グラハム・エーカーが異世界に介入するようです_003

Last-modified: 2011-10-31 (月) 03:40:15
 

情報分析を始めてはや数日、ダミー会社への指示から大西洋連邦の首脳部とのテレビ会談等
ほとんど息つく暇もない状況が続いていた。

ディヴァインは黙々と作業を続けているものののヒリングは
「こんなのヴェーダに一任してウチらは武力介入しようよ~!て言うかもう限界!」
と机に突っ伏して動かない。

せっかく出来上がったMSの試運転も行えずフラストレーションが溜まっているのは私とて同じだ!
がここで止めてしまうと意味がない為やせ我慢をする。

そういえば日本のことわざにもあったな。「武士は喰わねど爪楊枝」というヤツだ、うん。

 

そんな事を思っていると端末のディスプレイに発電衛星から地上への送電が開始されて
順調に受電が行われているとのメッセージが入った。

慌ててテレビの電源を入れると特別番組がその光景を放送していた。

ただ今回の送電はあくまで試験的なもので、送電した電力は方式の異なる複数の超大型一時貯蔵施設に
貯電されて余剰分は工場などに回される予定だ。

これまでに生産された発電衛星用の疑似太陽炉はかなりの数になっているし、
地上での受電設備の生産も順調と報告が来ている。

全てをこの基地で賄うことは可能なのだが資材のやりとりが複雑になるため
月で衛星やパネルを、地上で受電設備の生産と分離している。

現在作成済みの衛星のみでも北米アメリカの発電量は賄える計算ではある。

これまで受電設備の設置があまり進んでいなかったが今回の送電開始で
猜疑的な視線はやや減り、安定した電力を私の街にも!と言う声が上がっているそうだ。

さっそく地方選出の議員が受電設備の誘致を大統領やアズラエル理事に働きかけているとのことだ。

異世界といえどアメリカはやはり国民の声には弱いようである。

これが追い風になって受電設備の工事が進むと良いのだが。

 

そんな事を思っていると以前に転籍を申し入れていたソキウス達が
明日この基地にやってくるとヴェーダから報告があった。

これで少しは人手不足が解消するかな?等と思ったがヒリングは
「これで武力介入出来るよね?ね!ね!」と嬉しそうだったが・・

そうなると良いのだが。

 
 

翌日彼らを乗せた小型宇宙艇が衛星などの出荷に使っている埠頭へ向かおうとしていたので
通信を入れて基地の光学迷彩を一部解除して我々のMSや巡洋艦などが出入りする埠頭へと誘導した。

小型艇からは3名どころか5名のソキウス達が出てきてどういう事だと思ったら
先頭にいたソキウスが封筒を私に手渡した。

何でもアズラエル氏からの伝言と彼らの転籍に関する書類一式が入っているという。

とりあえず彼らにナノマシンを打たねばならないので
(基地の中は我々イノベイドかナノマシンを注射した人間でないとオートマトンに強制排除される。)
ディヴァインとヒリングに彼らを医務室に案内するように頼んだ。

5名も来るとは聞いてないぞ!アズラエル! しかし人手不足なのだ、助かったと言わざるをえないな。

 

書類を机の上に広げて転籍の書類を確認していると
転籍の辞令と彼らの大西洋連邦時代の査定なども入っていた。

アズラエル理事からの手紙は開けるのを正直ためらうものがあったが開けて読んでみれば
基本的には社交辞令が長々と書いてあった。

しかし主たる目的はダガータイプのMSへの技術支援の要請だった。
確かにGN-Xが量産されたとしても全ての大西洋連邦軍の需要を満たせるかは厳しいものがある。

隊長がGN-Xに乗り、他の2名がダガータイプに乗って小隊を組むのがベターと今のところ考えている。

操作系もGN-Xに近づければダガータイプからの乗り換えも容易になるだろうし、
とりあえず問題はないと考える。

既にヘリオポリスで作られているMSのデータからナチュラルが乗れると考えられるOSを
ヴェーダが作製しており、ダガータイプもストライクなどのデータから作製されているので
ハードルは低いと思われる。

理事にはメールを介してソキウス達の転籍への謝礼とMS開発に協力することを伝えることにした。

 

ソキウス達へのナノマシンの注射も終わり簡単な健康診断も終えたようで
ヴェーダにソキウス達の健康状態がアップされてきた。

やはり同じ顔に見えてもやはり多少の差違はあるようだ。

とりあえず彼らには食事をした後暫く休憩を取ってもらい、
GN-Xのシミュレータを使って適正を見ることにする。

ディヴァインに頼もうと思ったがしきりに脳量子波でヒリングが
「あたしがやるよ!ていうかやらせて!紙と闘うのはもう嫌~!」
と訴えてきたので了解することにした・・

まあ机に突っ伏したまま猫状態で寝ている彼女?なら
シミュレータで彼らの相手をしてもらった方が余程いいかもしれない。

 

しばらくして帰ってきたディヴァインと書類の整理をしていると突然頭に
「ブシドー!何なのこいつら結構やるじゃ・・ちょ!やられた」
等とヒリングの脳量子波での実況が流れてきた。

シミュレータのデータを見るとさすがに1対1では負けていなかったものの、
複数を相手にすると同一機体ではヒリングにも荷が重かったようだ。

「この機体トランザム使えないなんて聞いてないよ!」と負け惜しみを言っているが
GN-Xでトランザムが出来るようになったのは向こうの世界でもGN-XⅣからだ!

それにしてもソキウス達のMSへの適応能力は恐ろしいほど高いものがある。
我々には劣るものの戦闘能力も高く、彼らを作った組織が廃棄処分を考えたのも納得がいった。

しかし彼らソキウス達(戦闘用コーディネーター)を助命しながら
一方で我々が武力介入やソルブレイヴスとして兵士に教育を行えば
少なくない数のコーディネーターは死ぬだろう。

それは一方で地球連合の兵士達の命を救うことにも繋がる。

もしかするとかつてのソレスタルビーイングのメンバーも
そういった自己矛盾を抱えながら活動していたのだなとふと思うのであった。

 
 

とにかく戦争を早期に終わらせることが結果的に
コーディネーター、ナチュラルどちらにも良いことは明白ではある。

ただ火種を残したまま終戦となればそれを煽るものが再び火を付けることもありえなくはない。

しかし幸い?なことに我々は上流階級や大西洋連邦上層部に
老化防止や代謝向上のナノマシンを提供しており、もしも我々と袂を分かつことになれば
それらの提供を打ちきられることになる。

またGN-Xはパイロットにナノマシンを打ち、なおかつ生体データが
ヴェーダの情報と合致しなければ起動すらしない。

それ以外にもソルブレイヴスとして陰に日向に彼らに協力を行う計画である。

これらを勘案すると大西洋連邦の政策に我々は少なからず影響力を行使出来る筈である。

ダガータイプのMS開発にはディヴァインとソキウスフォーに関わってもらい、
ヒリングとソキウスシックス、サーティーンには試験的な武力介入を行ってもらう。

既に宇宙での移動に使う艦(人革連で使われていたラオホゥ型輸送艦の後期改修型をコピーしたもの)も
作製中である。

ソキウスシックス、サーティーンにはヒリングへのリミッターとしての役目も期待している。

ソキウスのセブン、イレブンはこの基地周辺の訓練宙域で試作した武器などの試験を行ってもらう。

 

私は・・まだ紙と闘う日々が続きそうだ。この世界に神はいないのか!

 
 

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