本足照準』
『『撃て—————ッ』』

二隻の船より赤い光が放たれる。しかしそれはMSの群れに到達する前にはじかれた。ザムザザー
カニを思わせるMAが、陽電子リフレクターを展開していた

お返しとばかりに、ダガーとウインダムの編隊がビームの雨を降らせる。
そこを突っ切る、三機のMS。アカツキはそのまま、ジャスティス、Dインパルスはビームシールドを展開しつつ、接近

『援護!』

ジャミルの声を聞く前に、ガロードはけん制のバスターライフルを放った
三機が突っ込み、そのままの勢いでMAを片付ける。連合軍が混乱した
すぐさまDXも飛び、盾を構えつつバスターライフルを乱射する。後のことは造作も無かった
半数撃墜したところで、敵が撤退を始める

「ったく、勝てるって思って出てきたんじゃねぇだろ。無駄なことしやがって・・・・」

なんとなくいらつく。ウィッツのエアマスターが隣に来て、目線を送ってきた

『ガロード、第二段階だ。行って来いよ』
「おう。チッ、早くこんなことは終わらせてぇな」

基地攻略部隊。編成は、アカツキ、ガイア、Dインパルス、そしてDX。指揮はストライクノワール
それら五機のMSが編隊を組み、ダイダロス基地に向かう
同時に変形したインフィニットジャスティスが迂回路を取り、レクイエムのコントロールルームへ向かった

『攻略部隊とはいえ、俺たちは囮だ。特にDXはそこにいるだけで敵の目を引きつける
 よろしく頼むぜ、ガロード』

ストライクノワールの、ハイネが声をかけてくる。

「暴れてやるけどよ。俺は軍人じゃねぇから、細かい指揮に従うなんて無理だぜ?」
『軍人じゃない? ああ、なんでも屋の『バルチャー』、だったか。『ハゲタカ』なんてとんだネーミングだな』
「そんだけ生きるのになりふり構っていられねぇ世界だってことだよ」
『ガロード。そんなおまえから見たら、俺たちは軟弱モノに見えるか?』
「それはわかんねぇ。ここにもすげぇヤツもいるしな。認めたくねぇけど、キラだってすげぇ
 ただ一個言えんのはよ。このまま行ったら、この世界も俺たちと変わらなくなっちまうってことだ」
 ソラ
宇宙に在る者と地球に住む者。お互いへの敵視は幾度かの大戦につながり、そして世界は荒廃した
それはナチュラルとコーディネイターの関係に似ていないか。たやすく放たれる大量破壊兵器たちはその証明ではないか

『そうだな。だから、ジブリールは殺す。できれば捕えて、裁判を受けさせたいが・・・・。
 いや、お客さんか!』

ダイダロス基地。ゆっくりと、そこから顔を見せる巨人たち。それはDXから見てなお巨人だった

『覚悟してたけど、いざ見ると嫌なもんねぇ・・・・・。帰りたくなってきたわ』

ルナマリアがため息混じりにつぶやく
デストロイ部隊。多分、十機はいる。ストライクノワールが翼を変形させ、レールガンを放った

『各機、例の陣形を取れ! デストロイに対してはすべて実弾でやるぞ! シン、おまえが頼りだ!』
 
ハイネが叫ぶと、テンメイアカツキが大きく翼を広げ、ツムガリの太刀を引き抜く
瞬時にDX、ノワール、ガイア、Dインパルスがその後ろに回った
ちょうど、アカツキを先頭に児童が前並びをしているようになる
アカツキにはデストロイの攻撃がほとんどきかない。それを利用した縦列陣だった

『消えろ、青き清浄なる世界のために!』

デストロイ、一斉射撃。巨大なビームがまるで嵐のように降り注いでくる
先頭のアカツキが盾を展開しながら、その巨大なビームを受け止める

『ぐっ・・・・・こいつッ!』
「シン、大丈夫か!?」

しばらくアカツキは巨大なビームと押し合っていたが、それが途切れるとまっすぐにデストロイへ跳ね返した
デストロイの陽電子リフレクターにはばまれ、それは消える

『・・・・跳ね返せないこともないけど、アカツキの盾にダメージが出る。なんて出力だよ、これは』
『チッ、格闘ができるまで近づけ、それから各機散開!』

アカツキを先頭にしたまま、二度ほどビームの砲撃を受けた。最後にはアカツキの盾が溶け始めていた

近づくと同時にDXは飛び出す。瞬間、デストロイたちが動揺したような気がした

『ユニウスの悪魔!』
『ダメだ、デストロイ隊は射線から離れろ! 正面に立つなぁッ!』

「ガロード・ラン様ただいま参上ッ! おらおら、デストロイさんたちよ!
 『ユニウスの悪魔』にその手並み、見せてくれよッ!」

ビームの雨を潜り抜け、陽電子リフレクターが展開できないところまでくると、一機のデストロイ、
その足をハイパービームソードで切断した。月の重力が弱いとはいえ、たちまちバランスを崩す
別方向からノワールのレールガンが飛び、コクピットが爆発する

『よし、撃墜。まずは一機あがりか!』
『これで二機ッ!』

アカツキがデストロイに近づいたかと思うと、ツムガリが伸びて巨大な機体を両断する
接近戦ではさすがの強さだった

『これで・・・!』
『うぇぇぇぇいッ!』

インパルスとガイアがエクスカリバーを引き抜き、三機目のデストロイに幾度も斬りつけて爆発させた

十機のうち、あと七機。だが。ウインダムやザムザザーが護衛に出てくる。甘くは無いか
ガロードはDXの中で歯噛みする。とにかくアスランだ。アスランがやってくれれば、尻尾を巻いて逃げられる

『コーディネイターどもめぇッ! 死ねぇぇぇ!』
「そんなどうでもいいことにこだわって、命を粗末にすんなぁッ!」

ウインダムと二合、斬りあうと、サーベルを返して斬り下げた
爆散する。なんとなく嫌な気分だった。思想で戦争やられると、頭がおかしくなりそうになる

三機、新しくウインダムの編隊がやってくる。それらの、ビーム一斉射撃
ガロードはDXは器用に避けながら、バスターライフルで応戦する

『コーディネイターが、おまえたちなんかがいるから・・・・』
「おい、おまえ」
『・・・・・・・!』

接近して、ガロードはウインダム三機の両腕両足を瞬時に斬りおとした
バーニアだけを残す。キラがやっていたことだが、自分にもできた。機動が軽い
ザクやバビといった、DXに劣るMSで戦い続けたことが、ガロードをレベルアップさせていた

「その状況ならよく聞けるな。よーく耳の穴かっぽじって聞けよ。俺はガンダムDX、
 ザフトのガロード・ラン。ところが俺様、ナチュラルなんだな」
『な・・・・・?』

ウインダムのパイロットが驚く声。顔が見えないのに、その顔が鮮明に想像できる

『ガロード、なにやってるんだ! そんな場合じゃないだろ!』
「シン。むかついてんだよ俺は! こんなクソくだらねぇことでいつまでもグダグダやってるこいつらが!
 コーディネイターだとか、ナチュラルだとか、いい加減イライラするぜ!」
『・・・・・でもな!』

アカツキが翼を広げ、DXの後ろに回った。どこからか飛んできたビームを、アカツキがはじく
いつの間に狙われた。ガロードはうかつさに歯噛みする

「クッ」
『おまえがナチュラルだからって、関係ないんだ! 集団の意志を決定するのは、結局上の人間・・・・
 ジブリールをどうにかしなきゃ、おまえの声なんて届きはしない!』
「でも声をあげなきゃ、それこそなんにもなんねぇだろうが!」
『ここで俺とおまえが喧嘩してどうするんだよ!』

シンが突進してくるザムザザーのクローをかわしざま、ツムガリで斬り落とす
ガロードは舌打ちして、先ほど達磨にしたウインダムたちを見る。落とすことなく、その場から離れた

しかし。映像も音声も、アプリリウスに流れているのである
いや、今やこの戦闘は世界中に放映されていた